WA 11/26(水) 14:22:28 No.20081126142228 削除
暗闇から“かおるこ”と声が聞こえてきます。私の手と指は自然と胸へと
進むのです。手の平を乳房の上に置き常務さんを思い浮かべます。
まだ乳首には昨夜の余韻が残っています、でもそうしただけで何か
ほっとして眠りにつくことが出来ました。
日曜日の朝、8時頃携帯に着信があります。常務さんからです。
「かおるこです」自然とそう言えるのです。
「山下だ。朝早くから悪いな」
「どうかされましたか」
「いやね。君に時間があればドライブにでもと思ってね」
「まあ、ドライブですか。若いですね」
「それでは初春の山探索ではどうかな」
「連れて行ってください」
「君の近くの駅前で待っていてくれ。1時間半くらいで行けると思う」
ドライブ、これも久しぶりの事です。ワクワクするのが解ります。
ぴっちりしたジーパンと真っ白いスニーカー、V-ネックのカシミア
のクリーム色したセーターに少しお洒落なペンダント、耳にパールの
ピアスをあしらってサングラスを頭にのせました。
駅前で待っていると、真っ白いベンツのSLが滑りこんできます。
コンバーチブルです、常務さんの姿が見えます。
「オープンカーですね」
「オープンカーとは君も古いね、コンバーチブルと言ってくれ」
「何処へ行こうか」
「ここからでしたら、奥久慈が近いです」
走り出すと初春の風が肌に冷たく感じます。
「寒いか」
「ええ、少し」
「スカーフを持ってきた。それと良ければこのハンチングを被れば」
そう言って出してくれたスカーフとハンチングは常務さんとお揃いのものです。
少し恥ずかしかったのですが身につけました。
「似合ってるよ」
「洋司さんも」
「何か恋人同士みたいだな」
50男と40女がお揃いのスカーフとハンチングを身につけているのです。
周りの人が見れば当然、夫婦だと思うでしょう。今は研二さんの事を
忘れているのです、常務さんと居るのが心地いいのです。
山道に入っても常務さんは運転のテクニックを私に見せたいのか、スピード
を落とさずにカーブを曲がります。その度に体が常務さんにぶつかるのです、
きゃーきゃーと女学生の様な嬌声もあげました。途中、峠の平らな所にある
お蕎麦屋さんで美味しい蕎麦を頂きました。そこから見る山々はまだ春には
遠く寒々としていました。
常務さんが呟くように言うのです。
「離婚してからもご主人と会っているのか」
「えっ」
私は返事に窮してしまいます。
「会っています。でもどうしてそんな事お聞きになるのですか」
「いや、会っているのならいい。忘れてくれないか」
「嫌です。最後までお話になって下さい」
「今は話せない。しかし君が上手く行っていないのなら、
君と過ごせる時間がもっと長くなる。そう思っただけだ」
「・・・・・」
「さあ、もう一走りしよう」
途中、洒落たペンション、ラブホテルが所々に建っています。その前を
通るたびに今度はそこに入るのかとドキドキしていました。はしたない女
だと思われるのが嫌で、着替えの用意はしていません。でも車はそこを
素通りで高速道路に入ります。ほっとした気持と、今日は抱いてもらえ
なかったという気持が絡み合っていました。
車は駅前に着きます。
「今日は楽しかった。こんな事は20年ぶりだ」
「私も楽しかったです。有難う御座いました」
今日は、当然抱かれるものだと思っていました。私に女の魅力が無いのかも
知れない、常務さんは私を女として見てくれていないのかも知れない。
でもそれ以上に私の事を大切に扱ってくれているのかも知れない。複雑な
思いが交錯しています。
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