弱い男 6/13(火) 22:03:12 No.20060613220312
体の関係は否定し続けて欲しいのですが、思いとは逆に何とか認めさせようとしている私がいます。
「最近では毎晩のように会っていたのに、体の関係は無いと言うのを信じろと言うのか?」
「あなたを裏切っていた事には変わりないです。そのような関係では無いと言っても、あなたに嘘を吐いて会っていたのだから」
最初オープンに会っていた妻も、それが頻繁になってきた事で、私に言い辛くなってきて、つい嘘を吐いて会ってしまうようになったと言います。
「信じて欲しいと言うのが、無理な話だと言う事は分かっています。これが逆なら私でも信用出来ないかも知れません。でも本当です」
妻の話は本当なのかも知れません。
発覚するまでの妻の様子を思い出しても、可也悩んでいて平気で私を騙していた訳ではない事は確かで、涙を流しながら必死に話す今の妻の態度を見ても、もう嘘は吐いていないと思いたいのですが、やはり最悪ばかりを考えてしまい、ここで引き下がる事が出来ません。
「隠れて会っていた事だけでも許すつもりは無いが、それ以上の関係は一切何も無かったと言うのだな?」
「私はあなたを裏切りました。嘘を吐いて男性と2人で会っていた事だけでも、重大な裏切り行為だと思っています。もう何も信用されなくても仕方ない事かも知れません。でももう一度だけチャンスを下さい。あなたに信用してもらえるよ
うな妻になります。お願いします」
「分かった。但し次は無いぞ」
私は持っていた妻の携帯で電話を掛けました。
「話がある。いますぐに来い」
彼は黙っていましたが、それを聞いていた妻は携帯を奪い返そうとします。
「私が悪いの。彼はそっとしておいてあげて。あなたの気が済むように私は何でもしますから。お願い、彼は大事な時期なの」
今までは体の関係ばかりが気になっていましたが、妻が近藤を庇った事で、やはり彼を好きなのではないかと疑ってしまいます。
私よりも、彼を愛してしまったのではないかと気が気ではありません。
「すぐに、お伺いします」
妻の事が心配だったのか、自分の事が心配だったのかは分かりませんが、家の近くまで来ていたらしく、10分もかからずにやって来た近藤は玄関を入るとすぐに土間に正座して、額が着くほど頭を下げました。
「恩を仇で返すような事をしてしまい、申し訳ございませんでした。でも美雪さんとはキスまでで、それ以上の事はしていません」
一瞬、彼が何を言っているのか分からず、時が止まってしまった様な感覚です。
妻を見ると、妻も何が起こったのか分からないような感じで、彼をじっと見ています。
「美雪さん、すまない。秘密にしておけなかった。もう隠れて会うのは嫌だから、ご主人に私たちの関係を知ってもらいたかった。美雪さんの事を真剣に愛しているから」
その言葉で私も妻も正気に戻り、妻は慌てて土間に下りると彼のすぐ横に並んで、泣きながら同じ様に頭を下げたので、私は頭を下げられて怒りが治まるどころか、仲良く並んでいる姿を見て更なる怒り覚えてしまいます。
私は2人をその場に残してキッチンに行くと、包丁を持って来て妻の前に置きました。
「俺の気が済むことなら、美雪は何でもすると言ったよな?俺は今この男を殺したい。俺の代わりに美雪が殺せ」
「ごめんなさい。出来ません」
「愛する彼を殺すなんて出来ないか?この男を殺すぐらいなら俺を殺したいだろ?」
「違います」
その時近藤は身体を起こすと背筋を伸ばし、一度大きく深呼吸をしました。
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