桐 10/23(火) 21:50:22 No.20071023215022 削除
「確かにこの携帯は、仕事の連絡にも使うことはあるが……しかし、もしそんなことをしたとしたら個人情報保護法違反だな」
苦笑した隆一を見て、江美子はほっと胸をなでおろす。
「江美子は昨夜、どこに泊まったんだ?」
「美弥子のマンションです」
江美子は思わず、学生時代からの友人の名を告げる。
ここで麻里の名を告げたほうがよかっただろうか、と江美子は一瞬後悔する。
(だけど、昨夜私は隆一さんに、友達のマンションに泊まると連絡をしている。隆一さんは、友達というのが麻里さんだとは思っていないだろう。ここで実は麻里さんのマンションに泊まったと告げれば、私は隆一さんに嘘をついたことになる)
ひとつ嘘をついたことが分かれば、孝之とのことも再び疑惑を招くかもしれない。
「そうか、それならアリバイがあるって言うことだな」
隆一は微笑する。
「疑って悪かった」
「信じてくれるのですか、隆一さん」
「当たり前だ。女房を信用しないでどうする。ちゃんと説明してくれたのだからな」
「ありがとうございます」
そう言いながら江美子はちくりと胸の痛みを感じる。
「しかし、その水上という男には一度釘を刺しておかないといけないな」
「それは、私がやります」
「こんな卑劣な手段を平気でとる男だ。何をするか分からないぞ」
「大丈夫です。それに、これは私と彼との問題ですから」
「そうか、江美子がそこまで言うなら……しかし、何か困ったことがあったらすぐに相談してくれ」
隆一の顔つきが穏やかになったので江美子は安堵する。
「よし、この話はこれで終わりにしよう。正直いって、この写真を見てから江美子が帰って来るまでは、嫉妬で頭が変になりそうだった」
「すみません」
「江美子のせいじゃないさ」
やはり隆一に自分の過去のことは言えない。それにしても水上はどういうつもりか。自分を甘く見ているのか。
(もう一度お灸を据えた方がいいかもしれない)
江美子は改めて水上に対する嫌悪感が込み上げて来るのを感じるのだ。
その夜、隆一は江美子の身体を求めた。江美子が髪を切ってから初めてのことである。
(前よりも激しいわ)
素っ裸で隆一に組み伏せられた江美子は、込み上げる快楽を懸命にコントロールしながらそんなことを考える。
「愛している、江美子」
「私もよ、隆一さん」
「気持ち良いか」
「……」
「気持ち良いと言ってくれ」
どうしてそんなことを確認したいのだろう、と江美子は考える。
そういえば孝之もそうだった。江美子にしきりに恥ずかしい言葉を言わせたがった。あの時は意地になって拒否していたが、そんなことで征服感が満たされるのなら付き合ってあげても良い。
(そう……隆一さんになら付き合ってあげても良い)
江美子は両腕を隆一の背中に回し、強く抱きしめながら「気持ち良い……」と小声で告げる。江美子の中に深々と突き立った隆一の肉塊がその大きさを増し、たちまち身体の奥から波のような快感がこみ上げてくる。江美子は声が漏れるのを恥らうように、その花びらのような唇を隆一に押し付けるのだった。
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