樹氷 投稿日:2008/01/16 (水) 23:40
暗い押し入れの中で、私は、[息を殺し、じっとしていた]
まだ時間はあるのに、全身が緊張感で満ちている。
後頭部から、肛門まで、痺れに似た物が[じわじわ]と、走っている。
押し入れの引き戸は、2センチ弱開けている。
衣装部屋の入口からは、積み上げた布団によって死角になり、見えない筈だ。
物音が聞こえた…
[ガチャ…ガチャ…]
バスルームから妻が出て、衣装部屋に入って来たのだ。
頭にバスタオルを巻いて、裸の妻…
クロゼットを開けて、下着を取り出した…
[ん?んんん?]
見覚えの無い、ワインレッドに、所々に黒のレースをあしらったショーツ。
[パチッ…]
ショーツを引き上げ、ヒップが隠された…
[フゥ~]
熱いのか、右手を団扇代わりにパタパタさせ、ペアのブラを片手に衣装部屋を出て行った。
[何だ?あんな下着持っていたか?仮に持っていたにせよ、今まで何で着けなかったんだ?
昨日の黒いレースの下着といい、妻の意識が変わって来ている事は確かなようだ。]
しかし押し入れに隠れるぐらいで、こんなにも緊張するとは!
これで竿師が現れたら、ワシの心臓、口から飛び出すかも知れん…
どれぐらい経っただろうか?
再び、[ガチャ…]
衣装部屋に妻が入って来た。
髪を乾かし、セットして、あの、ボンデージを着ている時のように、やや濃いめの化粧をしているブラとショーツ姿の妻。
エロぃ‥エロ過ぎる‥]
《こいつ、こんなにカッコ良かったんかな?
斜め横から見る妻は、本当にイイ女に見えた‥》
妻はストッキングを穿き、ノースリーブのカットソーと、スカートに着替えて衣装部屋を出て行った。
暗い押し入れの中で時間を確認すると、9時50分。
まだまだ、時間がある。緊張し過ぎて変になりそうだ。
携帯が光った‥西島氏からのメールだ!
『おはようさん。
藤田は気合い十分。
ワシがアンタの嫁ハンが、美人でナイスバディ、藤田マニアやで、って伝えた。
ディルドの事も、ボンデージの事もや。
やる気マンマンで、ドーピングまでして、もう向かったデ。15分ぐらいで着く筈やから楽しんでな。』
[な、な、何ぃィ?もう出た?15分で着く?]
私の心臓は、早鐘のように鳴り始めた。
暗い押し入れの中は、私の心音しか聞こえない‥
隣のリビングからは、テレビの音声が聞こえている。
妻は、これから起こる事を知らない…
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