[3586] インプリンティング 53 投稿者:迷人 投稿日:2005/09/15(Thu) 19:41
稲垣の仕事の都合で、夜の8時に待ち合わせているのですが、まずはホテルかその近くで食事を
するにしても、アパートで会うのとは違い、その後の行動が読めない為に私が見失った時の事も
考えて、どこかに移動する時は、その都度トイレからでも連絡を入れるように言って有りました。
2人で会わないという約束だったので、本来ならロビーに2人でいる所に乗り込めば充分なので
すが、2人だけになった時に乗り込んだ方が、より効果が有ると思ったのです。
稲垣は警戒して、最初は辺りに気を配るだろうと思い、妻よりも少し遅れてホテルに行き、その
後2人を尾行する計画だったので、今日は定時に退社するはずが、この様な時に限って余分な仕
事が入り、退社出来たのが8時になってしまいました。
しかし、少しはロビーで話をするだろうし、その後は食事に行くと思っていたので安心していた
ところ、会社を出るとすぐに携帯が鳴り。
「彼に、このホテルに部屋をとっておいたので、今からそちらで話そうと言われましたが、私は
どうしたら良いですか?」
平日でないと、出張に行っていて私が不在だと騙し難い事や、翌日が休みで金曜日の方が開放的
になれる事などを考えてこの日にしたのですが、それが裏目に出てしまい、計画を断念する事も
考えました。
しかし、妻から悩みを聞いて欲しいと言っておいて、ここで不自然に妻が帰ると言い出しては、
稲垣は警戒して、もうチャンスは無くなるかも知れません。。
「奴の言う通りにしろ。但し、奴が迫ってきても上手く逃げて、絶対に身体に触れさせるなよ。」
私はホテルに急いだのですが、早く着けたとしても3、40分はかかってしまいます。
ホテルに行く間私の脳裏には、稲垣が妻をベッドに押し倒している姿が浮かびます。
妻に嫌悪感を持っていて、私は触る事すら出来なくなっていましたが、それでも稲垣に触れられ
る事は許せません。
稲垣だけで無く、もう二度と私以外の男に触れられるのは嫌なのです。
計画では常に私が近くに居て、2人だけに成れる場所に入ったらすぐに妻に電話をかけ、2人で
出て来るように言って、稲垣に事実をつきつける予定だったのですが、これでは私が到着するま
で、何か有っても止める事が出来ません。
悪く考えると、稲垣に抱き締められてキスをされ、今の辛い立場が嫌でまた稲垣に寝返り、この
計画を話してしまっているかも知れません。
気は焦るのですが、それとは逆に、タクシーに乗ったのが裏目に出て、工事渋滞などで1時間も
掛かってしまい、ホテルに着いてすぐに妻の携帯に電話をかけたのですが、妻が出る事は有りま
せんでした。
フロントに稲垣の部屋を尋ねたのですが、教えてもらえる訳も無く、気が付くと私は家路に着い
ていました。
実家に預けていて娘もいない真っ暗な部屋の中で、何も考えられずに座っていましたが、何も考
えてはいないはずなのに、何故か涙だけが溢れて止まりません。
少しして、人の気配を感じてそちらを見ると、暗がりの中に妻が立っていました。
「あなた・・・・私・・・・・・・。」
「帰って来たのか?泊まってくれば良かったのに。俺が抱いてやれない分、奴に朝まで可愛がっ
てもらえば良かったのに。」
私に有るのは絶望感だけで不思議と怒りは無く、力無い小さな声で話していたと思います。
「ごめんなさい。私、抵抗しました。必死に抵抗しました。でも・・・・・。」
「いや、別にいい。これは俺が仕組んだ事だ。それより気持ち良かったか?気を遣らせてもらえ
たか?」
「いいえ、最後まではされていません。あなたからの電話で怯んだ時に、このままでは、ばれて
しまうと言って逃げてきました。本当です。」
「それなら、どこまでされた?キスは?」
「・・・・・・。」
「裸にされたのか?乳首を吸われたか?」
「・・・・・・・・。」
「最後までいかなくても、指ぐらいは入れられたとか?」
「・・・・・・・・・。」
「全然感じなかったのか?下着を見せてみろ。」
「・・・・・・それは・・・・・・。」
私からの電話で稲垣が怯んだのではなくて、妻が我に帰ったのかも知れないと思いました。
「でも、もう彼に気持ちは有りません。彼に抱きつかれた時嫌だと思った。あなたをもう裏切り
たくなかった。ずっと抵抗していたけれど、身体が・・・・・身体が・・・・・・・。」
妻の話が本当だとすると、あと10分私の電話が遅れていたら、最後まで行ってしまい、そうな
ると今日、妻が帰って来る事も無かったかも知れません。
「今回の計画を奴に話したのか?」
「話していません。本当です。あなた、ごめんなさい・・・・・ごめんなさい・・・・・・・。」
私は稲垣に電話をしましたが、これも怒る事無く、淡々と話していたと思います。
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