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北原夏美 四十路 初裏無修正

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[3588] インプリンティング 54 投稿者:迷人 投稿日:2005/09/16(Fri) 21:40

次の日、稲垣は弁護士を伴って私の家にやって来ました。
「約束の違反金はこの前と同じ口座に振り込んでくれればいい。話は以上です。お帰り下さい。」
「その事ですが、今回の事は話が出来過ぎている。出張に行っているはずのご主人がいたのもお
かしい。もしかしたら、これは・・・・・・・・。」
「つまり、私が妻にこの男を誘惑わせたという意味ですか?そう思うのなら訴えて下さい。それ
で結構です。妻の私に対する気持ちに自信が持てず、出張だと嘘をついて、妻を罠に掛けたのは
事実です。その結果がこの有様です。もう何もかもが嫌になった。もう生きているのが辛い。好
きにして下さい。」
「相手を疑うのも私の仕事です。そういう見方も出来るというだけで・・・・そう言わずに。」
怒るでも無く、呟く様に話す私が不気味だったのか、弁護士は焦っている様でした。
「稲垣さん、昨夜は妻がお世話になりました。妻を抱いてくれたみたいですね?妻は喜んでいま
したか?妻は無理やりされたと言っていますが?それではまるで強姦だ。」
「待って下さい。私は、ただ話をしていただけだと聞いている。稲垣さん、その様な事が有った
のですか?」
「・・・・いいえ・・・・。」
私は妻を呼び。
「稲垣さん。もう一度、その様な事が有ったのか無かったのか答えて欲しい。」
「・・・・・有りましたが・・・決して無理やりでは・・・・・同意の上で・・・・・。それに、
最後まではしていません。」
妻の言った、最後まではされなかったと言うのは本当のようですが、私には妻が感じてしまった
た事が気になっていました。
「そうですか。肉体関係に近い事は有ったようですね。しかし、強姦と言うのはどうでしょう?
分別の有る大人の奥様が、ホテルの部屋までついて行った。しかも以前は不倫関係に有り、会お
うと言い出したのも奥様からです。多少強引なところが有ったとしても、はたしてそれが強姦と
言えるかどうか。」
「強姦では無く、強姦未遂になるのかも知れませんが、2人きりの密室で証人がいない事を良い
事に、事実を隠し通すおつもりですか?訴えるも、訴えないも妻の問題なので、別に私にはどう
でも良い事ですが・・・・・・。」
すると弁護士は少し待って欲しいと言い、稲垣を連れて外に行ってしまいました。
「今回の事は、された、していないで水掛け論になってしまう。ただ明白なのは約束を破って2
人で会っていたという事です。本来は奥様の過失も大きいので満額は無理かと思いますが、約束
の1千万をお支払い致しますので、それで納得していただけませんか?」
「1千万は当然です。約束を破ったら、妻と合わせて1千万と決めた訳ではない。妻には別に相
応の償いをさせます。本当はお金などどうでもいい。お金よりもこの男を殺したい思いが強いの
ですが、娘の事を考えると、まだ刺し違える決心がつかない状態です。」
「少し待ってくれ。それは完全に脅迫ですよ。その言葉だけでも犯罪だ。」
「そうですか。それなら私は罪に問われなければならない。どうぞ訴えて下さい。もうどうなっ
てもいい。今後生きていたところで、人生に何の意味も無いかも知れない。」
弁護士は私を責めていたと思えば、今度は宥める様に。
「そう悲観的にならずに、冷静になって下さい。最初に疑う様な発言をしたのは、仕事上色々な
ケースを念頭に置いて進めなければならないからです。私はそういう事も有り得ると一般的な話
をしただけで、その事でも傷付けてしまったとしたら、私の不徳の致すところです。許して下さ
い。奥様の件は、私は相談者を擁護する立場に有るので、稲垣さんを信じて、強姦の様な事は無
かったとしか言えない。しかし双方の利益を考えれば、示談にするのが好ましいと思います。ど
うでしょう?」
すると稲垣は弁護士に対して不満を露にし。
「そんな・・・・・。先生は私の代理人だろ。」
「稲垣さん。あなたは私にも、奥様とは二度と会わないと約束してくれましたよね?その舌の根
も乾かない内に、これは何ですか?もしも奥様の方から連絡が有った時は毅然と断って、トラブ
ルにならない様に、すぐに私に連絡しろと言いませんでしたか?お金の事まで言いたくはないが、
私はあなたのお姉さんに頼まれて、お姉さんの同級生というだけで、儲けも考えずに引き受けて
いるのですよ。これ以上まだゴタゴタするのなら、私はこの件から降りる。」
結局、稲垣が私に分割で1千万を支払い、もう妻と会えない様に、次に約束を破った時には5千
万を支払うという事に署名させ、それとは別に、稲垣が妻へ解決金として五十万支払う事で決着
しました。
本当は強姦が認められずに、逆に名誉毀損で訴えられようとも妻に訴えさせて、もっと稲垣を苦
しめたかったのですが、私にもこの事を仕組んだ負い目が有り、妻が法廷で取り乱し、美人局を
した事までばれるのを恐れてしまい一応示談としましたが、示談にした1番の理由は、私の中で
急速に力が抜けて行くのを感じていたからです。
そんな中、ただ一つ嬉しかった事は、稲垣が1千万を即金で用意出来ない事でした。
離婚した事も有り、考えていたよりも稲垣の懐事情は厳しいらしく、私に分割を頼み、何度も頭
を下げる姿には多少ですが心が癒されました。

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