WA 12/5(金) 19:02:22 No.20081205190222 削除
山下の役員室に通されます。背広の内ポケットにはボイスレコーダを
忍ばせています。
「役員室か、立派なものだな。俺が何で来たか、解るな」
「いや、解らない」
「何を惚けているんだ。これを見るんだな」
報告書を山下の前に放り投げます。山下は報告書を見ていますが、平然と
しています。その表情が不思議です。
「高島さん、貴方も趣味が悪い。私と江村さんの写真を撮って何が
面白いのですか?独身の男と女が何をしようが貴方には関係ないでしょう」
江村は妻の旧姓です。再婚の婚姻届は二人で出しています。何故この会社
では江村と呼ばれているのか不思議です。
「江村は妻の旧姓だ。再婚した、今は高島だ」
この時、山下の顔が一瞬強張ります、何か落胆した様子が伺えます。
「そうか、知らなかった」
一旦落胆した山下は気を取り戻します。
「確かに江村さんを抱いた。しかしそれは独身だったからだ、本社に
勤めだしても、そう思っていた。総務にも届けが出ていない筈だ」
山下は総務に内線をしています。
「何、出ている。いつの事だ」
「どうして私に言わなかった」
総務の説明では妻は婚姻届を出した明くる日に届けを出しています。
山下に報告しなかったのは忘れたのではなく、必要がないと思っていた
ようです。山下の説明では、会社では今も妻は江村と呼ばれているようです。
誰にとっても江村で違和感がなかったのです。
「届けは出ているようだな。だが俺はずっと江村さんと呼んでいた。
薫子も答えてくれた。不自然さはなかった。」
明らかに山下は落胆しています。話す口調もトーンが落ちています。
「私は江村さんを抱いた、あんたがまだ結婚する前からな。
不倫には当たらないない筈だ」
「そんな事は関係ない、私達はその時も事実上の夫婦だ。しかもあんたは
私達が結婚した後も抱いている」
「江村さんからは、そんな事は一言も聞いていない。俺との関係を
続けたかったからじゃないのか。俺との結婚を匂わせたら満更でも
なかったぞ。体の相性も良かったしな」
「ふざけた事を言うな、そんな訳は無い」
そう言ったものの、法律関係の事は良く解りませんが、妻と再婚する前の
事は多分不倫として認められないのでしょう。私の攻め手がなくなって
しまいます。妻はどうして再婚した事を届けを出すだけでは無く、山下
にも告げなかったのでしょうか。どうして高島と誰にも呼ばせなかった
のでしょうか。山下の言っているように、まだ関係を続けたかったので
しょうか。
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