BJ 7/16(日) 06:15:01 No.20060716061501 削除
結婚して三年経った頃のことです。当時の私は妻の気持ちをはかりかねていました。
本当に愛されているのかどうか、いつも疑問に思っていました。
妻、瑞希は私よりも五歳年下の三十歳。すらりとした痩せ型の体型、少し冷たい印象を与える顔立ちは整っていて、まず美人といえるでしょう。
夫婦の間に子供はいません。
瑞希とは見合い結婚でした。私は見合いの席で出会ったときから、瑞希の端整な容姿や、年に似合わぬ落ち着いた物腰に惚れこんで、懸命に求婚しました。瑞希はそれを受け入れてくれました。いつものように感情の分かりにくい顔で。
結婚してすぐに分かったのですが、瑞希は妻としては非の打ち所のない女でした。元来、働くのが好きな性質であるらしく、専業主婦となってからも、家事に手を抜くことなどまったくありません。友達の主婦連と亭主そっちのけで遊び回ることも皆無です。
しかし、私は不満でした。というより、不安でした。
瑞希は表情に乏しい女です。いったい何を考えているやら、どんな気持ちでいるのやら、よく分かりません。おまけに無口です。私が気を遣ってあれこれと話しかけても、たいていは冷静で抑揚のない相槌を打つだけで、私はのれんに腕押しのような気分になります。
私は騒々しい女が嫌いだったので、瑞希のそんな静かな佇まいが最初は好もしかったのですが、結婚してしばらく経つと、あまりに妻の気持ちがつかめないことに苛立ちを感じるようになっていきました。見合い結婚ということもあり、妻が自分をどう思っているのか、本当に夫として愛しているのか、気になっていました。
夫婦間の愛情確認といえば、夜の営みもその大きな要素であると思います。しかしそれも上手くいきませんでした。
私からベッドに誘えば瑞希は否ということはありませんでしたし、彼女の裸は見た目そのもののようにすっきりとしていて、若々しい肌の手触りは最高でした。私も最初は大いに発奮して、ベッドの上ではなんとか主導権を握ろうと、あれこれと趣向をこらしたのですが、妻はそんなときでさえ至極冷静で、声をあげることもなく、私はお釈迦様の掌にのせられた孫悟空のようなむなしさを感じ、やがて冷めてしまいました。
結婚当初の私はこのうえなく幸福な人間でした。それがいつの間にか始終いらいらとした人間に変わっていったのです。それほどまで心をかき乱されるほど、私は瑞希にのぼせていたと言えるのかもしれません。しかし、不幸なことに私も瑞希ほどではないにせよ、自分の気持ちを率直に伝えることが不得手な人間でした。しかも、そのことに当時の私は気づいていませんでした。