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北原夏美 四十路 初裏無修正

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桐 10/8(月) 22:23:26 No.20071008222326 削除
「あの……理穂ちゃんはお母様と連絡をとっているのですか」
「はい」

頷く麻里を見て江美子は更に尋ねる。

「隆一さんと離婚されてからは、お会いになっていないと聞いているのですが」
「会ってはもらえませんが、たまにメールで最低限のやり取りは。私がいなくなってからは理穂が家のことを取り仕切っていましたので」
「あの……ここに私たちが来ることをご存知だったのですか?」

ひょっとして麻里が、自分と隆一がTホテルに来ることを理穂から聞いて、わざといっしょの宿をとったのではないかと疑ったのである。

「とんでもありません。私もまさか隆一……さんと会うなんて思ってもいませんでした。もしそんなことになるのが分かっていれば有川さんのお誘いを断っています」
「有川さんって……そう言えば、さきほど麻里さんは中条とおっしゃいましたが」
「中条は私が結婚する前の姓です。離婚したので旧姓に戻りました」
「有川さんとはご結婚されていないのですか?」
「はい。私は二度と結婚するつもりはありません」

麻里はきっぱりとした口調で言う。

「私のような女が結婚すると、周りを不幸にするだけです」
「……」
「江美子さんとおっしゃいましたっけ、私がいえるようなことではありませんが、隆一さんを幸せにしてあげてください。そして、出来れば理穂も……」

麻里は湯船の中で深々と頭を下げる。江美子はそんな麻里をしばらくじっと見つめていたがやがて「麻里さん、頭を上げてください」と声をかける。

「私は麻里さんから頭を下げられるようなことはしておりません。ただ隆一さんが好きで……一緒になっただけです。理穂ちゃんと私は家族ですし、仲良くしたいと考えていますが、理穂ちゃんの母親は麻里さんだけだと思っています」
「私には母親の資格なんて……」
「子供にとって、自分を産んだ母親は掛け替えのないものだと思います」
「……ありがとうございます」

麻里は顔を上げて、江美子に微笑みかける。

「それにしても、こんなところで一人の男の前の妻と今の妻が裸のまま挨拶を交わすなんて、考えてみたらちょっとおかしいですわね」
「そういえば」

麻里の言葉に江美子もなんとなく滑稽な気分になる。

「江美子さんには不愉快な思いをさせてしまってどうもすみません。隆一さんによく説明しておいてください。今回のことは本当に偶然なのです」
「わかりました」

江美子も微笑んで頷く。

お互い裸で入るせいか、江美子は麻里に対してなぜか打ち解けた気分になる。

「そうですか、インテリアコーディネーターなんて素敵ですね」
「全然素敵なんじゃないんです。カタカナでなんとなく格好良さそうに聞こえるだけで、本当は泥臭い仕事なんですのよ」

お互いの仕事の話をしているうちに、江美子は麻里が隆一の先妻だということにも不思議と抵抗がなくなってくる。

「江美子さんはおいくつですか?」
「今年33になりました」
「まあ、お若いんですね。羨ましいわ」
「そんな……もうおばさんですわ」
「33でおばさんなら、私なんてどうなるの。来年で40よ」

麻里はくすくすと笑う。

(……ということは隆一さんと同い年)

江美子はちらちらと麻里の白い肌を眺める。

(それにしては綺麗な肌をしている……私よりもずっと色が白くてきめが細かいかも)

江美子がそんなことを考えていると、麻里が思い出したように口を開く。

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