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北原夏美 四十路 初裏無修正

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愚か者 9/5(火) 19:39:40 No.20060905193940

私の意図は二人に通じたようです。
桜井は、見る影も無い有り様でした。
妻の前であるにも関わらず、鼻水を流しそれを拭うこともなく。
ただ泣きじゃくっているだけで、妻を寝取った男のふてぶてしさや、
開き直りにも似た恫喝的な態度など微塵もなく、私の予想を遥かに裏切る
その態度には、私の方が惨めになる感覚がしました。
こんな男に、最愛のものを奪われ、壊された自分が情けなく思え、それを
奈落のそこに落そうとしている自分自身に嫌悪感を感じていました。
「桜井さん、今日は帰ってくれないか?」
「・・・」
桜井は私の顔を見ていますが言葉が出ません。
「今日はもういい、また連絡する。」
「・・・はい・・・」
「許した訳じゃないから、勘違いしないで欲しい。」
「・・・どうか穏便にお願いします、会社の事はくれぐれも、お願いします。」
「・・もういい、帰ってくれ。」
桜井は、尻尾を丸めて逃げる犬のように一目散に玄関に向かい、私と妻の方を
振り向く事もなく帰っていきました。
一時でも早くこの場から逃れたかったのでしょう。
残された私と妻の間には、沈黙の時間が続きます。
私が何か話さなければ、妻の口から声を発する事はあるはずが無いことは解って
いました。
しかし、私の口から言葉が発せられるまでは、かなりの時間を要しました。
私は両手を組み、ソファーに座り軽く目を閉じながら昔の事を思い足していました。

私の父は、今私が居る会社の工場長をしていました。
母は専業主婦で、子供は私一人でしたが、慎ましいながらも幸せな家庭でした。
会社にさほど遠く無い都内の3LDKのマンションに住まいを構えていた私たち家族に、
現社長は、それは親密な付き合いをしてくれていました。
社長夫婦には子供が無く、家も近い事もありよく招かれ、私の誕生日などは、社長宅で
行われるのが常で、中学を卒業する迄それは続けられました。
私も父が厳格な人間でしたので、何でも願いを叶えてくれる社長に甘えていたところが
ありました。
父から見れば、甘やかすだけの社長の行動は、時には腹立たしいものが有ったようで、
父と社長が時々口論になる事も有りましたが、何時も社長が折れて事は収まりました。
私から見れば、仲の良い兄弟喧嘩程度にしか見えなかった記憶が有ります。
私が20歳のとき、両親が突然亡くなりました。
交通事故に遇い、二人とも即死状態で死に目にも会うことが出来ませんでした。
両親の葬儀の時、社長は私の脇から一時も離れることはありませんでした。
両親を一瞬にして無くし、ただ茫然としている私に対して、社長は献身的に尽して
くれました。
両親とも地方の出身で、都内に親戚も居らず、親類縁者は通夜と告別式に来るのが
精一杯の状況の中、このときほど社長に感謝した事はありませんでした。
四十九日に納骨を澄ませ、百か日の法要が済んだ日のこと、社長が帰り際に私を
家に招きました。
私は、今までのお礼もしなければと思い、家に帰ってから一升瓶を片手に、社長宅を
訪ねました。
玄関には、奥さんが何時ものように、わが子の帰りを出迎えるように、にこやかに
立って居ました。
「雄ちゃん、お疲れさま、お上がりなさい。」
「はい、お邪魔します。」
「さあ、さあ、お父さんお待ちかね!」
奥さんの揃えてくれたスリッパを履くと、リビングに直行しました。
リビングのソファーに深く腰を落とした社長は既に酒を飲んでいるようで、少し酔いが
回っているようでした。
「おー、雄二、こっちへ座れ!」
「はい、失礼します。」
手に持った一升瓶をテーブルの上に差し出すと、社長は嬉しそうに微笑みながら話かけて
来ました。
「おー、気が利くなー、雄二は!」
「いえ、この度は大変お世話になりまして、感謝しております。」
「何だ、他人行儀な事を言うな。」
「いえ、本当にありがとう御座いました、社長がいらっしゃらなかったら、本当に・・・」
「いゃー、そんな事は無いさ。」
社長は、少し寂しそうに俯きながらグラスを手にとって、口元に運び飲み干しました。
「おい、酒の用意をしてくれ、雄二が持ってきてくれたやつを頼む。」
「はーい、お冷にしのますか?それとも!」
「・・・今日は、冷にしよう、なぁー雄二?」
「はい。」
程無くして、奥さんが新しいグラスと、つまみを運んで来ました。
「なー、お前もここに座れ・・・」
「はい、はい。」
奥さんは、社長に促されるまま、私たちの脇のソファーに浅く腰掛け、二人に酌をしてく
れました。
「今日は父さんと母さんの供養だ、ゆっくりやろう、な、雄二。」
その日は、たまたま金曜日で私も翌日の事は考える必要も無かったので、お礼の意味も
込めて、快く返事しました。
「はい、こちらこそ、お願いします。」
「そういえば、前にも同じ様なことが、あったな。」
「それは・・・?」
「お前の父さんと、こんな風に二人で飲んだことが有ったよ。」
「そうですか・・・」
「お前の兄さんが、亡くなった時だ。」
私には兄が居ました、正確には居たらしいです。
生後9ヶ月で亡くなってしまったことは、両親から聞いていました。
生まれつき心臓に重い欠陥を持って生まれた兄は、当時の医療では延命が難しく、9ヶ月
でこの世を去ってしまった。
社長が言うには、そのときも社長と父は、酒で兄の供養をしたと言う事でした。
「まさか、雄二と二人で、お前の両親の供養をすることになるとはなー。
 俺の方が先に逝く筈だったのに・・・」
「そんな事、無いですよ、寿命ですから。」
「そんな事あるか、物事には順番というものがある、解るか雄二!
 俺は悔しいぞ 雄二、何であいつが・・・なんで・・・」
社長は突然グラスをテーブルの上に置くと、両の手で顔を隠すようにして号泣しました。
「雄ちゃん、うちの人、貴方のお父さんを弟みたいに思っていたからね。
 うちの人も兄弟がいなくて、両親が早くに無くなってからは一人ぼっちだったからね。
 私は子供生んで上げられなかったし、この人寂しいのよ。
 四十九日の法要の後は、毎日こんな感じなの・・・」
奥さんの目からは、一筋の涙が流れていました。
私は、父と社長の絆の深さを思い知らされました、社長と従業員という言葉以上の絆、
ここまでのものとは私も気付いていませんでした。
子供の居ない、世話好きの社長の度か過ぎた道楽程度に思っていたのかも知れません。
突然、社長が顔を上げ、私の顔を見据えて言い出しました。
「雄二、今日はお前に話がある!」
「・・・お話ですか?」
「ああ、話がある。」
社長の目は、真っ直ぐに私の目を見据えて動きません。
「・・・何でしょうか。」
「お前、私の息子にならんか!」
余りにも唐突な言葉に私は返事をすることすら出来ません、訳も無くテーブルの
グラスを手にして酒を口にして見ましたが、何と返事して良いのか解りません。
社長はじっと私を見つめていましたが、返事の無い私に催促します。
「どうだ 雄二、嫌か?私が嫌いか?」
「・・・いや、そんな事は無いです、ただ・・・」
「ただ何だ、雄二?」
「急な話ですから、ちょっと・・・」
「雄ちゃん、びっくりしたと思うけど、うちの人は前から考えてた事なの、
 雄ちゃんのご両親が無くなってから、ずっとね!」
「私には、子供が居ない、遠縁の者は確かに居るが、今からお前以上に情を持って
 接する事は出来そうに無い。
 雄二さえ良ければ、私の家族に成ってくれないか?」
私は溢れ出て来る涙を抑える事が出来ませんでした。
両親が無くなり、孤独の身になった私は、両親の保険金や事故の賠償金で、学生の
身で有りながら、経済的には将来に不安はありませんでしたが、心の隙間を埋める事は
自分では出来ないでいました。
子供の頃から、両親の次に接する事が多く、私の人格形成にも少なからず影響を与えてきた人達であり、両親の次に情が通っているとしたらこの二人に間違いはありません。
「雄二、どうなんだ?」
「雄ちゃん、嫌なら無理しなくていいのよ。
でもね、私もこの人と一緒で、雄ちゃん以外は考えられないのよ。」
「雄二、嫌か?」
私は声の出ない涙を流しながら、社長の目を見つめながら首を大きく横に振りました。
「嫌じゃないんだな!いいんだな雄二?」
今度は頭を大きく上下に振ると、思わず大きな声で泣いていました。
「そうか、そうか。雄二有難う。」
涙で顔を上げていられず俯く私の肩に、奥さんの暖かい手が置かれ囁きかけます。
「辛かったよね、寂しかったよね・・雄ちゃん。」
二十歳と言っても、孤独に成ったとき、所詮は親掛かりで生きてきた人間ですから、血の
繋りは無くても身近な人間の情に接したとき、凍りかけていた気持ちが一気に溶けて行き
心が温かくなるのを感じていました。
両親の一周忌を済ませてから、私は社長の家に移り住む事になり、大学を出てから直ぐに
義父の会社に入社し、順風満帆とは申しませんが、他の役員の後ろ盾も得て、現在の地位
まで上り詰めて来ました。

コメント

この話し

続きはないんですか?
非常に気になります。

構成がおもしろかったです。

一言で、残酷ですね!性というものすべとを崩壊させ、
裏切り事象が渦巻く現実。
男も女もそういう動物なのでしょうか。

もちろんすべてがすべてとは思いませんが・・・。
私は男性ですが、女性の気持が不可解になることがあります。

罪悪感は誰しもあるもの。ばれなければいいと
夫とは別れる気がない。
男にしてみれば妻に他人の性器が入り、それにこたえて快感に登りつめる妻の浅はかさ。
ましてその男の精液を受け入れても、夫に対し、「どうかしていました」「ごめんなさい」で
後の生活が上手くいくという心理がわかりません。

女は襲われても、感じてくると獣のように見境がつかなくなるのでしょうか。

教えてください。

久しぶりにまた読んだ。
こういう重厚な良い作品ほど未完になっちゃうよね。。
やっぱりアッハンウッフンいってりゃいーわけじゃないからね。

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