管理人から

管理人

Author:管理人
管理人がおすすめするカテゴリに★印をつけました。



アダルトグッズのNLS








最新記事


カテゴリ

北原夏美 四十路 初裏無修正

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[3708] 情けない 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/02(Wed) 18:43

青天の霹靂、寝耳に水、何と言って表現したら良いのだろう。
一寸先は闇、これが一番近いかも知れない。
妻とは2年付き合って、結婚してから19年経つ。
妻とは結局、21年一緒にいた事になり、妻の事は何でも知っていると思っていた。
それだけ信頼もしていた。
木曜の夜、家族4人で笑って食事をし、いつもの様に妻と一緒にお風呂に入り、妻と
2人でお酒を呑んで、妻を抱いた。
それが金曜の夜、妻をお風呂に誘うと真剣な顔で話があると言う。
「あなた・・・・離婚して・・下さい」
当然私は、悪い冗談だと思って笑った。
しかし妻の涙を見た時、私の顔から笑いが消える。
「俺に不満でもあるのか?」
「不満などありません。100点満点の夫だと思っています」
「それならどうして?俺の事を嫌いになったのか?」
「嫌いになんかなれない。好きだから、ずっと言えずに悩んでいました」
頭の中が混乱して、何が何だか訳が分からない。
しかし次の一言で、今までの全てが崩れ去り、私の人生は終った気がした。
「ごめんなさい・・・・一緒に・・暮らしたい人がいます」
私は妻の為に生きてきた。
妻と一緒にいたくて出張の多い会社を辞め、脱サラをして小さなビルに小さな事務所
を借り、この不況の中、妻に人並み以上の生活をさせたくて頑張って来た。
妻も仕事を手伝うと言ったが断った。
何故なら、妻にはパッチワークの教室を開きたいという夢があり、その夢を実現させ
てやりたかったから。
どうにか営業1人と事務員を1人雇えるようになって、妻の長年の夢だった、パッチ
ワークの教室を開くのにも協力出来た。
それなのに。
考えれば考えるほど信じる事が出来ず、私の顔には笑みが戻っていた。
「冗談はやめてくれよ。心臓が止まるかと思ったぞ」
「冗談ではないの・・・・ごめんなさい・・」
妻が泣き崩れるのを見て、妻の話が事実である事を、受けとめざるを得なくなった私
の目からも、大粒の涙がこぼれた。
情けない。
[3709] 情けない 2 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/03(Thu) 08:27

本当は声を出して泣きたいのだが、それだけは何とか堪えた。
これは男としてのプライドか?
涙を流していては、プライドなど既に無いのだが。
普通の夫ならここで激怒し、離婚と言う言葉を叫ぶだろう。
すぐに離婚を口にしないまでも、頬を張り、家から叩き出しているだろう。
しかし私には、何も出来なかった。
夢か現実かの、区別すらもついていないのだ。
妻は週3回、生花店の2階を借りて教室を開いているが、その日以外は、温かい物を
食べさせたいと言って、昼食の弁当を届けてくれる。
その時、自分の弁当も作ってきて、一緒に食べる事もある。
仕事からどんなに遅く帰った日でも、必ず起きて待っていてくれて、一緒にお風呂に
入り、一緒に食事をする。
休日は2人で山歩きをし、季節の花を見に、遠くまでドライブする事も多い。
セックスも週2回はしていて、現に昨夜もしたばかりだ。
その妻が他の男と付き合っていたなど、すぐには信じられるはずが無い。
「相手は誰だ?」
「・・・・瞳の担任だった・・・・・加藤彰先生です」
この男なら知っている。
知っているどころか、我が家で一緒に食事をした事がある。
昨年、下の娘が中学3年だった時の担任で、体は細くて背が高く、青白い顔をした、
無口で大人しい男。
同じく教師だった奥さんが、同僚と不倫して家を出て、酷い事に、子供をおいて出た
ので、男手一つで2人の娘を育てている。
我が家も娘2人なので、役員をしていた妻は子供の育て方など、何かと相談に乗って
いたようだ。
妻が世話好きなのは昔からで、加藤の事を男としてよりも、幼い娘の父親として見て
いたので、まさかこの様な日が訪れるとは、想像もしなかった。
娘の進学では、他の生徒よりも随分世話を掛けたので、娘の卒業を待って食事に招待
したが、加藤の娘は小学3年と1年で、2人共礼儀正しく可愛かった。
お姉ちゃんはしっかりしていて、絶えず妹の世話を妬く。
妹は知らない家で不安なのか、お姉ちゃんの服の裾を掴んでいた。
それを見ていた私は、娘達の幼い頃を思い出し、この子達は母親に裏切られながらも
頑張っていると思うと、目頭が熱くなったのを覚えている。
加藤はと言えば、小さな声でボソボソとしか話さず、私との会話も続かない。
お酒を勧めたが、飲むのか飲まないのかはっきりせずに、結局私1人が飲んでいた。
奥さんが一方的に悪いと分かっていても、この男なら仕方がないとも思ってしまった。
しかし私は、その男に妻を盗られようとしている。
私はこの男よりも下だと言う事か?
情けない。
[3710] 情けない 3 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/03(Thu) 21:07

まだ、妻の一時的な気の迷いだと思いたい私は、一番気になる事を聞いた。
「身体の関係もあるのか?」
普通、一緒に暮らそうと約束した男と女なら、身体の関係が有って当然かも知れない。
しかし私は、妻の貞操観、倫理観を信じたかった。
「・・・・ごめんなさい」
この妻の身体を、私以外の男に見られた。
見られただけではなくて、触られ、舐めまわされ、男の下で喘いでいた。
私以外の男の、硬く勃起したオチンチンが、妻の中に入った。
それも、無理矢理押し入ったのではなくて、妻もそれを望んで濡らしていたのだろう。
これは私にとって、どの様な事を意味するのか。
私だけの占有物を共有された?
いや、違う。
私しか入ってはいけない所に、他の異物が入った?
いや、違う。
そんな簡単な事では無い。
私以外は踏み込んではならない領域に、他の男が踏み込んだのだ。
それも、その領域全てを私から奪い、逆に私が入れない領域にしようとしているのだ。
これは戦争だ。
私の全てを、奪おうとしている男との戦争だ。
ようやく私に、怒りと言う感情が込み上げる。
「奴を呼べ」
「今は愛と瞳が・・・・明日あの子達は出掛けるので、その後来てもらう約束になっ
ています」
「喧しい。今すぐに呼べ。それなら最初から、娘に聞かせられない様な事をするな」
「あなた・お願いします・・・愛と瞳にはまだ・・・・・・・」
つい声を荒げてしまったが、言われなくても話せない。
自分達の母親を、他の男に渡してしまった情けない父親。
自分達の父親は、妻を盗られた情けない男。
嫌だ。
今まで偉そうに人生を説いていた、父親としての威厳まで崩れ去る。
出来れば、娘達が知るまでに、何とか妻を取り戻したい。
結局私は、話せないのではなくて、知られるのが怖いのだ。
情けない。
[3711] 情けない 4 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/04(Fri) 14:15

当然、まだ聞きたい事は山ほどあったが、これ以上は聞かなかった。
この期に及んでも妻に対して、少しでも懐の深い、大きな男に見せようとしている。
「風呂に入るぞ」
この事から逃げたくて、何も無かったかのように平然と言ったが、当然妻は激しく首
を振っていた。
「まだ俺達は夫婦だ。いつも通りにしろ」
私は声を張り上げた。
いくら大きく見せようとしても、この様なところにも、人間の器の小ささが現れてし
まう。
妻は泣きながら従ったが、私に戻ってきた訳では無い。
これは私が騒いで、娘達に気付かれるのが嫌だったから。
まだ良い言い訳を思いつかないのか、または私との事が全て決まって、逃げられる場
所を確保してから言いたいのか。
見慣れた妻の裸体が、昨日までとは違って見える。
1日で、何が変わったのだろう。
小振りだからか、41歳になってもきれいな形をしているバスト。
細いウエストに、垂れるほど大きくないヒップ。
その下には、すらっと伸びた脚がある。
太らない体質なのか、たまに山を歩く以外、これと言った運動もしていないのに、あ
まり昔と体形が変わっていない。
ただ大きく変わったのは、私が吸い、途中娘達が吸って、その後また私が吸い続け、
黒く大きくなってしまった乳首と、今はタオルに隠れて見えないが、黒く飛び出して
しまったヒダヒダ。
今まで私だけの物だと疑わず、慣れ親しんだこの身体が、今は他の女の身体に見える。
お乳も垂れ、お腹にも大量に肉が付き、お尻も垂れた醜い体形になっていたら、5歳
も若い男は、見向きもしなかったかも知れない。
ブクブクと太って歳相応に見えれば、5歳も若い男は、並んで歩くのを嫌がったかも
知れない。
ところが、肩よりも長いストレートの髪を栗色に染めて、若妻の様な化粧をしている
スリムな妻は、あの男よりも年下に見えてしまう。
一緒に並んで歩いていて誇らしかった妻が、今は醜い身体に変わっていて欲しかった
とさえ思えてしまう。
私は顔を洗い、シャンプーをした。
いつもは身体から洗うのだが、涙を隠したかったから。
2人並んで湯船に浸かると、また妻が泣き出した。
「・・・・・・・ごめんなさい」
「いつからの付き合いだ?」
妻は声を殺して泣いていて、話す事が出来ないでいる。
早く答えが聞きたくて、もう一度聞こうと思ったが、黙って妻の答えを待っていた。
次に声を出せば、また顔を洗わなくてはならなくなるから。
情けない
[3716] 情けない 5 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/05(Sat) 07:43

妻は両手でお湯をすくって顔を洗い、大きく深呼吸をすると話し出した。
「加奈ちゃんや美保ちゃんの事で、瞳が卒業してからも時々電話で相談に乗っていま
した。気になって、私から電話した事もあります。それが2ヶ月ほど前、子供達が精
神的に不安定になってしまったと相談を受けて、彼の家まで様子を見に行くようにな
りました。毎日のように彼の家に行くようになったのは、2週間ほど前からです」
私も大きく深呼吸した。
「家に行っていた?」
「加奈ちゃんと美保ちゃんの世話を・・・・・・・・ごめんなさい」
その中に、私の聞きたかった答えはない。
勿論これらも知りたかったが、もっと知りたい事がある。
「奴に抱かれた・・・・つまり、関係をもったのはいつからだ?」
気は焦っていても余裕がある振りをして、わざとゆっくり話す。
「・・・・・・・・・・・今日初めて・・・・・・・」
「今日!」
声が裏返る。
妻の話に嘘は無いと思った。
それは妻が話す様子からだけでなく、証拠はないのだから、身体の関係など無いと嘘
をつけば、私への罪が多少は軽くなったのだから。
たった1日の事が重い。
昨日打ち明けていてさえくれれば、最低身体の関係だけは止める事が出来て、妻に対
する愛だけで勝負出来たのに。
いや、そんな過ぎた事を考えても仕方がない。
身体の関係をもってしまったから、打ち明けてきたのだろう。
関係をもってしまった罪悪感から、そうしようと思った?
いや、それだけなら妻の性格からして、私と離婚して奴とも別れる。
関係をもって、相手に対する情が深まった?
それなら、21年間も一緒にいた、私への情の方が深いと思う。
以前からそう考えていて、関係をもった事で決心がついた?
これが一番近いのか。
それとも、関係をもって、離れられなくなるほど、奴とのセックスが気持ち良かった?
関係をもって、奴のセックスの虜になった?
こんな下種な事まで考えてしまう。
情けない。
[3726] 情けない 6 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/06(Sun) 09:54

妻は、他の部屋で寝ると言う。
しかし私は、それを許さない。
仕方なくWベッドに入ってきたが、その位置はいつもよりも、30センチ以上は離れ
ていた。
このわずか30センチが、途方もなく遠く感じる。
私が少し動く度に、身体を硬くする妻の緊張が伝わってくる。
「お願い、やめて!彼に抱かれてしまった、こんな私を抱けるの!」
妻の抵抗は凄まじく、パジャマのボタンが弾け飛ぶ。
もはやこれは、夫婦の営みなどではない。
愛を確かめ合う儀式などではなくて、完全なレイプだ。
泣いている女を、強姦しようとしているのだ。
「抱けるとも!恵は俺の妻だ!」
迫る私の唇から、何とか逃げようと左右に顔を背ける。
そんな妻の、髪を掴んで動きを制し、唇を押し付ける。
舌の進入を阻む閉じた歯を、何とか開かせようと頬を掴む。
昨夜までは絡めて来た舌で、私の舌を押し返す。
いつもは優しく舐める乳首に歯を立てる。
妻の顔は苦痛に歪む。
こんな事をしていては、よけいに妻は離れていくと分かっていても、私も必死だった。
何とか濡れて欲しくて舐め続けても、そこは私の唾液で濡れるだけ。
虚しい。
妻の言う通り、私のオチンチンは大きくなるどころか、普段よりも縮んでいた。
「恵のせいだ!恵が何とかしろ」
妻の唇に押し付けても、硬く閉じた唇をこじ開ける硬さなどない。
「どうしてだ。どうして俺が、こんな惨めな思いを・・・・・・」
情けなく縮んだオチンチンをぶら下げた私は、もう格好なんて付けてはいられず、声
を殺して布団に泣き伏した。
しかしこれは、ただ泣いているだけではない。
妻の同情を買おうとしている。
オモチャ売り場の前で、泣いて愚図る子供と同じように。
思惑通り、妻は私の背中に抱き付く。
「ごめんね・・・ごめんね・・・酷い妻でごめんね」
私は次の言葉を待っていた。
ただ一言『やっぱり離れられない』と言う言葉を。
しかし妻から、その言葉は出てこない。
私はその言葉が聞きたくて、今度は声を出して泣く。
情けない。
[3730] 情けない 7 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/07(Mon) 16:59

娘達が出掛け、私は奴を待っていた。
事の重大さに恐れをなして、我が家に着くまでに考え直せと思いながら。
約束の時間が迫り、妻はお茶の準備を始める。
「泥棒にお茶がいるか!」
湯飲みを投げて叩き割る。
それほど私は、気が昂っていた。
昨夜の惨めな私とは違い、完全な戦闘モードだ。
妻が玄関まで迎えに行き、入って来た男は、何も言わずに立っている。
「座れよ」
「この度は・・・・・・・」
「この度は何だ!」
気が付くと殴っていた。
暴力だけは振るうまいと思っていたが、こんな時でもモジモジしている男に切れた。
「あなた、やめて!」
妻がすぐに間に入って、次の私の動きを封じる。
しかしこれは、犯罪者になる私を心配したのではなくて、奴が殴られるのを可哀想に
思い、庇っているだけだと感じた。
「あなた、ごめんなさい。全て私が悪いの。私を殴って」
奴の前に立ちはだかり、目を閉じている妻を見て思う。
妻は、こんな男に真剣なのだと。
「分かった。離婚してやる。すぐに別れてやる。今から条件を話し合おう」
私の口から、思ってもいなかった言葉が、次から次に飛び出した。
こんな場面で、男気を出している。
一番肝心な場面で、強い大人の男を演じてしまっている。
奴を見ると、妻の後ろで震えていた。
良かった。
女の後ろで震える男を見て、私の暴走に歯止めが掛かる。
奴が妻を庇って前に出ていたら、勢いで離婚を進めていたかも知れない。
「一方的に俺を裏切って離婚するのだから、財産分与はしない。慰謝料はいらないが、
養育費は愛と瞳が20歳になるまで、一人月10万。これで離婚してやる。」
「えっ・・・・・」
「加藤、おまえは慰謝料として5千万払え。それで許してやる」
「はい、分かりました。ごめんなさい。こんな事になって、ごめんなさい。ありがと
うございます」
私は耳を疑った。
無理な条件を出して、諦めさせようと思っていたのに、こいつは金持ちだったのかと。
「あなた、待って。彰さん、分かっているの?5千万と月々20万よ。彰さんと私に、
そんな大金が払える訳ないでしょ?」
「えっ?慰謝料五百万と月々10万かと思った。出て行った妻と、相手の彼からもら
った慰謝料があるから、頑張ればどうにかなると思った」
「しっかりしてよ。それに、あれを使ってしまったら、加奈ちゃんと美保ちゃんはど
うするの?あれには養育費も含まれているのよ」
殴られて平常心では無かったにしても、私よりもこんな男を選ぶのか。
情けない
[3733] 情けない 8 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/08(Tue) 07:41

相変わらず、奴の態度は煮え切らない。
何を言っても、ひたすら謝るだけで話にならない。
先ずは、私と妻との問題だと気付いて追い帰す。
「あんな男が好きなのか?」
「・・・・・・・はい」
奴はどの様な男なのか妻に聞く。
驚いた事に、奴は3月いっぱいで教師を辞めていて、4月からは無職だった。
「無職?」
学生の時から小説家志望で、国語教師をやりながら書いていたが、二足のワラジでは
思ったように書けないと言って辞めたそうだ。
妻はその事を、辞めてしまった後に聞かされた。
それで余計に奴と子供の事が心配になって、妻からも連絡を取るようになったのだ。
妻は気付いていなかっただけで、3月に我が家に招待した時には、奴に対して既に特
別の感情があったのかも知れない。
いや、相談を受けている内に、只ならぬ感情が芽生え始めている自分に気付き、その
ような自分を否定し、その事を吹っ切る為に私に会わせたのだろう。
それが、夢を追い掛けて無職になった事で。
奴は無口で大人しく、優しい男だと妻は言うが、奴の事をどれだけ知っていると言う
だろう。
大人しい男が、人妻とそのような関係になれるのか?
優しい男に、他人の家庭を壊せるのか?
2度しか会った事が無いからか、確かに大人しそうは見えても、私には奴の本当の姿
が見えない。
無口なだけに、余計どのような男なのか掴みきれない。
私に謝り続けながらも、奴の心は他を向いていたような気がするが、これも私が奴の
事を悪く思いたいという、嫉妬心から来るものなのか?
今も寝癖がついたままの髪で来たが、身なりも構わず、お金にも無頓着で、頻繁に奴
の家に通い出してからは、妻がお金を管理していた。
現在、貯金を食い潰して生活しているが、このままではあと1年もたないと言う。
「それまでに、小説が売れなかったらどうする?」
「家を売ってアパートに住めば、しばらくは生活出来ると彼が・・・・。ですから、
どうか彼への慰謝料は許して下さい。私は何も持たずに出て行きます。私も働いて、
出来る限りの養育費は払って行きます。ですからお願い。あの様な金額は・・・・・・・・」
知らぬ内に、離婚の条件を話し合っている。
そうだ、私は離婚すると口にしてしまったのだ。
「恵も働くって?」
「パッチワークの教室はまだ生徒さんも少なくて、色々支払うと3万程しか残りませ
ん。ですから・・・・・・」
「教室をやめて働くと言うのか?あれは恵の夢ではなかったのか?長年の夢が叶っ
たと言うのに、それを捨てると言うのか?」
妻は自分の夢を捨ててでも、奴の夢を叶えてやろうとしている。
そう言えば、私にも大きな夢はあった。
しかし、45歳になって家族がいては、そうは冒険も出来ないでいた。
「・・・・俺よりも好きになったのか?」
「・・・・ごめんなさい・・・本当は、よく分からないの。でも・・・・・・・・・」
ぼんやりした男でも、大きな夢を持っていた。
妻は、そんなところに惹かれたのだろうか。
大きな夢を諦めた、今の私の夢は小さい。
2人の娘を嫁に出し、妻と老後を仲良く平穏に過ごす事。
情けない。
[3736] 情けない 9 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/09(Wed) 08:54

その夜も、一緒にお風呂に入れと強要する。
その後また妻を抱こうとしたが、ただ涙を流しているだけで、昨夜のような抵抗はない。
しかし結局は、妻に惨めな思いをさせ、私も惨めな思いをしただけに終わる。
「恵は俺に対して、何をしたのか分かっているのか?これでも悔しい思いを抑えて、
可也譲歩したのだぞ。あの条件が飲め無いのなら、とにかく俺との事がはっきりとす
るまでは、奴とは絶対に会うな。それがケジメだ。」
「・・・・・・はい」
妻は黙って、私が軟化するのを待っていたが、一週間もすると急に焦りだした。
「何を焦っている?21年間も一緒にいて、急に別れてくれと言われても、すぐに結
論なんか出せない」
「分かっています。でも・・・・・」
妻は約束を守って逢ってはいなかったが、時々電話で様子を聞いていた。
奴がたまたま留守で下の娘が出た時に、姉がご飯を作ってくれていると聞く。
出て行ってから初めて、母親が来た事も。
上の娘に代わってもらうと、奴は書斎にしている部屋にこもってしまい、周りが何も
目に入らない時があると言う。
出て行った母親は、時々娘達に電話を掛けてきていたが、娘達の世話を何もしないで、
書く事に没頭してしまう事は、口止めされていて話していなかった。
仕事も、塾の講師をしている事になっていたらしい。
しかし、下の娘が全て話してしまった。
当然、私の妻の存在も。
おそらく、妻との事が思い通りに運ばずにイライラしていたのか、父親の様子が変だ
と感じ、不安になって、母親に助けを求めたかったのかも知れない。
母親が来たのは、その後だった。
娘達は母親が来た訳を知らず、気になった妻は、すぐに奴の携帯に電話して聞くと、
約束が違うので娘達を引き取りたいと言って来たと知る。
夫婦や家族の約束を破って不倫した女が、約束を破ったと言って来る神経が、私には
理解出来ないが。
奴も奴で、夏休みが始まるまでに改善出来なければ、娘達を渡すとその場凌ぎの約束
をしたらしい。
今は別れて1人らしいが、一度は子供を捨てて男に走った母親。
普段は優しくても、没頭すると娘達の存在を忘れてしまう父親。
どちらと暮らしても、あの子達には可哀想な気もする。
夏休みまでは、あと1週間。
妻の焦りが、手に取るように分かる。
「自分達の事しか考えられないのか?俺が何か悪い事をしたか?どうして俺が、お前
達の都合に合わせなければならない」
「ごめんなさい。あなたには、本当に申し訳ないと思っています。こんな酷い女はい
ないと自分でも思います。でも自分を自分で抑えられないの。たぶんあなたと別れた
ら、私は幸せにはなれない。いえ、幸せになんかなってはいけない。そう分かってい
ても・・・・・。あなたは強い男です。彼と違って強い人間です。私は彼を放ってお
けない・・・・・」
私は決して強い男などではない。
強い男になりたいと思って生きてきただけ。
今までずっと、強い男を演じてきただけ。
私は奴よりも、弱い人間に違いない。
妻に裏切られても、奴のようには離婚に踏み切れないでいるのだから。
他の男に抱かれた妻を、許そうとしている弱い男。
それどころか、逆にこんな事は許して欲しいとさえ思っている。
情けない。
[3737] 情けない 10 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/09(Wed) 09:06

愛の形には色々あるのだろう。
強い男に惹かれる愛。
頼れる男に惹かれる愛。
これらは、男に守られたい愛かも知れない。
それとは逆に、弱い男を放ってはおけない愛。
この愛は母性本能に訴えかける愛だ。
つまり、頭で考える愛よりは、本能としての強い愛。
その愛を奴にだけではなく、2人の幼い娘に対しても感じているとすれば、その愛は
更に何倍も強くなっていく。
まずそこから妻を引き離すために、こちらからは離婚の話を一切せずに、話を出来る
だけ引き延ばす。
あの子達には申し訳ないが、母親に引き取られて奴の所からいなくなれば、きっと妻
の奴に対する愛も、変化すると信じながら。
「あなた、お願い。離婚はまだ無理でも、あの子達の所に通わせて。そうでないと、
あの子達を捨てた母親が、連れて行ってしまう」
私はどの様な惨めな思いをしようとも、一人で戦うつもりでいた。
娘達の事は言わずに、私だけの気持ちで戦うつもりだった。
しかしこの時、1対3では勝てないかも知れないと感じた。
それで卑怯にも、娘達の事を駆け引きに使ってしまう。
「子供達を捨てた母親に、今から子供達を捨てて出て行こうとしている母親が、偉そ
うに何を言っている」
「えっ?私は違う。愛と瞳を捨てたりなんかしない。経済的に許せば引き取りたいし、
この家を出てからも毎日会いに来ます。あの子達はもう大きいし、ここに残った方が
幸せだと思ったから・・・・・・。あの子達の幸せを考えたから・・・・・・・・」
「奴の別れた奥さんと、どこが違う?きっと彼女も、同じ事を思っていたに違いない。
子供を捨てる母親は、皆自分を正当化する為に同じ事を言うのだ。ようは母でいる事
よりも、女でいる事を選んだ自分への釈明だ」
「違う。私は違う」
妻は1日泣き続け、その夜キッチンからは、娘達の罵声と泣き叫ぶ声が聞こえてきた。
「不潔!出て行って。私達とお父さんの家から、すぐに出て行って!」
「もう母親だとは思わない!」
「私達を捨てて、さっさと出て行ってよ!」
「もう二度と会いたくない!」
私がドアを開けて入っていくと、娘達は泣きながら抱きついてきた。
「私はこんなお母さんなんかいらない。お父さんだけでいい」
「私もいらない。お父さんが可哀想」
妻は私の言った言葉が気になり、自分の想いを娘達に分かってもらおうと、説得しよ
うとしたのだろう。
娘達を捨てるのではないと、分かってもらおうとしたのだろう。
しかし娘達は、そんな妻を許さなかった。
家族のルール、親としてのルール、夫婦のルール、人間としてのルールを破った妻を
許さなかった。
私を想う娘達の気持ちは、涙が出るほど嬉しい。
しかしこれで妻の居場所は、この家には無くなってしまった。
こんな辛い時でも、仕事は待ってくれない。
妻の気持ちが戻って来たとしても、仕事が無ければ土台から崩れる。
早く仕事を切り上げて家に帰ると、嫌な予感は的中するもので、何処にも妻の姿は無
く、1枚の便箋だけが、寂しくテーブルの下に落ちていた。
『あなた、ごめんなさい。彼の所に行きます。勝手な私を許して下さい。こんな事は
今更関係ないと思われるでしょうが、きちんと離婚が成立するまでは、もう彼とは身
体の関係は持ちません』
最後の言葉は何だろう?
私に対する、最後の優しさのつもりか?
私に少しでも、誠意を見せているつもりか?
健康な男と女が1つ屋根の下に暮らして、そのような事が信用出来るはずがない。
それが本当なら、私と一生離婚出来なければ、一生関係をもたずに暮らすのか?
それなら、離婚なんてしてやるものか。
そう強がってみても本心は、この様な事をされても尚、離婚する決心がつかないだけ。
情けない
[3743] 情けない 11 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/10(Thu) 14:55

妻が出て行き、一晩中泣き続けたであろう娘達は、次の日からは2人で家事を分担し、
あんな母親など要らないと言わんばかりに頑張っていた。
我が娘ながらつくづく思う。
やはり男よりも女は強いと。
娘達も内心は無理をしているのだろうが、私だけが後ろを向いているように思えた。
そんな娘達を見ていて、私から妻を連れ戻しに行く事も出来ずに、私もあんな妻など
いなくても平気だという顔をしていた。
しかしそれは、娘達の前でだけ。
Wベッドに横になると、その広さが寂しくて仕方がない。
妻と奴が絡み合っている姿ばかりが浮かび、酒でも飲まなければ眠れない。
四六時中妻の事が気になっていても、私から連絡すれば私の負けのような気持ちにな
って、意地を張って電話出来ない。
妻も勝手に出て行った手前、私には何の連絡もして来ない。
流石に娘達の携帯には、絶えず掛けてきているようだが、娘達は2人で話し合って決
めたらしく、電話には出ずに、メールも読まずに削除していた。
せめて慰謝料だけでも取って、関係をきちんとしなければ駄目だと思いながらも、や
はり未練が断ち切れず、今ひとつ気持ちに踏ん切りを着けられないでいた。
今から2ヶ月半ほど前の、妻が出て行ってから1ヶ月近く経った夜、妻から初めて私
の携帯に電話が掛かった。
「10日前に、加奈ちゃんと美保ちゃんを、奥さんが連れて行ってしまったの。引き
止めたけれど、あの子達は、はっきりと母親を選んだ・・・・・・・・」
妻の言いたい事が分からない。
どうして今になって、その様な事を言ってきたのかも。
何が言いたいのか詳しく聞きたかったが、運悪く側には娘がいる。
「それがどうした!俺に何の関係が有る!」
娘達の手前、また強い父親を演じてしまい、一方的に携帯を切る。
その夜は、酒を飲んでも眠れない。
何故なら、2人だけで暮らしているのが分かったから。
子供達がいれば、多少の遠慮もあるだろうが、2人だけだと朝から晩まで裸のままで、
ずっとセックスをしている姿が浮かぶ。
新婚当時、休日は私達がそうしていた様に。
次の日、初めて私から電話を掛けた。
「昨日は何の話をしたかった?」
「いえ・・・・・何と言う事は・・・・・・・・」
妻の様子が変だと感じた。
長い付き合いの私には分かる。
自然と車は、奴の家に向かっていた。
出てきた妻は、私の顔を見るなり涙を流す。
自分の好きに行動してきた、妻の涙が分からない。
裸足のまま土間に下りて、抱きついてきた妻を抱き締めてやれない。
それどころか、妻の肩を掴んで引き離す。
その瞬間、玄関の外から声がした。
「そう言う事か。それで分かった。」
振り向くと、昼間からどこで飲んで来たのか、真っ赤な顔をした奴が立っていた。
「私の性欲を処理する事ぐらいしか、他に能が無いないくせに、どうしてオマンコに
入れさせないか、これでよく分かった。一度は抱かれて『もっと、もっと』と言って、
何度もせがんできた淫乱女が、何が『きちんと離婚するまでは許して』だ。やはり、
こういう事だったのか」
私はまた殴ってしまった。
しかし酔っているからか、前回のように脅える事もなく、倒れながらも妻を睨みつけ
ている。
「よくも今まで、口と手だけで誤魔化しやがったな。オチンチンを美味しそうに舐め
回しながら、自分も濡らしてしまっている淫乱な年増女が、おかしいと思ったら、や
はりそう言う事か」
奴の口が利けなくなるまで殴りたくて、飛び掛ろうとした。
しかしその時、向かいの奥さんが玄関から、こちらを見ているのが目に入る。
これ以上やれば、警察に通報される。
そう思った時、妻を助手席に押し込んで、車を走らせていた。
慌てて逃げる、犯人のように。
情けない。
[3747] 情けない 12 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/11(Fri) 16:14

娘達は妻に対して、出て行けとは言わない代わりに、話しかけても返事もしない。
妻の作った物は食べずに、無言で生ゴミのバケツへ。
まるで目の前に、母親などいないかのように、目を合わせる事も絶対にしない。
そう言う私も、何があったのか妻から話す気になるまでは、無視しようと決めていた。
帰ってきて3度目の夜、ようやく奴との生活を話し出したが、私は返事もせずに相槌
も打たず、ただ黙って聞いていた。
付き合っていたのと、一緒に暮らすのは大違いだった。
3日もすると奴は徐々に本性を現し、普段は優しくても、書く事に行き詰まる度に不
機嫌になる。
最初の内は物に当り散らす程度で、そんな自分に気付くと、すぐに謝っていたが、次
第に妻や子供達の見境無く、だれかれと無く当り散らすようになった。
妻は、そのような奴の顔を見るのは初めてだった。
毎日のように通っていても、そのような素振りさえ見た事が無かった。
妻が家を飛び出し、行き場を無くした事で安心感が生まれて、本当の自分の姿を見せ
出したのだろう。
暴力は振るわないまでも子供達は脅え、それで食事を忘れられても文句も言わずに、
妻が行くまでは自分達で作っていたのだ。
妻が子供達に聞くと、奴が時々そのような状態になるのは、1年前に母親が出て行っ
てしまってからの事で、以前私の家に来た時に行儀良くしていたのも、父親を恐れて
の事だった。
行き詰まって書けない時の、奴の言動は更に異常性を増し、子供達の前でも、平気で
セックスをさせない妻を詰るようになる。
時には子供達がいてもお構いなしに、妻に抱き付いてきて強要するので、その意味が
分かる上の娘は、その度に妹を他の部屋に連れ出す。
出さない内は落ち着いて書けないと言って、自分の要求が通るまで執拗に迫るので、
妻は仕方なく手や口で応じる。
しかし、出してもらって満足すると、急に元の優しい男に戻り、必要以上に謝り続けた。
最初は、行き詰まって苦しんでいるのだと同情したりもしたが、次第にその異常性に
恐怖するようになる。
一度は自分達を捨てた母親の所にでも、これでは逃げ出したくなって当然だ。
「それがどうした。俺には関係のない話ばかりだ。そんな奴が好きだったのだろ?俺
よりも、そんな男を選んだのは恵だ。見た通り、この家には恵の居場所はもうない。
奴の所にいつ帰る?いつでも送って行ってやるぞ」
妻は激しく首を横に振り、縋る目で私を見ていた。
しかし、行き場を失くした妻に対して、立場の逆転した私は強い。
まるで、奴と同じだ。
奴の所に帰れと、更に虐める。
すると妻は、また戻りたくない訳を話し出したが、それは耳を疑う様な内容だった。
そんな奴でも子供は好きなのか、出て行った子供達の代わりを産めと、妻に執拗に迫
りだす。
それも、子供達が出て行ったのは、妻の責任だと言いながら。
奴の言動が心配になった妻は、入る事を禁じられていた書斎に入り、奴の書いていた
小説を盗み見て、更に恐怖する。
奴は妻に推理小説を書いていると言っていたらしいが、そこで妻が見た物は、自分を
主人公とした卑猥な小説だったのだ。
それも、主人公の相手として登場している2人の女は、別れた奥さんと妻だった。
妻はショックでその場から動けなくなり、帰って来た奴に見つかってしまう。
奴は開き直り、小説のイメージ作りに協力しろと言って、妻に短いスカートを穿かせ
て、近所のスーパーへ買物に行かせた。
しかも、その下には下着を着ける事を許さず、奴は少し離れた所から、妻の羞恥に染
まる様子を見ていたようだ。
またある時は、卑猥な下着を買って来て、これも小説のイメージ作りだと言って妻に
着せ、それを眺めながら、自分で処理をしていた。
その他にも、自分の書いた卑猥な小説を大きな声で読ませ、喘ぎ声の箇所などは、も
っと感情を込めろと怒り、何度も繰り返し言わせた。
妻に絶えずセックスを迫り、妻は何とか口や手で処理していたが、多い日には一日に
5回もさせられた事があるそうだ。
正常な時は、セックスが出来ない理由を理解してくれていて優しいが、いつ変貌する
か心配で、必ず奴が眠ってからでないと眠る事も出来ず、眠ってからも不安から熟睡
は出来ずに、何度も目が覚めた。
私に電話してきた日は、あと3日で離婚しなければ、小説に出てくる妻のように、身
動きがとれないように縛って、妊娠するまで毎日、中に出し続けてやると脅されたのだ。
話しながら、妻は泣いていた。
妻は性的な事で、こんな露骨な表現の話を出来る女ではなかった。
それだけ戻るのが嫌で、必死だったのかも知れないが、妻の口からこの様な生々しい
話は聞きたくなかった。
泣きたいのは私だ。
情けない。
[3751] 情けない 13 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/12(Sat) 18:09

私は大事に育てた花を、一瞬で踏み躙られた気分だったが、この様な事を要求されて、
逃げずに従った妻も理解出来なかった。
私の知っている妻は、死んでもこの様な恥ずかしい行為の出来る女ではない。
妻の口から、セックスという言葉が出ることすら、以前では考えられない事だ。
「おかしいと思った時に、どうして逃げ出さなかった?」
妻は何をされようとも、逃げ出す事は出来なかったと言う。
それは、私や娘達を傷付けてまで、そんな男を選んでしまった罰だと思って。
償う事の出来ない罪を犯してしまった、自分への罰を受けるつもりだったと言う。
しかし私に、電話を掛けてしまった。
私の顔を見た瞬間、緊張の糸は一気に切れた。
これで助かったと思ったそうだ。
不思議なもので、妻が遠ざかって行くと思った時は、全てを許し、あんなに妻を引き
戻したかった私が、もう妻には私の所以外に行き場が無いと知ると、許せなくなって
いる。
奴のオチンチンを身体に受け入れ、その後も性欲処理の道具にされて、そんな痴態を
晒し続けていた妻を、許す事など出来なくなっている。
本当に情けない男だと、自分でも嫌になる。
「この一ケ月。俺は恵を忘れようと、必死に耐えてきた。子供達も同じだ。それが今
になって戻ってきても、それは都合が良過ぎないか?あの時は取り乱してしまって連
れ帰ったが、やはり俺にはもう無理だ。悪いが2、3日中に出て行ってくれ」
泣き崩れる妻を見ながら思う。
妻は一時の、熱病に罹っていたのかも知れない。
このような過ちを、私は絶対に起こさないとは言い切れない。
しかし妻を許せない。
私を裏切り、捨てて出て行った妻を許せない。
奴があのまま、大人しく優しい男だったなら、果たして私の元に帰って来ていただろ
うか?
私を選んだのではなくて、その時々の都合で、楽な方へ流されただけでは無いのか?
これは正に消去法で、奴が駄目だったから残ったのは私。
完璧な人間などいない。
都合の良い方へ流されても、本来責められないのかも知れない。
私を含め、ほとんどの人間は、楽で都合の良い方へ流される。
妻も、弱い普通の人間なのだろう。
しかし妻は、私にとって女神だった。
女神は、そのような普通の人間であってはならない。
女神が過ちを起こし、汚れる事は許されないのだ。
汚れた女神は、もはや女神などではない。
そう思うと、妻は汚れた、ただの汚い牝に見えてくる。
この心境の変化は何だろう?
やはり自分が優位な立場になった事で、そう思えてしまうのか。
情けない
[3755] 情けない 14 投稿者:飯田 投稿日:2005/11/14(Mon) 07:23

2つの事を同時に片付けられるほど、私は器用ではなかった。
放っておいても、この家で辛い立場にいる妻の事は一時横に置き、妻にこんな事をさ
せていた奴を、叩き潰す事を考える。
しかし、犯罪になること以外、私に何が出切るのか。
家族も無く、仕事も無い男に、慰謝料以外の制裁は何も無い。
慰謝料にしても、私達が離婚でもしない限り高が知れている。
離婚したとしても、裁判になれば奴から取れるのは、精々300万が良いところ。
そのぐらいは、奴がもらった慰謝料で払われて終わりだ。
事を大きくして世間に知られると、奴は人妻を落とした男で、私は妻を寝取られた、
情け無い男と言う烙印を押される。
この立場の違いは、いったい何だ?
他人の家庭を壊した男よりも、壊された男の方が、男としての世間の評価は明らかに
低い。
本人の前では、相手を悪く言って同情してくれるが、陰では馬鹿にされるのだ。
そんな男を何人も見てきた。
復讐したいが、事件にでもなってしまって世間に知られるのが怖い。
結局、慰謝料しかないのかと思っても、慰謝料をもらってしまうと奴に対してこの事
は、済んでしまった過去の事になる。
その後奴は気楽に生き、私達家族は一生苦しむ。
そんな思いから奴には何もせずに、妻に嫌味を言うのが精一杯で、3週間が過ぎてし
まった。
相手が誰であろうと、私を裏切ったのは妻だ。
せめて奴から慰謝料だけでも取って、妻との今後をどのようにするか考えようと、考
えを変えて、奴の家に電話した。
「はい、加藤でございます」
出たのは女性で、後ろからは子供の声が聞こえた。
「飯田です」
「今、主人は不在ですので・・・・・」
私の名前を聞いた時の慌てた様子で、別れた奥さんだと思ったが、確かに主人と呼んだ。
「今から、お伺いします」
彼女は何か言っていたが、無視して奴の家に向かった。
応対に出たのは、やはり別れた奥さんで、1週間前に復縁したと言う。
妻のように、こんな男とは知らずに飛び込み、真の姿を知って逃げた女もいれば、こ
んな男から折角逃げられたものを、また飛び込む女もいる。
逆恨みかも知れないが、元はと言えば、この女が不倫した事から始まった事ではない
のか?
復縁して幸せに暮らしているかと思うと、彼女に嫌味を言いたくなった。
その時、下の娘が出てきて、私に可愛く愛想笑いをする。
それを見た私は何も言えない。
情け無い。

 | ホーム | 


  1. 無料アクセス解析