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北原夏美 四十路 初裏無修正

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七塚 10/21(土) 19:24:57 No.20061021192457 削除

 写真を掴んだ掌にじっとりと汗をかいている。心臓の刻む鼓動が異常なほどに早まっていくのを感じる。それでも時雄は写真から目を逸らすことが出来ない。過去にたしかに存在したその光景から、目を逸らせない。
 震える指先でまた写真をめくる。
 瞬時に視界に入る恐ろしい場面。
 その写真では、自分は相変わらず服を着たままの中年男が、裸の千鶴を両腕で抱えていた。ただ抱えているだけではない。千鶴の両膝を抱き広げ、その股の付け根に隠された秘所をカメラに向かってあますところなく晒して見せていた。無惨に開陳された生々しい女性器。その向こうに見える千鶴の顔は、細い手でしっかりと隠されている。かすかに見える朱い唇が歪んでいた。
 思わず声にならない声をあげて、時雄は写真を放り出した。
 あらゆる感情の奔流が時雄を襲い、虚ろになった内部を満たす。眩暈がする。吐き気がする。とてもじっとしていられない。時雄は飛び出すように部屋を出た。
 意図も目的もなく、夜の街を歩いた。歩いているうちにも気分は少しも静まらない。不快な感情が澱のように心に沈殿していくのを時雄は感じる。
 写真を見ると決めたときから、覚悟はしていたはずだ。しかし、なんという屈辱だろう。いったい、これは何の報いだ? 苦しんで、苦しんで、苦しんできた七年の、これは何の報いだ?
 不意に冷たい風がびゅっと時雄の身体を行き過ぎた。上着も羽織らないうちに出てきてしまったが、夜の空気は相当冷え込んでいる。ここ数日は特にだ。気がつけば身体がどうも熱っぽいようだ。ここ最近はろくに食べず、眠らずの日々だったから、身体が悲鳴をあげるのも無理はない。
 もう、自分は若くないのだ。
 時雄は夜空を見上げた。本当は無数に浮かんでいるはずの星は、まばらにしか見えない。秋の空気はいつもより澄んではいたが、それでもこの煩雑な都会の空を浄化することはない。
 夜空を見つめているうちに少しだけ冷静な気持ちを取り戻し、時雄は帰途に着いた。このままでは確実に風邪を引く。そうなれば、明日からの行動に差し障る。
(明日から、か・・・)
 いったい、自分は何をするというんだ?
 時雄は心の内で思う。あんな写真など見るのではなかった。千鶴の話だけで知っていた、彼女の過ごした七年。その一端を先ほど時雄は垣間見た。彼女のはまり込んだ泥沼の深さを、そのとき初めて時雄は自分の目で見たのだ。
 同時に、時雄の中で何かが崩れ去った。今までどんな状況であっても、自分の内側で大切に守り続けてきた場所。その聖域は無惨にも踏みしだかれた。これ以上ないほどに汚されてしまった。
 昨夜、千鶴に告白されたときよりも、今朝、彼女が出て行ったことに気づいたときよりも、もっと絶望的な気分の中に時雄はいた。

 ふらふらとした足取りでマンションまで戻り、自室の部屋に鍵を差し込んだ。扉を開くと、携帯が鳴っている音が聞こえた。
 散らばった写真のほうを見ないようにして、時雄はリビングに戻り、電話に出た。バーテンからだった。
「ついさっき身体が空いたんで、あんたに何度も電話をかけたんだが、やっと繋がった」
 バーテンはなじるようにそう言った後で、千鶴を店に紹介したというその男の名や住所などを時雄に教えた。
 礼を言い、電話を切った後で、時雄は声もなくベッドの上に座り込んだ。
 消えたと思っていた手がかりが、ようやく舞い込んできた。
 それは喜ぶべきことなのだろうか。この道を進んでいった先には、さらにひどい衝撃が待っているのではないだろうか。
 希望よりもむしろ恐怖を、そのときの時雄は感じていた。
 目的を見失いかけている。肝心なのは千鶴を救うことだ。自分のことなど、どうでもいい。そう思ってはいたが、現実ははかなかった。
 結局、一睡も出来ず、時雄はその夜を明かした。

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