桐 10/9(火) 21:26:58 No.20071009212658 削除
「でも、有川さんが言ったとおりかもしれません……」
「えっ?」
考えに耽っていた江美子は、麻里がじっとこちらを見つめているのに気づく。
「隆一さんが好きな女性のタイプというのがあるんでしょうね。あの人の譲れない好みは目元がはっきりしていること。胸の大きさにはあまり拘らないけれど、お尻が大きめでしかも形がいいこと。その2つです。江美子さんはそれを両方とも満たしていますわ」
「そんな……」
江美子にとってはコンプレックスだったお尻の大きさを麻里から指摘されたことも恥ずかしかったが、有川という男は麻里から、隆一の好みを聞いていたのかと少々不快な気分にもなる。
麻里はそんな江美子の疑念を察したかのように再び口を開く。
「いえ、有川さんがそういったのは、あの人が昔から隆一さんの好みを知っていたからです」
「どういうことですか?」
「隆一さんと有川さんは、大学時代のサークル仲間だったんです。隆一さんたちの大学を中心とした合唱団で、隆一さんがセカンドテナーのパートリーダーで、有川さんがバリトンのリーダー。私は2人とは違う大学だったけれど、同じサークルに所属していて、そこで彼ら二人と知り合ったのです」
「そうなんですか……」
有川という男と隆一がサークル仲間だということは先ほど隆一から聞いていたが、それ以外は江美子にとっては初耳である。
「江美子さんは私のことを隆一さんから聞いていないんですか?」
「いえ、ほとんど何も」
「あら、そうなんですか?」
麻里は少し驚いたような表情になる。
「隆一さんと有川さんは単なるサークル仲間というだけでなく、音楽の趣味もぴったり合っていて、お互いが一番の親友だと言える仲だったんです。おまけに女性の好みも同じ。目元がはっきりしていてお尻が大きめの女、っていうのは有川さんの好みでもあるんです」
麻里は微妙な笑みを浮かべる。江美子は何と反応したら良いかわからず、やや当惑した表情を麻里に向けている。
「ごめんなさい、少し喋りすぎたかしら」
「いえ……」
「なんだか江美子さんのことを品定めするような言い方をしてしまったわ。初めてお会いしたような気がしなくて、失礼なことを申し上げてごめんなさいね」
「そんな……いいんです」
「隆一さんのことは隆一さん自身から聞かされるべきね。あの人とはもう他人になった私なんかがおせっかいをするのは良くない。それは分かっているのだけれど……」
麻里はそう言うと少し顔を逸らす。
「あの人には……今度こそ幸せになって欲しいの」
「……麻里さん」
「これも余計なことですね。あなたのような女性を見つけたのだから、今はきっと幸せなんでしょう。いえ、これからもずっと」
麻里は湯船の中で立ち上がる。
「本当は私がこのままここから姿を消した方が、江美子さんの気持ちは穏やかになるのだろうけど……」
「そんな、私はかまいませんわ」
江美子は首を振る。
「隆一さんの昔のことを少しでも知ることが出来て良かったです」
「そう、ありがとう。それじゃあ出来るだけあなたたちのお邪魔にならないようにするわ」
麻里はそう言って微笑むと江美子に「お先に」と声をかけ、脱衣所へと歩き出す。湯に濡れてキラキラ光る麻里の白く豊満な臀部が左右に揺れるのを、江美子はぼんやりと眺めていた。
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)