[3549] インプリンティング 38 投稿者:迷人 投稿日:2005/09/04(Sun) 21:44
私が急に殴ったのは、娘の事を妻から聞いたからだと感じた稲垣は、私の怒りの深さに脅え、穏
便に済む様に、奥さんに私を説得してもらおうと全てを告白したのでしょう。
私を恐れて、私から1番離れた部屋の隅に正座していた稲垣は、奥さんの言葉で、私の顔色を伺
うかの様にゆっくりと近付いてくると、少し離れたところで土下座して。
「ご主人、申し訳有りませんでした。私はずっと奥様を騙していました。若い頃から奥様が私に
特別な感情を持っていると気付いていたので、それを利用してしまいました。」
「そんな事は、妻の話を聞いて知っている。それよりも、娘の事はどうするつもりだ?今更おま
えの子供だと言われても、俺は納得出来ない。いや、絶対に納得しない。娘は俺の子供だ。」
「その通りです。ご主人のお子さんです。私の子供では有りません。」
「ああ、だからと言ってこの責任は重いぞ。娘は俺の子供と思って育てる。だが、おまえは絶対
に許さない。命を弄びやがって。例えおまえが死んでも俺は絶対に許さない。」
「違うのです。本当にご主人のお子さんなのです。私の子供では有り得ないのです。」
私は稲垣お得意の逃げだと思い。
「どうせ妻といる時は、お互い不倫の事は気付かれない様に離婚して、本当の親子3人で再出発
しようと話し合っていたのだろ?それがばれて、自分達の思い通りには離婚出来なくなったら、
今度は自分の子供では無いと言って責任逃れか?」
その時奥さんが。
「違うのです。本当にご主人のお子さんなのです。この人の話だと、確か娘さんはO型ですよね?
智子さんにはO型だと言って騙していたらしいのですが、この人はAB型です。」
一瞬、訳が分かりませんでしたが次の瞬間、声を出して泣きたいほどの喜びが湧いて来ました。
しかし、手放しで喜ぶ訳には行きません。
何故なら散々嘘をつかれていて、何が本当で何が嘘なのか分からない状態だったからです。
癌だと言われて入院し、再検査の結果、良性のポリープだったと言われ、死を覚悟していただけ
に、泣きたいほど嬉しいはずが、もしかすると隠さなければ成らないほど、末期の癌かも知れな
いと、疑っているのと同じ様な状態です。
「本当にAB型で間違い無いですか?」
「はい。」
「おまえには聞いていない。おまえの言う事は信用出来ない。」
すると奥さんが。
「AB型で間違いないです。お疑いになられるのも当然です。自宅にこの人の献血手帳が有ると
思いますので、コピーをとって後日お送り致します。私を信じて下さい。」
この時、妻と稲垣の事など、もうどうでも良いと思えるほど嬉しかったのを覚えています。
そかし稲垣の前では喜ぶ事も、ましてや嬉し泣きなど出来るはずも無く、怒った顔をしながら、
心の中では娘が我が子だった事の喜びを噛み締めていました。
しかし時間が経過すると、娘が私の実の子だったと言う事だけで、もう充分だと思えていた気持
ちは次に移り、妻があの様な状態になったのは、それを聞いてショックを受けたのだとすると、
私の子供だった事を喜ばずに、稲垣の子供で無かった事がショックであの様に成ったと思え、ま
た私に怒りが戻って来ました。
「全て聞かせてもらおうか?」
「・・・・はい。」
そう言ったきり何も話さない稲垣に対して、妻に対する怒りまでもが向かい、髪の毛を掴んで立
たせると、また殴ってしまいました。
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