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北原夏美 四十路 初裏無修正

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WA 11/11(火) 19:09:21 No.20081111190921 削除
私、高島研二と薫子は47才と42才で2度目の結婚です。2度目と
言っても違う相手との再婚ではありません。私と薫子は一度離婚し、
又結婚したのです。再婚した後の話です。一人暮らししていた頃の
妻の回想が大きな部分を占めます。この物語の重要な要素ですので
省けません。冗長な話ですがご容赦下さい。

離婚したのは約3年半前の事です。小さいながらも、それなりの
商社を営んでいました。資金繰りが怪しくなり、銀行にも見放され、
町金融に手を出したのが始まりで、後は坂を転がるように、行き着く
ところまで行ってしまいました。まっとうな所からお借りした金は
それなりに待って頂いたり、金額を減らしてでも返済する事が出来ます。
しかし町金融にはそれが通じません。自宅の前で朝に晩に大声を出される
ようになり、このままでは妻にまで危害が及びそうに感じたのです。

幸いな事に自宅は担保に入っておらず、売却すれば町金融の債務は
返せると思っていました。ところが清算する段になって元金が3倍にも
なっている事を知らされます。自己破産し清算は出来たのですが、
町金融の嫌がらせは続きます。法的には私に何の落度はありませんが、
妻の事を考え離婚することにしたのです。

私が44才、妻、薫子が39才の時離婚しました。娘の朋子は京都の大学
付属高校の寄宿舎住まいです。娘には私達夫婦が離婚した事は知らさず
にいました。

薫子には『3年の内にはきっと君を迎えに行く』と、私は東京郊外の
千葉の北部の以前の住まいの近くにアパートを借りました。薫子は自分
の出身地、茨城の県庁所在地にやはりアパートを借り、そこで住むよう
になります。私のアパートからは100km程離れています。なにも、
そんなに遠く離れたところに借りる必要はなかったのですが、町金融の
事が頭にあり、出来るだけ遠くの場所にしたのです。それから薫子の
親元に近いと言う事もありました。

それと一番大事な要素は薫子の仕事です。自己破産した後も私は細々と
仕事を続ける事が出来ました。しかし自分の生活と娘への仕送りが精一杯
です、薫子の生活までは手が回りません。そんな時募集広告があったのです。
その会社の本社は東京ですが、製造事業所はその県庁所在地にあり、条件に
地元出身の人のみとありました。薫子はその面接に受かり、そこにアパート
を借りたのです。薫子のご両親の住いもその県庁所在地にありますが、
離婚したとは言え、ご両親に迷惑をお掛けしたくはなかったのです。
WA 11/11(火) 19:22:38 No.20081111192238 削除
一度、破産した人間が再度、身を立てようとするのは並大抵では
ありません。破産する前に懇意にして頂いていたお二人から
その会社の製品の商権をそのまま頂きました。幸いな事にその
製品のユーザーさん達も、新商法で起こした私の資本金5万の会社
から買っていただく事になります。人の情けが身にしみました。
新しい会社の住所も私のアパートです。

最初の1年は土曜日も日曜日もありません。仕入れ、営業、帳簿付け、
全て私一人でこなします。薫子に会いたいと思っても、会いに行ける
のは2ヶ月に一度位です。薫子から電話も毎日あったのが、週に3度、
2度と段々頻度も減ってきます。たまに会った時も抱きたい、抱きたい
と思っていても、疲れきった体が言うことをきかないのです。
そんな時、薫子は言ってくれるのです。

『私なら平気です。体を労わって下さい。私は何時までも待ちます』
と。

その言葉を励みに2年半が経ち、借家ですが一軒家を借りる事で出来、
曲りなりにも事務所も持つ事が出来ました。そして薫子と再婚した
のです。

妻に違和感を感じたのは再婚して今の家で最初の夫婦の営みを持った
時です。この2年半の間、妻が私のアパートに来た事は確か10回位
だったと思います。これは私が来ないようにと言ったからです。
まだ町金融の影があると思ったからです。しかし一人暮らし最後の
方は妻は殆ど私のアパートを訪れなくなりました。私が妻のアパート
に行ったのは十数回、抱いたのは数回だっと思います。その時には
妻の異変には気がついていません。その時には異変は無かったのか、
それとも私の気持ちが仕事に向いていた為か、今となっては解りよう
がありません。家で妻を抱いた時に異変を感じ取ったのは、仕事の
事を忘れ、妻に集中したからだと思います。

今までは妻は受身100%の女でした。私の男根を触る事も稀でした。
それが男根に手を添え口を寄せ、最後には貴方の精が欲しいとまで
言うのです、最後は妻の口に精を放って終わりました。それと妻の
陰毛が刈り揃えられているような気がします。妻との行為では灯り
をつけません、刈り揃えられたものかどうかは手の感触だけで、
はっきりとした確信は持てません。

「かおる、久しぶりだった。随分と積極的なような気がしたが」

薫子、本当はかおること言います。しかし、私はかおること呼ぶの
が何だか照れくさく、いつもかおるで通しています。

「ずっと貴方を待っていた。いつも今みたいにしたいと思っていたの。
愛しているの、貴方を」

そうだったのかと言う思いになります。しかし陰毛の事は言い出
せません。
WA 11/12(水) 17:51:03 No.20081112175103 削除
翌日は土曜日です。今は仕事も落ち着いて土曜日の半分は休み
を取っています。

「貴方、お話が」
「何だ、改まって」
「茨城でお勤めしていた会社なんですが、
来週から本社にお勤めします」
「それは前から聞いていたが、どうかしたのか」
「アルバイトではなくて、本社では正社員になるんです。
それに出張もあるかも知れないのですって」
「仕方がないな。今、君に勤めを止めろとも言えないし」

今はまだ、妻に勤めを止めさせる余裕はありません。本社は東京の
中心部にあります。ここから楽に通えます。

経理、決算等は近所の税理士さんにお願いしています、年間で30万円
くらいです。税理士さんの代わりに妻をと言う訳にはには行きません。
妻の給料を自分の家を持つ為にも当てにしなければいけないのです。

妻が本社に勤め始めて2ヶ月位経ったある日曜日、妻は近所のスーパー
に買い物に出かけました。携帯のコールが鳴っています。私の携帯の音
でも、妻の携帯の音でもありません、初めて聞くコール音です。何となく
胸騒ぎがします。コール音を頼りに探します。探している途中でコール音
が途切れます。しかしその音の方向をたどり探し当てました。何とキッチン
の上部収納棚に隠すようにありました。

どうして妻は携帯を二つ持っているのだ、しかも、どうしてこんな所に
隠さなければならないんだ。しかしこの時はまだ妻を疑う気持ちは無かった
のです。しかもこの携帯は妻の物とは限りません、誰かの物を預かっている
のかも知れないのです。携帯を見てみます、メールの着信があります。
中を見てみたい誘惑に駆られます。しかし、見る勇気がありません、
中を開いた事が妻にばれる事を恐れてしまったのです。
WA 11/12(水) 17:53:44 No.20081112175344 削除
携帯の中身を見る機会は以外に早く来ました。食事が済み、私が
風呂に入った後妻が風呂に向かいます。ひょっとしたら携帯はまだ
収納棚にあるかも知れないと、そこを探してみます。ありました。
着信メールは開封されています。最新の物を見てみます。月曜日
18:00Aホテルロビーで待つとありました。妻からの返信は了解
しましたと只それだけです。後のメールは全て削除されています。
妻のこの携帯の番号、メールアドレス、送信者の携帯番号、メール
アドレスを控えます。送信者の名前は山下常務と記されていました。

妻を問い詰めるのはまだ早いでしょう、仕事の連絡と言われれば
それまでです。今問い詰めれば、もし浮気であれば、これから警戒
するでしょう。それに私は妻を信じています。浮気である筈が無いと
思っています。しかしこの家に一緒に住みだしてこの2ヶ月の事を思い
浮かべます。最初の頃は今までの空白を取り戻すように毎晩愛し合って
いました。それが日にちが経つにつれ、その頻度も減り、その内に妻に、
今日は疲れたから、と拒否される事も増えました。12時を過ぎて帰る事
も増えましたが、仕事だから仕方がないと思っていました。

紹介が遅れましたが、妻の勤めている会社は中国を含めたアジアに小物
を輸出しています。妻が茨城で勤めていた部門は、その小物の製造事業所
だったのです。ある切っ掛けで妻の中国語の能力が認められ本社採用に
なったのです。中国からバイヤーが来た時は接待をする事もあるのです。
山下常務の名も妻からやり手の常務だと聞いた記憶があります。

「貴方、すみません、今日接待で遅くなります」
「そうか」

妻はそう言って出かけました。

浮気ではないと妻を信じていても、心にしこりが残ります。しこりを
残したまま今まで通りの生活が出来るとも思えません。妻が出勤した後、
朝一番で駅前の興信所に飛び込みます。妻の写真を渡し、会うであろう場所、
時間を伝えます。探偵さんの第一声は、これは簡単だ、これだけ材料が
揃っていれば一発だと言う事でした。簡単な調査でも纏めるのに半日はかかり、
報告書をもらえるのは火曜日の夕刻になるそうです。帰り際、探偵さんに
言われます。帰ってきた奥さんをよく見て下さい、浮気して帰れば普段と
違った行動をする筈です、風呂に直行というケースが多いようですと。
WA 11/13(木) 15:22:28 No.20081113152228 削除
事務所に戻ると今日中に処理しなければならない仕事が山ほど
あります。仕事に没頭している時は妻の事も忘れられます、いや、
忘れてはいませんが、頭の片隅に追いやる事が出来ます。4時を
回り仕事も一段落します。一度妻の事を思い浮かべるともう何も
手につきません。早々に仕事を仕舞います。家に帰って妻を待つ
のは何か釈然としません、かと言って飲み屋で陰気な顔をして一杯
傾けるのも私の生に会いません。結局事務所の冷蔵庫を開け、
ビールを飲みます。

2年半も待ってくれたあの妻が浮気などする訳がない。しかし、
隠すようにしていたもう一つの携帯、一緒に住みだして気がついた
妻の代わり様。浮気を打ち消す私の心に墨のように浸み込んで
いきます。探偵さんは結果が解り次第連絡すると言ってくれましたが、
それは断りました。結果が黒であれ、白であれ明日の夕方までは
知らずにおこう、それまでは綺麗なままの妻として見ておこうと思った
のです。

探偵さんが言った言葉、浮気した妻は帰ってきて普段と違った行動
をする。普段の妻がどうだったか良く覚えていません。普段着に
着替えて居間のソファーに座ってお茶を飲んでいたような気がします。
遅く帰ってきて、風呂に直行した時もあったかも知れません。
そんな程度なのです、如何に妻を見ていなかったかを思い知らされます。

私は11時ごろ帰宅します。外灯も家の灯りも点いていません。玄関を
開けて家の中に入っても寒々としています。私が妻より早く帰宅する
ケースは今までも数多くありました。今まではこんな感じはしなかった
のです、まるでもうここには妻が居ないような気がします。妻を信じて
いる筈の私の心がそうさせているのです。

風呂に入り、居間で又酒を始めます。点けているテレビは目に
入りません。

妻は12時半頃帰ってきます。

「ただいま、遅くなりました」
「お帰り」

妻は私の顔も見ず、風呂へと向かいました。

そうか、前にも何度かこんな事があったかも知れない。泊りがけの
出張もこの2ヶ月に3度ありました。それも単なる出張では無かった
のかも知れない。

「かおる、先に寝る」

風呂場に声をかけて、私は寝る事にします。
WA 11/13(木) 15:25:04 No.20081113152504 削除
あくる朝、いつも通りに目が覚め、妻もいつも通りに朝食の用意を
しています。妻はいつも通りの事をしているのでしょうが、私の気持ち
が違います。報告書を見たわけではなく、今はまだ疑いの段階です。
しかし私の気持ちの中ではそれはもう疑いのない事実になっています。
妻のいつも通りの態度が白々しいのです。浮気をしたその次の朝に、
よくも日常の生活が営めるものだと思ってしまうのです。

「今日は朝飯はいい。胃の調子がおかしい」
「大丈夫ですか、お医者に行きますか」

そんな言葉さえ白々しいのです。

「いや、すぐ治るだろう」

この日は全く仕事になりません。仕事は諦めて興信所からの電話を
待ちます。1時過ぎに電話があり、興信所で話を聞きます。

「残念です。奥様は浮気をされています」
「ホテルで会っただけで浮気だと断定出来るのですか」
「我々は奥様と山下さんが会っただけで断定しているのではありません」
「我々?」
「はい、用心深い方は女と男が別行動をとる時があります。
その時の念の為です」
「それで」
「奥様は山下さんとずっとご一緒でした。楽な調査でした」
「どうして山下だと解った」
「奥様が山下常務と呼んでいました」
「そうか」
「これが報告書です。写真も貼ってあります」

妻が一人で居る写真、山下と会った場面、腕を組んでエレベーターに乗る
場面、部屋に入る場面、出てくる場面。まだまだあります。もう十分です、
後は見る気がしません。

これだけの材料を見せられても未だ信じられません。

「部屋に入っても抱き合っているとは限らない」
「ご主人、奥さんを信じたい気持ちは解りますが、会議を
する為に大の男と女が5時間も部屋に篭りますか」
「しかし」
「それから、ボイスレコーダーです」
「ボイスレコーダー?」
「部屋の中での奥さんと男の声が録音されています」
「そんな事ができるのか?」
「我々プロには簡単な事です。今お聞きになりますか?」
「いや、いい」

支払いを済ませ事務所に戻り報告書を見ます。
WA 11/14(金) 17:42:52 No.20081114174252 削除
事務所で報告書を見ています。妻の浮気は紛れもない事実として
報告されています。しかし未だ信じられないのです。袋の中にある
ボイスレコーダーをパソコンに繋ぎます。いきなり二人の声が飛び込ん
できます。

「かおるこ」
「洋司さん」

何と二人は名前で呼び合っているのです。しかも私が照れくさく言え
なかったかおること妻を呼んでいます。その後声はくぐもります、
キスでもしているのでしょうか。もうこれで十分です、パソコンの接続
を解除します。二人の関係は昨日今日に始まった事ではないのが解ります。

妻は浮気に走るような女ではなかった、少なくとも私はそう信じてきました。
妻と別れてこの3年半、妻に寂しい思いをさせたのは事実です。しかし私も
寂しかった、性の欲求もありました。妻を思い他の女を抱く事もなかった。
しかし何故妻は他の男に走ってしまったのか?私への思いは私が思っている
いるほど重いものではなかったのか?他の男に走るくらいなら、どうして私
を3年半も待ったのか、どうして再婚までしたのか?勿論私に回答が見つかる
わけはありません。

家で妻の帰りを待ちます。私が帰宅したのが5時、今は7時。この2時間は永遠
の長さにも感じられました。

「ただいま」妻が帰宅しました。

私は返事をしません。

「ここへ座れ」
私が座っている向かいのソファーを指差します。

「どうかしたのですか」
「いいから座れ」

私は普段こんな物言いをした事はありません。妻も何かを察したのか神妙な
顔つきで座ります。
WA 11/14(金) 17:48:13 No.20081114174813 削除
俺に何か隠し事はないか?」
「えっ、何もありません」
「本当だな」
「はい」

直ぐに報告書を見せれば済むものを、妻を甚振りたくなるのです。

「2年半の一人暮らしは寂しかったか」
「はい、でも貴方も一人だと思うと耐えられました」
「そうか。しかしお前の体はどうだった?
お前の言うことを聞いてくれたか?」
「仰っている意味が解りません」
「疼く体をどうしていたのだと聞いているんだ。なー、かおるこさん?」
「・・・・・」

見る見る内に妻の顔が青ざめていきます。私が何を言いたいのか理解した
のです。妻の前に報告書とボイスレコーダーを放り投げます。

「お前は男にかおること呼ばれているんだな。
俺が気恥ずかしくて呼べなかった名前でな。
本当の名前でお前もさぞ嬉しかっただろう」
「・・・・・」
「返事がないな」
「・・・・・」

妻は号泣します。報告書には何が書かれているのか、見ずとも解ったの
でしょう。

「スカートを脱げ」

私は妻の陰毛が刈り揃えられているかどうか灯りの元で確認したかったの
です。

「自分では脱げないか?いつも山下に脱がしてもらっていたか?」

観念した妻はスカートを脱ぎます。そのまま突っ立っているのです。

「パンツもだ」
「脱げません」
「どうしてだ?山下には股を広げて見せていたんだろう。
来い、俺が脱がしてやる」

無理に脱がせても、妻の手は女陰を覆っています。私には絶対に見せたく
ないと体で言っているのです。手を払い、すぼめた股をこじ開けます。
灯りの下で始めてみ見る妻の女陰、申し訳程度にその上部に陰毛があります。
一緒に住みだして、刈り揃えるのは止めたのでしょうか、その周りには醜く
産毛が生え始めていました。

「自分のオマンコを良く見てみろ。それが今のお前だ」

手鏡を妻の方に放り投げます。

「今日は話をする気がしない。明日だ。
俺もどうするか考える。お前もよく考えておけ
携帯は2つともよこせ。俺が預かっておく」

そう言い残し2階の寝室に行きました。階下からは妻の号泣が聞こえてきます。
一頻り泣いた後、啜り泣きに変わったようです。
WA 11/17(月) 16:01:33 No.20081117160133 削除
考えるとは言ったものの、何を考えていいのか闇の中です。妻との事
は別れるのか、それとも、このまま一緒に暮らすのか、この点だけ
でしょう。私が一緒に暮らしたいと思っても、バレテしまった妻は
男の下に走るかも知れません。敢えて引き止めるつもりはありません、
引き止めてまで一緒に暮らそうなどとは思いません。私のこれから
取る道は男を潰す、ただその一点です。それには男の事を知る必要
があります。明日一番で興信所に男の身辺調査を頼むつもりです。
妻とはその後話す事にします。

------------------

私の恐れていた事が現実となりました。やはり主人は気がついたのです、
いつかこんな日が来ると思っていました。止めなければ、止めなければと
思っていたのです。主人と一緒に住み始めて、この機会にはと思って
いました。主人に打ち明けて主人の裁断を待とうと思っていたのです。
それがずるずるとこんな事になってしまいました。主人を愛していたのに、
いいえ今でも愛しているのに。

主人と別れ、私は茨城の県庁所在地にアパートを借り一人暮らしを
始めます。主人が破産した時に私の車も手放して、今は自転車が私の
移動手段です。私の職場はその自転車で20分くらいの所にあります。
私の身分はパートです。月々のお給料だけでは私の生活を賄う事は
出来ません。主人から毎月幾ばくかの仕送りを頂いていました。主人は
2ヶ月に一度か二度私のアパートを尋ねてくれます。でも抱いてくれるのは
稀な事でした。主人が来てくれれば、それだけでも嬉しいのですが、
帰った後は寂しさがつのります、心も体も寂しいのです。貧しいなりにも
満足していました、主人と又、一緒に暮らせる日を楽しみに待っていました。
そして・・・・・

お勤めが始まって一年半程経った時の事です、大掃除をします。明くる日に
中国から大事なお客様がいらっしゃる予定で工場の視察に来るのです。当日、
中国の方が3名と、本社の営業さんと中国担当の山下取締役が3時頃、来所
されました。本社の役員の方をお見かけするのは今日が初めてです。

私は製作された商品の整理をしていました。その現場に中国の方3名と
山下常務と営業さんが来られます。でも何か騒然とした感じです。

山下常務が拙い中国語で話しています。

「劉さん、申し訳ない。自分は中国語が達者でないもので」

そんな事を話しています。私が勤めている会社は、その取引量は中国との
お仕事が半分くらい占めています。中国語を話す方が2名居るそうです。
1名は今中国出張中で、この事業所に一緒にくる予定だったもう1名の方は
急病で来れなくなってしまったそうです。山下さんはご自分の話力でも
何とかなると思ったようですが、微妙なニュアンスが伝わらないのです。

私は外国語大学で中国語を専攻していました。前の会社でも入って間もなく
中国に中国語の研鑽を兼ねて、半年程派遣されました。そんな訳で中国語は
得意です。前の会社では中国の方との商談には必ず同席させられました。
中国語をお話になる男性の社員は大勢いらっしゃったのですが、女性の方が
場が和み、商談が上手くいくケースが多かったのです。この会社で私は主人
の部下として働いていました、私達夫婦は所謂職場結婚です。結婚して
暫く後に主人は独立したのです。

山下常務にお声を掛けようか迷っていました。山下常務は汗を掻き掻き
本当に困ってらっしゃる様でお声を掛けました。
WA 11/17(月) 16:03:47 No.20081117160347 削除
山下常務は私の方を向いてびっくりされた様な顔をしていました。

『どうして、こんな現場に中国語を話せる女性が居るんだ?』

そんな顔をしていました。

その後、2時間程、中国の3人の方、劉さん、商さん、洪さんと山下常務、
営業さんと技術的なお話、商談の通訳を務めます。

「江村さんと言ったかな、今日は有難う。助かった、
君が居なければ、この商談もどうなっていたか解らなかった」

江村は私の旧姓です。

「いいえ、私は只、通訳のお手伝いをしただけです」
「申し訳ないが、今夜の会食に付き合ってくれないか?
何しろ言葉が解らない」
「お断り出来そうもありませんね、解りました。
ご一緒致します。只場所はどちらですか?」
「赤坂だが、君の住まいは?」
「この近くです。赤坂は少し辛いですわ」

結局、私の我侭を聞いて頂き、この近辺のターミナル駅の近くのステーキ
ハウスをご紹介しました。この町で一番のお店だと聞いていました。

「常務さん、このステーキハウスでいいですか?」
「解った、君に任せよう」

会食が終わり、劉さんが山下常務に話します。

「山下さん、貴方も人が悪い。こんなサプライズを用意しているなんて、
貴方は本当に商売人だ。美人の通訳に旨い飯、これでは取引を増やさざる
を得ない」

さすがにこの言葉は通訳し辛かったのですが、日常会話は山下常務も
お解りになった様です。

「いや、これはハプニングです」
「こんなハプニングならいつでもOKです。
日本へ来る回数を増やしたくなった」

山下常務は、営業さんと一緒に劉さん達を東京までお送りし、そのまま
お帰りになりました。

「江村さん、今日は本当に助かった。江村さんのお陰だ。
このお礼はさせて頂く」

山下常務はこの当時50才、浅黒く引き締まった顔に微笑みを浮べて言って
下さいました。
WA 11/18(火) 13:28:06 No.20081118132806 削除
その夜、アパートに帰ったのが10時頃、久しぶりに気持が高揚して
いました。主人に報告したら何と言うかしら、主人のアパートに電話
します。

数回掛けなおしました電話はコールしているだけです。携帯に電話を
して今日の話をします。

「かおる、どうした?こんな時間に携帯に電話をくれて」
「今日、こちらに中国からお客さんが来たの、通訳の方が来れなくて、
私がピンチヒッターをしたの」
「上手く行ったのか?」
「もちろん、喜んで帰られました」
「それは良かった、君も昔とった杵柄を又使えたと言う訳だ」

主人に褒められて嬉しかった。でも心にしまっていた事を思い出して
しまいます。アパートの電話に出てくれなかったのが切っ掛けでした。
まだお仕事で外で頑張っているんだと思っても、否応なしに私の心に
広がるのです。

主人と別れる半年ほど前の事です。

”いつも主人は自分の部屋で背広を脱いでお風呂に入ります。この日は
酔いすぎてその気力もないようです。服を脱がし、バスルームまで肩を
担ってあげました。脱がせた物を主人の部屋で片付けます。背広の
内ポケットに何か封筒のようなものがありました。いけないと思いながら
封筒の中を覗いてみます。メモが入っています、女の方の流れるような
文字でこう書かれていました。

『昨夜、嬉しかったです。私は貴方の女になれました。今日もお店に
来て頂いて有難う。メール読んで頂けましたでしょうか。真理子』

まさかと思いました、主人が浮気をしている、信じられません。主人の
携帯も背広の内ポケットに入っています。携帯を見ようか見まいか、
誘惑に駆られます。震える手で受信ボックスを開けました。真理子と
言う女性の着信メールを読みました。そこには彼女の今までの主人への
思い、昨夜の出来事が綴られていました。私はそのショックに打ち
のめされながらもそのメールを私の携帯に転送しました。もしやと
思い主人が出したメールも見てみます。只一言返信していました、
明日は店に行く
からと。

気を取り直して、リビングに行きました。コーヒーを飲んでも味が
しないのです。主人は仕事柄、クラブにはよく行きます。その殆どが
接待です。主人は女の方にもてる方だと思います。銀座のクラブに
足繁く通っていれば、男と女の浮いた話の一つや二つあっても、
それはそれで仕方が無いと思っていました。でも現実にそれが起きて
しまうと私の心が受け入れてくれないのです。年に数回のそれもごく
淡白な私達の行為、悔しくなってしまうのです。それに主人はもう私の
事を女だとは見てくれていない、そう言う思いが私の心を占めて
しまいます。このまま年をとったその時には私は主人に見放されて
しまうのでしょうか。女はそこまで考えてしまうのです。

茫然としてリビングのソファーに座っていますと、自然と涙が出てきます。
バスルームのドアーの開く音がします。私は急いで涙を拭いました。

「かおる、酔っ払って悪かったな。悪いが先に寝る」

酷く酔っているからでしょうか、私の悲しみに気がついてくれないの
です。私はリビングに一人取り残されてしまいました。”

東京と茨城に別れて住む時に主人は自分のアパートには来るなと言った
のです。ひょっとしたら真理子さんと言う方が主人のアパートに来るの
ではと思ってしまうのです。
WA 11/18(火) 13:32:33 No.20081118133233 削除
明くる日、出社すると所長に呼ばれます。

「江村さん、昨日はご苦労様、山下常務も大変喜ばれていた。
よくぞ江村さんを採用してくれたと私も褒められた」
「まあ、嬉しいです。でもそんなに言って頂いて、私は
只言われるままに通訳しただけです」
「そんな事はない、商品もよく知っている。
ところで常務がお礼をしたいそうだ、本社で
お待ちになっている。急で悪いが本社に行ってくれないか」
「えっ、今からですか?でもここの仕事が」
「こっちは大丈夫だから行って来なさい」
「はい、解りました」

ドキドキしながら本社へと向かいました。大きな商社に勤めた事はあって
も役員さんとは話した事もありません。今の会社も総勢で500人くらい
とは言え東証二部上場を目指しています。本社に向かう途中、私は後悔
しだしました。いつもの通勤着のまま飛び出したのです。下はぴったり
としたジーパン、上は白いカシミヤのV-ネックのセーターです。家に
一旦帰って着替えてくるべきだと思ったのです。でも今はもう時間
がありません。

役員室の前で立ち竦んでしまいます。自分の姿を役員室の前の硝子に
映したら、とても入れる格好ではありません。でも仕方ありません、
ドアーをノックします。

「どうぞ」

山下常務の声が聞こえます。

思い切って入ります。

「よく来てくれました」
「あのー、済みません、こんな格好で」
「いや、僕の方が悪かった。急に呼び出して、
かえって、恥ずかしい思いをさせて申し訳ない」
「そう仰って頂くと私も気分が楽になります。
でもこんな格好で伺って申し訳ありません」
「いや、とても素敵だ。ジーパンにセーターか。
君に良く似合っている」

そう言って山下常務は私の頭の先から爪先までじっと見入っていました。

「いや失礼、君があまり綺麗だから見とれてしまったよ」

お世辞でもそう言って頂くと悪い気はしません。幾つになっても男の方
から褒められると女は嬉しいものです。

「履歴書も見させてもらったが、特技に何も書いていなかった。
どうして中国語を書かなかったんだね」
「募集している内容に関係がなかったものですから」
「奥ゆかしい人なんだね。ところで薫子は、かおるこって言うんだね」
「はい、でもみんなには、かおるって呼ばれます」
「おっと、もう12時か、近くに旨いイタリアンを予約してある。
さあー行こう」
「でも私、こんな格好ですから」
「大丈夫だ。そんな事を気にする店じゃない」
WA 11/18(火) 21:04:17 No.20081118210417 削除
嫌味のない強引さです。結局、常務さんの後について行きました。

案内されたレストランは高級感がありますが、カジュアルな感じで安心
しました。一般のテーブル席ではなく、個室に案内されます、個室と
言ってもドアーは無く、開放的なお部屋です。二人きりで隔離されている
訳ではなく、緊張感も解けます。常務さんのお心遣いが伝わってきます。

「昨日は本当にどうなる事かと思った。君が居て本当に助かった」
「久しぶりに中国の方とお話したものですから、あれで良かったのか
心配でした」
「いや、見事だった。ところで江村さんはパートさんだったね」
「はい」
「中国語は何処で覚えたんだね」

私の出身と経歴をお話します。

「それは勿体無い。本社で正社員として働くは気はないかね。
君だったら、人事部も異論はないだろう」
「いえ、私は事業所のパートで十分です。それにもう東京まで
通うつもりはありません」
「そうか、残念だが、諦めるか。しかし君の能力をこのまま
埋もれさせてしまうには余りにも惜しい。江村さん、どうかな
中国のお客さんが来た時には、是非通訳として、いや渉外を
任せたいのだが」
「私にそんな能力は無いと思います。でも何かあれば、お手伝いは
させて頂きます」

何かあった時にと携帯の番号を交換しました。仕事のお話の流れで
自然とそうなってしまったのです。不自然さは感じなかったのです。

男の方と二人きりで食事をしたのは、結婚して以来ありません、何か
ドキドキしながらお食事を頂きました。常務は上司とその部下として
接してくださいます。食事の時間は1時間余り、久しぶりにわくわく
した気分で過ごせました。

「ご馳走様でした」
「結構旨いだろう。僕も楽しい時間を過ごせた。
一度会社に戻ろう、君に渡したいものがある」
「はい」

役員室に戻り、綺麗に包装された小さな箱を手渡されます。包装紙には
アクセサリーで有名なブランドが書いてありました。

「これは何ですか」
「今日、午前中時間があったから銀座に行ってきた。
君の好みかどうか解らないが、似合うと思う。
開けてごらん」

開けて見ました。そこには女性なら誰でも憧れるブランドのネックレスと
ブレスレットが入っていたのです。

「こんな高価なもの頂けません」
「君の昨日の働きの何万分の一のものだ、いや将来の事を考えると
何十万分の一かも知れない。会社からの報償として受け取ってくれないか」
「でも・・・・・」
「受け取ってくれないと、僕が会社から叱られる」
「はい、解りました、頂きます。有難う御座います」
「良かった。今日はこのまま直帰していいんじゃないかな。
所長には電話しておこう」
「はい、今日は有難う御座いました。お食事とっても美味しかったです」
「僕の方こそ楽しかった」
WA 11/18(火) 21:07:42 No.20081118210742 削除
地元に戻るともう5時を回っています。そのまま家に帰ります。

アパートに帰り、ドレッサーの前に座ります。ネックレスとブレスレット
をつけてみたのです。とても素敵でうっとりと眺めてしまいました。

2日後はお給料日です。明細をみて驚きました、額が2倍程になっている
のです。間違いだと思い、所長さんにお聞きします。

「あのー、お給料の事ですが、何か計算違いがあると思います」
「いや、間違いではない。この会社は能力に支払っている。
江村さんの働きがそれだけ評価されているし、
期待もされているのだと思う」
「でも、私こんなに頂けません」
「私に言われてもね、本社が決めている事だから。
まあ嬉しい事だからいいじゃないか」

何か割り切れない気持のまま6時頃帰宅しました。携帯に着信があります、
常務さんからです。

「江村です」
「山下だ。携帯で初めてだな、携帯が通じるか試してみた」
「まっ、変な人。通じました、おめでとう御座います」
「はは、おめでとうは良かったな」
「常務さん、今お話していいですか」
「何なりと」
「今日10月分のお給料の明細を頂きました。
お給料が2倍に増えていました」
「それは人事部の決定だよ。君の働きと、これからも
中国からのお客さんの通訳をしてもらう事もある。
当然の決定だよ」
「でも回りの人に悪いです」
「そんな事はない。当社の能力主義は誰でも知っている。
変に思う人は誰もいないだろう」
「解りました。有難う御座います」

自分で意識しなくても、中国からお客さんが来た時には常務さんの指示
に従わなければならないと言う気持が芽生えてきたのです。

その日、主人に電話で話します。

「貴方、私のお給料、2倍になっちゃた」
「どうして」
「この間、お話した中国の方の通訳で認めて頂いたの」
「それにしも2倍とはな」
「能力主義なんですって、その代り中国の方が来た時には
任せるから頑張るようにって」
「君も頑張らなければいけないな」

ネックレスとブレスレットの事は言えません。
WA 11/19(水) 16:45:49 No.20081119164549 削除
次の週の月曜日、出社しますと所長に呼ばれました。

「明日、中国のお客さんがこちらにお見えになる。よろしく頼む」
「えっ、又私にですか」
「ああ、この間急病で倒れた方はもう60間際のお年だ。
この機会に早期退職された。君に負担を掛けるが宜しく頼む」

暫くして、常務さんからも電話を頂きます。

「明日は初めてのバイヤーさんだ、夜の会食は東京になるが、
頑張って欲しい」
「はい、解りました」

明日は東京です。会食になれば夜遅くなります、久しぶりに主人の
アパートに泊まろうと思います、主人と夜を一緒に過ごせると思うと
気持ちが弾みます。

「かおるです。明日、東京で中国のお客様の接待なの。
明日の夜、泊まります。明くる日は午前中お休みを頂いたの。
久しぶりに朝御飯作ってあげるわ」
「そうか、それは嬉しいが、今日から大阪に2泊の出張なんだ。
僕は居ないが、泊まっていってくれ」

主人は居ない、気持ちが空回りしてしまいます。

当日、バイヤーさんは先ず茨城の事業所に工場見学にお見えになります。
東京への移動は夕方です。

新しいバイヤーさんの始めてのご訪問です。身だしなみにも気をつけ
なければいけません。アースカラーのワンピースにブラウンの細いベルト
を腰に巻きます。主人に買ってもらったミディアムのトレンチコート
を羽織ります。アクセサリーは常務さんに頂いたネックレスとブレスレット
を身につけます。今までつけた事がなかったイヤリングもつけました。
ドレッサーの鏡に映った自分を見ていると、主人にも見せたかったと
言う気持ちになるのです。

出社すると、男性社員の方が冗談めかして声を掛けてくれます。

「江村さんて、凄い美人なんですね。いつもジーパン姿しか
見ていないから。いや失礼ジーパンも格好いいんだが、
正装すると見違えるね。若い頃の黒田福美にそっくりだ」

そんな言葉に私の気持も少しですが晴れてくるのです。

バイヤーがお見えになります。常務さんは来ていません。

「山下常務は東京での会食から合流する予定ですが、来られるか
どうか今は解りません」

本社の若い営業の方と二人でバイヤーさんをご案内、ご説明をします。
4時ごろにそれも済み車で東京へ向います。車の中で思ったのです。
折角、常務さんに頂いたネックレスとブレスレットつけたのに、
つけたところを見て欲しかった、夜の会食には来て欲しい。知らず知らず
に常務さんを待ち焦がれている女がいるのです。

6時過ぎ料亭に着きます。お料理が出てくるまで少し時間が掛かります。
でももう食前酒がテーブルに並びます。その数は5つです。バイヤーの
お二人、営業の男の方、私ともう一つは常務さんのものに違いありません。
早く常務さんに来て欲しい。食前酒が並ぶと同時に常務さんが見えられ
ました。

「会議が長引き遅れて申し訳ありません」

常務さんは、バイヤーさんに深々と頭を下げて遅れたお詫びをするのです。
私の方には一瞥もくれません。何か、ネックレスとブレスレットが
気恥ずかしくなってしまいます。

食事の席では、やはり今後の取引の事がメインになってしまいます。
工場見学と商品紹介に満足した事、今度、中国に来る時は是非私に
来るようにとお誘いがありました。バイヤーさんは満足して帰られました、
営業さんがホテルまでお送りします。常務さんと二人きりになりました。

常務さんは今日、初めて私に声を掛けてくれます。

「良かった、成功だ。又君に助けられた」

と大袈裟に仰ってくれるのです。
WA 11/19(水) 16:48:34 No.20081119164834 削除
「タクシーを呼んである、それで帰ろう」
「はい、有難う御座います」
「僕も一緒に乗っていいかな」
「えっ、でも方向が違います」
「兄が茨城の守谷に住んでいる、今日は気分がいい。
久しぶりに会って酒を飲みたくなった」
「でも、悪いです」
「そんな事はない、ご主人のアパートのある町とは利根川を
挟んですぐだ、車だからわけはない」
「恐縮します、お言葉に甘えさせて頂きます」

本当はもう少し常務さんと一緒に居たかったのです。

料亭の待合室でタクシーを待っています。

「ネックレスとブレスレット着けてくれたんだね。
良く似合っている、とても綺麗だ」

そっとネックレスに触れました。その手は少し下がって、ほんの数秒、
乳首にも触れたのです。間違っての事だと思いました。私は何も
言えません。只、顔が赤く染まり、乳首が硬くなるのが解りました。
それを悟られるのが嫌で黙って俯いていました。タクシーが来ました。
常務さんが先に乗り、私が続きます。

暫く二人は無言です。お酒を頂き、気持も高揚して、車の心地良い揺れ
も手伝ってリラックスしています、それに常務さんが横にいるのです。

「君を初めて見た時、びっくりした。僕の描いていた理想の女性だった。
おまけに中国語に堪能で、僕を助けてくれた。
君を忘れられなくなってしまった」

そう言ってネックレスとブレスレットを優しく手に包んで撫ぜています。

「それに君はこれを着けて来てくれた」

常務さんの言葉は女心を擽るのです。そこには次を期待している女が
いるのです。アパートに帰っても主人は居ないのです。常務さんのそんな
言葉は私の寂しさを埋めてくれるのです。

ネックレスを触っていた手が下りてきます。ワンピースの上から優しく
触れるでもなく、触れないのでもなく乳房の上で遊んでいます。時々、
乳首が布を通して、手の温もりを感じます。布でさわさわと擦られる
のです。乳首が硬く尖ってきます。常務さんに解ってもいいと思って
しまいます、いいえ解って欲しいのです。

「常務さん、いけません。お止めになって下さい」

常務さんの手を払いのけようとしました。でも形だけの抵抗です、
力はありません。

主人の顔が浮びました。でも主人も他の女の人を抱いている、
そんな思いが常務さんの手を受け入れてしまったのです。
WA 11/19(水) 16:51:22 No.20081119165122 削除
常務さんの手が私の乳首を捉えます。尖っているのが解ったようです。
布の上から擦りあげてきます。時々、乳首を摘むのです、人差指と
親指で挟んで捏ねるのです。時には強く、時には優しく、時には
おはじきのように弾きます。そして手の平全体で乳房を揉まれます。
元々乳首は敏感でした、でもこんなに感じるなんて初めての事です。
次に進んで欲しくなります。布越しではなく、直接欲しい。常務さん
の口で舌で苛めて欲しい。キスもして欲しい。私の情感はどんどん
高まってしまいます。

私の大事なところも濡れてきました、男の方が欲しいのです。でも
常務さんの手はいつまでも、ワンピースの上で遊んでいます、その先
には進んではくれません。

東京の都心から主人のアパートまで、夜中の高速では40分くらいで
しょうか。既に最寄のインターを降りました。もうこれ以上は
進めません。

「真直ぐ1km程行った所に信号があります。
そこで停めていただけますか」

その時です、常務さんは私を抱きしめキスしてくれました。舌が私の口
の中にはいってきます。私はその舌に夢中で吸い付きました、そして
唾液を流し込まれるのです。背中を抱いていた手は下に降りて私の大事
な所を包んでくれます、その中指を伸ばして私の花芯を擽るのです。
もっと欲しくって私の両足は自然と開いてしまいます。ワンピースの
上からでも常務さんの手はとても暖かいのです。でももう信号は目の前
です。もう少しこうしていたい、タクシーも停まらないで欲しい。

「今日はご馳走様でした。有難う御座いました。おやすみなさい」
「ご苦労様、おやすみ」

何事もなかったように、タクシーは走り去っていきました。

部屋に入ると主人の匂いがします、タクシーの中での行為を主人に申し訳
なく思います。

湯船に浸っていると今日の出来事を思い出します。今時信じられないと
思いますが、主人と結婚するまでは男の方との経験はありません。大学生
の時に同窓生に、手を握られ、キスをされ、抱きしめられたくらいです。
そのキスも小鳥が啄ばむようなキスでした。服の上からとは言え主人以外
の男の方に、胸を揉まれ、大事な場所を触られ、そして唾液まで飲まされ
ました。主人とももう何年もキスはありません。昔、主人としたキスも、
舌は触れ合っても唾液までは飲ませてくれなかったのです。

常務さんとお別れしてまだ20分しか経っていません。乳首がじんじんして
います。そっと自分の手で触れるとキュンと快感が走ります。二本の指で
摘むと私の女の部分に通じます、あそこがきゅっとつぼみます。はっと
主人の顔が浮びます。申し訳ない思いで乳首から指を離します。

今日は主人に抱いて欲しかった、そんな思いで眠りにつきました。
WA 11/20(木) 14:49:30 No.20081120144930 削除
翌々週にも中国のお客様の接待がありました。今度は主人のアパートに
泊まれます。10時頃に主人のアパートに戻ります、主人はもう帰宅して
いました。6畳と4畳半が一間づつ、小さな台所とバスユニット。6畳は
寝室になっています。4畳半には小さなテーブルとソファーが一つづつ。

ソファーに座って話しをします。久しぶりに会ってあれもこれも話したい
のです。

「かおるはこんなに饒舌だったかな」
「久しぶりだから色々話したいの」

「私、本社で働くように言われているの」
「町金も、もう大丈夫だろう。
そろそろ一緒に住む事を考えてみようか」
「私のお給料も2倍になったし、
少しは広い一軒家に住みたいわね」

あれやこれや、取り留めのない事を話します。そんな事より、主人に
抱いて欲しいのです。

主人はビールが終わり、ジントニックを飲んでいます。主人はお酒が
とても好きで益々強いお酒を飲むようになりました。控えるように
言っても聞き入れてはくれません。会社でのお仕事が余程きついのか
酔うと直ぐ眠ってしまうのです。私もワインを頂きます。酔うにつれ
主人が欲しくなってしまいます。

「貴方、私寂しい」
「どうした。こっちへおいで」

私は主人にしなだれかかります。主人は私の頭を抱いて優しく髪を
撫ぜてくれます。主人のものを触れました。暫くしても何の反応も
ありません。その内髪を撫ぜていた主人の手が止まります。軽い鼾が
聞こえてきます、主人はもう眠りに落ちているのです。

「貴方、眠いのですか。ベッドでお休みになったら」
「あっ、眠ってしまったか。そうするか」

主人は寝室へと行きました。かれこれもう半年も主人に抱いてもらって
いません。会社の仕事で疲れているから仕方がない、そう思って今まで
私の情欲を押さえていました。でも主人の疲れの中には真理子さんの分
も入っている。たまに会ったこんな時でも抱いてはくれない。そう思う
と悲しくて涙が出てきました。

4畳半に一人取り残されて、装飾鏡にに映る自分の顔を見つめます。
若い頃の張りがありません、やっぱり40女の顔なのです。会社の男の方
に綺麗だ、格好いいと言われても鏡に映るその顔は主人に不倫された女
のものなのです。惨めです、主人に構ってもらえない女ほど惨めはものは
ないのです。生活に不満はなくても、主人がどれ程優しくても、女には
それが必要なんです。

足取り重く寝室に行きました。主人はもうスヤスヤと深い眠りに落ちて
います。ベッドに横になりもう寝ようと思っても、寝付けません。暗闇の
中で目を開けて、ぼうっとしていると、乳首が疼きだします。男の方の
手と指を求めているのです。可哀そうな乳首を自分の手で慰めます。
情感が高まってきますが、自分が惨めでそれ以上は進めません。主人の
心の中に他の女の方がいるかも知れないと思うとそれ以上は出来なかった
のです。
WA 11/20(木) 14:53:50 No.20081120145350 削除
何事もなく一週間が過ぎていきます。主人は私の事をもう女として見て
はくれない。もうこのまま私の女も終ってしまうのでしょうか。私を女
として見てくれる常務さんを思ってしまうのです。

商品の帳簿付けを坦々とこなしていました。所長さんに来るように
言われます。

「今までは、中国のバイヤーさんの通訳を何の事前連絡もなしに
お願いしていたが、それでは君も困るだろう。
本社が予定表を作ってくれた。ま、バイヤーさんの予定もあるが、
一ヶ月毎に更新してくれるそうだ」
「はい」
「赤く丸印をしてある日が江村さんの出番と言う訳だ。
その日には休みの予定を入れないで欲しい」
「はい、解りました」

2月は一度だけです、それも2週間後。それを見て、常務さんに会いたい
気持が急に募ってきます。2週間も会えないなんて、知らず知らずの内に
常務さんの事が私に中に刷り込まれていたのです。

3日後の土曜日の事です、珍しく主人が私のアパートを訪ねてくれます。

「来週の月曜日から、中国と台湾に長期の出張だ」
「どれ位になるのですか」
「2ヶ月位になると思う」
「えっ、そんなに長くですか」
「そうだ」
「その間の仕事はどうされるのですか」
「メーカーと販売店の直接取引になる」
「大丈夫なんですか」
「ああ大丈夫だ。マージンは私の会社に残しておいてくれる。
今回の出張はそのメーカーの依頼だ」

日本のメーカーさんは中国、台湾のメーカーに押されて価格競争で
勝てないのです。そのメーカーさんの依頼で中国、台湾のメーカーさん
と提携する為に主人は出張するのです。技術的な事はメーカーさんの
技術の方が見ます、主人は全般的な交渉事を任されています。

日曜日、スーパーで出張に必要なものを買い揃え、主人のアパート
で出張の準備をします。明日月曜日はお休みを頂きました。

夜10時頃、その準備も終えました。風呂を済ませて主人の布団に
潜り込みます。
WA 11/20(木) 14:56:41 No.20081120145641 削除
「貴方が欲しい、抱いて下さい」
「おいで」

主人は髪を撫ぜてくれます、口づけをしてくれます。乳房も愛して
くれます。私も主人の大事なものを手で包みます。でもいつまで経って
もそれには変化がないのです。私は焦れます、早く固くなって欲しいの
です。私は布団の中に潜り込み、トランクス越しに主人のものに頬摺り
します。それでも変化はありません。思い切ってトランクスを脱がします。
主人のものに口を寄せます。思い切り息を吸います、主人の匂いが鼻一杯
に広がります。舌で舐めてもみます。それでも変化の兆しはありません。

私の方からこんな事をしたのは初めての事でした。でも主人のものには
何の変化もないのです。悲しくなってしまいます。真理子さんに使えても
私ではもう駄目なのです。私にはもう女を感じてはくれないのです。

「こっちへおいで」

主人が私の腕を優しく掴んで引き上げてくれます。

「ご免な。疲れているようだ」
「貴方、私寂しい」
「手でしてあげよう」
「いいんです。このままで」

手枕をしてくれたその腕の中で私は泣き濡れていました。

「泣いているのか」
「寂しいんです」

朝まで主人の手枕でそのまま寝てしまいました。この日、私は会社から
平日のお休みを頂いています。主人を成田まで送ります。

「貴方、お体には気をつけて」
「お前も」

バッグを担いで、主人は搭乗口へと急ぎます。その後姿にどこか遠くに
行ってしまいそうな主人が映るのです。
WA 11/21(金) 12:53:22 No.20081121125322 削除
このまま茨城の自分のアパートに帰る気はしません。今日は主人のアパート
に泊まります、会社に電話をしてもう一日お休みを頂くことにしました。
主人がいつも使っているお布団に包まれて眠ります。

水曜日、朝出社すると、所長に呼ばれます。

「来週のバイヤーさんの見学の件だが、金曜日、常務が本社で打ち合わせを
したいそうだ、3時までに本社に行ってもらえればいい」
「はい」

会社の帰りに美容院に寄ります。髪の色は元々栗色なんです、長めの髪に、
内側に軽くカールをかけてもらいます。主人が出張に出てまだ2日目です。
いけないと思っても、この夜は久しぶりに心が浮き浮きます。明日は
常務さんに会える、どんな服を着て行こうかしら、考えながら眠るのです。

その朝、ドレッサーの前であれやこれや迷います。迷った末に選んだ服は
くすんだ緑色したちょっとタイトなスカートと真っ白なブラウスで、
常務さんに頂いたアクセサリーを着けました。2月です、皮のハーフコート
を羽織ります。

事業所でお昼ご飯を頂いて、本社へと向います。本社のある新橋の歩道
の葉を落とした公孫樹の木が寒さを誘います。本社の受付で名前を告げます。

「江村さんですね。ご活躍は伺っています」

私の名前が本社でも知られている、何となく自尊心が擽られるのです。
役員室に案内されるのも今日で二度目です。もう臆する気持もありません。
ただ常務さんにお会い出来るのが嬉しくて・・・逸る気持でドアーを
ノックしました。

「やあー、いらっしゃい」

常務さんは笑顔で迎えてくれました。

仕事の打ち合わせは営業の方を交え2時間程で終ります。常務と二人で
コーヒーを頂きます。もう外は暗くなり始めました。

「もう少し話しておきたい事がある。僕は他の打ち合わせで20分程、
会議室に行くが、待っててもらえるかな」
「はい」

暗くなった外を窓越しに眺めています。街路灯に葉を落とした公孫樹が
照らされていました。中国にいる主人はどうしているかしら、あの人の
事だから私の事など忘れて仕事に打ち込んでいる。あれから一度も電話
もしてくれません。でも真理子さんにはきっとしている。そんな事を思う
と何だか、公孫樹の木も寂しげでした。会議から戻った常務さんにも気が
つかないのです。

「どうかしたのかな」
「いえ、何でもありません」
「寂しそうな顔をしていた」
「実は・・・・」

常務さんの優しい言葉に、主人の出張の事を話します。

「そうか、君も寂しいわけだ。今日、夜は何か予定があるのかな」
「いいえ、帰ってお風呂に入って、ご飯を頂いて、眠るだけです」
「君が良ければ食事を一緒にしないか、旨いところが近くにある」
「いいのですか」
「僕は構わない、今日の予定も終った」
「ご一緒させて頂きます」
「何がいい?和でも、洋でも中華でも」
「お任せします」

常務さんは電話を掛け何処かに予約をしています。

「ラッキーだね。旨いステーキハウスが取れた。
此処はいつも満杯でね、中々予約が取れないんだ。
女神様が居てくれたお陰だね」

冗談めかして言うのです。

「○○ホテルのロビーで待っていてくれるかな。僕は
10分程後で行く」
WA 11/21(金) 12:56:23 No.20081121125623 削除
ロビーで待っています。本社に呼ばれたのは3時です、ひょっとしたら、
その後常務さんとご一緒出来るかも知れないと半分期待もあったのです。
私の心はときめいていました。程なく常務さんがお見えになりました。

「今日はタクシーで帰ればいい。チケットをあげよう」

常務さんのお心使いが嬉しいのです。

ステーキハウスのカウンター席に座ります。常務さんと二人だけのお席です。
目の前でコックさんがお肉を焼いてくれるのです。コックさんは窓を背に
しています。ここは24階、窓には広い東京の煌びやかな夜景が映ります。
美味しいお肉と美味しいワイン、私の胃の腑も満たされて、心地良く酔って
しまうのです。

「どうかな、旨いかな」
「ええ、とっても」
「僕は此処から見る夜景が好きでね、嬉しい時も、嫌な気分の時も
一人で良く此処へ来る」
「今日はどちらなんですか」
「それは野暮な質問だよ。嬉しいに決っている。
それも飛び抜けてね」
「私も嬉しいです」
「嫌な事も此処へ来ると、どうでも良くなってしまう。
仕事の事も家の事もね」
「家の事ですか?」
「家内と上手くいってない。離婚を考えている」
「済みません。嫌な事、お伺いして」
「いや、いいんだ。僕から言った事だ。
ああ、久しぶりに気分がいい。カクテルバーでもう少し飲もう」

半個室になっているお席に移ります。少し緊張もしますが、酔いも
手伝って常務さんの隣の席に座ります。軽いカクテルを飲んでいます。
二人とも無言で窓の外を眺めています。常務さんは寂しそうに窓の外
を眺めています。

「どうかされたのですか?」
「いや、何でもないんだ。僕は時々こうなるんだ。
それも嬉しい時に限ってね」
「変ですわ。私に何か出来る事があれば仰って下さい」
「こんな幸せな時間がいつまでも続くわけがないと思ってしまうんだ」
「まあ」

私の頬が熱くなるのです、それはお酒の火照りとは別のものだと解ります。
常務さんの肩に知らず知らずに私の頭を預けているのです。

もう10時です、帰らなければいけません。でもまだ帰りたくない私も
いるのです。
WA 11/21(金) 12:58:46 No.20081121125846 削除
会社の上司とは言え、男の方と二人きりでお酒を頂くなんて、いけない
事だと解っていました。でもそんな理性はもう何処かに飛んでいきました。
お食事をして、お酒を頂いて、でもそれ位は主人も許してくれるでしょう、
そんな気持でいたのです。

「江村さん、そろそろ出ようか。ついておいで」
「はい」

エレベーターに乗ります。エレベーターの中は二人きりでした、
硝子越しに夜景が見えます。エレベーターは下にではなく、
昇っています。

「どこへ行くのですか」
「今日は君を帰さない」

抱きしめられます。

「駄目です。いけません」

と言ったその口に常務さんの唇が重なります。私の腕は常務さんの首
に絡みつきます、体全体を預けてしまいます。

ここは客室の最上階でしょうか、このエレベーターに表示された一番上
のフロアーで停まります。常務さんは降りていきます。

「おいで」

私は後をついていきます。一つの部屋の前で止まります、ルームキーで
ドアーを開けました。

「ここだ。さあ、入ろう」

開けられたドアーの前で私は動く事が出来なくて俯いていました。
主人の顔が浮ぶのです。このドアーを踏み越えれば主人を裏切る事
になってしまいます、ここを超えるわけにはいきません。超えれば
もう戻れなくなってしまうのです。

「どうした」
「出来ません、入れません」
「そうか、僕もここで君を待っていよう」

そう言って常務さんもドアーの前に立ち止まるのです。横に並んで優しく
私の頭を撫ぜているのです。その時です、別のエレベーターが停まり、
ドアーの開く気配がします。他の方に見られるのが恥ずかしく、私の方
から部屋に入りました。

部屋に入って直ぐに、常務さんに抱きしめられます、激しく口を吸われる
のです。もう私は拒む事は出来ません、常務さんの為すがままなのです。
口の中に舌が入ってきます、私の口の中を掻き回す様にするのです、
そして引っ込めます。その舌は私の舌を誘っているのです。常務さんの
口の中に私の舌を差し出します、思い切り吸われます。舌と舌を擦り
合せる様にして、私の舌を捉えるのです。唾液を流し込まれます。私の
唾液も飲んでくれるのです。左手は私の背中を強く抱きかかえ、右手は
お尻の隆起を鷲掴みにしています。長い時間です、私はもう立っている
事さえ出来ません。

「ああ、常務さん、苦しいです」
「常務はもう止めてくれないか。洋司と呼んで欲しい」
「洋司さん、私もう・・・・・」

まだ立ったまま、私を優しく抱きしめて、髪を手櫛にしてくれます。
耳にかかった髪を撫ぜあげて、そっと耳に息を吹きかけてくれるのです。
WA 11/25(火) 11:36:53 No.20081125113653 削除
「かおるって呼ばれていると言っていたね」
「はい」
「僕はかおること呼んでいいかな」
「はい」
「かおるこ、綺麗だ」

また、ぎゅっと抱いてくれました。主人にも”かおる”と呼ばれています。
常務さんに”かおるこ”と呼ばれると何か別の世界に居るような気がするの
です。”かおる”ではない別の女がいるのです。

抱かれたままベッドに倒れこみます。常務さんは倒れた私の上になり、
私の首、うなじに舌を這わせます、その手はまだブラウスの上から乳房
を探ります。私の乳首は、もう口付けをされた時から堅く尖っていました。
布が乳首を刺激するのです。

「あぁー」と小さく吐息を洩らします。

ブラウスを一気に剥ぎ取られました。ブラは普通のものしか着けていません。
それを見られるのが恥ずかしく、

「灯りを消して下さい」
「どうしたんだ?」
「ブラが恥ずかしいんです」
「白く可愛いじゃないか」
「でも・・・・・」

灯りを消してはくれません、常務さんはブラの中を探り、敏感な乳首を
捉えます。この間のタクシーの中での出来事以来ずっと男の方の手と指を
待っていたのです。触れられただけで、溜息が出てしまいます。

「あぁー、洋司さん」名前を呼ばずにはいられません。

「気持いいのか」
「ええ、とても」

その言葉と共にブラも一気に取られます、そして舌を這わせるのです。
舌で乳首を転がされ、伸びてきた髭のその頬で乳房に頬摺りするのです。
髭がチクチクと乳首と乳房を刺激します。その感触が女のあそこに伝わって、
もう花蜜も溢れています。常務さんの右手は私の右の乳首で遊んでいます、
そして左の乳首は舌で突かれているのです。

上半身裸になった私を突然抱き起こします。後ろ抱きにして、私の髪を
掻き揚げて、首筋に舌を這わせるのです。両の乳首は摘まれて、快感の
呻きを洩らしています。

「スカートを脱ぎなさい」

その言葉にはっとしました。突然、主人の顔が浮ぶのです。
逡巡していました。

「おいで」

頭を優しく抱きかかえられて、囁くのです。

「かおるこが欲しい」

”かおるこ”と聞いて、少し残っていた理性が消えてしまいます。

「洋司さんが脱がせて下さい」
「駄目だ。君の脱ぐところを見たい」

普通のショーツが恥ずかしい、愛撫されてシミの滲み出たショーツを
見られるのが恥ずかしい。

「出来ません」
「僕達の初めての夜だ。かおるこの裸で誘われたい」

そう言われ、恐る恐るスカートを脱ぎました。

「立ってごらん」

常務さんはショーツ一枚の私の裸体に見入っています。シミを見つけられる
のが怖くって、左手でその部分を隠します。

「かおるこは、そうして立っているだけで、男を誘っているようだ」

本当は裸を見られるのが恥ずかしいのです。
WA 11/25(火) 11:39:36 No.20081125113936 削除
休みの日は殆ど毎日ランニングをしています。ショートのランニング
パンツとランニングシャツ、ですから腕と脚は全体が日焼けしています。
日焼けした部分としていない部分の茶褐色と白のコントラストが恥ずかしい
のです。

「何を恥ずかしがっているんだね」
「日焼けの後が」
「僕には堪らない。君が匂ってくるようだ」

そう言って、私の足元に跪き、私の腰とお尻に頬摺りをくれるのです。

「洋司さん、いけません、汚れています。
お風呂を、お風呂を使わせて下さい」
「僕はこのままの方がいい。このままのかおるこが欲しい」
「初めての夜と仰いました。綺麗にさせて下さい」
「そうか、僕が悪かった。入っておいで」

ボディーシャンプーで体を洗いシャワーで流します。乳首に当たる
シャワーの飛沫が又快感を引き出します。シャワーで女の部分を洗って
も花蜜は後から後から湧き出してきます。温めのお湯のバスタブに身
を沈めて体の火照りを覚まします。バスルームにある鏡に向かい少し
長めの髪をアップに結わえます。

着替えのショーツはありません。シミの浮き出たショーツを穿くのは
気が引けて、裸の上にバスローブを羽織ります。部屋に戻ると常務さんは、
椅子に腰掛け窓の外を見ています。この部屋をまじまじと見るのは今が
初めてです。さっき、入った時はいきなり抱きしめられ部屋を見る余裕が
なかったのです。キングサイズのベッドが二つ、二人掛けのソファーが一つ、
小さなテーブルの向こうには大きめの椅子がありました。

常務さんはバスから出た私にも気がつかず、窓の外を眺めています。

「お風呂、頂きました」
「そうか、僕も風呂に入る。
紅茶を淹れておいた。飲んでいるといい」

椅子に身を預け、36階から見下ろす東京の夜景を眺めます。夜景を眺めて
いるとまた心が締め付けられます。研二さん、ご免なさい。私はもう
後戻り出来ません。紅茶を頂きます。ブランデーが仄かに香ります。
何故か心が落ち着くのです。

常務さんがバスから出てくる気配がします。窓のカーテンを開けている
のが恥ずかしく、そっとカーテンを引きました。

出てきた常務さんにいきなり抱きしめられます。バスローブを肌蹴られます。
裸になった私の、脇の下から体の側面に沿って、脇腹、腰、お尻、太腿と
何度も撫ぜ上げ撫ぜ下げるのです。私の体のラインを確かめるような
仕草です。

「こうしていると、かおるこの全てが解るような気がする」

その手は背中に回り正中線をなぞります。そうされているだけで、
堪らない気持になってきます。長い時間立たされたままで、掌と指で、
敏感な部分には触ることもなく、そうされていました。口づけが欲しい、
乳首にそして女の部分に指が欲しい。私の体は要求しています。でも
それだけで、さっきの余韻もあって花蜜が流れ出しています。常務さん
に見られるのが恥ずかしく、太腿をキュッと窄めます。常務さんは椅子
に座ります。その顔は私の腰の直ぐ前です。

「脚を開いてごらん」
「出来ません。堪忍して下さい」
「駄目だな、どうしても見たい」

そう言って、脚の間に手を入れて脚を開かされました。恥ずかしい、
花蜜を流している女の部分を見られてしまったのです。流れ出ている
花蜜を人差指と中指で掬い取り私の目の前に持ってくるのです。

「ほら見てごらん。こんなに沢山」
「いや、恥ずかしい」
WA 11/25(火) 11:41:52 No.20081125114152 削除
花蜜で濡れたその指を私の乳首に擦りつけ、花蜜を塗りたくるのです。
乳首と乳房はてらてらと光ります。その恥ずかしい姿に耐えられず、
両腕で乳房を隠しました。でも常務さんは許してくれません。

「その腕をどかしなさい。腕は頭の後ろで組むんだな」

恥ずかしい、でも常務さんの言葉に従うのが心地いいのです。腕を頭の
後ろで組んで、両足を少し広げて次の言葉を次の指を待っています。指は
花芯を捉えます、人差指で突っつくのです、軽く弾くのです。人差指と
親指で摘みます、そろそろと花芯の包皮をその根元に引っ張り下げ、
花芯を露わにするのです。主人との時は軽く触れる程度のものでした。
今まで空気にさえ触れた事もないその部分が露わになりました。常務さんは
その部分に息を吹きかけています。

「ああ」思わず溜息が出てしまいます。

膝ががくがくしてきます、もう立っているのが辛いのです。

「洋司さん、私もう・・・・・」
「もう、どうした?」
「駄目です、立っていられません」

常務さんは私を抱き上げてベッドへと移してくれました。

その後、時間を掛けて愛されました。

「僕ももう限界だ。どこに欲しい」
「恥ずかしい、言えない」
「止めて良いのかな」
「いや、止めないで」
「じゃあ言うんだな」
「あそこに・・・・・」
「あそこでは解らないぞ」
「かおるこの・・・オマンコに下さい」
「出していいのだな」
「はい」

この日、安全日であったかどうか確信がありませんでした、でもこの
前の日から計算すると大丈夫な筈でした。常務さんは私の中に大量の
精を放ちます。主人のものを直接受けたのはもう記憶の彼方の事です。
私の膣と子宮は喜びに打ち震えていました。

一緒にバスルームに行きます。常務さんは私の体にシャワーをかけ汗を
流してくれます。私も常務さんの体を流します。小さく萎んでしまった
それが愛おしく、手に石鹸を付け洗います。ベッドに戻り常務さんに頭
を抱えられるようにして眠ります。中国に発つ前夜に主人が手枕して
くれたことを思い出します、自然と涙が出てきます。

朝5時頃目覚めます。常務さんと顔を会わせるのが気恥ずかしく、
常務さんが目を覚ます前に帰ろうと思います。身支度をしています。
その身支度の音で常務さんもお目覚めになったようです。

「あっ、済みません。起こしてしまいましたか」
「いや、50も過ぎると目が覚めるのも早くなる。
どうした、もう服を着て」
「顔を会わせるのが恥ずかしかったのです。
お目覚めの前に帰ろうと思いました」
「君と言う人は。ゆっくりしていけばいい。
モーニングを一緒に食べよう」
「はい」

アパートには11時頃着きました。ドアーをくぐると私の心に主人への
申し訳なさが滝のようにどっと流れ込んできます。研二さん、貴方は
外国で仕事を頑張っているのに、私は何と言う事をしてしまったの
でしょうか。でも他の女の人を抱いた事を免罪符にしている私もいる
のです。

夜になり周りが暗くなってくると益々罪悪感が募ります。主人への
申し訳なさと初めて他の男の人に抱かれた罪悪感で食事の用意も何も
手につかないのです。テレビを見ていても、ドラマの筋もニュースの
内容も何も頭には入ってきません、只画面を眺めているだけです。
お風呂に入り、ベッドに潜り込みます。灯りを消して何もない暗闇を
見つめています。
WA 11/26(水) 14:22:28 No.20081126142228 削除
暗闇から“かおるこ”と声が聞こえてきます。私の手と指は自然と胸へと
進むのです。手の平を乳房の上に置き常務さんを思い浮かべます。
まだ乳首には昨夜の余韻が残っています、でもそうしただけで何か
ほっとして眠りにつくことが出来ました。

日曜日の朝、8時頃携帯に着信があります。常務さんからです。

「かおるこです」自然とそう言えるのです。
「山下だ。朝早くから悪いな」
「どうかされましたか」
「いやね。君に時間があればドライブにでもと思ってね」
「まあ、ドライブですか。若いですね」
「それでは初春の山探索ではどうかな」
「連れて行ってください」
「君の近くの駅前で待っていてくれ。1時間半くらいで行けると思う」

ドライブ、これも久しぶりの事です。ワクワクするのが解ります。
ぴっちりしたジーパンと真っ白いスニーカー、V-ネックのカシミア
のクリーム色したセーターに少しお洒落なペンダント、耳にパールの
ピアスをあしらってサングラスを頭にのせました。

駅前で待っていると、真っ白いベンツのSLが滑りこんできます。
コンバーチブルです、常務さんの姿が見えます。

「オープンカーですね」
「オープンカーとは君も古いね、コンバーチブルと言ってくれ」

「何処へ行こうか」
「ここからでしたら、奥久慈が近いです」

走り出すと初春の風が肌に冷たく感じます。

「寒いか」
「ええ、少し」
「スカーフを持ってきた。それと良ければこのハンチングを被れば」

そう言って出してくれたスカーフとハンチングは常務さんとお揃いのものです。
少し恥ずかしかったのですが身につけました。

「似合ってるよ」
「洋司さんも」
「何か恋人同士みたいだな」

50男と40女がお揃いのスカーフとハンチングを身につけているのです。
周りの人が見れば当然、夫婦だと思うでしょう。今は研二さんの事を
忘れているのです、常務さんと居るのが心地いいのです。

山道に入っても常務さんは運転のテクニックを私に見せたいのか、スピード
を落とさずにカーブを曲がります。その度に体が常務さんにぶつかるのです、
きゃーきゃーと女学生の様な嬌声もあげました。途中、峠の平らな所にある
お蕎麦屋さんで美味しい蕎麦を頂きました。そこから見る山々はまだ春には
遠く寒々としていました。

常務さんが呟くように言うのです。

「離婚してからもご主人と会っているのか」
「えっ」

私は返事に窮してしまいます。

「会っています。でもどうしてそんな事お聞きになるのですか」
「いや、会っているのならいい。忘れてくれないか」
「嫌です。最後までお話になって下さい」
「今は話せない。しかし君が上手く行っていないのなら、
君と過ごせる時間がもっと長くなる。そう思っただけだ」
「・・・・・」
「さあ、もう一走りしよう」

途中、洒落たペンション、ラブホテルが所々に建っています。その前を
通るたびに今度はそこに入るのかとドキドキしていました。はしたない女
だと思われるのが嫌で、着替えの用意はしていません。でも車はそこを
素通りで高速道路に入ります。ほっとした気持と、今日は抱いてもらえ
なかったという気持が絡み合っていました。

車は駅前に着きます。

「今日は楽しかった。こんな事は20年ぶりだ」
「私も楽しかったです。有難う御座いました」

今日は、当然抱かれるものだと思っていました。私に女の魅力が無いのかも
知れない、常務さんは私を女として見てくれていないのかも知れない。
でもそれ以上に私の事を大切に扱ってくれているのかも知れない。複雑な
思いが交錯しています。
WA 11/26(水) 14:24:21 No.20081126142421 削除
主人が出張中の2ヶ月の間に何度も抱かれました。帰ってきてからも
それは繰り返されます。その間常務からは連絡用の携帯を手渡されます。
主人に申し訳ないと言う気持ちがあっても常務さんから電話があると、
その気持ちが片隅に追いやられ常務さんに会いたい気持ちが勝ってしまう
のです。私の気持ちが会いたいのか、それとも体が欲しがっているのか、
解らなかったのです。寂しさと体が欲求してしまったのです。

ある日、常務さんに抱かれた時の事です。

「かおるこ、僕のものだけになって欲しい」
「えっ」
「妻と離婚することになると思う。結婚して欲しい」
「でも私には主人が」
「今は離婚している」
「でも、主人は迎えに来てくれると」
「君は僕とは遊びだったのか?愛してくれてはいないのか?」
「そんな事は・・・・・」
「では君の毛を剃らしてくれ、それが君の気持ちだと思うから」
「そんな事出来ません」
「解った。君と二人で高島さんのところへ行こう。
高島さんと僕の目の前で、どちらか一人を選んでくれ」

そんな事が出来る筈がなく、結局私の毛は刈り揃えられてしまいます。

この事が切っ掛けで、私が抱かれていたのは、私の体が欲しがっていた
からだと解りました。私が愛しているのは主人だけだと再認識しました。
主人にかまってもらえない寂しさを常務さんに求めてしまったのです。

常務さんに毛を刈り揃えられたのはその時一度だけでした。主人は私を
灯りの下で抱く事はなく、刈り揃えられたのは解らないだろうと
思っていました。

主人が出張から戻り半年位たち、中国への製造委託も軌道に乗ったよう
で主人の収入も増え、元住んでいた近くに大きめの一軒家を借りる事が
出来、主人と再婚しました。嬉しかった、でも罪悪感が大きく心を
占めていました。もう常務さんとは会わない、もう決して抱かれはしない
と誓いました。主人も毎日のように愛してくれました。もし許される
ものなら、このまま黙ったまま主人に付いていきたいと思っていました。

常務さんの言葉が気になっていました、主人の目の前で選んでくれと
言う言葉です。でもそれ以後は常務さんの口からはそんな言葉は
でなかったのです。お誘いを断った時も黙って、そうかと言うだけ
でした。

本社に勤めだして3週間位経った時、常務さんが離婚した事を知らされます。
私の責でもあると思い、また常務さんのお誘いを受けるようになってしまい
ます。こんな事をしていてはいけない、もう会社を辞めて主人に打ち明け
ようと思っていました。

主人は気がついていたのです。報告書を放り投げ寝室へと行きました。

「お前もよく考えておけ」と言い残して。
WA 11/26(水) 14:27:22 No.20081126142722 削除
明くる朝、一番で興信所に行きます。

「俺は少し出かけてくる。帰ったら話をするから、今日は会社を休め」
「はい」

興信所に山下のどんな些細な事でもいいから出来るだけ沢山の情報が
欲しいと依頼しました。雲を掴むような話で、果たして成果があがるのか
どうか解りません。金は幾ら掛かってもいい、女の事でも会社の関係
でも何でもいいからと依頼します。今、金は一円でも残しておきたいのです。
しかし、そんな事は言ってられません。このまま、ずるずると負け犬で
終わりたくは無かったのです。

興信所を出ても、直ぐには家に帰る気はしません、妻に話をすると言った
ものの、何を話していいか解りません。罵りの言葉しか出てこない事
でしょう。駅前の喫茶店で時間を潰します。

思えば私の臆病さがこの事態を招いたのかも知れません。町金融を恐れる
余り、妻と別離し、別々の町で暮らした事がこの結果になってしまったのです。
町金融への恐れは幻影でした、そんなものは無かったのです。

それに加えて、破産のショックと仕事への不安、それらが折り重なって私の
男性機能はじょじょに失われていきました。妻と別れた当初は少しですが、
まだ役に立っていました。それも妻と別れて時間が経つにつれ失われて
いきました。妻と一緒に暮らしていれば、こんなに酷くはなっていなかった
かも知れません。病院に通った事もありますが、妻と再び一緒に暮らしだす
とそれは回復したのです。全ての事が私の選択が間違っていた事を示して
います。

別れた時、妻は39才でした、女盛りです。寂しさに耐えかねて男に走って
しまったのかも知れません。しかし、だからと言って許せません。妻を
許せません、それにつけこんだ男はなおさら許せません。お互い一人で
居た時に妻は男と乳繰り合っていた、男の膝下に敷かれていた、男の愛撫
に妻は答えていた。想像するだけで頭が掻き毟られます。

妻の携帯2つとも持ってきています。何か山下の痕跡がないかと見てみます。
山下からもらった携帯には例のメールが只2通。妻の携帯のメールは1通を
残し全て削除されています。よく見ると私の携帯から4年程前に転送された
ものでした。真理子と言う女が私に抱かれて嬉しかったと文章を綴っています。
真理子?思い出しました、銀座の女です。よく悪戯メールをする女でした。
店に来て欲しくなると時々こんなメールをする女でした。もちろん体の関係
はありません、女のただの可愛い悪戯だと思っていました。明日は行くから
とメールを返した覚えがあります。それを妻は見てしまった、そして自分の
携帯に転送したのです。私は用のないメールは小まめに削除しています。
しかしその日はしたたかに酔っていたか何かで、直ぐには削除しなかったの
でしょう。

妻の浮気の遠因になっていたのでしょうか。
WA 11/28(金) 17:12:11 No.20081128171211 削除
家に帰る足取りが重いのです。玄関の前に来ても直ぐには中へ入れません、
溜息をついてしまいます。家に入りますと、薫子はダイニングの椅子に背を
正して座っていました。

「こっちに座れ」

リビングの私の正面のソファーに座らせます。

「俺たちはもう、やっていけない、そう思わないか」
「許して下さい。私がいけなったのです。もう絶対にしません」
「別れて住んでいた時、こそこそと隠れて抱かれていただけなら
まだしも、一緒に住みだしても、お前は抱かれていた」
「・・・・・」
「間抜け亭主は気がつく筈がないと思っていたんだ、お前は」
「・・・・・」
「俺はお前と一緒に住める日を指折り数えていた。
一日でも早く一緒に住みたいと、それだけを考えていた」
「・・・・・」
「それをお前は、別々に住んでいるのをいいことに、
山下と夫婦同然の生活をしていた。しかも一緒に住みだしても
それは続いた」
「夫婦同然だなんて、酷いです。そんなに沢山は・・」
「馬鹿かお前は。回数の事を言っているんじゃない。
俺は只の一度も他の女を思った事もない」
「私、寂しかった」
「寂しい?寂しいのは俺も同じだ。寂しかったら他の男に抱かれてもいいのか」
「違います。貴方には好きな女の人がいると思ってた。ずっと思っていました」
「好きな女?そんな女が居るわけがないだろう。どこにそんな女が居る」
「真理子さん。真理子さんが貴方のアパートに来るから、
私にあまり来るなと言ったのだと思ってた」

やはり、妻は、私が真理子を抱いたと思っていたのです。

「真理子さんを抱いていたから、もう私を抱けない、もう私を女として
見てくれないと思ってた」
「真理子って誰の事を言っているのだ」

妻の携帯で解っているのですが、とぼける他ありません。

「何処の誰だか私は知りません。一緒に住んでた頃、
貴方は酔っ払ってぐでんぐでんになって帰って来た。
背広を脱がせた時、メモが落ちました。これです」

メモの事は覚えていません。真理子が私によこして、私が背広のポケットに
入れたのか、それとも真理子が忍ばせたのか。そこには確かに真理子が私に
抱かれて嬉かったと書かれています。

「こんなもの、ただの悪戯じゃないか」
「そんな事信じられません」

このメモが只の悪戯かどうか今更、実証する事は出来ません。真理子が
同じ店にまだ勤めているかどうか解りません。例え、連れて来て妻の前で、
あれは悪戯でしたと言わせても、妻にはとんだ茶番に写るでしょう。ここは
私の言葉で悪戯を押し通すしかありません。

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