樹氷 投稿日:2008/01/16 (水) 21:55
「おはよう‥」
私は、朝食の準備をする妻に声をかけた。
「あっ、パパ、おはようさん‥せっかくの土曜日なのに仕事なんてなぁ‥時間、遅くなるん?」
「いや‥夕方ぐらいには、帰れそうや‥今日は、姫路の谷村さんのとこ行かなならん‥姫路のお城でも見て、癒されて来るわ‥」
「エェなぁ‥姫路城、綺麗やもんな‥」
「今日、リビングのクロス貼り替えの業者の件‥頼むナ‥」
「うん。分かっとるよ‥でも、時間かかるん?」
「いや‥たいした時間かからんやろ」
妻は、何一つ違和感は感じていないようだ。
「パパぁ‥何時頃、出るん?」
「せやな‥9時過ぎやな‥」
私は、睡眠不足でフラフラの体に喝を入れるべく、熱いシャワーを浴び、[取り敢えず、偽りの出社準備をした」
妻は、私がバスルームから出るのを確認すると、「ウチも、シャワー浴びて来てエエやろか?
パパ、まだ時間あるやろ食べるのそれからでエエか?」
「あぁ‥エエよ。まだ1時間近く、時間あるさかい‥」
「クロス屋さんかて、お客さんは、お客さんやろ?綺麗にしとかんとイヤやろ‥」
「そりゃそうや、男前の兄ちゃんが来るかも知れん、バッチリ化粧した方がエエで!」
「言われんでも、キチッとするわ!」
妻はバスルームに消えた‥
私は、衣装部屋に行き、敷きっ放しの布団を上げ、押し入れの前に積み上げた。
妻には、私が、しばらくは衣装部屋で寝る事は了解済みなので、私の性格を知る妻は、必要以上に部屋を弄らない筈だ。
押し入れを開け、後ほど私が隠れるスペースの確認をした。
後は、妻がシャワーを浴びている、このタイミングで、玄関に置いた私の靴を隠し、急な仕事で、いかにも慌ただしく自宅を出たシチュエーションを作れば良い。
トイレの心配もある為に搾り出すように、用を足し、最悪を想定して2㍑の空のペットボトルと、普段履いている靴を押し入れに隠した。
私は、バスルームへ行き、シャワーを浴びる妻に声をかけた。
「悪い!! 急ぎで行かなならんくなった。メシはエェわ‥なるべく早く帰るさかい、頼んだで!」
「え~、ゴメンな、シャワー長くて、今、出る‥」
「エェんや‥エェんや‥ゆっくり浴びたらエエ‥ほな、行ってくる」
「行ってらっしゃ~い」
私は、携帯をマナーモードにして、押し入れに隠れた。
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