[634] 家主・プロローグ 投稿者:えりまきとかげ 投稿日:2002/07/14(Sun) 14:16
ひひ親父・・・また、見てやがる。
ベランダでは妻の梓がさっきから忙しく洗濯物を物干し竿に干している。
我が家はニ階建ての2LDKコーポラスの一階でベランダは正面の駐車場に面している。
私は六畳の洋室でパソコンと向かい合いながら陽の差し込むサッシ戸の向こうで立ち働く妻のいつもの愚痴を聞いていた。その視界にあのひひ親父の姿が現れたのだった。
ひひ親父・・・正確には、我々が借りている賃貸アパートの家主で、このコーポラスの五台ばかりの駐車場の向い側に建つ御殿のような邸宅に住んでいる。
歳は恐らく八十は越えているだろう、老人と言って間違い無いのだが、この老人、そこいらの老人とは訳が違った。腹は少々弛んでドテッと迫り出しており、肌の表面も老人斑が浮かびかさかさした印象を受けるが内の身は十二分に詰まっておりランニングシャツから露出する胸筋は筋肉線を浮きたて、二の腕は丸太のように太く、身の丈百八十の居丈高で、長身からはアンバランスなほど短い脚もステテコからはみ出ている腿や脹脛は胴太の杭を思わす。
邸宅にはトレーニングルームが完備されており、ウェイトトレーニングを欠かさないらしい。狩猟が趣味で猟犬のドーベルマンのクロを連れ歩くのに力の衰えは最大の敵なのだと以前聴いた事がある。とにかくこの老人、世の老人連中とは一味も二味も違っていた。
そればかりではなく、この辺りの大地主で田畑やマンション、山河、株、ホテルの経営など総資産は地価の下落でかなり減ったと言う事だが、それでも数百億は下らないだろうと噂されている。
若い頃から生涯独身を口外しこの歳まで妻は一度も娶らず、今も自分と同じように独り身の妹と二人きりで大邸宅に居住している。
ただし、浮名は相当に流したようで、妹との仲を勘繰る声や妻は無くとも子供の数は五十人を越えているなどの噂話は後を絶たず。八十を越えた今も絶倫振りは衰えるどころか益々盛んで、隣町の商売女や水商売の女などを中心に最大限に金に物を言わせて囲っている彼女の数は両手の指で足りないなどとも聞いた事があり、その中にはOLや女子大生、人妻まで含まれていると言う。
以前、妻と二人でひひ親父との関係が噂されるママの居るバーへ飲みに行った折、そこのチーママから妻は家主の好みのタイプだから気を付けた方が良いと忠告された事が有った。そのチーママかなりの下ネタ好きでその日も際どい下ネタ話に花が咲いた。
こと、ひひ親父の話題になるとママが風邪で寝込んで休んでいるのを良い事に偶然忘れ物を取りに戻って目撃した閉店後の店内での情交現場を事細かに披露してくれた。
とりわけ、ひひ親父の一物の話は強烈だった。
なんでも臍を越えるほど長く、手首ほども太く、八十の歳が信じられないほど勃起は天を突き太鼓腹に垂直にぶち当たっていたと言う。先端部はテニスボールほど丸々と肥え、カリ高でまるで毒キノコのようだったそうだ。真っ黒に陰水焼けした表皮は松ノ木の皮を思わせるほどゴツゴツでザラザラしていたそうだ。また、殖栗はみっともないほど巨大で設楽焼きの狸の置物を思い出すほど重々しく垂れ下がっており、それが射精の時にはブルンブルン弾んで種馬を思わすほど大量の体液をぶちまけたそうだ。
烈しい情交は明け方まで続き老人は五度も精を放ち、ママは数え切れないくらいイカされて阿呆のように涎を垂れ流し放心状態になっていたそうだ。
帰りの車内で妻は、あんなおじいちゃんにそんな真似が出来る訳無いわよね?とか、そんなオチンチン有るはず無いよねえ?とか、誇張のし過ぎか全くの出たら目のどっちかだと主張していたが、かなりの刺激を受けたらしく帰り着くまでずっと手首より太いのなんて入らないよね。だの陰水焼けってどんなの?だの延々とその話題を口にしていた。
それから性交の折、時々、ペニスの大きさを口にするようになった。あなたのって大きい方なのそれとも普通なの?等と聞いてくるのだ。他の男を知らないから判らんといつも答えているのだが、実際には私のペニスは日本人の標準サイズより少し短くボディはかなりスリムで太さの方はかなり細目だろう、その上先細りで先端部は亀頭を完全には露出してはおらず、睾丸は鶉玉子ほどの大きさしかないためか精液の量も少なめで結婚して八年になるのに子供が今だ出来ないのはそんな事が影響しているのかもしれなかった。
ベランダの向こうに現れたひひ親父と一瞬目線が合い、軽く会釈をする。ひひ親父の方も目礼を返したて来たものの、視線は直ぐに別のもっと低い角度へ移動した。
妻の梓はすぐ後ろにひひ親父が居る事など全く気付かず、小さなショーツを小物掛けに洗濯バサミで止めながら、なおも室内の私に愚痴をこぼしている。
「今月は集金どれくらい有るの?何か一杯作ってるけど先月も十五万ぐらいしか無かったじゃない、家賃だけでも八万するのにこれじゃやってけないよ・・・もう蓄えも使い切っちゃったし・・・今月も同じじゃどうすれば良いもう、わかんないよ。」
「大丈夫、今月は大口が入金に成る筈だから。もう少し増えるよ。」
気休めを言ってその場凌ぎの安心を与えようと務めて明るく答えたものの集金が増す希望などどこにも無かった。
私は十五年前、国立の美術大学を卒業し、そのまま自分でデザインオフィスを開業した。自分でとは言っても資金の殆どは当時、地方スーパーを経営していた両親の出資で、まあいわゆる脛っかじりってとこだろう。
しかし、バブル景気にも助けられ業績は鰻上り。最盛期には従業員を二十名も使うように成っていた。妻の梓はこの頃、入社した従業員で経理を担当していた。面接に来た時からとりたてて美人と言うほどでは無いのだが、愛くるしくとても素直な性格と学生時代、フィギュアスケートで鍛えられたボディ、とりわけ圧倒的な量感を湛えた下半身の肉付きに魅せられ二年間の交際期間を経た後、見事ゴールイン。しかしこの頃から業績は陰りを見せ始め、リストラを敢行しながら何とか凌いで来たものの二年ほど前に遂にはオフィスや自宅のマンションなど相次いで手放し、二十数名も居た従業員も妻を除き全て居なくなり、現在の賃貸アパートへ転がり込んだ次第である。
又、時を同じくして両親のスーパーも地方へもどんどん押し寄せる大手スーパーやコンビニエンスストアーの攻勢に攻し切れず廃業の道を辿って行った。
デザインオフィスの看板は自宅アパートに移し細々と維持してきたが、それさえも最近の値崩れの波で立ち行かなくなりつつあった、というよりも既に生活を支える力も無くしており、ここ数ヶ月は梓が実家から無心をして何とか家計を繋いでいるに過ぎなかった。
だが、収入が減ったから暇に成ったのかというと逆で安い料金で売上げを確保しようともがくため、殆ど毎日が徹夜と言う有り様で睡眠はパソコンのチェア-に座ったままとる仮眠のみと言う状態が続いている。
妻は何か別の仕事をと勧めるが今までデザイン一本で来た私は他へ踏み出す勇気を持ち合わせてはいなかった。妻は何度も自分が勤めに出ると言っていたのだが私は今までそれを許さなかった。しかし、この数ヶ月の状態ではそんな事は言ってはいられないし、それよりも離婚を考えたほうが良いのかもしれないとも思っている。梓をこの惨めな生活に縛り付けておく権利は無いのだから。妻の本音を聞いてみたかった。
ひひ親父は禿げ上がった頭頂部を陽の光でテカテカさせながら、銀縁眼鏡の奥で薄気味悪く光りを放つ開いているのか閉じているのかハッキリしないほどの細長い目で背後から執拗に妻の梓を凝視している。妻の梓をと言うよりも梓の尻をと言った方が適切かもしれない。
梓はセミロングの黒髪を後ろにゴムで一纏めに留めており、腰までの淡い黄色のタンクトップに白のショートパンツ、所謂ホットパンツという軽装で足元は素足にサンダル履き。
ひひ親父の目からは尻たぼから下、アキレス腱までのなま足の裏側が余すところ無く晒されている筈だった。
ムッチリと張り詰めた腿、筋肉の弾力を感じさせる脹脛、対照的にきっちりと締まった足首まで無防備に露出していた。
そして、ホットパンツに包まれた圧倒的に大きくまん丸に張り出した尻肉、恐らくパンツのラインもしっかりと確認されているだろう。そんなゴージャスな下半身と相対をなす細く括れた腰のライン、細身ながらもキッチリと筋肉の凹凸を見せる腕や肩、真っ直ぐに伸びた背骨の線と背筋のハーモニー。飽きる事無くひひ親父は、そんな梓の姿態を無遠慮に眺めている。
これまでも、このような視線が梓に注がれるのを何度も見て来た。ひひ親父が腹の内で妻を辱めているのは、その舐めるような目付きからも確実だった。