樹氷 投稿日:2008/01/02 (水) 08:04
山田君の問い掛けに私は頷いた。
山田君は更に「銭の話しなんてしたくは無いんやが、スイムウェアにしても勉強させて貰っても、三万円や、あのボンデージにしたって素材や縫製、取り付ける備品を考えると片手では済まん、分かるやろ?」と両手を広げた。
「金額の問題や無いんや、ワシも若い頃はやんちゃやったし、女遊びかてゴッツうした。お前かて知ってるやろ?でもな嫁と一緒になってからは仕事一本や。こんな気持ちになったのは久しぶりなんや」
山田君は呆れたように私を見つめて「分かったわ、エエもん作ったる。しかしホンマ嫁はん着るんかいなぁ…着ないのやったら高価な宝の持ち腐れやで」
私は頷きながら「まぁ作らん事に始まらんわ」と笑った。
明後日の正午過ぎに山田君の工場で待ち合わせる約束をして私はそのまま自宅に戻った。
自宅マンションには、まだ妻は帰宅していないようだった。
私はカレンダーを見て、[今日はテニスか]と確認した。
私はリビングのソファーに体を預けながら、この10年を、妻と結婚してからの10年に思いを巡らせていた。
結婚5年目までは子供欲しさも手伝って、週に三回程度は夜の営みがあったが、途中で諦めモードになり、妻とのセックスも週に一回となり、やがて月に一回か二回となってしまった事を。
元々[性欲]があまり無くセックスで体を動かすよりスポーツして仲間達とお茶している方が好きな妻を。
そして一番の問題は体の相性の悪さなのでは無いのかと…
妻の方からは、どんなにセックスレスの期間が長くても求めて来る事は無い。
一時は浮気でもしていて性欲を発散させているのかを疑った時期もあったが、何一つ出て来なかった。
家庭内での妻としての努めには何一つ問題が無いだけに、いつの日か[我が家はこれで良いやないか。普通に喧嘩も無く、穏やかに幸せならエエ]そう考えるようになっていた。
不意に玄関から音が聞こえ、妻が帰宅してきた。「帰ってたん?ゴメンなぁ、すぐ夕ご飯作るな」と支度を始めた。
私は明後日に山田君の所へサイズの採寸をしに行く事を伝えた。
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