樹氷 投稿日:2008/01/10 (木) 10:02
あの鮮烈かつ淫靡な体験をした翌日、私は約束通りに山田君に事の顛末を報告した。
受話器越しに山田君の興奮する様子が伝わって来た。
しかし、詳しく内容を説明し終えると、逆に重苦しい雰囲気になり、山田君は「やばいんちゃうか?寝た子を起こしてしまったんやないかい?…」私は「しゃあない…成るように成るやろ」と、力無く答えた。
明後日に山田君の事務所に顔を出す旨を伝えて、電話を終えた。
この日、翌日と妻の就寝後にボイスレコーダーを確認するが、何の変化も疑念の種も無かった。
あのボンデージも、妻のクロゼットに箱に仕舞われた状態で、触られた形跡すら無い…
あの日からの夫婦の会話は、あの夜の出来事を避けて、ありきたりな空虚な物ばかりであった。お互いが、妙に気を使い、腫れ物に触るような……それは、夫婦ともどもに、何かを怖れるように…お互いが、見えてしまった答えに背を向けるように。
そして、あの日から3日が経過した。
私は約束通りに山田君の事務所を訪れた。
山田君の事務所には、先客が居た。
その人は、見るからにエネルギッシュな感じで、品が良く、独特の威圧感と、オーラを持ち合わせる希有な人物であった。
山田君は私に「商売で、お世話になっとる、西島はんや」と、紹介してくれ、併せて私の事も西島氏に紹介してくれた。西島氏は右手を差し出し、力強く私の手を握り、「初めまして!西島です。あんさんの事は、山田はんから良う聞いてます。」
私は、やや怪訝な表情で山田君を見た。
山田君は、[パチリ]と意味有り気にウインクをして私に言った。
「例のボンデージをオーダーしてくれたお方や、あのリアルなディルドも、この方が融通してくれたんやで。」
私は、照れと恥ずかしさが入り交じる複雑な表情で「ど、どうもありがとうございました。」と、答えるのが精一杯であった。
「山田はんから聞きましたで…エラい事になったようやなぁ…でも、ここからが、お楽しみやで」私は、山田君を横目で睨みつけて[何を言うたんや!!]とばかりの顔をした。私は、西島氏に向き直り「お恥ずかしい限りです」と、答えた。
山田君が「まぁアレや、この方にしても、お前の顛末は、聞く権利がある思うで。全ては、西島はんのオーダーしてくれたボンデージを、お前が見た所から始まったんやからな」
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