柴田 2/21(水) 06:38:25 No.20070221063825
商談が終わってホテルに戻ると、ロビーで若い女性に声を掛けられた。
若いと言っても30代前半のようなのだが、私のようなおじさんからすれば随分若く、ミニのタイトスカートに目を奪われてしまう。
「あなたは・・・・・・」
この女性には見覚えがある。
それは二週間ほど前の事。
いつものように出勤前にゴミを出しに行くと、彼女が困った顔で立っていた。
「プラを分けなくては駄目なのですね」
聞けば引っ越してきたばかりで、ここにゴミを出すのは初めてと言う。
「困ったわ。戻っている時間は無いし」
「そのぐらいなら私の袋に余裕がありまするから、良かったら入れて下さい」
彼女とは自治会の事などを説明しながら駅まで一緒に歩いただけで、その後会う事は無かったが、私の記憶には彼女の事が鮮明に残っていた。
それはゴミを選り分けている間、屈んだ彼女の胸元から真っ赤なブラジャーと共に、白くて軟らかそうな乳房がずっと見えていたからだ。
「出張ですか?」
「はい」
「私は初めての出張で、一度部屋に行ったのですが明かりの点け方が分からなくて」
「ああ。ここは入り口のスイッチの所に、ルームキーに付いているキーホルダーを差し込むのですよ」
「そうですってね。今フロントで教えてもらいました」
彼女と一緒にエレベーターに乗り、私は3階だったので先に降りて部屋に入ると、5分ほどしてドアがノックされた。
「やはり明かりの点け方が分からなくて、ご迷惑かとは思いましたが、何度もフロントに聞きに行くのが恥ずかしくて」
「私の部屋がよく分かりましたね」
「302と書かれたルームキーを持っていらしたから」
私はキーホルダーを抜いて部屋の明かりを一度消し、もう一度差し込んで点けて見せたが、私にぴったりと寄り添う彼女からは、ほのかな香水の香りが漂っていた。
「斜めに差し込むのですね。このようなホテルは初めてなので」
「初めての出張では何かと大変ですね」
聞けば急に上司が来られなくなり、彼女が代わりに来たと言う。
「お食事はどうされました?」
「上司はいつも外に食べに行くらしくて、夕食は付いていないとフロントで言われたので、どうしようかと迷っていたところです」
「大きな声では言えませんが、ここの食事はあまり美味しくないので、私もいつも外に食べに行くのですよ」
この辺りの地理に詳しくないので、ホテルに頼もうと思っていたと言う彼女を誘い、ここに出張した時にはいつも行く居酒屋に行った。
そして私は、久し振りに楽しい時間を過ごす。
それと言うのも一ヵ月ほど前から妻が笑顔を見せなくなり、何を怒っているのか二週間前からは、必要最小限の事以外口も利いてくれない。
このような態度の妻は初めてで、私にはこれと言って思い当たる事は無かったが、一つあるとすれば妻を誘った時に「その気になれないの」と言って断わられ、今まで訳も無く断られた事が無かった私は、翌朝拗ねて口を利かなかった事がある。
それからはどこかギクシャクしていたのは確かだが、それは三週間ほど前の事で、妻の様子がおかしくなったのはその前からなのだ。
言い訳になるが、妻との関係がこの様な状態でならなければ、彼女を食事に誘う事は無かっただろう。
少し酔いが回ったところで彼女の事を聞くと、年齢は33歳で最近離婚して近所に引っ越して来たと言う。
私も男なので、ほんのり赤く染まって色気が増した彼女を見ていて口説きたくなったが、愛している妻を裏切る事は出来ずに自分を抑えた。
ホテルに帰ってからも、彼女に誘われて部屋でビールを飲み、彼女がジャケットを脱いだために薄いブラウス越しに見える、豊かな胸を見ていて二週間前の光景を思い出してしまったが、これもこのままでは不味いと思って缶ビール一本飲んで退散した。
そして出張から帰った翌日、妻は11時を過ぎても帰って来ない。