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北原夏美 四十路 初裏無修正

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卒業 18

BJ 8/10(金) 04:02:52 No.20070810040252 削除

 ゆっくりと雫が垂れ落ちるような時間が過ぎて、また、夜がやってきました。

 天橋立で迎える三度目の夜は、昨晩のように悪天候に見舞われることもなく、私の外側の世界は穏やかそのものでした。
 やがて朝が来て、この暗闇の結界が力を失う頃に、私はどんな顔を新しい日の光に晒しているのか。
 そして、妻は―――

 妻は夕方に一度駅前の温泉に行ったというのに、夕食後にもう一度、宿の湯へ浸かりにいきました。
 今宵、赤嶺の目に晒す己が身を浄めるために。
 その事実を噛み締めるだけで胸の内にぐずぐずと生じる、この不安と嫉妬の入り混じった気分の高まりはいったい何なのか。
 今まで幾度となく雪崩のように押し寄せてきたこの感情は、ついに私と妻の立っていた場所もろとも突き崩し、押し流してしまいました。
 その先に待つのは―――いったい何なのか。
 私は立ち上がって、窓を開けました。静謐な夜。暑かった昼間の残滓を含んだ空気に、蝉の鳴き声がかすかに響いています。
 そして結局禁煙に失敗した私の吐く紫煙は、吸い込まれるように、べっとりと暗い闇の中へ消えてゆきます。
 その煙を捕まえようとする行為くらい意味もなく、私は窓の外の虚空に手を伸ばしました。
 空には鋭い三日月がかかり、その蒼褪めた光は暗闇に伸びた私の腕を照らしていました。

 戸の開く音がして振り返ると、妻が戻ってきたところでした。
 普段と比べて少し面やつれしたように見えるその顔。装った表情の平静さと裏腹に、その顔は今にも崩れてしまいそうな危ういものを孕んでいるようでした。浄められたばかりの細身は、息苦しいまでにきっちりと着つけられた白の浴衣でよろわれています。
 そんな妻の姿に、私は今しがた見つめたばかりの三日月の幻影を重ねました。
 細く、鋭く、凛として、けれど今にも闇に呑まれてしまいそうな儚い美―――
 彼女の姿を見慣れた目にもそんな感慨を起こさせるほど、今宵の妻は綺麗に見えました。
 しかし、それを口に出すのは、私には出来ないことでした。
 
 しばしの間、私は無言のまま、静かな刻を過ごしました。
 それは私が今の私のままで、妻が今の妻のままでいられる最後の時間―――なのかもしれないのでした。
 けれど―――この瞬間に至っても、私の中にふつふつとわきおこる様々な想いの形は、妻の内面のそれと完全に一致してはいないのでしょう。
 私はそれを思ってひどく悲しい気持ちになりました。けれども、そのことで本当に悲しむべきなのは、悲しんでいるのは、やはり無言のまま座している妻のほうに違いありませんでした。

 言葉のない時間。しかし、私の耳にはあの沈黙の音がずっと流れ続けていました。
 妻の耳にもきっと、その音色は響いていたことでしょう。
 それだけは―――たしかなことでした。


 そして時は―――満ちました。

 私は目で、そのことを、妻に告げました。
 妻は、静かに立ち上がりました。
 私も立ち上がり、妻の前に立って戸を開きます。
 さすが格式の高い宿と言うべきなのか、黎明荘の客で夜中に騒ぐ者はいないようでした。
 だから、磨かれた木の廊下はとても静かでした。
 私はそのことを、ほんの少し、うとましく思いました。

 今度は妻が先に立って、廊下の道を歩み始めました。
 沈黙の音はとうに鳴りやんでいます。
 妻はそれこそ音もなく、ゆっくり歩を進めていきました。
 その粛々とした足取り。
 モノクロームのような光景の中で、薄い照明に照らされた妻のうなじだけが蒼みがかって見えます。
 途中で一度だけ、りん、と廊下が鳴いて、はっと現実に呼び戻されたような心地がしました。

 永遠のように思える一瞬が過ぎて、かすかに翻る妻の浴衣の裾がその動きを止めました。
 妻の前には、扉がありました。
 道行きの途中、妻は一度も私を振り返りませんでした。そのときもそうでした。しかし、私は妻がその瞬間、振り返らずに私を見たのを感じました。
 私はその視線を避けるようにすっと動いて、妻の前に立ちました。
 戸に手をかけるとき、その手が震えるのを私は抑えることが出来ませんでした。


 なぜなら、あの男は言っていたから。
 今夜は鍵をかけないでおく、と―――


 震える私の手で―――
 扉はゆっくりと開かれました。

 部屋の中に目をやったとき、異様な感覚がありました。すぐにそれは照明のせいだと分かります。この部屋の主である私の古い友人は、昔から宿に泊まると、その部屋の照明にスカーフなどをかぶせて自分好みに光を変える癖があるのです。
 そして今夜、彼の部屋の照明には茶褐色の薄布が巻きつけられていました。
 ただそれだけで、純和風のこの部屋はつくり変えられ、妖しい趣に満ちた異空間へと変貌を遂げていました。


 ―――変えてやるよ。


 それがこの男の生まれ持った性なのだ。

 私はぼんやりとそう感じました。


 男―――部屋の主は、部屋の奥に座っていました。

「―――遅かったじゃないか」

 錆のある低音でそう告げて―――
 男は立ち上がり、まっすぐに近づいてきます。
 深い海のようなその瞳は、まったく私のほうを向いていませんでした。

 この部屋に私たちが足を踏み入れた瞬間から―――
 男の目が見つめているのは―――

「さっきからずっと、待ちかねていたよ」

 すっ、と薄闇の中から太い腕が伸びて―――
 傍らの妻の手を掴み、自らの空間に引き入れました。

コメント

文学きどりの愚の骨頂とはこういう話しを言うんだな。さっさと次の話しに期待したい

主人公は赤嶺に借金でもあるの?
妻が赤嶺とやりたいからやらせようとしてるのかな?
ヴァッカだねえ、ほんまに。

つまんないね。リアルさが全然ありません。
これもつまんない一駄作。

いや違うよ、これは「寝取らせ」。
自分の妻が他人とやる事で興奮するマゾの奴の話。
書き手はこーゆー奴が多い。読み手とは逆。
どーでもいいけど、この文学調が堪らなく気持ち悪い。

漱石を持ち出しているくらいなので、何等か比較される覚悟があるだとは思いますが、、、
確かに、「堪らなく気持ち悪い。」です。
頭の悪い学生が、稚拙な哲学もどきを、自己陶酔気味に語っているのを聞かされるような、そんな気持ち悪さ。
恥ずかしくて、顔を覆ってしまいます。

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