[3558] インプリンティング 40 投稿者:迷人 投稿日:2005/09/06(Tue) 22:51
奥さんは、私がいるのも忘れているかの様に、自分が疑問に思っていた事を稲垣に問い詰めだし。
「どうして好きでも無い私と付き合ったの?どうしてお母様にあれだけ反対されても、好きでも
無い私なんかと結婚したの?」
「いや、付き合っていて愛していると分かったからプロポーズした。これは本当だ。」
「それなら逆を言えば、それまでは、好きでも無いのに交際を申し込み、好きでも無かったのに
付き合ってくれていたという事?」
「その頃はお袋に逆らいたかっただけかも知れない。でも結婚したのは愛したからだ。典子だけ
を愛していたからだ。これは本当だ。」
「それなら今はどちらが好きなの?智子さんなの?私と子供まで捨てて、一緒になろうとしてい
たのだから、智子さんの方が好きになったのね?私の事は嫌いになったのでしょ?」
「嫌いじゃない。智子さんを好きになってしまったと思い込んでいたが、本当は典子の方が好き
だったと気付いた。典子から逃げようとしていただけで、本当は典子や子供達と一緒にいたいの
だと、最初ここにお邪魔した時の、典子の話を聞いていてはっきりと分かった。」
「私から逃げる?」
2人の会話を聞いていて分かった事は、稲垣は幼い頃から2人の姉と比べられながら、勉強から
生活態度まで母親に厳しく育てられた様です。
優秀な姉と比べられながらも母親に褒められたくて、母親の望む通りの学校へ行き、父親も銀行
マンだった為に銀行に就職しろと言われて、母親が選んだ銀行に就職し、後は母親が決めてくれ
る相手と結婚するだけのはずでした。
しかし、一流大学を出ていて趣味はピアノ、お茶やお花の師範の免状も持っている娘とお見合い
をしろと言われた時に、ようやく自分の人生がこれで良いのか考える様になり、母親に初めて逆
らって、母親の理想とは逆の、大学を出ていない習い事もした事のない奥さんと付き合ったそう
です。
「口喧しいお袋や姉達に逆らいたくて、典子と付き合ったのかも知れない。お袋に決められた人
生が嫌だという理由だけで、典子と付き合ったのかも知れない。お袋が理想としている女性以外
なら、誰でも良かったのかも知れない。しかし、付き合っていて好きになったから結婚したのは
本当だ。私はそれまで、女は皆お袋や姉の様な生き物だと思っていた。お見合い写真を見て、こ
の女と結婚をしてもあの様な生き物が、身の回りにもう一人増えるだけだと思った。しかし典子
と付き合ってみるとお袋達とは違っていた。最初は私と結婚出来る様に、優しい振りをしている
のでは無いかと疑っていたが、違うと分かったから結婚したいと思った。実際結婚してからも典
子は優しく、私に逆らう事も無く、常に私を立ててくれて、典子といると私は男なのだと実感出
来た。」
「私だけでは無いでしょ?智子さんにも同じ様な思いを感じていた。違う?」
「そうかも知れない。でも愛していたのは典子だった。しかし・・・・・・。」
結婚当初、何でも稲垣の言う通りにしていた奥さんも時が経つにつれ、当然の事ながら全て稲垣
の思う様には出来ずに、意見が食い違う事も出て来ました。
特に子供が生まれてからは、奥さんが稲垣に色々頼む事も増えたのですが、私にはそれが普通だ
と思えても、幼い頃からのトラウマが有り、常に女性よりも優位な位置にいたいと思っていた稲
垣には、奥さんに命令されている様に聞こえたと言います。
最初は奥さんに謝る様な雰囲気だった稲垣も、次第に奥さんへの不満を訴え出し。
「セックスもそうだ。最初の頃は私がしたい時に応えてくれていた。しかし、子育てに疲れてい
るとか何かと理由をつけて、徐々に典子主導になっていった。私はしたくなると、典子の顔色を
伺っては、お願いする立場になってしまった。だから・・・・・。」
「だから何?だから智子さんを騙して浮気したと言いたいの?9年前の浮気は、私のせいだと言
いたいの?私は精一杯あなたに応えていたつもりです。よく思い出して下さい。風邪気味で熱っ
ぽい時や、子供が熱を出して前日ほとんど眠っていない時なんかに言われても、それは無理で
す。それなら、今回の事は何と言い訳するつもりですか?」
「典子はずっと私を疑っていた。私の帰りが遅かったり、出張が有ると必ず事細かに行動を聞い
てきた。疑っていた訳が、脱衣所で拾った智子さんのイヤリングの一部だと今回分かったが、私
は全て監視されているようで息苦しかった。結婚するまではお袋や姉で、今度は典子かと思っ
た。」
「でも、結局は疑われる様な事をしていたのでしょ?あなたが何もしていなければ、この様な事
にはならなかった。私に責任転嫁しないで。」
奥さんが母親の様になってきたと感じた稲垣は、何でも言う事を聞く妻に惹かれ、妻に乗り換え
ようと思ったのでしょう。
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