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北原夏美 四十路 初裏無修正

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[3443] インプリンティング 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/09(Tue) 22:33

信頼していた妻に裏切られた時、多くの夫は怒り、絶望し、相手を殺したいほど怨むと思います。
しかし中には、その事に興奮し、性的な喜びに変えられる人もいます。
それどころか、そうなる事を望む性癖の人まで存在する事をここ(妻物語)で知りました。
私は前者で、妻が他の男に抱かれている姿を想像するだけでも、怒りと絶望感に襲われます。
では、何故ここ(妻物語)に居るのか。
妻に裏切られた時、目的は全く違っても、妻が男に抱かれている姿に興奮する人達と同じ様に、
妻と男の行為を知りたくなりました。
知れば知るほど、自分を苦しめると分かっていても、妻の指の動き一つ、息遣い一つまでも知ら
ずにはいられない。
妻に対して怒りが増すだけなのに、私の知らない妻の姿が存在する事を許せない。
離婚する、離婚しないは別にして、そんな妻の姿は自分の中から、早く切り離してしまえば楽に
成れる事が分かっているのに、まだ本当に愛しているのか長年の情なのかも分からずに、関わり
を持ち続け、妻に怒りをぶつけて、責めていなければ気が収まらない。
以前MMさんも触れておられましたが、妻や相手の男に怒りをぶつけ、責めて喜ぶSなのか、妻
を責め、真実を知る事自分をより苦しめて喜ぶMなのか?
しかし、勃起を伴う性的興奮を得られない以上、それとはまた違った物だと思います。
もしかすると、寝取られ願望の人達より屈折した性癖なのかも知れません。
最近ではバーバラさんの話や、美鈴さんに捧げるさんの話しを読み漁る。
読めば自分の事を思い出して、より辛くなってしまうのが分かっていながらここ(妻物語)から
離れる事が出来ない。
気持ちを上手く説明出来ないのですが、そんな私の過去に起こった話を聞いて下さい。
[3444] インプリンティング 1 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/09(Tue) 22:34

親子3人幸せに暮らしていた私に、突然の海外赴任の話が持ち上がったのは今から4年ほど前で
した。
妻と何日も話し合いましたが、赴任先が地球の裏側と遠い事や期間が1年と短い事、娘の学校の
事や、娘が幼稚園に行き出してから、妻が以前勤めていた同じ銀行の比較的近い所に有る支店に
パートとして雇ってもらえた事などを考えて、ついて行きたいと言って譲らない妻を説得して、
単身で赴任するという私の意見を押し通しました。
最初、1年ぐらい頼むと言われていた赴任でしたが結局半年延び、ようやく帰国出来たのは、私
が43歳、妻智子38歳、結婚5年目にやっと授かった娘、理香が8歳になった初夏でした。
空港に着いて、当座必要な身の回りの物を詰め込んだスーツケースを受け取って出ると、そこに
は家族や知り合いの人を迎に来た、大勢の人達でごった返していましたが、私を迎に来た者は誰
もいません。
それもその筈、海外赴任が終った事や、私が今日帰国する事を、妻や身内には誰にも知らせてい
ないのです。
それは私が赴任して7ヶ月ほど経った頃にかかってきた、私の母からの一本の電話から始まりま
した。
「おまえ、一度帰ってこられないのか?休暇ぐらいは有るのだろ?」
「それは無理だ。ここは地球の裏側だぞ。日本までどれだけかかると思っているんだ?お金だっ
てかかる。」
「旅費なら私が出すから。」
「お袋、だうした?何か有ったのか?」
母の話によると、1ヶ月ほど前から妻の行動が変わったと言うのです。
残業だと言っては帰りの遅い日が何日も有り、先週の土曜日は休日出勤になったと言って娘を預
け、その後友達の相談に乗っていて遅くなったから泊めてもらうと電話が有り、娘を迎に来たの
は日曜の昼近くだったそうです。
「智子と喧嘩でもしたのか?それとも理香を預かるのが疲れるのか?」
「いや、智子さんは良くしてくれるし、理香ちゃんを預かれる事は嬉しいよ。」
「もうやめておけ。お前の思い過ごしだ。」
その時後ろから父の声が聞こえ、電話は切られてしまいました。
母が何を言いたかったのかは想像がつきましたが、その様な事は私にはとても信じられる事では
有りませんでした。
妻の両親は妻が小学生の時に離婚し、それも父親の暴力が原因だったので怖い思いをした記憶が
残り、母親と姉の女だけの家庭で育ち、女子高、女子短大と進んだ妻は、男性恐怖症とまでは行
きませんが、男性には人一倍慎重でした。
会社の隣に有った銀行の窓口に座っていた妻の、制服を着ていなければ高校生でも通りそうな、
童顔で可愛い顔と、それとは反比例するかのように制服を持ち上げている胸のギャップに惹かれ
て交際を申し込んだのですが、なかなかデートに応じてもらえず、今のように携帯も無かったの
で、半年以上手紙の交換が続きました。
手紙の内容では私に好意を持ってくれているようだったのですが、初めてデートを承諾してくれ
たのは半年以上経ってからで、その時も私の横ではなくて、少し後ろを歩いていたのを思い出し
ます。
2人で逢う様になってからは見掛けだけではなくて、妻の真面目で可愛い性格に惚れ、結婚後も
妻の真面目で誠実な面は変わる事が有りませんでした。
その妻が浮気をする事など想像も出来ません。
何より、妻が私を愛してくれているという自負が有りました。
赴任する前日の夜に妻を抱いた後。
「絶対に浮気はしないでね。もしも浮気したら離婚します。いいえ、あなたと相手を殺しに行き
ます。私は何があってもあなたを裏切る事は無いから。あなたも我慢してね。」
そう言っていたのは妻でした。
その様な訳で、その時は母の話しを一笑に伏し、あまり気にもしませんでした。
[3449] インプリンティング 2 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/10(Wed) 01:41

私達夫婦には、家のローンを1年でも早く返し終わろうという目標がありました。
土地は親から貰ったので、私の退職金まで充てにしなくても良いと思っていましたが、結局凝っ
た作りにしてしまった為に予定以上にお金がかかり、退職金の一部も充てにしなければならなく
なってしまいました。
しかし、娘に老後を見てもらう事は考えず、退職金は全て残そうという事になり、妻も勤めに出
たのです。
その様な訳で海外赴任に伴う色々な手当ても使わずに、出来る限り節約に心掛けていたので日本
に帰る事もしないで、電話も極力控えてEメールで我慢していました。
母からの電話から数週間経った頃、私の様に単身赴任して来ている関連会社の仲間達から、女を
買いに行こうと誘われましたが断りました。
決して日本人の海外買春問題を考えるような大それた理由ではなくて、妻を裏切る事が嫌だった
のです。
しかし、その様な理由で断るのは、男として情け無い様な風潮が有ったので、家のローンを理由
にしたのですが、日本とは違って5千円も有れば充分楽しめると強く誘われて、その様な事から
遠ざかっていた私は少し迷いながらも、結局断ったのでした。
1人で宿舎に戻って妻の事を考えていた時、忘れかかっていた母の電話を思い出しました。
結婚して何年かは妻から求める事など有りませんでしたが、娘が生まれてからは徐々に積極的に
成り出し、妻から求めて来る事も珍しくなくなり、海外赴任が決まった頃には、普段の大人しい
感じの妻からは、誰も想像も出来ないほどセックスを楽しむ様になっていました。
以前使おうとした時には嫌がって、そんな物を使ったら離婚するとまで言われ、決して使わせて
もらえなかった玩具なども、その頃には、一応最初は嫌がる素振りを見せるものの口だけで、い
ざ使い出せば、それだけで何度も気を遣るほど感じていました。
そんな妻を思い出していると、私が我慢している様に、妻も我慢しているはずだと思いながらも、
少し不安になり出し、妻に限って浮気など無いと自分に言い聞かせながらも、海外に電話などし
た事の無かった母が、苦労して電話をかけてきた事が気になりました。
それでも赴任から1年が過ぎた頃には、考えたところでこれだけ離れていてはどうにも成らない
ので、妻を信じる事にしようと思ったのですが、そんな時に母からまた電話がかかり。
「まだ帰して貰えそうもないのか?社長に頼んで1日でも早く帰らせてもらってくれよ。」
「どうした?また智子の様子が可笑しいとでも言いたいのか?」
母の話では、あれから妻の服装が徐々に派手になり始め、次第に化粧も濃くなり、髪も明るい栗
色にして、見た目5歳は若くなったと言うのです。
その上、残業だと言って帰りが遅い日も増え、土日も休日出勤だとか、娘の役員会だとか言って、
子供を預けて外出する事が増え出し、最近では泊まりの慰安旅行が有ったり、友達の相談に乗っ
ていて帰れないから子供を頼むと電話して来て、朝帰りした事も何度か有るそうです。
それからの私は流石に妻の浮気を疑い、会えないだけに身を切られる様な思いをしていました。
電話で問いただしたい気持ちも有りましたが、浮気ではなかった時の妻の気持ちや、母が告げ口
をしたと知った時の、妻と母との関係を考えると出来ません。
間違いだった時は、妻の気持ちを逆に裏切った形になってしまいます。
そうかと言って、このままの気持ちでは笑って妻に逢えないと思い、この様な帰国になってしま
ったのです。
乗り継ぎの時以外はほとんど眠っていて、日本に着いたのは朝だったので大した時差ぼけも無く、
空港を出るとレンタカーを借り、赴任する時に携帯を解約していたので新しい携帯を買いました。
会社の方は今日を入れて四日間、来週の月曜までは出社しなくても良かったのですが、万が一自
宅に電話でもされて帰国した事が妻にばれない様に、会社に帰国の挨拶に行って、連絡は全て携
帯にしてもらうように頼んで来ました。
[3452] インプリンティング 3 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/10(Wed) 19:05

その日の4時前には、妻の勤めている銀行の近くに行き、車を止めて見張っていると、5時を少
し過ぎた頃に銀行から出てきた妻は、すぐ近くのバス停で立っています。
確かに一瞬、妻に似ているが妻だろうかと戸惑ったほど、若い時からずっと肩位までだった髪を
肩甲骨よりも長く伸ばし、色も栗色に染め、眉も細くし、アイシャドーも濃く、唇には濡れたよ
うなピンクのリップを塗っていて、1年半前よりも逆に可也若返った様に見えますが、ただ服装
は決して派手な事は無く、バスを待っている様子もおかしな素振りは有りません。
妻の心が離れてしまったかも知れないと少し疑っていた私は、今すぐ妻の前に飛び出して行き、
今夜にでも妻の愛を確かめたくなってしまいましたが、そんな気持ちをぐっと我慢して、私の実
家に先回りしました。
私の実家は我が家から200メートル程しか離れていません。
実家は兄夫婦が跡を継ぐ予定だったのですが、兄が遠くに転勤になってしまった為に、今は両親
が二人だけで暮らしていて、近くにあった土地を貰って家を建てた私達が、面倒を看ています。
面倒を看ていると言っても妻が勤めに出だしてからは、娘の幼稚園バスまでの送り迎えや、学校
に上がってからは学校が終ると、娘は実家に帰るという生活だったので、昼間の娘の世話はほと
んど母や父がしてくれていて、こちらが面倒を見てもらっている状態でした。
娘もその様な生活に慣れてしまい、最近では1人で実家に泊まる事も珍しい事では無いそうです。
実家の見える所に車を止めていると暫らくして妻が入って行き、すぐに娘の手を引いて出て来ま
した。
「理香。」
思わず娘の名前を呼んでしまいましたが、離れていて2人には聞こえるはずは有りません。
今出て行けば娘を抱き締める事も出来るし、今夜は親子3人で楽しくすごせると思いましたが、
今やめてしまっては、一生心の中で妻を疑って暮らさなければ成りません。
私の気が済むまで調べて、何も無ければその方が良いのです。
妻の浮気を確かめたいのでは無くて、本当は妻の潔白を証明したいのだと自分に言い聞かせ、心
を鬼にして我慢しました。
次の日も妻に疑わしい行動は無く、その夜ホテルに帰ると。
〔休みは後2日。時差ぼけはほとんど無いと言っても、疲れは有るのに明日も明後日も、俺はこ
んな事をするのか?妻が2日間の内に何か行動を起こすという保証も無いし、仮に不可解な行動
をとったとしても、素人の俺に上手く調べる事が出切るのだろうか?何より、お袋とそれを聞い
た俺の誤解かも知れない。〕
そう考えていると急に馬鹿馬鹿しくなってしまい、明日の朝は家に帰り、残り2日間ゆっくり過
ごしてから、この事は追々問いただそうと決めて眠りにつきました。
朝になって我が家から近い駅に有るレンタカー屋に車を返し、2日も前に帰っていながら連絡も
しないでこの様な事をしていた後ろめたさから、電話をして迎えを頼む事もせずに、後で車で取
りに来ようと駅のロッカーにスーツケースを預けると、この事がばれた時の言い訳を考えながら、
我が家に向かって歩いていました。
するとその途中、向こうから妻が歩いて来るでは有りませんか。
妻は赤いシャツに白のミニスカートという、今まで見た事も無い様な格好だったので気付くのが
遅れ、危うくニアミスになりそうだったのですが、慌てて私がコンビニに飛び込んだ事など、私
が日本にいるとは夢にも思っていない妻は全く気付きませんでした。
私には、今にもパンティーが見えそうなぐらい短いスカートが気になって仕方が有りません。
何故なら、妻は若い頃から普通のミニスカートでさえ、穿いていた事が一度も無かったからです。
私は雑誌で顔を隠しながら、妻が通り過ぎるのを待って後をつけると、妻は駅に行き、切符を買
って改札を通って行きます。
ホームに通じる階段を上って行く時には、前を歩く男達の視線は全員、妻のお尻に向けられてい
ました。
妻はバッグを後ろ手に持って隠しているつもりでしょうが、歩く度にバッグが左右に揺れるので、
私よりも近くを歩いている男達にはパンティーが時々見えているのかも知れません。
おまけに、そのミニスカートはタイト気味な為に、お尻の形や恐らく白で有ろうパンティーの形
まで、はっきりと分かってしまうのです。
こんな気持ちで尾行している私でさえ、相手が妻にも関わらず男のスケベ心が出てしまい、視線
はお尻や白くムッチリとした太腿に行ってしまいます。
私が乗った時はドアが閉まる直前だったので妻と同じ車両になってしまい、少し離れているとは
言っても平日とは違い、比較的空いていたので見つからないか心配しましたが、妻は私に気付く
どころか車両の隅の方に行って、ずっと顔を隠す様に俯いていました。
[3458] インプリンティング 4 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/11(Thu) 21:10

妻が降りたのは銀行に一番近い駅だったので、やはり休日出勤かとも思いましたが、私の家から
ではバスの方が遥かに便利が良く、バスなら定期券も持っている筈で、わざわざお金を払って電
車に乗る事は考えられませんでした。
妻が駅のトイレに入って行ったので、私は少し離れた柱の陰で待ったのですが、今まで、妻を見
失わない様に、妻に見つからない様に必死だった私の気持ちに余裕が生まれると、この1年半の
間に妻に何が起こったのか、どの様な心境の変化でこの様な姿で人前に出られる様になったのか、
不安で押し潰されそうです。
妻は人一倍他人の目を気にする方で、私は色気も有って丁度良い太さだと思っているムッチリと
した太腿や、私が自慢の豊満な胸でさえも、妻にしてみればコンプレックスのほか何者でも無く、
出来る限りその事を気付かれない様な服を選んで着ていました。
娘を連れて海水浴に行った時も水着になる事を嫌がり、1人日傘を差して浜辺に座って見ていま
した。
その妻が、ワンサイズ小さいのを買ってしまったのかと思える様な、今にも胸のボタンが弾け飛
びそうなシャツを着ていて、しかもそのシャツは人目を引く赤なのです。
若い人達でも余り穿いていないような、今にもパンティーが見えそうなほど短いスカートを、子
供のいる38歳の妻が穿き、コンプレックスだった太腿を人目にさらしているのです。
当然この様な姿を近所の人達にも見られているのでしょうが、以前の妻なら、死ぬほど恥ずかし
い事だったに違い有りません。
暫らくして、トイレから出て来た妻はサングラスをしていました。
妻が私の方に向かって歩いてきたので、私は柱に隠れてやり過ごしたのですが、歩く度に片方ず
つお尻がスカートに張り付いた様な状態に成り、穿いているパンティーが、男子の水泳選手が穿
く水着の様な、超ビキニの物だと分かりました。
妻がトイレで穿き替えて来たのかとも思いましたが、階段を上がって行く時に、はっきりと下着
の形が分かったと言うのは私の思い違いで、私の距離からでは下のラインしか分からず、私が知
る限りではこの様な下着は持っていなかった為に、勝手に上のラインを想像して、頭の中で作っ
てしまったのかも知れません。
どちらにしても、これでは前の黒い翳りは隠し切れずに、パンティーから、はみ出てしまってい
る事でしょう。
この様なパンティーを穿いている事からも、妻に何か有ると確信した私は絶望感を覚えましたが、
何とか尾行を続行すると、やはり妻は銀行には向かわずに、駅を挟んで銀行とは逆方向に歩き出
し、私は隠れながら後をつけたのですが、他人から見れば、ストーカーと間違えられないか心配
でした。
暫らく後を付けて行くと、妻は4階建ての部屋数が16ほどの小さなアパートに入って行ったの
で、私も入って行こうとしたのですが、入り口がオートロックになっていて入る事が出来ません。
ここまで不審な行動が重なると、否が応でも事実を受け止めなければならなくなった私は、貧血
をおこしそうになり、その場に座り込んでしまいました。
すると、サングラスをかけてヘッドフォンをした坊主頭の若者が、頭でリズムをとりながら出て
来て。
「おっさん、大丈夫か?救急車いるか?」
言葉使いは無茶苦茶ですが、それでもしゃがんで私と同じ目線で話してくれ、親切な若者だと感
じたので。
「ありがとう。それよりも今入って行った女の事を知らないか?今日初めて会ったとか、よく見
掛けるとか、どこの部屋に行ったとか。」
「おっさんは刑事か?そんな訳ないよな。張り込みで蒼い顔をして座り込んでしまう刑事なんて
聞いた事がない。それとも探偵?その顔だとそれも無いな。どっちにしても俺は他人のごたごた
に巻き込まれるのは嫌だから。じゃあな。」
私に背を向けて、手を何度か振って去って行こうとする若者に、1万円札を出して。
「これで何とか頼む。」
振り向いた若者は。
「ウワー。そんな必殺技を出されたら断れないな。ここでは話し辛いから向かいの喫茶店にでも
行くか?」
喫茶店に入って話を聞くと、妻とは以前からよく階段ですれ違うと教えてくれました。
「どこの部屋に入って行くか分からないか?」
「俺の丁度真下に住んでいる、1人暮らしの親父の所さ。ここから見えるだろ?2階の一番右端
の部屋さ。俺が301だから201。」
「いくつ位の男だ?」
「親父の歳は分かり難いからな。おっさんの少し上ぐらいじゃ無いのか?普段やあの女が来る時
は、きちんと7、3分けにしているが、あの女が来ない休みの時は髪もぼさぼさで、昼間でもパ
ジャマのまま新聞を取りに来る、冴えない親父さ。」
若者が指差した郵便受けをみると、201号室の所に稲垣と貼って有りました。
建物から見ても、おそらく独身の1人暮らしか単身赴任者が借りるアパートの様で、部屋番号の
所に名前が貼ってあるのは稲垣だけです。
「あの親父は見栄っ張りなのか、高い車に乗ってやがる。俺ならそんな金が有ったら、もっと広
いアパートに引っ越すよ。どちらにしてもあの女と親父は普通の関係では無いな。女はいつもサ
ングラスをしていて、俺とすれ違う時は必ず俯いているし、2人で出掛ける時は決まって親父が
先に出て、あたりをキョロキョロ見渡してから女が出てくる。女もそうだが、あの親父も女と一
緒の時は夜でも必ずサングラスをしていて、車に乗り込むまでは外さない。まあ、よく有る不倫
の関係というやつかな。」
私の顔が見る見る蒼ざめて行くのが自分でも分かりました。
[3464] インプリンティング 5 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/12(Fri) 19:13

私の動揺を察した若者は1万円札をテーブルに置くと。
「本当は、おっさんがあの女の旦那だろ?そんな血の気の引いた顔をされたら、可哀想でこれは
貰えない。」
「ありがとう。でもこれは取っておいてくれ。また何か聞きに来るかも知れないから、その時は
頼む。本当にありがとう。」
まだ若者と話していた時はよかったのですが、彼が出て行った後1人になると足が震え出し、意
識すればするほど、震えは大きくなってしまい止まりません。
怒り、悔しさ、絶望感。
水を飲んで落ち着こうと思うのですが、グラスを持つ手までが震えて水を溢しそうです。
私は2階のあの部屋をずっと見詰めていましたが、中で行われている事を想像すると重機を借り
てきてでも、今すぐこのアパート自体を壊して無くしてしまいたい衝動に駆られます。
頭の中では、透けた小さなパンティーだけを身に着けた妻が、男の物を美味しそうに嘗め回して
から口に含んで、頭を前後に動かしている姿が浮かびます。
男が我慢出来なくなり、妻を押し倒して豊満な乳房にむしゃぶり付いている姿が浮かびます
若者に頼んで、ドアの中に入れてもらえばよかったと悔やんでも、もうどこに行ったのか分かり
ません。
私は悔しさで、妻がいる部屋をずっと睨んでいましたが、前の道を携帯電話で話しながら歩いて
いる人を見た時、妻の携帯に電話すれば良いのだと気付き、慌てて携帯を出しました。
しかしそこには何も登録されておらず、スーツケースに手帳を入れてきてしまい、携帯番号が分
かりません。
日本に着いてから暇な時間は沢山有ったので、妻の携帯番号ぐらいは入れておくべきでした。
今にして思えば、実家の電話番号は覚えているので、妻の携帯番号を聞くという手段も有りまし
たし、部屋番号は分かっていたので、オートロックのドアの横に付いているインターフォンで呼
び出すという手段も有ったのですが、そんな事すら気付かないほど気が動転していたのです。
若者が出て行ってから1時間もすると我慢の限界が来て、2人のいる部屋をじっと見ているだけ
の自分が惨めに思え、家に帰って妻が帰ってきてから殴ってでも説明させようと思ったのですが、
ここから離れる勇気が有りません。
スーツケースを預けたロッカーの有る駅まで戻り、妻に電話をしようと思っても、妻が男と愛を
確かめ合っているので有ろう部屋が見える、この場所から離れる勇気が有りません。
その時、見詰めていた部屋からサングラスをかけた妻が出てきて、それに続いて出てきた男はド
アに鍵を掛けています。
私は慌てて喫茶店を出ようとしましたが、こんな時に限って前のおばさんが財布の中の小銭を探
していて、レジを済ませる事が出来ません。
「釣りはいらない。」
おばさんを押し退けるように喫茶店を出ると、2人は車に乗り込むところです。
エンジンが掛かったばかりの車の前に立ちはだかると、じっと助手席の妻を睨みました。
妻は最初、状況が飲み込めずにキョトンとしていましたが、私だと分かった瞬間、驚きで顔が引
き攣り、声も出せずに私を見ています。
私は怒りから両手を思い切りボンネットに打ち据えると、ボンネットは少しへこみましたが、興
奮からか手に痛みは感じません。
状況の分からない男はサングラスを外し、怒った顔で左の運転席から降りて来て。
「何をする。警察を呼ぶぞ。」
私は何も言わずに思い切り男を殴ると、男はよろけてボンネットに手を付き、私を精神異常者と
でも思ったのか、殴られた左頬を手で押えたまま、脅えた目をして固まってしまっています。
妻への怒りが大き過ぎて自分の中で処理し切れずに、妻を引き摺り出して殴りたい気持ちを通り
越し、逆に冷静になっていく自分が不思議でした。
今私が何か言ったり行動を起こしたりするより、この後どう出るか任せた方が返って2人は困
るのではないかと思い、その場を黙って立ち去ると大通りに出て、タクシーを捕まえて乗り込み
ました。
いつもの習慣で私のキーホルダーに付けたまま、赴任先まで持って行ってしまった家のスペアキ
ーが、駅のロッカーに預けたスーツケースに入っているのを思い出し、途中駅に寄ってもらって
から我が家に帰り、私が最初にした事は妻の服や下着を調べる事でした。
[3465] インプリンティング 6 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/12(Fri) 19:18

私がすぐには帰って来られない様な遠い所にいて、他にここを開ける者がいないので安心し切っ
ていたのか、クローゼットの中には私が見た事も無い、これをあの妻が着るのかと唖然とする様
な、豹柄などの派手な服が普通に掛けて有り、ミニスカートも数着有りました。
それらは色や柄が派手な物だけではなく、身体の線がはっきり出てしまう様なニットで出来たミ
ニのワンピースなど、色は地味でもデザインが派手な物も有ります。
次に下着を探すと、普通の下着が入っているすぐ下の引き出しに、私がいた時には持っていなか
った、色取り取りなセクシーで高価そうな下着が有りました。
しかし、もう1段下の引き出しの中を見た時、私は絶句しました。
そこには普通の下着売り場には絶対に売っていない様な、セクシーと言うよりは卑猥な下着ばか
りが入っていたのです。
いいえ、それらは下着としての機能を果たさない、下着とは呼べない様な物がほとんどなのです。
これをあの妻が身に着け、あの男に見せていたのかと思うと悔しくて涙が出そうです。
私はそれらの下着を手に取り、ぼんやりと見詰めながら落ち込んでいましたが、今は弱気に成っ
ている場合では有りません。
下着を元に戻してから2個のバケツにお風呂で水を汲み、それを玄関の上がり口に置いて居間で
待っていると、それから3、40分経った頃に家の前で車が止まりました。
気付かれない様に半身になって窓から見ていると、運転席からあの男が降りて来たのですが、妻
は降りて来ようとはしません。
すると男が助手席のドアを開けて妻に何か話し、ようやく降りてきた妻はハンカチで涙を拭いな
がら、近所の人に見られるのが嫌なのか、小走りで玄関に向かいました。
帰って来るのに時間が掛かったのは、きっと口裏合わせでもしていたのでしょう。
私は玄関に先回りをして、水の入ったバケツを構えているとチャイムが鳴りましたが、返事もせ
ずに無視しました。
すると次の瞬間ドアが開いて妻が入って来たので、持っていたバケツの水を頭から勢いよくかけ
て次のバケツを持ち、続いて入って来た男には、頭を狙ってバケツごと投げ付けましたが、男は
咄嗟に手で防いだのでバケツは当たりませんでした。
それでも頭から水を被ったので2人共びしょ濡れです。
「智子だったのか。まさかおまえが、この家に帰って来られるとは思わなかったので、泥棒でも
来たのかと思ったよ。いくら嘘つきで人を裏切る事が平気な女でも、2度とこの家には帰って来
られないと思っていたが、夫や娘、世話になった親を平然と裏切る事の出来る女は、流石に図々
しさが違うな。身の回りの物でも取りに来たのか?」
「あなた、ごめんなさい。違うのです。誤解なのです。」
妻が水浸しの土間に泣き崩れると、男も慌ててその場に土下座して。
「ご主人には要らぬ誤解を招く行動をとってしまい、本当に悪かったと反省しています。今日は
休日出勤だったのですが、私が昨夜から熱っぽかったので起きられずに、携帯が鳴っているのに
も気付かずに寝ていたので、部下が心配して出勤前の奥様に、様子を見て来て欲しいと電話をし
たらしいのです。昨夜から食欲が無くて何も食べていなかったので、ファミレスに付き合っても
らってから出勤しようと車に乗った所にご主人が・・・・・・・・。」
この男はべらべらと言い訳を並べていましたが、妻は泣きじゃくっていて、何も話す事が出来ず
にただ土下座していました。
私はその場に胡坐を掻き、返事もしないでただ煙草を吸っていましたが、この男のいい訳に腹が
立ち、私がいない間、何度も妻が行っていた事を知っていると言おうかとも思いましたが、相手
に嘘を言わせておいた方が、その嘘を指摘する事で他の事も聞き出し易くなると考えて、あえて
何も言わずに黙ってキッチンに行くと包丁を持って来ました。
「申し遅れましたが、私は支店長の稲垣と申します。奥様には大変お世話に・・・・・。」
その時少し顔を上げた稲垣は、私が包丁を持っている事に気が付き。
「ご主人、本当です。誤解を招いた事は謝ります。これは誤解なんです。本当です。そんな物は
置いて下さい。」
その言葉で顔を上げた妻も包丁に気付き。
「やめて~。許して~。ごめんなさい。ごめんなさい。」
私の足に縋ろうとした妻を思い切り蹴飛ばしたのを見て、支店長は謝りながら飛び出して行きま
した。
支店長の言い訳に腹がたち、少し黙らせる為の脅しに持って来た包丁ですが、逃げなければ刺し
ていたかも知れません。
[3470] インプリンティング 7 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/14(Sun) 07:57

どうしてあんなに誠実だった妻が、この様な事に成ってしまったのか皆目見当も付きません。
単身赴任の間に妻が不倫。
世間ではよく有る話かも知れませんが、私の妻に限って、その様な事が有る筈は無いと思ってい
ました。
遊び好きな妻ならまだしも、あの真面目な妻に限って、その様な事とは無縁の筈でした。
しかしこれは、浮気された夫は皆思う事なのか?
そうだとすれば妻の不倫も、世間でよく有る普通の不倫で特別なものでは無い。
私は未だに信じられずに、どこかで、何かの間違いだという微かな期待も持ってしまいますが、
不倫が事実だとしても、世間でよく聞く不倫では無くて、妻には何かもっと重大な訳が有ったに
違いないと思ってしまいます。
何か特別な理由が有る筈だと思いたくて、全て知らなければ今後の事を決められません。
これも皆思う事で、私の妻だけに特別な理由は無いのかもしれませんが。
泣きじゃくる妻を残して実家に行くと、母は驚き、嬉しそうな顔をしましたが、娘を暫らく預か
って欲しいと頼むと、只ならぬ私の態度に妻の事だと察した母は、目に涙を溜めて頷きました。
1人で海外にいて愛に飢えているのに、妻を抱き締められなくなった私は、せめて娘だけでも抱
き締めたいと思う感情を殺して、父と出掛けているという娘には、まだ私が帰って来た事は言わ
ないで欲しいと頼みました。
娘に今の妻の見せなくても良い分、父と母が近くにいてくれた事を、これ程感謝した事は有りま
せん。
家に戻っても妻は濡れた土間で、びしょ濡れのまま泣いていました。
私にすれば泣いている事自体許せずに、何も話す気が起きません。
何故なら、泣きたいのは私なのです。
狂ってしまったのではないかと思うほど、ただ泣き続けていた妻も翌日には少し落ち着きを取り
戻したのですが、私が何か言う度に涙を堪える事が出来ずに、まともに話が出来ません。
夕方になり、そんな妻が涙声で。
「あなた、いつ帰って来られたのですか?」
「そんな事を聞いてどうする?帰って来る日さえ分かっていたら上手く隠し通して、こんな事に
はならなかったと言いたいのか?」
「違います、誤解なんです。あなたには嫌な思いをさせてしまいました。誤解されても仕方がな
いです。でも本当に誤解なんです。」
「誤解?派手な化粧。派手な服。ミニスカート。残業。休日出勤。泊まりで慰安旅行。友達の相
談に乗っていたと言って、度重なる朝帰り。」
妻は何か言ったのですが、泣いている上に小さな声なので聞き取れません。
「泣かずに本当の事を話せる様になったら呼びに来い。それまで何日でも実家に行っている。」
娘には、まだ不安を与えたく無かったので実家に行く気は有りませんでしたが、持ち帰ったスー
ツケースを持って出て行く振りをすると。
「少し待って。私もどの様に説明したら良いのか分からないです。」
「どの様に説明?正直に事実を全て話せばいいだけだろ?他にも知っているぞ。おまえが絶えず
あいつのアパートに入り浸っていた事も。それなのに奴は、いかにもおまえが初めて来たみたい
に、何が心配した部下が電話しただ。」
妻は更に大きな声で泣き出したので。
「泣いて誤魔化すな。30分待って泣き止まなかったら実家へ行く。実家へ行ったら、おまえが
ここを出て行くまで、もう絶対に帰って来ない。」
暫らく待っていても泣き止まない妻に腹がたち、立ち上がってスーツケースを持つと、妻は泣き
ながら。
「ごめんなさい。あと5分待って下さい。お願いします。」
そう言い残して、洗面所へ走って行きました。
[3471] インプリンティング 8 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/14(Sun) 07:58

居間で待っていると顔を洗って入って来た妻は、黙って入り口に正座しています。
「何か話したらどうだ?」
「ごめんなさい。何からお話ししたら良いか分かりません。あなたから訊いてもらえませんか?」
「全て最初から順に話すと思っていたが、そうか。俺が訊いてもいいのだな?それなら訊くが、
俺がいない間、毎日抱いて貰っていたのか?あいつの物は大きかったか?一度のセックスで何回
ぐらい気を遣った?あいつの物も毎回口に含んでやったのか?尻の穴も舐めてやったか?おま
えの尻の穴も舐めてもらったか?俺には許さなかった尻の穴にも入れてもらったのか?」
「そんな酷い事を言わないで~。そんな事はしていません。身体の関係など有りません。本当で
す。本当です。」
「そんな酷い事をしていたのは誰だ?身体の関係が無いなんて信用出来る訳が無いだろ。俺は絶
対に許さない。おまえもあの男も必ず地獄に落としてやる。どちらにしても俺達はもう駄目だ。
離婚するしかない。」
まだ考えてもいなかった離婚という言葉を言ってしまい、言ってしまった私自身、動揺してしま
いました。
「離婚なんて言わないで。浮気なんてしていません。あなたを愛しています。」
「浮気ではない?浮気で無いなら本気という事か?」
「違います。あなたを愛しています。私が愛しているのは、あなただけです。」
「あいつに言われたのか?何とかこの場は嘘をつき通して乗り切れと。もう旦那など愛していな
くても、愛していますと言ってやれば許してもらえると。1年半も知らない土地にいて、どうせ
愛に飢えているから、愛していますと言ってやれば泣いて喜ぶから、辛くても我慢して言ってや
れと。お気遣い頂きましてありがとうございました。」
また泣き出したのを見て玄関に向かうと、追い掛けて来た妻は私の足に縋り付き。
「そんな事は絶対に有りません。愛しているのはあなただけです。ごめんなさい。もう少し話だ
けでも聞いて下さい。」
また居間に戻ると今度は近くに正座して、昔の事から順に話し出しました。
妻が短大を出て銀行に就職し、初めて配属になった支店に稲垣がいたそうです。
稲垣は一流大学を出ていて、仕事も出来るのに偉ぶった素振りも無く、話し方もソフトだったの
で女子行員に人気が有ったそうですが、歳も一回り上で既に結婚していた事も有り、妻にとって
は恋愛対象ではなくて良き先輩でした。
銀行は転勤が多く、転勤が仕事だと言う人もいるぐらいだそうですが、妻が私と結婚をして、娘
が生まれるまで勤めていた別の支店で偶然また一緒になり、以前一緒の支店にいた事からお互い
親近感を覚え、昼食が一緒になった時や飲み会の時などには、お互いの家庭の事などプライベー
トな事なども、何でも話せる間柄に成っていきました。
ここでは2年弱しか重ならずに、稲垣が別の支店に転勤となったのですが、私が海外に赴任した
翌月、妻がパートで働いていた支店に支店長として赴任して来て、三度一緒の職場で働く事にな
ったそうです。
[3477] インプリンティング 9 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/15(Mon) 21:05

稲垣が歓迎会の席上で、今回が初めての単身赴任だと挨拶した事が気になったので、2次会でビ
ールを注ぎに行った時に事情を聞くと、その時は子供達の学校の関係だと説明されましたが、そ
の後妻がトイレにたった時に稲垣もついて来て、相談に乗ってもらいたい事が有るのでお開きの
後、付き合って欲しいと小声で誘われたそうです。
他の者に誤解されない様に、一旦別れてから待ち合わせた喫茶店に行き、そこで妻は稲垣から、
子供達の学校の事情だけでなく、奥さんの浮気が原因で離婚も考えていて、その為の別居の様な
ものだと打ち明けられました。
「それが可哀想で、身体を使って毎晩慰めてやっていたと言う事か。」
「違います。身体の関係は有りません。本当です。色々愚痴を聞いてあげたり、相談に乗ってあ
げたりしていました。でも、朝まで話しをしていただけなんて信じて貰えないですよね。誤解さ
れても仕方の無い軽率な行動でした。あなたに嫌な思いをさせた事は、本当に申し訳無かったと
反省しています。私が愛しているのはあなただけです。支店長に特別な感情は有りません。どう
か離婚だけは許して下さい。あなたがいないのを良い事に、あなた以外の男性と2人だけで会っ
ていた事の償いは、例え一生掛かってもさせて下さい。お願いですから、離婚だけは許して下さ
い。」
私は拍手をしながら。
「大変良く出来ました。どうせそれも、あの男にそう言えと言われたのだろ?それともおまえが
考えたのか?そうだとしたら立派なものだ。嘘のつけなかったおまえが、1年半でそこまで平然
と嘘が言える様になったとしたら、余程毎日嘘ばかりついていて、嘘になれてしまい、嘘をつく
事など平気な女になったと言う事だな。」
自分自身の保身も有るのでしょうが、妻の必死に話す姿を見ていると、余計に稲垣との只ならぬ
繋がりを感じてしまいます。
完全に黒に近い行動をしておきながら、未だに関係を認めない事は自分への保身だけで無く、妻
の稲垣を気遣う、稲垣に対しての普通では無い感情を感じてしまいます。
妻は私と初めて関係を持った時に、痛がりはしましたが出血は有りませんでした。
スポーツなどで破れてしまい、初めての時に出血しない事も珍しくは無いと聞いた事が有りまし
たし、それ以外にも色々な理由で出血しない事はよく有ると聞いていたので、私が初めての男だ
と言う妻の言葉を信じていましたが、実はそれも嘘で、初めての男は稲垣だったのではないかと
勘ぐってしまいます。
処女と思わせる為にわざと痛がり、演技をしていたのではないかとさえ疑ってしまいます。
ただこれは、私と付き合う前の事なら許せますし、本来、許す許さないの問題では無いでしょう。
しかし、私が赴任中にずっと関係を持っていたとしたら、それは許す事など到底出来ません。
「残業だと嘘をついて、あいつと会っていたのだな?」
「はい。」
「休日出勤や役員会だと嘘をついて、あいつと会っていたのだな?」
「はい。」
「友達の相談に乗っていると言った友達とはあいつの事で、朝まであのアパートに2人だけでい
たのだな」
「はい。」
「慰安旅行というのも嘘で、あいつと旅行に行ったのだな?」
「・・・・・・・・・。」
妻は最初から小さな声で返事をしていましたが、この時は更に小さくなり、何を言っているのか
聞き取れません。
「明日銀行に行って他の行員に聞けば、本当に慰安旅行が有ったかどうか分かるから、言いたく
なければそれでいい。」
「それだけは許して下さい。銀行だけには行かないで下さい。支店長にも迷惑をかけてしまいま
す。どうか、それだけは許して下さい。」
この期に及んでもあの男を庇う事が許せず、銀行に行かれる事がそれ程嫌なら、逆に行ってやろ
うと思いました。
[3482] インプリンティング 10 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/16(Tue) 16:19

旅行について妻は。
「気晴らしに旅行にでも行きたいが、1人では余計に滅入ってしまうので付き合って欲しいと誘
われ、2人で旅行に行きました。でも支店長に特別な感情は無いし、特別な関係では有りません。
当然部屋も別々で身体の関係も有りません。今になって冷静に考えれば軽率な行動でした。疑わ
れても仕方のない非常識な行動でした。ごめんなさい。許して下さい。」
「既婚者同士が隠れて旅行に行く関係が、特別な関係ではない?その上何度もあのアパートに泊
まっておきながら、旅行の時だけ部屋を別にしたのか?あいつがホモでも無い限り、そんな事を
信用する奴なんていないだろ。なのにおまえは、それを俺に信じろと言うのか?おまえが逆の立
場なら信じられるのか?」
男と女の間にも恋愛関係でなく、親身になって相談に乗ってやるような、友情だけの関係も存在
するでしょう。
また、服の趣味も心境の変化で変わって行く事は考えられますが、妻の身形は変わり過ぎで、何
か余程の事が無いとあれほどの変化は考え難いです。
何より、あれらの下着を持っている説明がつきません。
これだけの疑惑が有りながら、身体の関係は無いと言い張る妻の心理が分かりませんでした。
考えられるのは離婚の時の条件を少しでも良くすることか、離婚して稲垣と再婚した場合の生活
を考えて、稲垣の銀行での地位を守っておきたいという事ぐらいです。
嘘をつき通したまま、私と結婚生活を維持して行く事は無理だと分かっていると思います。
残された道が有るとすれば、それは正直に全て話して謝罪し、何年掛かっても償っていく以外無
いと思うのですが、妻はそれをせずに、稲垣と自分の保身に走っているとしか思えないのです。
もしかすると、この問題を何とか穏便に済ませ、暫らくしてから性格の不一致とか何とか他の理
由を付けて、離婚を切り出すつもりかも知れないという思いまであり、1番肝心な身体の関係を
未だに隠そうとする、妻の話しは何一つ信用する事が出来ませんでした。
私は強気の態度に出ていますが、それとは裏腹に心の中は心配で仕方がないのです。
今まで幸せだった家庭が、壊れていくのが怖くて仕方がないのです。
妻はまた泣き出したので。
「もういい。俺は遠い所から帰って来て疲れている。勝手にいつまでも泣いて、この事から逃げ
ていろ。俺は寝る。」
口では強がりを言っていましたが、この問題をどうしたら良いのか分からずに、眠る事など出来
ません。
次の日、会社に行ったのですが、そんな事情を知らない上司は私の疲れきった様子を見て、気候
の違いや疲れから体調を崩しているものと思い込み、早く帰ってゆっくり休めと言ってくれたの
で銀行に急ぐと、着いた時は閉店間際でシャッターが閉まる直前でした。
銀行に飛び込んで、最初に目に入ったのは妻が書類を運んでいる姿です。
〔どうして智子がいる?まさか、あいつに逢いたいからなのか?それとも、携帯を取り上げたの
で、あいつと会って今後の事を相談をする為か?〕
私が出勤する時には出掛ける素振りも無く、何の用意もせずに時々思い出した様に、ただ泣いて
いたので当然仕事は休んでいて、こんな事になった以上、銀行を辞めるものだと思い込んでいた
私は一瞬唖然としましたが、何とか気を取り直し。
「支店長にお会いしたいのですが。」
その言葉で妻が私に気付いて不安そうに立ち尽くしていると、一番奥のデスクにいた稲垣が、横
目で妻を見ながら早足でこちらに歩いて来ました。
[3483] インプリンティング 11 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/16(Tue) 16:20

稲垣は周囲の目を気にして口だけは平静を装っていましたが、表情は不安でいっぱいです。
「これは、これは、わざわざお越し頂きまして恐縮です。どうぞこちらに。」
本当はその場で大きな声を出して罵倒したかったのですが、逆に私が名誉毀損で訴えられてもつ
まらないので、案内された応接室に入りました。
「こちらの銀行では社内不倫についてどの様なお考えをお持ちですか?」
「いや、それは、その・・・・・・・・・。」
「人妻の行員を朝までアパートに連れ込む。2人で旅行にまで行く。この様な行員がいたらどの
様な処分をしてくれますか?」
すると稲垣はテーブルに両手をついて。
「ご主人には本当に申し訳ない事を致しました。でも本当に不倫なんかでは無いのです。信じて
頂けないでしょうが、身体の関係どころか手も握った事は有りません。本当です。しかし奥様を
付き合わせた責任は感じておりますので、大変失礼かと思いますが誤解を与えた慰謝料という形
で償わせて下さい。」
稲垣は妻が上手く誤魔化してくれただろうと思っていたのか、アパートの事や旅行の話しをした
時に、一瞬驚いた表情をしたのを見逃しませんでした。
この事で、今日はまだ妻とは何も話し合っていないと感じた私は、鎌をかけてみる事にしました。
「誠実に対応すれば穏便に済ませようと思って来たが、この期に及んでまだ嘘で塗り固めようと
するのか?分かった。おまえに誠意を期待していた俺が馬鹿だった。こうなれば俺にも覚悟が有
る。」
「すみません。しかし、そう言われましても本当に不倫などしてはいません。身体の関係なんて
無いのです。」
私は両手でテーブルを叩いて立ち上がり。
「昨夜女房が全て話したんだよ。アパートに行っては抱かれていたと。旅行でも抱かれたと話し
たんだよ。もう名誉毀損も関係ない。俺はどうなってもいい。まずは手始めにここの行員達に、
こんな支店長で良いのかと聞いてみる。」
私の言葉を聞き、稲垣は慌てて床に土下座して。
「すみませんでした。正直に話したかったのですが、ご主人のお気持ちを考えると話せませんで
した。決して自分を守る為に話さなかったのでは有りません。取り返しの付かない事をしてしま
いました。どうか許して下さい。」
「俺の気持ち?そんな事を考えられる人間なら最初からしないだろ?ばれたからって、尤もらし
い事を言うな。自分を守る為に、何とか誤魔化そうと嘘ばかりついていて、いざばれたら俺の為
に嘘をついていた?何を食べれば、そんなに自分に都合の良い言い訳が、次から次へと言える様
になれる?俺にも教えてくれ。」
私はずっと、この事実を知ろうともがいていましたが、いざ認められると私の全てが終ってしま
った様なショックを受け、尻餅をつく様にソファーに座り込んでしまいました。
[3488] インプリンティング 12 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/17(Wed) 18:50

その時ドアがノックされたので、稲垣は慌ててソファーに座りました。
「支店長、ズボンの膝が汚れているぞ。」
床はきれいに掃除されていたので汚れてはいなかったのですが、私が嫌がらせにそう言うと、慌
てて膝を掃いながら、縋る様な目で私を見ています。
若い女子行員がお茶を置いて出て行くと、また床に土下座して。
「ご主人、どうかこの様な事は・・・・・・お願いします。」
「何を?」
何をお願いしたいのか分かっていても、私が素っ気無い返事をしたので、今度は額が床に擦りそ
うなほど頭を下げました。
「妻から全て聞いたが確認の為に、おまえにも同じ事を訊く。妻と話が食い違わないように、よ
く思い出して答えろ。ただ、気を付けて話した方がいいぞ。俺にとって何よりも大事な家庭を壊
された以上、もう何も怖い物は無い。」
「・・・・・・・・はい。」
「女房とはいつからの関係だ?」
「奥様にして頂いたのが、こちらに赴任して来て3ヶ月ほど経った頃で、結ばれたのはその一ケ
月ほど後かと。」
して頂いたというのは何をして貰ったのか聞きたいのですが、妻が全て話したと言った手前聞け
ません。
「結ばれた?お互い既婚のくせに、独身の恋人同士の様な事を言うな。お前達のしていた事を美
化するな。不法行為、不貞を犯していたのだろ。」
「すみません。言葉を間違えました。」
「まあいい、最初どちらから誘った?」
「私からです。」
妻が私を裏切った事に変わりは無いのに、この事は私の気持ちを少し楽にしました。
どちらが誘おうと、どちらの非が大きかろうと、妻が私を裏切って、私だけにしか開かない筈の
身体を開き、私だけにしか見せない筈の顔を見せていたという事実は変わりません。
いいえ、私にも見せた事の無い顔を、この男には見せていたのかも知れません。
それでも、どちらが誘ったかという小さな事にも拘ってしまいます。
結局私は、まだ妻に未練が有るのです。
「あいつはおまえのアパートに何回ぐらい泊まった?」
「月に1回ぐらいかと・・・・・・・。いえ、2回の月も有ったかも知れません。」
「旅行には何回行った。」
「すみません。2回行かせてもらいました。」
「それら全ての時に女房を抱いたのだな?」
「はい、申し訳無かったです。許して下さい。」
「謝るな。謝ったところで許す筈がないだろ?他の日も残業だと嘘を言って帰りが遅かった時は、
女房を抱いていたのだな?」
「毎回では有りません。食事だけの時も有りましたし、私の帰りが予定よりも遅くなってしまい、
ただ待たせてしまっただけで、電話して帰ってもらった事も有りましたから。」
「そんな細かな事を言うな。そんなのは数回だけだろ?毎回の様に抱いたのだろ?」
「はい、すみません。そのとおりです。」
自分で訊いておきながら吐き気を覚えてきますが、訊かずにはいられないのです。
[3489] インプリンティング 13 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/17(Wed) 18:53

本当はどの様なセックスをしたのか気に成っていましたが、その事を訊くと、稲垣が腹の中で私
を小さな男だと馬鹿にしないか気になり、それを訊く事はプライドが許しませんでした。
「女房を抱いたのは、旅行以外はおまえのアパートでだけか?」
「いいえ、私の車でラブホテルに行く事も有りました。」
やはりどの様な行為をしていたのか気に成り、その物ズバリは訊けなくても、それらしい事を訊
いて、その事から想像出来ないかと迷っていた時。
「私からこの様なお願いが出切る立場では無いのですが、今夜お伺い致しますので、ここでこれ
以上は許して下さい。」
ここに来る前は、稲垣を社会的に失墜させてやる事ばかり考えていましたが、色々聞き出してい
る内に、私の知りたい欲求を満たす為には、それは今やらない方が得策だと思う様に成り。
「分かった。家で待っているから6時に来い。ただ、今日はもう女房を連れて帰るぞ。文句は無
いな?」
「勿論奥様の事は構いませんが、私の仕事が早くても7時迄は掛かりそうなので、6時にお伺い
する事は無理かと・・・・・・。出来れば8時、せめて7時30分にして頂け無いでしょうか?」
「仕事?俺は仕事も手に付かない状態なのに仕事だ?俺の家庭を壊しておきながら、それよりも
大事な仕事とはどの様な仕事だ?俺は頼んでいる訳でも、相談している訳でも無い。6時に来い
と言ったのだ。俺に合わせる気が無いならもういい。やはり今から話そう。今のおまえの対応で、
このまま2人だけでいると何かしてしまいそうだから、ここから出て皆のいる所で話そう。」
「すみませんでした。必ず6時にお伺い致します。」
「出来るのなら、最初からそう言え。今後は全て俺の都合に合わせろ。俺はおまえに合わせる気
は無い。仕事中で有ろうが、夜中で有ろうが、俺が来いと言ったらすぐに来い。嫌なら今後、話
は全てここでしよう。行員どうしの不倫だから、銀行事態にも何らかの責任は有る。話し合いの
場としてここを貸してもらえる様に、俺が本店に行って直談判してもいい。」
「私が立場も考えずに、勝手な事を言いました。ご主人のご都合に合わせますから、どうか許し
て下さい。」
私は妻と稲垣に打ち合わせをされるのが嫌で、妻を連れて一緒に銀行を出ました。
「久し振りに喫茶店にでも行くか?」
一瞬妻は嬉しそうな顔をしましたが、すぐに俯いて黙って頷きました。
喫茶店では気まずい空気が流れ、何を話していいのか分からずに黙っていると妻が。
「あのー。支店長とは何をお話になったのですか?」
「おまえには関係ない。俺とあいつの話だ。」
「はい。ごめんなさい。」
妻には、稲垣と話した内容は勿論の事、今夜来る事さえ話しませんでした。
「そんな事より、どうして今日も銀行へ行った?あいつに逢いたいからか?あいつに今迄の様に
逢えなくなると思うと不安になったか?俺の事が、愛する2人の仲を邪魔する悪魔に見えるだ
ろ?」
「逢いたいだなんて、そんな事は絶対に有りません。あなたは仕事に行ったのに、あなたにこん
な思いをさせてしまった私が、何もしないで家にいるのが悪い気がして。」
「俺に悪い?俺が今、あいつに会われる事が一番嫌だと分からないのか?逆の立場になって考え
た事は無いのか?そうか、あいつに夢中のおまえに俺の気持ちなんて考える気も無いだろうし、
考えたところで分かる訳が無いよな。俺を思う気持ちが少しでも有れば、最初からこんな事はし
ないか。」
妻は泣きそうになるのを堪えている様で、黙ったまま俯いてしまいました。
そんな妻を見ていると付き合いだした頃を思い出します。
妻と喫茶店に行って向かい合わせに座ると、恥ずかしいのか必ず今の様に俯いていました。
しかし、今俯いている理由は全然違います。
あの純情だった妻が、あの誠実な妻が、あの恥じらいを持った妻が、私以外の男に恥ずかしい姿
を見せ、恥ずかしい声を聞かせ、気を遣った時の恥ずかしい顔を晒していたのです。
このまま妻を見ていると私が泣いてしまいそうになり、急いでレシートを掴んで立ち上がると、
妻も慌てて席を立ちました。
[3493] インプリンティング 14 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/18(Thu) 19:37

家に着くと妻を前に座らせて話しました。
「俺は節約の為に電話一本我慢していたのに、あの派手な服はおまえが買った物か?」
「支店長がいつも付き合わせているお詫びだと言って、プレゼントしてくれました。」
「何着も有ったが、全てあいつからのプレゼントか?ミニスカートも。」
「・・・・・・はい。」
妻は消え入りそうな声で返事をしました。
「俺が昔、たまにはミニスカートを穿いて欲しいと頼んだ時も、恥ずかしいと言って絶対に買わ
なかったし、一緒に買物に行った時、似合うと思って俺が選んだ少し派手な服も、こんな派手な
のは嫌だと言って買わなかったおまえが、随分気に入って着ていたらしいな?」
「それは・・・・・・・。」
「化粧も派手にして髪の色もそんな明るい色にしたのは、稲垣がそうしろと言ったからなのか?
おまえはあいつの着せ替え人形か?あいつの好みに合わせるのが、そんなに楽しかったのか?」
「いいえ、折角のプレゼントを着ないのも悪いと思って。」
「着ないと悪い?それならその化粧はどんな言い訳をするつもりだ?化粧品もプレゼントされ
て、使わないと悪いので派手な化粧をしましたか?それに卑猥な下着も沢山有ったが、あれもプ
レゼントだろ?おまえがあんな下着を買う訳が無いよな?」
「いいえ、あれは私が・・・・・・・・・。」
「そうか。あんな、大事な所に穴の開いた様な下着はどこへ行けば売っている?俺も興味が有る
から今から見に行こう。さあ、案内してくれ。」
私は立ち上がって妻の腕を掴み、妻を立ち上がらせようとすると。
「ごめんなさい。あれもプレゼントされた物です。下着までプレゼントされていたと知られたら、
益々あなたに誤解されると思って嘘を言ってしまいました。ごめんなさい。」
「そうか。やはりあれらもプレゼントしてもらった物か。プレゼントされた物を着ていないと悪
いと言う事は、今日はこれを穿いてきましたと言って見せていたという事だな?見せないと折角
のプレゼントを、おまえが穿いているのかどうか分からないよな?」
「いいえ、それは・・・気持ちの中だけで・・・・・。」
「そうか、分かったぞ。だからあんな小さな下着であいつの所に行ったのか。プレゼントしても
らったパンティーを穿いてきました。本当かどうか分からない?これならどう?そう言ってスカ
ートを捲ったのか?それとも奴に下から覗かせたのか?違うか、スカートを脱いだのか。」
自分で言いながらその様な光景を想像してしまい、どんどん辛くなってくるのですが、言わずに
は居られないのです。
「そんな事、有りません。許して。私が軽率でした。もう許して。」
「だいたい、人妻に下着をプレゼントするだけでも普通は有り得ない事なのに、身体の関係も無
い奴があんな下着を贈るか?それに、身体の関係も無いのに、あんな物をプレゼントされて、喜
んで穿く奴などいるのか?」
「喜んでなんかいません。」
「それなら嫌だったという事か?贈られて迷惑だったのか?どうなんだ、返事をしろ。」
「・・・・・はい。」
「それなら立派なセクハラだ。嫌がる部下に、上司が穿いてくれと言ってあんな物をプレゼント
したら、完全なセクハラだ。」
「明日俺と一緒に、あれらを銀行に持って行って抗議しよう。あいつのデスクに全て並べて抗議
しよう。そしてセクハラで訴えよう。いいな?」
「それは・・・・・・・。」
「もういいだろ?抱かれていたのだろ?ここまで来たら本当の事を話せ。頼むから話してくれ。」
これが、今から私がしようとしている事を止められる、妻への最後の問い掛けでした。
しかし妻は。
「ごめんなさい。どう説明すればいいのか分かりません。でも本当に身体の関係は有りません。」
ここまで言ってもまだ認めない妻を、やはり虐めていなければ狂ってしまいそうなのです。
妻を虐めながら、どうすれば妻がもっと辛い思いをするか考えているのです。
その為に稲垣が白状した事も、今夜来る事も黙っていました。
「分かった。智子がそこまで言うのだから、今回は信じる様に努力するが、後で関係が有ったと
分かった時は離婚だぞ。これは赴任する前に智子から言い出した事だ。それでいいな?」
「・・・・・はい。・・・・ありがとう・・・・・ございます。」
妻は今にも泣きそうな声で返事をしましたが、泣けば私が実家に行ってしまうという思いから
か、唇を噛んで我慢していました。
[3495] インプリンティング 15 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/18(Thu) 22:16

稲垣は6時に来るので、私はシャワーを浴び終え、続けて妻にもシャワーを浴びさせ、キッチン
で妻の身体を触りながら服を脱がせようとした時、妻は嫌がって抵抗しました。
「俺にされるのが嫌になったのか?」
「違います。嬉しいです。でも、まだ時間が早いのでせめて夜になってからお願いします。」
「俺は1年半も我慢していたから、もう我慢出来ない。智子はそうでは無い様だな。やはり奴に
抱いてもらって、欲求を解消していたのかな?」
「違います。それなら、ここでは落ち着かないから寝室でして下さい。ベッドでお願いします。」
「折角仲直りの切欠になると思っていたのに、それならもういい。」
「ごめんなさい。私が悪かったです。でも・・・・・・・。せめてカーテンを閉めて、明かりだ
けでも消して下さい。お願いですから、明かりだけでも・・・・・・・・。」
そう言って、妻は頑なに拒みました。
「やはりそうか。智子を信用しなければ駄目だと自分に言い聞かせたが、あいつ以外には抱かれ
る事も、裸を見られる事すらも嫌になったのか。あいつに言われているのか?例え旦那でも俺以
外の男に抱かれたら、もう抱いてやらないと。」
「違います。支店長とはその様な関係では有りません。あなたに抱かれたいです。」
「それなら自分で脱いで、テーブルの上に寝て脚を開いてくれ。このままだと俺が無理やりして
いるみたいだからな。」
そう言われた妻は、涙を堪えながらゆっくりと服を脱ぎましたが、最後の1枚は脱がずに、両手
で乳房を隠して俯いたまま動きません。
「どうした?早くそれも脱いでテーブルに乗れ。」
しかし妻は、それを脱がずにテーブルに乗って仰向けに寝たので。
「俺は全部脱いで股を開けと言った筈だ。もうやめておこう。」
「恥ずかし過ぎます。せめて明かりを消して。せめて暗くして下さい。お願いします。」
『稲垣の前では、平気で股を開いていたくせに。』と言いたいのを我慢して、妻自身の手で脱が
す事を諦めた私がパンティーに手を掛けると、妻は乳房を隠すのをやめて両手でパンティーを掴
み、脱がされない様に上に引っ張って抵抗しました。
少しサディスティックな気分になっていた私は、料理鋏を持ってくるとパンティーの両横を切っ
たのですが、妻はそれでも切られた布を押えて抵抗を止めません。
私が強引に剥ぎ取ると今度は両手で隠したので、手首を持って力任せに引き離した時、どうして
ここまで頑なに拒んだのか、その訳がはっきりと分かりました。
妻のそこは小さな逆三角形を残して、他はきれいに剃られていて、この様な気持ちの時の私でさ
え、少しおかしな気分になるほど卑猥に見え、これならば全て剃ってしまった方が余程ましなく
らいです。
「何だこれは?」
「友達にスポーツジムに誘われて行った時に、水着を着なければならないので剃ったのですが、
上手く剃れなくて、段々小さくなってしまって・・・・・・・。」
妻は抵抗しながらも、この言い訳を考えていたのでしょう。
あの誠実だった妻を思うと、嘘に嘘を重ねる妻を見る度に、浮気された事以上に悲しくなって来
ます。
妻は両手で顔を覆っていたのですが、それは恥ずかしさからそうしているだけでは無くて、溢
る涙を隠すためでした。
恐らく稲垣は、私が帰って来られない遠い異国にいるのを良い事に、妻の身体を好き放題、自分
の思う様に扱っていたのかも知れません。
まるで自分の妻で有るかの様に、いいえ、自分の妻にはさせない様な事まで強要していたのかも
知れません。
私はそんな妻の身体に触れる事も出来ずに、椅子に座って妻の秘所をただじっと見ていました。
「あなた、恥ずかしいです。触って下さい。お願いします。」
妻にすれば何もされない事の方が屈辱的で、羞恥心も大きいのだと思います。
「智子も1年半の間に随分淫乱な女になったな。キッチンのテーブルの上で、裸で股を開いて、
触って下さい?」
「それは、あなたが・・・・・・・・・。」
「なに?聞こえないぞ。」
「何でも無いです。ごめんなさい。」
こんな事を強要すれば、以前の妻なら泣いて怒ったのでしょうが、私に隠し事の有る妻は逆らう
事も出来ません。
「正直に言うと、俺はまだ智子に不信感を持っていて触る気になれない。しかし俺にも性欲は有
る。1年半も我慢していたから無性に出したい。智子が自分で気持ち良くなって充分に潤って来
たら、中で出そうと思っている。協力してくれるな?」
「自分でなんて出来ません。どの様にしたら良いのかも分かりません。お願いです。あなたがし
て下さい。お願いします。」
「他の男と旅行になんて行かれたら、身体の関係が有ろうと無かろうと、普通の旦那は一生奥さ
んとはする気になら無いと思うぞ。俺もまだ普通にはする気になれ無いが、徐々にでも何とかし
て元の関係に戻りたいと思ったが、それも聞いては貰えないのか。あいつの言う事は何でも聞き、
人前であんな短いスカートを穿いていたおまえが、俺の頼みはこんな事も聞けないとは。分かっ
た、もう止めよう。そこから降りて服を着ていいぞ。」
「ごめんなさい。別に穿けと言われていた訳では・・・・・・・。そんな事言わないで。あなた
の言う通りにやってみますから、そんな事は言わないで。」
妻が自分でするのは初めて見ます。
私が単身赴任してしまってからは分かりませんが、多分それまではした事が無いと思います。
童顔な妻がテーブルの上で脚を開き、豊満な胸を自分で揉んで感じ様としていれば、普通なら我
慢出来ずに飛び掛るのでしょうが、不倫の事実を知った私は、どうしても冷静な目で見てしまい
ます。
[3497] インプリンティング 16 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/19(Fri) 19:55

妻はまだ恥ずかしいのか、ただ乳房を揉んでいるだけで乳首を触る訳でもなく、これでは計画が
狂ってしまうと思った私は。
「智子が脚を開いた時から気になっていたのだが、どう見ても1年半前よりもクリが大きくなっ
ているよな。これは何もしないでただ大きくなる事は無い。誰かに擦ってもらっていたか自分で
していたかだが、確か智子は、自分でする仕方が分からないから俺にしてくれと言った。と言う
事はやはり、俺以外の誰かにして貰っていたという事になる。どうなんだ?答えろ。」
別に大きくなったとは感じませんでしたが、私の出任せな話に妻は。
「・・・・・自分で・・・・・していました。」
「自分でしていた?そうか、あいつに擦られたり、吸われたりされていたのでは無くて良かった。
智子は寂しくて自分でしていたのか。それならどうしてその様にしない?俺とでは気が乗らない
のか?」
妻は、右手は乳房を揉んだまま、左手の指をクリに充てて擦り始めました。
「なかなか潤って来ないな。普段自分でしていた時はどうだった?もう感じて来ている頃だろ?
きっと智子の身体は、もう俺の物を受け入れたくないのだな。」
それを聞いた妻は、乳房全体を揉んでいた右手で乳首を摘み、左手の指を一度舐めて唾液を付け
てからまたクリに持って行き、指の動きを早くしました。
すると少し潤って来たようで、時々襞の中に指を入れては愛液をすくい、その指で強くクリを擦
り出し、徐々に喘ぎ声も漏らす様になっていきました。
妻の秘所も充分に潤ったのを見て、時計を見るともう5時50分です。
もうそろそろ来る頃だと思い、乳首を揉んでいた右手の手首を掴んで下に持って行き。
「指を中に入れて動かしてみろ。自分でしていた時も、当然そうしていたのだろ?」
「お願い、もう。もうください。」
「まだ分かっていないようだな。俺がどの様な思いで、智子と交わろうとしているのか。これ以
上気分を壊す様な事を言うならもういい。止めておこう。」
「ごめんなさい。逆らいません。言われた通りにします。」
妻が右手の人差し指一本だけを入れたので、中指も入れて動かすように言うと、次第に喘ぎ声が
大きくなり、クリを擦る左手の指の動きも早くなって行きました。
私の言い付けに従っているとしても、離婚する事に成るかもしれないという、こんな気持ちの時
にでも感じる事の出来る妻に呆れて、益々私は冷静になっていきます。
その時、外で車が止まる音がしたので。
「ちょっとトイレに行って来るから続けていろよ。絶対に指の動きを止めるなよ。だからと言っ
て、自分だけ気を遣ってしまったらそこで終わりだからな。俺との仲直りの行為も無いからな。」
「早く、早くお願いします。もう、もう我慢出来ません。もう、もう。」
今回の余りにも不利な状況の自分から抜け出したいだけなのか、本当に私と別れたくないからな
のかは分かりませんが、何とか私に気に入られようとしていて、妻を苦しめたいが為に行ってい
る行為を疑おうともしません。
私が先に玄関のドアを開けたので、稲垣は驚いた顔をして挨拶をしようとしましたがそれを制止
し、妻に気付かれない様に小さな声で。
「今、妻はお楽しみの真っ最中だ。それを邪魔したく無いから黙ってついて来い。話はその後で
聞く。」
稲垣は訳が分からず、不安そうな表情で私の後ろをついて来たので、キッチンの前まで連れて行
くと、微かに妻の喘ぎ声が聞こえて来ます。
稲垣もその声に気付き、驚きの表情で私を見たので、また小さな声で。
「ここに座って待て。」
その場に正座をしたのでドアを開けると、今度は妻の喘ぎ声が、はっきりと聞こえてきました。
私はよく聞こえる様に、わざとドアを開けたままにして妻に近付くと、外で何が行われていたの
か知らない妻は。
「もう我慢出来ません。早く入れて。早く、もう、もう。」
「入れているじゃないか。」
「違います。あなたのを早く、早く入れて。もう駄目。もう駄目。」
「俺の何をいれて欲しい?指か?はっきり言わないと分からない。」
「言わせないで。虐めないで。」
「嫌なら言わなくてもいい。俺が赴任する前は言ってくれたじゃないか。やはり智子は変わって
しまったな。もうやめよう。」
「ごめんなさい。言います。あなたのチ○ポです。早くチ○ポを入れて下さい。」
私は妻の言葉にショックを受けました。
妻がセックスに積極的に成り出してから、妻に色々な事を言わせて楽しむ事も有りましたが、妻
にはオチ○チンと教えていて、オチ○チンとしか言わせた事は無かったのです。
稲垣も妻に卑猥な事を言わせていて、男性器をチ○ポと呼ばせていたのでしょう。
「どこに入れて欲しい?どこに欲しいか言ってみろ。」
「オ○コです。もう駄目。駄目になる。智子のオ○コに入れて下さい。」
妻は感じてしまっていて気付いていないでしょうが、これもオマ○コと言わせた事は有っても、
オ○コと言わせた事はありませんでした。
その上妻は『私の』とは言いましたが、『智子の』などと、子供の様に自分の事を、名前では言
ったりした事は有りません。
稲垣が嫌らしい下着を穿かせ、妻にこの様な事を言わせていた事を知り、2人のセックスが見え
た様な気がして、妻に絶望感を味わわせる為に仕組んだ事で、逆に私が絶望感を味わう羽目にな
ってしまいました。
[3501] インプリンティング 17 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/20(Sat) 20:56

私の怒りは妻の秘部に向かい、妻の手首を持って激しく前後させて。
「おまえの様な女に俺のを入れる気にはなれない。自分の指で充分だ。指で逝ってしまえ。」
妻は入れて欲しいと言い続けながらも、我慢の限界が来たのか。
「いや~。いや~。逝ってしまいます。逝ってもいいですか?逝かせて頂きます。ごめんなさい。
智子だけ逝かせて頂きます。」
この言葉を聞いて更に怒りが増した私は、妻が気を遣る寸前で、掴んでいた手首を引っ張って指
を外に出してしまい、クリを擦っていた左手も、そこに届かない位置まで遠ざけてしました。
私の知る妻は『逝く~』と言っても、決して『逝かせて頂きます』などとは言いません。
『逝きたい~』とか『逝っちゃうよ~』とか言う事は有りましたが、今にも逝ってしまいそうな
時に、この様な敬語など使った事は有りませんでした。
私を気遣っているのかとも思いましたが、気を遣る直前で顔を左右に激しく振りながら、完全に
自分を見失っている状態の妻からは、その様な気遣いは考え難く、この言葉で稲垣との、セック
スでの主従関係まで分かった様で許せなかったのです。
「いや~。こんなのいや~。」
「何を言っているんだ。智子には羞恥心は無いのか?お客が来ているのだぞ。稲垣、入って来い。」
ドアが開いているので全て聞こえている筈の稲垣は、私が呼んでも入って来なかったので、廊下
に出ると稲垣は正座したまま、両手を大事な所に置いて隠す様にしています。
私が腕を掴んで強引に退けさせると信じられない事に、ズボンの前を大きく膨らませていました。
「自分の立場を分かっているのか?俺の悔しさも知らないで、何を勃起させているんだ。」
「すみません。すみません。」
稲垣の謝る声で他に誰かいると知った妻は、キッチンで泣き叫んでいます。
稲垣が興奮していた事で、穏便に済ませる為に謝ってはいても、何の反省もしていないと思った
私は、嫌がる稲垣の髪を掴んで引き摺る様に入って行くと、妻は脱いだ服を抱えて部屋の隅で泣
いていました。
「俺はおまえの様な汚れた女を抱く気なんて無い。おまえも途中で止められて不満だろ?こいつ
も、もう勃起させて準備が出来ているようだから、もう一度テーブルに寝て股を開いて入れて貰
え。俺は居間にいるから終ったら来い。今後の事を話し合おう。」
当然本心では有りません。
今そんな事をしたら、2人共殺してしまうかも知れないです。
「いや~。どうして、どうして支店長が?いや、いや~。」
「何が、いや~だ。俺がいない1年以上もの間慣れ親しんだ、おまえの大好きな支店長様の、も
っと大好きなオチ○チンを入れて貰え。どうせ俺のよりもずっと気持ち良いのだろ?」
「そんな事はしていません。いや~、いや~。」
「何がしていませんだ。今日こいつが全て話してくれたよ。」
妻は一瞬泣き止むと、頭を激しく振って狂った様に泣き叫びました。
「えっ?」
稲垣はそう一言叫ぶと私の顔を見ましたが、目が合うと慌てて俯いて立ち尽くしています。
私が居間に行くと、後を追うように入って来た稲垣は土下座して。
「すみませんでした。どの様な償いも致します。どうか許して下さい。」
「ああ。言われなくても償いはしてもらう。それに、どんなに謝られても許す事はしない。一生
償わせて苦しめてやる。先ずはおまえの奥さんに電話しろ。奥さんが出たら俺に代われ。」
「いや、それだけは許して下さい。妻にだけは・・・・・・。」
「今、何でもすると言ったばかりだろ?早くしろ。」
私が何度言っても許してくれと言うだけで、決して電話しようとはしません。
妻が言っていた通り、奥さんの浮気が原因で離婚を前提とした別居をしているのなら、ここまで
強行に奥さんに知られるのを拒む必要も有りません。
もしもそれが事実なら夫婦関係破綻後の不倫になり、奥さんに対しては、慰謝料はおろか離婚の
妨げにも成らない筈です。
妻の気持ちは分かりませんが稲垣にすれば、夫婦仲が悪いと嘘を言い、同情をかって気を引く、
どこにでも有る様なただの浮気なのかも知れません。
[3502] インプリンティング 18 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/20(Sat) 21:03

何度言っても、ひたすら謝るだけで電話をかけない稲垣に苛立ち。
「分かった。今日はもう帰ってくれ。続きは明日銀行で話そう。」
稲垣はそれを聞いてようやく携帯を出すと奥さんに電話したので、私は携帯を取り上げ。
「初めまして、迷人と申します。実は私の単身赴任中にお宅のご主人と私の妻が、1年以上に及
ぶ不貞行為をしておりまして。」
それを聞いた奥さんは声も出せない様で、少しの間沈黙が続きましたが一言だけ。
「明日そちらにお伺いさせて頂きます。」
そう言うと、一方的に電話を切ってしまいました。
稲垣を帰らせてからキッチンに行くと、妻はまだ裸に服を抱えたまま泣いています。
「ごめんなさい。あなた、ごめんなさい。本当の事を言えば離婚されると思いました。身体の関
係が有った事を認めれば離婚されると思いました。ごめんなさい。」
「ばれたから離婚になるのでは無いだろ?おまえが離婚されても仕方の無い事をしたから、離婚
になるのだろ?本当は認めずに、少しでも条件を良くして離婚したかったのと違うのか?こんな
事をしたという事は、俺よりもあいつを選んだという事だろ?」
「違います。あなたを愛しています。離婚だけは許して下さい。」
「本当か?それならどうして俺を裏切った?どうしてあいつに抱かれた?」
「それは・・・・・。ごめんなさい。ごめんなさい。」
その時私の携帯が鳴り、それは私の身体を気遣ってくれた上司からで、医者に行って診てもらい、
2、3日ゆっくり休めと言われ、この様な状態で仕事なんて出来ないと思っていた私には、何よ
りも有り難い話でした。
「離婚するにしてもしないにしても一生許す気は無い。でも、何も真実を知らないまま結論を出
すのは嫌だ。しかし、おまえが泣いていて真実を話せない状態では、俺が精神的に持ちそうも無
い。だから今決めた。おまえが今すぐ泣き止んで全て話すのなら、話ぐらいは聞こう。それが出
来無いのなら今夜の内にこの家を出て行ってもらう。出て行かなければ殴ってでも放り出す。離
婚して稲垣と再婚したいのならそのまま泣いていろ。本当に離婚が嫌で話し合いたいのなら泣く
な。話し合いをしたところで離婚にならない保障は無いが。」
「泣かないようにしますから少し待って下さい。泣くのを止めますから話だけでも聞いて下さ
い。」
妻は何とか泣き止もうと唇を噛んでみたり、天井を見上げたりしましたが、そう簡単に感情をコ
ントロール出来るものでは有りません。
妻が泣き止もうと努力している事は分かり。
「暫らく待ってやる。」
私はそう言い残すと寝室に行き、どうしてこの様な事をしてしまったのか、ベッドに寝転んで考
えていました。
妻の恥ずかしい声は、私以外の誰にも聞かせたく有りません。
例え稲垣が何十回聞いていようとそれは同じで、二度と聞かせるのは嫌なものです。
それなのに、この様な事をしたのは妻を虐めたかっただけなのか?
いいえ、それだけでは無い様な気がします。
私の中の牡が、そうさせてしまった部分も有る様な気がします。
妻を寝取られた負け犬が『まだ俺は負けていない。』『まだ妻は俺を求めている。』と、寝取った
牡に吼えたかったのかも知れません。
寂しさを紛らわすだけの、セックスをしたいだけの浮気など、妻には出来ないと思っているだけ
に、脅してでも、妻の口から私を求める言葉を聞きたかったのかも知れません。
その言葉を稲垣に聞かせたかったのかも知れません。
妻と稲垣に心の繋がりが有れば、その様な事をしてもその場だけの事で、無駄だという事が分か
っているのに。
[3512] インプリンティング 19 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/22(Mon) 21:06

その様な事を考えていた私はいつしか眠ってしまったのですが、嫌な夢に魘されて飛び起き、時
計を見ると、長い夢を見ていた感覚なのに1時間しか経っていません。
夢の中の私は妻を探し回り、あのアパートに行って郵便受けを見ると、稲垣の下に妻と娘の名前
が書いて有ります。
それを見た私が絶望感と激しい孤独感に襲われていると、妻と稲垣が手を繋ぎ、楽しそうに話し
をしながら出て来て、私の事など見向きもせずに通り過ぎて行きました。
それまでは2人だった筈なのに次の瞬間、稲垣のもう一方の手には娘の手が繋がれているのです。
私は走って追いかけ、惨めな格好で妻の足に縋り付いたのですが、見上げるとそれは妻では無く
て稲垣で、私を見下ろして不気味に微笑んでいました。
すぐには夢と現実の区別が付かずに、不安な気持ちのまま妻を捜したのですが何処にもいません。
キッチンの椅子に座り込んで考えていると、夢の中で感じた気持ちが本心で有り、夢の中の私が、
今の私の本当の姿ではないかと思え、妻は稲垣のアパートに行ったのかも知れないと心配になっ
て玄関まで行った時、妻がドアを開けて入って来ました。
「帰って来たのか。どうせ奴の所に行ってしまい、もう帰って来ないと思ったから、これで楽に
なれると思っていたのに帰って来たのか?」
「違います。もうあそこには二度と行きません。」
妻が戻って来てほっとしている筈なのに、口からはこの様な言葉しか出て来ませんでした。
やはり私には、妻に縋り付く様な真似は出来そうにも有りません。
「それなら何処に行っていた?」
「すみません。理香に会って、お仕事が忙しいから少しの間会えないと言ってきました。」
私はまた嫌な事を言って妻を虐めたいと思いましたが、妻の言葉には感情が無く、目も虚ろとし
ていて様子がおかしかったので、何も言わずにキッチンへ行くと、妻も夢遊病者の様に後をつい
て来て、椅子に座りました。
「上手い事を言って、本当は稲垣の所に行こうと思ったのでは無いのか?何か忘れ物を取りに来
たのでは無いのか?お前の言う事は何も信用出来ない。」
「いいえ、本当に理香に会いたかっただけです。勝手な事をして、ごめんなさい。」
妻は嫌味を言われても泣く様子も無く、焦点の合わない目でテーブルをじっと見ながら、口では
謝っていても、やはり言葉に感情が有りません。
「俺の質問に答えるのが嫌で、逃げようと思ったのでは無いのか?」
「いいえ、もう何でもお話します。」
私は『もう』という言葉が気になったのですが。
「それなら訊くが、おまえは稲垣の事が好きになったのか?もう俺の事は嫌いなのか?」
「支店長の事は好きです。でも恋愛感情では有りません。私が愛しているのはあなただけです。」
「意味が分からん。好きだが恋愛感情とは違う?それなら、どうして抱かれた?本当に俺を愛し
ていたら、その様な行為はしないだろ?さっぱり意味が分からない。俺が不審に思っている事に
答えてくれ。もう昔の事だが、そもそも俺が初めての男だったと言うのは本当だったのか?俺と
関係を持つ前に、稲垣とそういう関係は無かったのか?本当は何か有ったのだろ?」
「はい、あなたと知り合う前にキスまでは有りました。ベッドで抱き合ってキスはしましたが、
それ以上の関係は無かったし、キスをしたのも恋人としての愛情からでは有りません。」
私は、妻の理解不能な話から、妻と稲垣との得体の知れぬ、普通では無い関係を感じていました。
相変わらず妻の言葉には感情が感じられず、魂が抜けてしまったかの様な状態です。
「稲垣との繋がりを、最初から詳しく教えてくれ。俺の知らない智子全てを教えてくれ。」
妻はゆっくりと頷いて、淡々と話し出しました。
「あなたもご存知の通り、私の父は酷い暴力を振るっていて、それは母だけに留まらず、私や姉
にも及んだ為に、母は離婚を決意しました。幸い父の実家は資産家だったらしくて、父の両親は
私達と完全に縁を切らそうと、今後、養育費やその他の権利を全て放棄するのを条件に、多額の
手切れ金を払ってくれたので、私達の生活は困らなかったのですが、それまで優しかった母が、
寂しさからかお酒に溺れる様になり、絶えず違った男を家にまで連れて来る様になりました。母
の連れてくる男達は私や姉を嫌らしい目で見る事が多く、中には胸やお尻を触ってくる男までい
て、父の事で男性不信になっていた私は、余計に男性を避ける様に成って行きました。」
妻が短大生の時に母親は病気で亡くなったのは聞いていましたが、まさか母親がその様な状態だ
ったとは知らず、それまで親子3人幸せに暮らしていたと、勝手に思い込んでいました。
[3513] インプリンティング 20 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/22(Mon) 21:07

妻が私に話した事の無かった、私と知り合う前の話は更に続き。
「母が死んでから姉と2人、寂しいけれど平穏な生活を送っていました。しかし私はこのままで
は駄目だと思い、男性のお客さんとも接する事が多い、銀行員を希望して就職したのですが、働
き出して半年を過ぎた頃に姉が結婚をして、義理の兄が私達の所に転がり込む形で3人での生活
が始まってしまい、私はその義兄の私を見る目がどこか怖くて、慣れない仕事と家庭の両方が辛
く、気の休まる場所は何処にも有りませんでした。私は義兄と、決して2人だけには成らない様
に気を付けていたのですが、ある時姉が私には何も言わずに買物に行き、義兄は鍵も掛けずに油
断していた私の部屋に入って来て、私をベッドに押し倒しまいた。幸い姉が忘れ物をして帰って
きた為に、事無を得ましたが、その後姉がとった行動は、義兄には怒らずに、私から誘ったと言
う義兄の話だけを信じて、その話になる度に私を叩き、私を罵倒する事でした。私は耐えられな
くなって家を飛び出し、向かった先が彼のアパートです。」
妻は姉が嫌いだと言って全く付き合いが無かったので、それを不思議には思っていても、まさか
その様な事が有ったとは考えた事も有りませんでした。
妻が辛い人生を送って来た事を知り、思わず抱きしめたくなりましたが出来ません。
何故なら、妻が向かった先は稲垣の所なのです。
妻の話に引き込まれていた私も、今の支店長という言葉で、妻に裏切られた現実に戻ってしまい、
とても抱き締める事は出来ませんでした。
私が何も言わなくても、まるで他人事でも話しているかのように、淡々と話し続ける妻の話によ
ると。
稲垣は、妻が仕事で分からない事が有ったりした時に、優しく教えてくれる頼りになる先輩で、
当時の支店長は女性にも厳しく、ミスなどが有ると顔を真っ赤にして怒鳴ったそうですが、ただ
でも男性に恐怖心をもっていた妻が泣きそうになっていると、稲垣は必ず助け舟を出してくれ、
後で優しく慰めてくれたそうです。
妻は、稲垣だけは他の男とは違うと思い始め、やがて全幅の信頼を置く様に成っていたので、自
然と足は稲垣のアパートに向かったのです。
何処にも行く所の無い妻は、その夜稲垣のアパートに泊めてもらい、次の日からアパートが見つ
かるまでの一週間は、当時稲垣と婚約していた今の奥さんの所で世話になったそうです。
「その時、稲垣とキスをしたのか?婚約者がいながら、あいつはおまえに迫ったのか?おまえも
その様な事をしておきながら、よく奥さんの世話に成れたものだな。」
「違います。そんな嫌らしいキスでは有りません。多少奥様には悪い気もしましたが、罪悪感を
持ってしまうと私達の関係が、その様な関係だという事になってしまう。上手く説明出来ません
が、その様な感情はお互いに無かったです。父のようで父とも違う、兄のようで兄とも違う、や
はり上手く説明出来ません。ただ、恋愛感情は無かったです。」
満員電車で男と肌が触れてしまうのも嫌だった妻が、稲垣にベッドで抱き締められた時、不思議
と男に対する嫌悪感は無く、逆に何故か安心感を強く感じたと言います。
抱き締めながら「ごめん。でも決して嫌らしい意味でしているのでは無い。ただ君を守りたくな
ってしまう。大事な妹の様な感覚で、抱き締めたくなってしまった。」と言いながらキスをして
来たそうですが、ただ上手い事を言っているだけで、本当はその気だったのでは無いかと思って
しまいます。
私には、婚約者の事や銀行の事を考えてしまい、その先に進む勇気が無かっただけだと思えるの
ですが。
[3515] インプリンティング 21 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/23(Tue) 20:44

妻は稲垣に対して良い印象、良い思い出だけを持ったまま、また同じ支店勤務となってしまいま
す。
「あなたと結婚してから、偶然また一緒の支店になった時期、私は不妊に悩んでいて、その悩み
も聞いてもらい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
他にも色んな相談に乗ってもらったりしました。」
妻が途中押し黙ってしまった事が少し気になり。
「どうして途中で黙ってしまった?その時も何か有ったのか?」
すると、今までとは違って妻の瞳に光が戻り、強い口調で。
「何も有りません。当時の事を思い出していただけです。周りの人から、会えば挨拶の様に子供
はまだかと言われ、辛かった時の事を思い出してしまっただけです。」
その時の事を言われると、私は何も言えなくなってしまいます。
若さのせいには出来ませんが、当時気持ちに余裕も無く、この事で妻とはよく言い争いもしまし
た。
私自身、友人や同僚に種無しの様な言い方をされたり、無神経な奴には、セックスが下手だから
だとまで言われ、私も辛いのだと言って、妻への思い遣りが足りなかったと反省しています。
当時の事を思い出したからなのか、妻は正気に戻ってしまい。
「本当なら離婚されても仕方が無いです。それだけの事をしてしまいました。愛しているのに、
大事なあなたを裏切ってしまいました。私からは何も言えない立場だと分かっています。でも離
婚だけは許して下さい。あなたと別れるのは嫌です。」
「上手い事を言って、本当はその逆だろ?自分の歩が悪いままで離婚をしたく無いだけだろ?」
「違います。それだけは信じて。今でもあなたを愛している事だけは信じて。」
私だって信じたいのです。
しかし、信じる事が出来ない事をしたのは妻なのです。
「離婚する事に成ったとしても、このままでは気が収まらない。全てを知らないと、一生俺は立
ち直れない気がする。全て聞かせてくれ。」
「はい、必ず話します。話せるようになったら必ず話しますからり、今日はもう許して下さい。」
そう言うと、妻は走って寝室に行ってしまったので後を追うと、妻はベッドにうつ伏せになって
泣いていました。
娘の所に行ってから、何処か様子がおかしい事が気になっていた私は。
「どうした?実家で何か有ったのか?」
妻はすぐには答えずに、暫らく声を出して激しく泣いてから。
「理香に会いたくて行きました。暫らく会えないと言ったら、理香は泣いて愚図るかも知れない
と思い、その時の言い訳まで考えながら行きました。それなのに理香は・・・・・・・・。」
「理香がどうした?何が有った?」
「理香は『いいよ。』と一言だけ言って、笑いながらお義父さんの所に走って行ってしまいまし
た。いったい私は何をしていたのだろう?理香はもう私を必要とはしていない。母親を必要とは
していない。理香が生まれた時、この子さえいればもう何もいらないと思ったのに、この子だけ
は私の様な辛い思いは絶対にさせないと思っていたのに、結局辛い思いをさせてしまう。でもこ
れは全て私がしてしまった事。私はとんでもない事をしてしまった。私は今迄、何をしていたの
だろう?」
妻は、多少は罪悪感に目覚めたのだと思いましたが、それは娘に対してだけで、私に対しての罪
悪感が本当に有るのかどうか、未だに信じきれていない私の怒りは収まっておらず、苦しむ妻に
追い討ちを掛ける様に。
「今頃気付いても遅い。おまえは父親を憎んでいるが、同じ事をしたのだぞ。暴力ではないが、
それ以上に俺は傷付いた。理香もこの事を知れば、一生おまえを怨むぐらい傷付くだろう。母親
に対してもそうだ。色々言っていたが、おまえに言える資格など無い。おまえの母親は色んな男
と付き合ったそうだが、離婚していたから独身だったのだろ?それに引き換え、おまえは夫が有
りながら、他の男に跨って腰を振っていたのだろ?おまえの両親の事を悪く言いたくは無いが、
人を傷つける事が平気な父親と、例え寂しかったとは言っても相手も選ばずに、オチ○チンさえ
付いていれば、誰にでも跨って腰を触れる母親。おまえのしていた事は両親と同じだ。いや、そ
れ以下だ。」
ここまで酷く言いたくは無かったのですが、話している内に自分で自分を抑える事が出来なくな
ってしまいます。
自分の言葉に反応しては、段々とエスカレートして行ってしまいます。
[3518] インプリンティング 22 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/24(Wed) 20:26

妻はその後一言も話す事無く、泣き疲れて眠ってしまいました。
翌朝目覚めると、妻は朝食の仕度をしていて、味噌汁の良い香りがして来ます。
日本に帰って来てからはホテルの食事以外、店屋物かコンビニの弁当しか食べていなかったので、
久し振りの妻の手料理に一瞬喜びましたが、今の妻との関係を考えれば食べる気になれません。
「俺のはいらないぞ。おまえの汚れた手で作られた物など、口に入れる気に成れない。そこのコ
ンビニに行ってパンを買って来い。パンは1個でいいが牛乳も忘れるな。」
妻は慌ててエプロンを外すと、財布を持って走って出て行きました。
「何だこのパンは?奴はこんなパンが好きなのか?俺の好みも忘れたのか?俺が好きなのは干
しぶどうの入ったパンだ。」
別に何のパンでも良かったのですが、一言でも文句を言ってやらないと気が収まりません。
この様な事を続けていては駄目だと思いながらも、止める事が出来ないのです。
この様な事を続けていては、妻が狂ってしまうかも知れないという思いも有りましたが、私の方
が既に、精神的におかしくなって来ているのかも知れません。
干しぶどうパンを買って、走って戻ってきた妻に。
「悪い、悪い。タバコを頼むのを忘れた。」
妻は銘柄も聞かずにまた小走りで出て行くと、私が以前吸っていたタバコを覚えていたので、そ
れを買って来たのですが、私は赴任中に向こうで軽いタバコに変えた為に、日本に帰って来てか
らも、以前とは違う銘柄の軽い物を吸っていました。
今の状態では、妻はそこまで気付く筈が無いと思っていても、私は嫌味ったらしく残り少ないタ
バコを持って来て、妻の目の前に置き。
「それも稲垣が吸っていた銘柄か?俺が今吸っているのはこれだ。見ていて知っていると思って
いたが、俺の事などもう眼中に無いか?」
「ごめんなさい、気が付きませんでした。すぐに交換して来ます。」
「それでいい。おまえの好きな男と同じタバコを吸ってやる。」
「支店長はタバコを吸いません。」
流石の妻も私の嫌がらせに怒れて来たのか、少し語気を強めて言いました。
しかし私は、それがまた面白く有りません。
「そうか。タバコを吸わない男がおまえのお気に入りか。それは悪かったな。今時タバコを吸う
人間なんて最低だと言っていなかったか?さすが40代で支店長になれる様なエリート様は、俺
の様な人間とは違うな。おまえが俺を裏切ってでも、一緒になりたい訳だ。」
「そんな事は思っていません。それに支店長と一緒になりたいなんて思っていないです。」
「どうかな?どうせ2人で俺を馬鹿にしていたのだろ?今時タバコを吸っている駄目人間と笑
っていたのだろ?」
「いいえ、支店長も以前はヘビースモーカーでした。タバコを吸う人がどうとか、出世がどうと
かではなくて、お医者様に止められたので今は吸っていないだけです。」
「俺がタバコを変えた事も気付かないおまえが、流石にあいつの事は何でも知っているのだな。
将来を共にする、愛する旦那様の事は何でも知っているという訳か。」
また僻みの様な、嫌がらせを言ってしまいました。
何を言っても私の気が収まる事は無いのに、私自身、いつまでこの様な事を続けてしまうのだろ
うと不安に成ります。
「言い忘れたが、今日、奴の奥さんが来るぞ。」
それを聞いた妻の顔が蒼ざめて行き。
「許して下さい、私は会えないです。典子さんに合わせる顔が有りません。とても会えないです。
どうか許して下さい。」
「そうか、典子さんと言うのか。おまえがしてしまった事の責任ぐらい自分で取れ。会って謝罪
しろ。奴と再婚したいのなら、ついでに離婚して下さいとお願いしたらどうだ?」
私の嫌がらせも妻の耳には入らない様で、ただ俯いていて、少し体が震えている様にも見えまし
た。
[3519] インプリンティング 23 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/24(Wed) 20:27

昼食に親子丼をとったのですが、妻は箸もつけません。
「どうした?食べろ。」
「典子さんに会うのだけは許して下さい。典子さんには会えないです。」
「子供みたいな事を言うな。離婚を前提の別居か何か知らないが、今はまだ夫婦だ。頭の一つも
下げられないのか?もういい、その話は後だ。折角俺が注文してやった物を食べない積もりか?」
妻は一口食べましたが、また箸を置いてしまいました。
「どうして食べない?奴の言う事は何でも聞いて、あんな卑猥なパンティーまで穿いていたおま
えが、俺の言う事は、おまえの身体を心配して言っている事すら聞こうとしない。本当なら、俺
は稲垣や奥さんに会いたくなければ会わなくても良い立場だ。それを一緒に居てやろうと思って
いるのに。もう分かった。俺は出掛けるから3人で話し合え。」
すると妻は口いっぱいに頬張り、お茶で流し込む事を繰り返し、時々吐きそうになっています。
「そうだ。残さず全て食べろ。」
空腹も辛いのですが、食欲も無いのに無理やり食べさせられるのも同じ位辛く、一種の拷問とも
とれます。
妻を言葉で虐めるだけで無く、身体への虐めを始めた自分が恐ろしくなりました。
夜になって稲垣から電話がかかり、既に途中まで来ていたのか、それから10分ほどで来た奥さ
んは、小柄で可愛い感じの方なのですが、ここに来る途中も泣いていたのか、目の回りの化粧が
落ちていて、折角の可愛い顔が台無しです。
私が妻の待つ座敷に案内すると、部屋の隅でうな垂れて正座している妻を見つけて駆け寄り、前
に座って妻の両肩を掴んで揺すり。
「どうして?どうして智子さんなの?どうして?」
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
私があえて止めずにいると稲垣が。
「もう、そのぐらいにしておけ。悪いのは俺だ。」
別居の原因が奥さんの浮気では無いと確信していた私は、私と同じぐらい辛いで有ろう奥さんに
対しての、横柄な口の利き方に怒りを覚え。
「悪いのは俺だ?何を格好つけているんだ?まだ女房の気を引きたくて、いい男を演じているの
か?悪いのはおまえだと認めているのなら、おまえ一人で全ての責任を、今すぐにとってもらお
うじゃないか。」
「どの様に責任をとらせていただけば良いですか?」
「馬鹿か?責任のとり方も分からないで、偉そうに言うな。泥棒が捕まってから、泥棒は俺だと
威張っているのと何も変わらないぞ。」
「すみません。威張っていた訳では。」
「今日はどの様に責任をとって、どの様に償うのか考えて来ただろうな?」
「ご主人の気が済む様に、出来る限りの事は致しますので、どうかご提案頂けないでしょうか?」
「俺に言わせてもいいのか?出来る限りの事をしてくれるのか?それなら、おまえが何度も何度
も汚した女房の身体を、以前のきれいな身体に戻してくれ。俺の壊れた家庭を元に戻せ。俺は一
生この事を忘れずに、苦しんで生きなければならない。そんな人生は嫌だから、俺からこの記憶
を消してくれ。時間を単身赴任の前に戻してくれ。」
その時、稲垣の奥さんは声を出して泣き崩れ、妻は私の前に来て畳に額を擦り付けながら。
「あなた、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
しかし私は、そんな妻を無視して。
「おい、何とか言えよ。おれの希望を出来る限り叶えてくれるのだろ?」
「出来ません。どれも出来ないです。どうか私に出来る事にして下さい。お願いします。」
「そうか。それなら現実に出来る事を頼もう。去勢してくれ。いや、全て取ってしまって、性転
換してくれ。そうすれば過去は消せなくても、今後は少し安心出来るかも知れない。どうせこの
様な事が平気で出来る2人だから、今も謝りながら腹の中では舌を出しているのだろ?これから
も目を盗んで会うのだろ?おまえが女になれば少しは安心出来る。これなら現実に出来る事だ。」
無理を言っているのは分かっていまが、これは私の本心なのです。
[3523] インプリンティング 24 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/25(Thu) 19:53

稲垣も妻と同じ様に額を畳につけて。
「すみません。私には出来ません。」
「努力するから何でも言ってくれと言いながら、何もしてくれないのだな。俺にこれだけの苦し
みを与えておきながら、銀行には知られたくない。性転換も嫌だ。おまえは本当に償う気は有る
のか?おまえは何も失わないじゃないか。」
すると妻が話しに割り込んできて。
「私が悪かったです。あなたを裏切ったのは私です。あなたには私が償います。どの様な償いで
もします。あなたの言う事なら何でもします。」
妻の稲垣を庇う様な言葉で更に頭に血が上り、ネクタイを持って来ると妻に投げつけて。
「それなら死んでくれ。おまえと結婚した事が人生最大の汚点だった。今からでは人生のやり直
しは出来ないかも知れないが、過去の汚点だけは消し去りたい。それで首を吊って死んでくれ。
ただし、おまえの遺体なんて引き取りたくは無いから、誰にも見つからない様な所で死んでくれ
よ。」
妻は、体に当たってから目の前に落ちたネクタイを見詰めたまま動きません。
「何処で死のうか考えているのか?そうか、俺が無神経だった。俺が身に着けていた様な物で死
にたくないか。死ぬときぐらいは、愛する人の物で死にたいよな。稲垣、おまえのベルトを渡し
てやってくれ。」
それを聞いた妻はネクタイを力一杯掴んだのですが、やはり動こうとはしませんでした。
「間違っても車に飛び込む様な真似はするなよ。おまえの様な人の心も持たない人間の為に、見
ず知らずの人に迷惑を掛けるなよ。」
当然、妻は出来ないと言ってすぐに許しを請いながら、泣き崩れると思っていたのですが、妻は
そのままの状態で動かず、涙は流していても泣き崩れる事も無かったので、私の目論見は狂い、
思惑通りに事が進まないことにも腹が立ちました。
何度謝らせても私の心が晴れる事はないのですが、それでも常に謝罪の言葉を聞いていないと不
安なのです。
私が次に思いついたのは娘の事でした。
「理香の事は心配するな。おまえの様な女にならない様に、俺がしっかりと育てる。」
すると妻は顔を上げて、縋る様な目で私を見詰め。
「ごめんなさい、出来ません。私には出来ません。理香を残して死ぬなんて出来ません。死ねば
あなたの顔も見られなくなってしまう。許してください。他の事なら何でもします。」
「理香?今頃何を言っているのだ?今迄散々理香を放りっぱなしで、こいつに抱かれて喜んでい
たおまえが、理香を残して死ねない?そんな物ただの言い訳だ。自分が死にたくないだけだ。そ
れに、あなたの顔が見られなくなる?それも言うならこいつの顔だろ?言い間違えたのか?それ
ともお得意のご機嫌取りか?あなたの言う事なら何でもすると言いながら、死んでくれと言えば
死ねないと言う。本当にお前の言う事はその場凌ぎの嘘ばかりだな。」
その時稲垣が妻に助け舟を出し。
「お願いします。死ねなんて言わないで下さい。お願いします。」
「またまた色男のご登場か?何を偉そうに言わないでくれだ。それならおまえが代わりに死ねる
のか?死ぬどころか、ちょん切る事すら出来ない奴が格好ばかりつけるな。」
その時、奥さんが一際大きな声で泣き出したので、怖い思いをさせて奥さんまで苦しめていると
知り。
「奥さん、すみません。折角来て頂いたのに、俺の怒りばかりぶつけてしまって。でも奥さんも
これを見れば、私の怒りを少しは分かって頂けると思います。おい、死ぬのは許してやるから、
奥さんの前に立ってスカートを捲ってみろ。」
妻は奥さんの近くまでは行ったのですが、その様な事が出切る筈も無く、ただ立ち尽くしていま
す。
「何でもするからと言うので、死んで詫びろと言えばそれは出来ないと言う。スカートを上げて、
お前達のしていた恥ずかしい行為を見てもらえと言っても、それも出来ない。何でもすると言う
のは、いったい何をしてくれると言うのだ?これも嘘、あれも嘘、嘘、嘘、嘘、おまえが俺に言
った事で、本当の事は何も無い。」
すると妻は顔を横に向けて目を閉じ、スカートの裾を持ってゆっくりと上げ始めました。
「もっと上げろ。パンティーが完全に出てしまうまで上げろ。」
私が後ろからパンティーを一気に下ろすと、俯いていた奥さんは顔を上げ。
「智子さん、これは?」
そう言ってから目を逸らすように、また俯いてしまいました。
「稲垣、おまえがやったのだな?おまえが剃ったのだな?」
「・・・・はい・・・・すみませんでした。」
「智子。確かこれは水着を着る為に、自分で剃ったと言っていなかったか?おまえの人生は嘘ば
かりか?どうせ俺と結婚したのも嘘だったのだろ?好きでも無いのに嘘で結婚したのか?」
「違います。」
「何が違う?本当は俺と付き合う前、こいつの所に泊まった時から関係が有って、それからも、
ずっと続いていたのではないのか?俺はもう何も信じられなくなった。」
私の言った事が当たっているとすれば、結婚してからも妻にはもう一つの顔が有り、私に見せて
いた顔が妻の全てだと、ずっと思っていた私は間抜けな道化師だった事になります。
[3524] インプリンティング 25 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/25(Thu) 19:55

私が話し終わると、ずっと泣いていた奥さんが妻の前に座り。
「智子さん、本当なの?私はずっと気になっていました。あの時主人が、昨日は夜遅かったので
一晩泊めたと自分から話してくれて堂々としていたし、あなたにも悪びれた様子は無かったので、
主人を信じよう、智子さんを信じようと思ったけれど、ずっと私は気になっていた。あの時から
の関係なのですか?もしもそうなら、私の人生は何だったのだろう。」
「ごめんなさい。典子さん、ごめんなさい。でもあの時は、典子さんを裏切る様な事はしません
でした。それだけは信じて。」
「裏切る様な事はしなかった?奥さん、こいつらの感覚では、キスはしたがそれは裏切では無い
そうだ。一晩中ベッドに寝て抱き合っていたけれども、裏切った気持ちは無いそうだ。それに、
健康な男と女が狭いベッドで抱き合ってキスしていても、他には何も無かったそうだ。」
奥さんは、また妻の両肩を掴んで揺すりながら。
「嘘だと言って。智子さん、キスもしなかったと言って。抱き合っていたなんて嘘だと言って。
そうでなければ、あの日からの私の人生全てが無駄に思えてしまう。」
奥さんは紙に包まれた何かを出すと、何も答えずに泣いている妻の目の前で開き。
「これは智子さんの物なの?それだけでも教えて。お願いだからこれを見て。」
妻は一瞬見たものの、すぐに顔を背けて黙っていたので、私が近くに行って見せてもらうと、そ
れは米粒2つ分ほどの、蝶の形をした小さな金属でした。
これは私が3回目の結婚記念日にプレゼントした、イヤリングの先の花の中心に付いていた物で
す。
妻は可愛いと言ってよくつけてくれたのですが、片方の蝶を何処かに落として来てしまったので、
なんとか修理出来ないか購入店に持って行った覚えが有ります。
「これは妻のイヤリングの先に付いていた物です。これを何処で?」
「バスルームの脱衣場です。9年前に私の親戚で不幸が有った時に、子供を連れて泊まりで実家
に行っていたのですが、帰った日の夜お風呂に入ろうとした時に、脱衣場の隅に光る物を見つけ
ました。手に取ると蝶の形をしていたので、最初は子供の玩具の何かかとも思いましたが、玩具
でこの様な物が付いている物に心当たりがなく、これは何かアクセサリーの一部だと思いました。
そう思うと悪い方にしか考えは行かずに、ずっと主人に問いただそうと思って大事に持っていた
のですが、結局、主人の答えを聞くのが怖くて9年間も聞けずにいました。」
奥さんは今まで稲垣に言えなかった胸の内を、熱く話し出しました。
「私はずっと自分に自信が無かった。付き合っている頃から、主人が智子さんの話をする度に、
心配で仕方がなかった。智子さんから電話が掛かってきた時や、3人で食事に行った時に、私に
は見せた事の無い様な主人の笑顔を見る度に、不安で仕方がなかった。私は可愛くも無いし、プ
ロポーションだって智子さんみたいに良くないし、学校だって高校しか出ていない。私なんかと、
どうして付き合ってくれているのか不思議だった。どうして一流大学を出たエリートの主人が、
私なんかと結婚してくれたのか不思議だった。一晩一緒にいたと言われた時から、ずっと智子さ
んの影に脅えていた様な気がします。でも、主人が私の事をどう思っていようとも、私が主人を
愛しているのに変わりは無いのだから、例え主人が私を愛してくれていなかったとしても、一緒
に居られればそれでいいと、自分を納得させていました。主人に何度か女の影を感じた時も、相
手が智子さんで無ければ、ただの遊びだから我慢しようと思ってきました。でも、智子さんだけ
は嫌だった。主人や2人の子供達との、幸せな生活を壊される気がして怖かった。」
「典子、そんな事を思いながら・・・・・・・・すまん、許してくれ。」
その時稲垣は、私の前で初めて涙を見せました。
奥さんは私と違い、ずっと疑っては信じ、信じては疑って長い間苦しんで来たのかも知れません。
私は奥さんの話を聞きながら、9年前を思い出していました。
9年前といえば娘が生まれる前の年で、子供が出来ないで悩んでいた時期です。
私と酷く言い争った翌日の夕方に、妻が会社に電話をかけて来て、少し冷静になりたいので、家
に戻らずに銀行から直接友達の家に行って愚痴を聞いてもらうので、帰りが遅くなるのから外で
食事を済ませて来て欲しいと言われた事が有りました。
私も言い過ぎたと反省していて、次の日が休日だった事も有り、一つ返事で快く承諾したのです
が、妻は11時を過ぎても帰って来ず、よく考えると妻にその様な事を話せる友人がいる事も知
らなかった上に、当時は携帯も持っておらず連絡の取り様が無かったので、何処に行ってしまっ
たのか心配で、ずっと寝ずに帰りを待っていました。
結局朝になっても帰って来ずに、私はいつしか眠ってしまいましたが、昼前に目覚めると妻は隣
で眠っていて、その後も夕方まで死んだ様に眠り続け、目覚めてから何処に行っていたのか聞く
と、友達の家で朝まで悩みを聞いてもらっていたと言いましたが、今にして思えばその友達とは
稲垣の事で、その時の様子だと、一睡もせずに朝まで愛を確かめ合っていたのだと思います。
悪い事は出来ないもので、おそらく脱衣場でイヤリングを外した時に落としてしまい、これから
稲垣と一つになれる事に興奮していたのか、蝶が取れてしまった事にも気付かずにいたのでしょ
う。
「智子、何か言ったらどうだ?イヤリングを落として来た時も、関係をもったのだな?」
私が妻に問いただしても、妻は何も反論せずにただ泣いている事から、その時にも関係が有った
事を確信しました。
何も答えない妻に代わって稲垣が口を開き。
「回数では無いかも知れませんが、その時一晩だけ関係を持ちました。先に話していた、結婚前
に私の所に泊まった時は、本当にキスだけです。1年前からこの様な関係に成ってしまいました
が、それより前は、本当にその一晩だけです。申し訳有りませんでした。典子、すまん。」
稲垣の顔付きや話し方から、この事は本当だと感じましたが、散々嘘をついてきた2人です。
まだ何か隠していそうで、全てを信じる事は出来ません。
何より、例え一晩だけだと言っても私を裏切っておきながら、その後何食わぬ顔で生活していた
妻に対して、より強い怒りを覚えます。
[3527] インプリンティング 26 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/26(Fri) 21:44

私は妻と2人だけで話したくなり。
「今後の事ですが、多少でもお互いの夫婦がどうするのか決まっていなければ、話し合いも違っ
て来ると思うのです。来て頂いていて申し訳ないのですが、妻と2人だけで話してもいいです
か?」
すると奥さんは頷いて。
「私も今、主人と2人で話し合いたいと思っていました。」
稲垣夫婦はそのまま座敷に残り、私達は寝室に行き。
「ずっと俺を騙していたのだな。身体の関係はあの時だけかも知れないが、ずっと繋がっていた
のだな?」
「繋がっていた?いえ、そうかも知れません。結婚してから偶然同じ支店になるまでも、何度か
電話で話したりしていました。同じ支店になってからも、関係を持ったのは1晩だけですが、2
人だけで食事に行った事も有ります。理香が生まれてからは疎遠になって、連絡も取り合ってい
ませんでしたが、支店長として彼が来た時、正直嬉しかったです。」
「あいつとはどの様な関係なんだ?お互い、そんなに好きなら、奴が婚約を破棄してでも結婚す
れば良かったんだ。どうして俺と結婚した?」
「違うのです。彼とはその様な関係では有りません。あなたを愛したから結婚したし、今でも愛
しているのはあなただけです。彼とは結婚したいとは思っていなかったし、ましてや抱かれたい
なんて思った事は一度も有りません。」
私には妻が理解出来ません。
「それならどうして抱かれた?レイプされたのか?今回もずっと脅されていたのか?」
「違います。彼はその様な事はしません。」
「それなら聞くが、抱かれて感じなかったのか?気持ち良くならなかったのか?」
「行為中は興奮もしたし、気持ち良くもなっていました。抱かれていて凄く感じてしまいました。
ごめんなさい。でも、彼とセックスしたいなんて思った事は有りません。」
聞けば聞くほど、迷路の奥深く迷い込んで行く様な感覚です。
私は妻の言葉を何とか理解しようとしましたが、やはり訳が分からずに黙っていると、暫らく沈
黙が続いた後。
「彼の言う事に間違いは無いと思っていたし、彼の言う通りにしていれば、私は幸せになれると
信じていました。でも、愛しているのはあなただけです。」
その後も、妻の涙ながらに話す稲垣に対する思いを聞いていて、私にも少しだけ分かった事が有
ります。
妻は父親に裏切られ、その後も男の嫌な面ばかり見せられて男性不信になりました。
その後母親や姉にも裏切られた形になり、男性不信と言うよりは、人間不信に陥っていたのかも
知れません。
信じられるのは自分自身だけになってしまい、猛烈な孤独感の中、気が付くと稲垣だけが、唯一
身近に感じられる存在になっていたのでしょう。
まだ自分以外の人間を信じる事の出来る、心の拠り所になっていたのかも知れません。
妻が生まれて初めて接した、真剣に妻の事を思い考えてくれる、絶対に妻を裏切らない存在だと
思ってしまったのでしょう。
鳥は生まれて初めて見た動く物を、親だと思い込むと聞いた事が有ります。
それと同じ様に、稲垣は妻が接した初めての信頼出来る誠実な男で、それは次第に男女の枠を越
えた、回りにいる人間とは全く違う、特別な存在だと潜在意識の中に刻み込んでしまったのかも
知れません。
「上手く説明出来なくてごめんなさい。彼は違うのです。父親とも違うし、兄とも違う。結婚を
したい相手でも無いし、恋人という存在でも無い。そうかと言って友人とは全く違います。」
私が思うに、言い換えればそれら全てなのでしょう。
いいえ、神とまでは言いませんが、それらを越えた存在なのかも知れません。
もしもそうだとすると、これは夫婦の愛情や絆を遥かに越えた感情だと思え、絶望的になってし
まいました。
「終ったな。俺達は完全に終ってしまったな。いや、智子の中ではずっと前から終っていたのか
も知れない。離婚しよう。」
「嫌です。離婚したく有りません。私はあなたを愛しています。正直、彼に言われて数ヶ月前ま
で離婚を考えていました。どの様にすればあなたを少しでも傷付けずに離婚出来るか考えていま
した。あなたと別れて彼と再婚するには、どの様にすればよいのか真剣に考えていました。彼は
今でも、私と一緒になりたいと思ってくれていると思いますが、私はあなたと別れるなんて出来
ないと気付きました。自分の幸せを捨ててでも、私と理香の幸せを真剣に考えてくれている彼に
は言えずに、だらだらと関係を続けてしまいましたが、何が有ろうと私はあなたと別れる事など
出来ないと知りました。どの様な形でもいい。あなたの側にいたい。離婚なんて言わないで下さ
い。それだけは許して下さい。」
「だらだらと?もう無理をするな。本当にそう思ったのなら、関係を切る事が出来たはずだ。ど
の様な理由が有ろうとも関係を続けた。いや、智子からは切れなかったのかも知れない。それが
全ての答えではないのか?」
泣きじゃくる妻に。
「明日、出て行ってくれ。これで終わりにしよう。理香は俺が育てる。」
妻は顔を上げると、私の目を見て必死の形相で。
「それは出来ません。理香をあなたに任せる事は出来ません。あなただけに負担を掛ける事は出
来ません。」
「出来るさ。理香の事を負担だなどとは思わない。それに、おまえには任せられない。おまえは
今まで理香の事など考えもせずに、奴に抱かれていただろ?」
「違うの。理香はあなたの子供ではないの。彼の子供なの。あっ・・・・・・・・・。」
私は自分の耳を疑うと同時に、目の前が真っ暗になり、思考回路は停止してしまった様です。
[3528] インプリンティング 27 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/26(Fri) 21:46

何処か遠い所で妻の声が聞こえます。
「あなた、ごめんなさい。あなた、ごめんなさい。」
その声は徐々に近くなり、私を戻りたくない現実へと戻してしまいます。
現実に戻れば、悲しみから気が狂ってしまうのではないかと思っていた私は、現実に戻るのが怖
かったのですが、人間の脳は上手く出来ているのかも知れません。
許容量以上の悲しみが急に襲って来た時には、心が壊れてしまわない様にそれらの全てを受け付
けない様にして、守ってくれているのかと思えるほど冷静な私がいました。
きっと後になってから、今以上の悲しみが襲って来るのでしょうが。
「以前から分かっていたのか?」
妻は流石にもう離婚を覚悟したのか、泣いてはいても、割とはっきりとした口調で。
「いいえ、考えた事も有りませんでした。彼から聞くまでは・・・・・・。」
「奴から聞いたのはいつだ?どうして奴に分かる?」
「彼が支店長として赴任してきて、4ヵ月ほど経った頃です。」
妻の話によると、稲垣のアパートで私と妻の血液型、娘の血液型を聞かれたそうです。
血液型で性格判断でもするのかと思い、私と妻がA型で、娘がO型だと答えると。
「やはりそうか。」
妻が、何がやはりそうなのか聞くと、稲垣は立ち上がって窓から外を見ながら。
「お互いA型の夫婦からは、A型の子供かO型の子供しか生まれない。稀にそうでは無い子供が
生まれるケースも有るらしいが、そんな確率はごく僅かで無いに等しい。またA型同士の夫婦か
らはA型の子供が生まれる確率が高いらしいが、理香ちゃんの血液型はO型。俺もO型だ。」
妻には稲垣の言っている意味が分かり。
「そんな事は有りません。確率はそうかも知れないけれど、理香は主人の子供です。」
「どうして分かる?DNA検査でもしたのか?智子は理香ちゃんが生まれてからも、2人目が欲
しくて避妊をした事が無いだろ?しかし子供は出来ない。その前だって5年も出来なかった。結
局、十数年避妊しないでセックスしていて、出来たのは理香ちゃん1人だけだ。その理香ちゃん
が宿った時期に私と関係をもっている。」
「でも・・・・あの時は、子供は出来ないと・・・・・・・・・・・。」
「私も最近までそう思い違いしていたが、よくよく思い出せば、出来ないのではなくて出来る可
能性が低いというだけで、全く可能性が無い訳では無かった。だからその前に1度・・・・・・・
君にもそう説明した覚えが有る。」
妻が、その時期私とも関係をもっていたので、それだけでは決められないと言って食い下がると。
「私も智子も、不妊の原因は智子に有ると決め付けていたが、もしもご主人に原因が有ったとし
たら?何度も言うが、ずっと避妊せずにセックスしていても、理香ちゃん以外出来なかったじゃ
ないか。」
妻は信頼している稲垣の言葉に、次第にそうかも知れないと思う様になり、問題が大き過ぎて涙
も出ずに、座り込んだまま立てなかったそうです。
それを聞いた私も、その確率が高いと思いました。
昔、子供を生めない嫁はいらないと、一方的に離縁された時代も有ったそうですが、私もそこま
で酷くは無いにしても、男の勝手な考えで、妻に原因が有ると思い込んでいた時期が有りました。
思い出せば、妻が一晩外泊した後、それまで妻から誘われた事は一度も無かったのに、妻は毎晩
の様に求めて来た様な記憶が有ります。
その時は無断外泊をした事で、私の機嫌をとっているのだろうと思ったのですが、今考えると、
稲垣と関係をもってしまった罪悪感からしていたのか、または稲垣との間に子供が出来てしまっ
た時の事を考えて、私の子供だと誤魔化す為に、セックスをせがんで来たのかとも思え。
「あいつとの子供が、出来てしまっても良い覚悟で抱かれたのか?それとも、あいつの子供が欲
しくて抱かれたのか?」
「違います。あなたとの子供が欲しくて・・・・・・・・・・。」
私との子供が欲しくて稲垣に抱かれたとは、さっぱり意味が分かりません。
「理香の事は俺にとっては何よりも大切な事だ。俺と喧嘩して、あいつの所に行ったところから、
詳しく聞かせてくれ。」
話している内に妻は、娘に会って帰って来た時の様な状態になっていて、淡々と詳しく話し出し
ました。
[3532] インプリンティング 28 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/27(Sat) 19:52

当時妻は子供が出来ない事で、軽いノイローゼの様な状態になっていて、時々何もかもから逃げ
出したい気持ちに襲われ、そのような時は、つい私に当たってしまっていたと言います。
しかし私は情け無い事に、妻が多少辛そうだと思っていても、そこまで精神的に追い込まれてい
たとは気付かずに、妻が私に突っ掛かってくる事が不愉快で、つい言い争いになっていました。
「特にお義母さんから、子供はまだかと言われるのが辛かったです。お義母さんは、私を実の娘
の様に思っていてくれていて、悪気なんて無く、本当に心配してくれているのが分かっていただ
けに、余計辛かったです。それと、単純に子供が欲しかったのも有りましたが、私は一人になる
のが怖かったから、どうしてもあなたの子供が欲しかった。あなたの子供を生んで、あなたとの
絆をもっと強くしたかった。そうなればお義母さんとも、血の繋がりは無くても子供を通して、
もっと本当の親子の様になれると思った。」
「それなら尚更、どうして稲垣と関係を持つ事になったのかが理解出来ない。本当に俺との絆を
強くしたかったのなら、稲垣なんかに抱かれないだろ?言っている事と、やった事は逆の事だ
ろ?」
銀行は昼の間も営業している為に交代で昼食をとるそうですが、私と言い争った翌日、偶然稲垣
と昼休みが重なり、稲垣を見つけると隣に座って、子供が出来ない事で私との仲が、最近ギクシ
ャクしていると話しました。
「今仕事の事で頭がいっぱいだから、一人にしてもらえないか?」
妻を女性として意識していた稲垣は周囲の目が気になったのか、素っ気無く答えると席を立って
しまい、残された妻は落胆を隠せませんでした。
稲垣の態度でより落ち込んでしまい、今夜もまた何かで私と言い争いになってしまわないか心配
になり、重い気持ちで銀行を出た時に稲垣が追い掛けて来て、今日はもう少しで帰れそうなので、
喫茶店で待っていて欲しいと言われたそうです。
一度は素っ気無い態度をとられているだけに、やはり気に掛けてくれていたという喜びは大きく、
私に電話をしてから喫茶店で待っていると、入って来た稲垣は座りもせずにレシートを掴んで言
いました
「ここではお客さんに会うかも知れないので、要らぬ誤解を受けても嫌だから、私のマンション
へ行って話そう。」
妻は稲垣の奥さんにも聞いて貰えると思い、稲垣に案内されて当時住んでいたマンションに行く
とリビングに通され、ソファーに腰を下ろした時、初めて奥さんは実家に行っていて留守だと聞
かされました。
疚しい関係では無いにしても奥さんに悪い気がして、一度は帰ろうと思ったのですが、じっと見
詰める稲垣の目と目が合った時に、この人なら助けてくれると思ってしまい、不妊で悩んでいる
事を話し、どの様にしたら夫婦の仲が上手く行くのか相談すると、何も言わずにただ妻を見詰め
ていた稲垣が話し出した内容は、信じ難いものでした。
「このままでは、いずれご主人との仲が取り返しのつかないほど壊れてしまう。全ての原因は子
供が出来ないという事だけだ。それならば、子供が出切る様にすればいい。」
「それが出来ないから悩んでいます。お医者さんにも行きました。でも駄目なのです。」
「ご主人も行ったのか?医者は何と言っていた?」
「主人はいずれ行くと言っていて、まだ行ってくれませんが、私はホルモンのバランスが崩れて
いると言われたので、おそらく原因は私に有ると思います。」
「婦人科の医者をしている友人がいるのだが、智子さんの話を聞きながら彼が言っていた事を思
い出していた。彼が言うには、不妊の中にも色々有って、病的な物には医学的な治療が必要だが、
精神的なものも多く、その中には『慣れ』と言うのも結構有るそうだ。」
「慣れ?・・ですか?」
「ああ。動物には発情期が有って、その時に交尾をするのだが、子孫を残す目的だけで交尾をす
る彼らは余程の事が無い限り、ほとんどが妊娠するそうだ。そうでないと種族が絶えてしまう。
ところが人間には、その様な発情期は無くて年中発情している。言い換えれば年中発情期だとも
言える。いつでも妊娠可能だ。しかし、やはり人間も動物の中の一つにしか過ぎないので、体質
によっては、本当の発情期にセックスしないと、ただの排卵日にしても妊娠し難い人が少なく無
いらしい。」
「いつが発情期なのですか?」
「言い方が悪かったが、残念ながらどの季節が発情期だというものは無い。身体が発情期の様な
状態になっている時。つまり、身体が発情している時が発情期だ。」
「では、いつ発情しているのですか?」
「新婚時代は身体も昂っていて、多くの場合、その時期は発情期に当たるらしいのだが、その後
は人それぞれなので、いつが発情期なのか、いつ発情しているのかは分からないらしい。ただ問
題なのが、その後発情期が来なくなってしまう場合が有る。身体が発情しなくなってしまう場合
が有る。興奮や快感は普通に有るので、勿論本人は気付いていないが、夫婦間でのセックスに慣
れてしまい、身体が発情期にならないケースが結構有ると言っていた。それが彼の言う『慣れ』
による不妊症だそうだ。そういう人の特徴は、1番にホルモンのバランスを崩してしまっている
場合が多いと言っていた。2番目が、絶えずイライラしてしまう。本人は他の理由からイライラ
していると思いがちだが、本能的に子孫を残そうとしているのに、身体がその状態にならない。
身体が発情しない事のズレから来るイライラらしい。言い辛いのだが、今の智子さんは『慣れ』
から来る不妊そのものだと思う。」
こんないい加減な話に、切羽詰っていた妻は真剣に耳を傾けました。
「どうすれば良いのですか?どうすれば正常になるのですか?」
「残念ながら発情を促す薬などは無いらしい。気持ちを興奮させる薬は有っても、気持ちの興奮
と身体の発情とは全く異なるものらしい。」
妻は稲垣の話にのめり込み、ずっと身を乗り出して聞き入っていましたが、治療法や薬も無いと
聞き、気落ちして俯いてしまうと、その時を待っていたかの様に。
「ただ、方法が無い訳では無い。他の牡と交尾をする。そうすれば、それから暫らくは発情期と
なる。つまり、ご主人以外の男とセックスをすればその刺激で発情し、その後2、3ヶ月は身体
が発情期に入る事が多いらしい。」
「でも、その様な事は聞いた事が有りません。」
一瞬期待して顔を上げた妻でしたが、内容が内容だけにふて腐れた様にそう呟くと。
「私もそうだった。しかし彼が言うには、この様な事を発表してしまえば、不妊で悩んでいる人
の浮気が増えてしまって世の中が乱れてしまうし、仮にご主人も納得してそうなった場合でも、
その時は良くても、後々その事で夫婦仲が悪くなってしまう可能性が高いから発表は出来ないら
しい。自分の患者にも浮気を進める事になってしまうから、とても言えないと言っていた。世間
に発表出来ないのは倫理的な観点からだと思う。」
この話を事実だと思い込ませる為に、稲垣は必死になって話していましたが、妻は疑っているの
ではなくて、稲垣の話を信じていても、自分には出来ないと思っていたのでしょう。
「そう言われてみればニュースでも時々有るだろ?男性関係の派手な女性に限ってすぐに妊娠
してしまい、子供を産んで殺してしまったとか、捨ててしまったとか。その様な女性は、それこ
そ絶えず発情期の状態になっていて、妊娠し易いのは事実らしい。」
何か良い方法が有るのかと、最初から興味深く聞き入っていた妻も稲垣の話が終わると、いくら
子供が欲しくても、やはりその様な事は出来ないと思い、また、その様な事を出切る相手もいな
いので、期待が大きかっただけに落胆も大きく、溜息をつくと黙って俯いてしまいました。
この様な嘘を咄嗟に考える事が出切るほど頭の回転が速い稲垣には、妻の気持ちなど手にとる様
に分かるのか。
「智子さんにその様な事が出来ないのはよく知っている。でも、君がみすみす不幸になるのを見
るのは忍びない。思い切って言うが、私が相手をしても良いと思っている。私もご主人や妻の事
を考えれば、とても出来ないのだが、君が幸せに成る為なら、どの様な罪でも甘んじて受ける。
私は一生罪悪感で苦しむかも知れないが、君がその分幸せに成ってくれれば、どの様な苦しみも
甘んじて受ける。」
ただ妻を抱きたいだけの言葉が、妻には分かりません。
潜在意識の中に、稲垣の事を信頼出来る特別な人間だと刻み込まれてしまっている妻には、少し
冷静になれば、誰にでも分かる事が分かりませんでした。
[3535] インプリンティング 29 投稿者:迷人 投稿日:2005/08/28(Sun) 18:05

妻の話を聞きながら、もう結果の出ている過去の事なのに、そんな嘘に騙されるなと心の中で叫
んでいました。
しかし、稲垣を信頼し切っていて、その上普通の精神状態では無かった妻は、まるでインチキ宗
教の教祖に騙されて行く信者の様に、稲垣の言う事を疑いもせず。
「それでは稲垣さんに悪いです。私の為に、その様な事は頼めません。」
「いや、私はずっと君の事を妹の様に、娘の様に思っていた。しかし思っていただけで、何もし
てあげられなかった。君が苦しんでいた時も、話を聞いてやるだけで何も助けてはあげられな
かった。」
「そんな事は無いです。沢山助けて頂きました。」
「そう言って貰えると嬉しいが、そうでは無い。今まで助けて上げられなかった分、今回は何と
か力になりたい。私の様な男が相手でも良ければ、私はどの様な罰でも受ける。」
この時点では、妻はまだ少し躊躇していましたが、それは私への罪悪感からではなくて、自分の
事で稲垣にも罪を負わせてしまうという、稲垣に対しての思いからでした。
妻の頭の中には、私との子供さえ出来れば、全ての問題は解決するという考え以外無く、喜ぶ私
や私の母、私の父に囲まれて、赤ちゃんを抱いている自分の姿が、既に見えていたのかも知れま
せん。
妻の頬を伝う一筋の涙を見た稲垣は、もう少しで妻は落ちると思った事でしょう。
実際、次の稲垣の話で、妻は私との破局の道を進んで行くのですから。
「今思ったのだが、こう考えたらどうだろう。これはセックス等では無い、ただの治療だと。実
際智子さんとセックスしたいと思った事は無い。これは君に魅力が無いとかその様な問題では無
くて、私にとってはその様な存在では無いという事だ。君もそうだと思うが、セックスの対照で
は無くて、それとは違う大切な存在だ。決して楽しんでセックスするのでは無いから、ご主人や
妻を裏切る訳では無い。楽しむどころか今そう考えただけでも胸が苦しい。その様な気持ちです
るのだから、決して裏切りなんかでは無い。これは治療だ。そう考える様にしないか?」
稲垣を信用していて、その上ノイローゼ気味だった妻は、結局、何の疑いもせずに稲垣の提案に
乗ってしまいました。
稲垣の欲望を満たす為の行為なのに、逆にお礼を言いながら。
稲垣は妻の話を聞いている内に、普通の精神状態で無い事にも気付き、妻を抱く為にこの様な嘘
で妻を騙したのでしょう。
最初、本当にこの様な嘘に妻は騙されたのか?この話は妻の作り話ではないかと思いましたが、
話の内容は信じ難いものでも、妻の話している様子は嘘だとは思えないものでした。
妻の事を、私よりは遥かにしっかり者だと思っていて、家計は勿論の事、家の事はほとんど妻に
任せ、安心して仕事に打ち込めました。
その妻がこんな事を信じ、騙されたのは、やはり信じ難い事でしたが、妻はそこまで精神的に弱
っていたと言う事なのでしょうか?
それとも、私の言うしっかり者と、稲垣のような人間を信じてしまう事は、また別の事なのでし
ょうか?
よく考えれば、世間では多々有ることです。
病気を治す為に、高額なお布施を払う。
悩みを解決したいが為に、高額な壷を買う。
そんなニュースを聞く度に、そんな奴が本当にいるのかと思いましたが、本当に切羽詰った悩み
が有る時に、実際、騙される人間は少なくないのでしょう。
心が弱っている人の、心の隙間に上手く入り込んでくる人間も少なくないのでしょう。
普通の精神状態の時には有り得ないと思う話でも、悩みを抱えていて心が弱っている時には、簡
単に騙される事も有るのではないかと思うと、妻の話も有り得ない話では無いと思え、質問を続
けました。
「それで、どの様なセックスをした?詳しく教えてくれ。」
私の知らない妻を知りたくて、必死の形相で聞きましたが。
「それは。・・・・・・。それは言えないです。許してください。」
最初から、すんなり話してくれるとは思っていませんでした。
聞けば怒りが増すことは分かっていて、何故この様な事を知りたいのか、自分でも分からないの
ですから。
逆に妻が話したくないのは、単に恥ずかしいだけなのか?
あるいは、私には言えない様な行為をしていたのか?
それとも、私に2人の愛を語り、これ以上私を怒らす事を得策では無いと思っているのか?
何より、妻と稲垣の2人だけの世界に、私に踏み込まれる事が嫌なのでは無いのかと考えると、
余計に聞かずにはいられません。

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