桐 10/15(月) 21:17:36 No.20071015211736 削除
「でも、さっき、隆一さんはこだわりを捨てると……」
「有川がそういって欲しそうだったからそういっただけだ。そうしないとあいつは、いつまでも俺たちに付きまといかねないからな」
「それじゃあ……」
「有川のほうも俺ともう一度昔のような友達づきあいを再開したいなんて思っていないよ」
隆一は江美子の手を握り返す。
「それに、別れた女房に目の前で裸でうろうろされるのも真っ平だ。江美子だけで十分だよ」
「まあ」
江美子は大きな目を丸く見開く。
「あいつらのせいで少しのぼせた。もう部屋に帰ろうか」
隆一はそう言うと江美子を促し、湯船の中で立ち上がった。江美子も釣られて立ち上がる。
「あっ」
江美子は自分がまだタオルも巻いていない全裸だったことに気づく。あわててバスタオルを取ろうとする江美子の手を隆一が押さえる。
「そのままで」
「えっ」
「そのまま、そこに立ってくれ」
江美子は頷くと、隆一に言われるままに立つ。火照った身体に夜気が心地よい。
「もう……いいでしょう」
「もう少し、お願いだ」
素肌に隆一の熱い視線を感じ、羞恥に駆られた江美子は目を閉じる。
(麻里さんと比べているのか……)
江美子は隆一の心の中を推し量る。
(それとも、私の裸を目に焼き付けることで、麻里さんの姿を忘れようとしているのか)
時間にするとほんの数十秒のことだったかもしれない。しかし江美子にとっては数十分とも感じられる時が過ぎ、ようやく隆一は口を開いた。
「もういい、ありがとう」
江美子は崩れる落ちるように隆一の腕の中に倒れ込む。
「すまん、のぼせてしまっただろう」
江美子は黙って首を振ると、隆一にしがみつきながら唇を求める。二人は全裸で湯船の中で立ったまま、長い接吻を交わすのだった。
「あっ、ああっ、りゅ、隆一さんっ」
「江美子っ」
「も、もうっ、お願いっ。来てっ」
江美子は隆一の上に跨がったまま、ひきつったような悲鳴を上げる。隆一が「うっ」と呻きながら緊張をとくと、江美子はそれを待ち兼ねたように全身を激しく痙攣させる。
「あ、あああっ!」
傷ついた獣のような声を張り上げながら江美子は絶頂に達すると、隆一の胸の上に崩れ落ちる。
「江美子」
隆一は荒い息を吐きながら江美子の背中に手を回す。
「顔を見せてくれ」
江美子は隆一の上に伏せたままの顔を嫌々と小さく左右に振る。
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