桐 11/5(月) 21:15:25 No.20071105211525 削除
「貸してください」
江美子は隆一の問いには答えず、突きつけられた携帯に手を伸ばす。
「メールを削除するつもりか」
「まさか、そんなことはしません」
江美子は携帯を受け取ると、メールの本文を読み、改めて添付された写真を見る。二通のメールとそれぞれに添付された写真を見終わった江美子は、表情をこわばらせて黙り込んでいる。
「どういうことか説明してくれ」
隆一に声をかけられ、江美子は顔を上げる。
「……これは、悪戯です」
「なんだと?」
「この前と同じです。『水』というのは水上のことです。私に嫌がらせをしているのです」
「これに写っているのは江美子だろう?」
「わかりません」
「わからないだって?」
隆一は苛立ちの声を上げる。
「この服装も、昼間に江美子がしていたものだ。髪型といい、どう見ても江美子じゃないか。昼間に○○ストアやその前の公園で撮られたんだろう」
「こんな写真、撮られた記憶はありません。私にはまったく身に覚えのないことです」
「証拠があるのに否定するのか?」
「証拠? 証拠って、何の証拠ですか? ○○ストアはチェーン店です。どこの店も内装は似たようなものです。この公園にしたって、ベンチとその周りしか写っていません。私が買い物に行く○○ストアだという証拠も、その前の公園だという証拠もないのです」
「江美子、自分が何を言っているのかわかっているのか?」
隆一は呆れたような声を出す。
「ここに写っているのは江美子だろう?」
「そんな風にも見えます」
「そんな風に?」
「この前も申し上げたように、これくらいのサイズの写真なら合成でなんとでもなります。今の私を写したものとは限りません」
「しかし、この服装は……」
「隆一さん、仮にこれが、昼間の私を写したものだとします。だからどうだというのですか?」
「開き直るつもりか?」
「そうではありません。もしも私だとしても……このメールに書いているようないやらしいことを私がしているという証拠にはならないということです」
「……」
「買い物をしているときに私は急に気分が悪くなりました。しばらく我慢していたんですが、どうにも辛くなってしばらく公園で休んでいたんです。その時に撮られたものかもしれません」
「江美子……お前」
隆一は江美子の言い分に唖然とする。
「言っていることが滅茶苦茶だぞ。この写真は自分のものじゃないと言ったり、自分のものだと言ったり、いったいどっちなんだ」
「私が言いたいのは、こんな写真やメールはどうにでも細工が出来るということです。隆一さんは私を信用していないのですか」
江美子はまっすぐ隆一の目を見つめる。その目の真剣さに隆一は思わず怯む。
(しかし、ローターが……)
隆一が思わず脱衣籠の中で見つけた淫具のことを口にしようとすると、江美子が機先を制するように口を開く。
「私は隆一さんを裏切るようなことは絶対にしていません」
江美子は挑むような口調でそう言うと、ネグリジェを脱ぎ捨てる。江美子がその下に何も着けていなかったので、隆一は驚く。
「信じてください」
江美子はそうほざくように言うと、全裸のままで隆一に抱きついていった。
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