樹氷 投稿日:2008/01/02 (水) 13:05
その日、私は取引先との商談や所用でスケジュールが詰まり、携帯電話も鳴りっぱなしだった。
着信音が鳴る度に正に[口から心臓が飛び出すような衝動に駆られ]仕事どころではなかった。
携帯に表示される発信元を確認しては、ホッとするの繰り返しだった。
正午過ぎに山田君から電話があり、運送屋に荷物の受け取りの確認をしたら先方は受け取られましたとの事だったと言う。[いよいよだ]
まだ何の連絡も無いし、妻が開封したかも確認出来ていないのに、私の口の中はカラカラになり、動悸も激しくなってきた。
しかしこの日のあまりにもの仕事の忙しさの中、あっと言う間に時計の針は7時を指してした。
[ついに妻から連絡は無かった。開封していないのだろうか?それとも、開封して、それを目の当たりにして、あまりにエゲツ無く感じ怒っているのか?]
私は重い足取りで自宅へと戻った。
自宅に戻ると、そこにはいつもと変わらぬ明るい妻が居た。
食事中も、リビングでくつろいでいる時も[ボンデージ]の事を触れて来ない。
[何故だ?届いているのは間違い無い。受け取った事も間違い無いのだ。]
私は確認したくて、その方策を考えた。
居ても立ってもおれずにマンションから徒歩で10分かかる酒屋に普段は飲まない日本酒を銘柄まで指定して買いに行かせた。
「悪いなぁ、たまに飲みたくなるんや。どうせなら旨い酒飲みたいしな。お前も飲みたいもん買って来たらエエやん」
すると「珍しいなぁ、日本酒なんて。久々やね。私も一緒に貰おかな」と玄関を出て行った。
[妻が物を隠す場所は何処だ?]寝室は有り得ない。衣装部屋の妻のクロゼットだろうか?
逸る気持ちを抑えて、恐る恐る妻のクロゼットを開けた。
掛けてあるスーツの陰にそれはあった!
まるで隠すように。
ビニールに包まれたままボンデージはあった。
明らかに一度は手にしたのであろう。
お世辞にも綺麗に畳まれたのでは無く、無造作に詰め込んだ感じだ。
私は妻に悟られぬようにそのままの状態にして、リビングに戻った。
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)