KYO 7/8(土) 20:36:31 No.20060708203631 削除
「ぐえっ!」
犬山は床の上に潰れたヒキガエルのように伸びます。道岡と毛塚は
診察台の妻の横に呆然とつっ立っています。
「絵梨子!」
私はサングラスを外して診察台の妻に駆け寄りました。
「あ、あなたっ!」
妻の目にどっと涙があふれ出ます。私は妻の股間に取り付けられた
電極を外し、診察台から解放して抱き抱えます。その時モニターの
中の橋本と江藤さんがあわててログオフする気配を見せました。
「逃げるなっ! 橋本っ、江藤っ!」
里美はモニターに向かって指を突き付けます。
「あんたたちの不倫の証拠はしっかり押さえたわ。ホテルから出て
も私立探偵が張っているわよ。そのままおとなしくそこで座ってい
なさいっ!」
2人はへなへなとベッドに座り込みました。
道岡と毛塚はサングラスを取った私の顔を見て、表情を強ばらせて
います。
「○、○○さん……何か誤解があるようです……これは、奥さんの
希望による施術です……ほ、ほら……ここにちゃんと同意書もあり
ます」
道岡は私に妻が書かされた同意書を見せます。
「それは無理矢理……」
「それは無理矢理○○さんの奥様が書かされたものでしょうっ!」
私が口を開こうとすると、里美が先に道岡を怒鳴りつけます。道岡
は一瞬ひるみますが、相手が小娘だと見て気を取り直します。
「馬鹿な……な、何を証拠に……」
「証拠はこのビデオテープよ! あなた達の悪行はしっかり記録さ
せてもらったわ」
「記録なんかできるはずがない!」
毛塚が食ってかかりますが、道岡に目配せされて「しまった」とい
う表情を浮かべます。
「それが出来ちゃうのよ。世の中に破れないコピーガードなんかな
いのよ。昨日のオンライン役員会の様子もすべて録画してるからね。
観念しなさいっ!」
道岡と毛塚はがっくりとうなだれます。床に伸びた犬山がようやく
目を覚まし、きょろきょろとあたりを見回しています。
「今回の落とし前をどうつけてもらうかは後で連絡するから、4人
とも首を洗って待っていなさい。それから、この件で○○さんの奥
様や藤村さんにちょっとでも圧力をかけるようなら、こちらも手段
を選ばないからね。私のネットワークを甘くみない方がいいわよ」
最後に里美は犬山に指を突き付けます。
「犬山っ! あんたが裸でSMプレイに興じているみっともない姿
のビデオを、B高ラグビー部OB会最高顧問の、柳原先生に見せた
らいったいどうなるかしらね」
「や、柳原先生に……」
犬山の表情はたちまち真っ青になります。
「や、やめてくれ……それだけは……」
床に頭を擦り付けるようにペコペコしている犬山を見下ろしている
里美に私は尋ねます。
「柳原先生って誰だ?」
「犬山たちが現役時代のラグビー部の監督よ。もう70歳を越えて
いるけど、OB会に絶大な影響力をもっているわ。ほら、なんとか
ウォーズっていうテレビドラマのモデルにもなった……」
「それは別の高校だ」
「とにかく、先生の逆鱗に触れたら、OB会やその縁者のつてでた
くさんの商売をもらっている犬山の会社は、たちまち立ち行かなく
なるわ。道岡や毛塚の商売も同じことよ」
「里美はどうしてそんな先生のことを知っている?」
「私のネットワークで色々と方法を探るっていったでしょ。チャッ
トレディの口コミの力ってすごいのよ」
「柳原先生もライブチャットを?」
私は目を丸くします。
「若い女の子としゃべるのが元気の秘訣だって。お年寄りのネット
リテラシーを馬鹿にしちゃだめよ」
里美はそう言うと、私にしがみつくようにしている妻に施術用の上
っ張りを渡します。
「……あ、有り難うございます」
妻は目に涙をためて里美に礼を言います。
「ところで……あなたは?」
妻の問いに里美はにっこり微笑んで答えます。
「はじめまして、奥様。私、○○さんの愛人の、里美っていいます。
よろしくね」
お願いだから本当に恐怖の地獄を味合わせてください。
変なオチのないように頼みます <m(__)m>