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北原夏美 四十路 初裏無修正

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悪夢 6

投稿者:覆面 投稿日:2002/07/07(Sun) 00:09

寝室に戻り、ベッドに潜り込んでから、そのまま寝ずに、私は朝を迎えた。その間、何度こっそり、ビデオテープを抜き取って、リビングに下りようと思った事か。だが、今日子に見つかってしまっては、という気持ちから、結局、実行できなかった。今日子が眠り込んでいる確信などなかったし、もしそうだったとしても、子供が暴れだしたらおしまいであっただろう。私はベッドの中で考え続けた。
“あぁ・・・一体、どうなっているんだ・・・今日子と高橋の間に、何かがあったのか・・・私に秘密の何かが・・・”
とにかく、今日子があのビデオテープの中身を、私に知られたくないのは確実だ。という事は、見られたら今日子が困るのも確実だ。私は、今日子が困るようなことはしたくない。このまま知らん振りしてほって置くのか?当然、それはできない。月曜日、運送会社に勤める高橋が、ビデオカメラ片手にやってきた。私が帰った時にも家の中にいて、そして、玄関にはチェーンロック、出迎えた今日子の狼狽した様子。
しかし、その後の今日子はいつもの今日子、高橋にちょっとでも、何かされたのならば、あんな態度は取れるはずもない。それに、その時の事情は今日子からきちんと聞かされている。何かあったのか?何もなかったのか?私の判断は後者だった。
それから昨日、妙な宅配便が届いた。高橋は運送会社に勤めている。その晩、今日子はこっそりと、あるビデオを見ていた。そしてそれを私から隠す。
“アダルトビデオ?・・・”
今日子が興味半分に関心を示し、通販で注文してみた。そして、何か秘密の配送方法があって、受取人が顔を見せないで済むような受け取り方法。ちょっとした冒険心で、私が寝ている間に見てみる。そして、その下品さに嫌気がさして、後悔している。
“高橋は本当に運送屋勤務って言ってたっけ?”
そんなこと言って無かったような気がしてきた。言っていたとしても、運送屋と言えば、普通、トラックの運転手の事であろう。高橋はトラックの運転手だ。
とにかく、どうしてもあのビデオテープの中身を見たかった。それですべてが分かる。また、私の杞憂に終わるのだ。どうも最近、いらぬ事をよく考えてしまう。こんな幸福な毎日なのに。やさしく、元気な妻がいて、かわいく、元気な子供がいる。今日子が、他の男と・・・なんてことになったら、えらい事じゃないか。この毎日が崩れ去ってしまう。今日子に限って、そんなことは有り得ないが。もし、そんな事になったら、私は、戦う。今日子と、健司と、この家を守るために。相手が誰であろうとも、その覚悟はいつでもある。
“今日子は私に何を隠しているんだい?フフッ、どうせ、子供の好奇心みたいなものだ”
とにかく、あのビデオが見たい。そうすれば、私のこの一抹の不安も、消え失せる。

「やっぱり、寂しいと思うよぉ。毎日でも会いたいんじゃない?」
「そっかー、こっちに気兼ねして、電話で催促するわけにもいかないもんねぇ・・・」
「行ってあげなよ、親父もお袋も、飛び上がって喜ぶよ」
「えっ、今日?これから?」
「うん・・・何か用事あるのかい?」
「・・・ううん、そうね!こんなに近いもんねっ、行こうっ、あなたは?」
「あぁ、・・・ちょっと、仕事持って帰ってるんだ。それやらないとなぁ・・・」
「明日の日曜日にしたら?」
「いや、結構たまってるんだよ、これが・・・」
「そっかー、じゃ、健ちゃんと行ってくるっ」
「そうしてやってくれ、晩御飯も食べてくるといいよ。こっちは適当にやっとくからさっ」

「じゃあ、行ってくるっ」
「あぁ、車に気をつけてな!健ちゃん、バイバイ!」
両手に子供を抱え、育児セットの入ったリュックを背負いながら、今日子は出て行った。時間は午後一時を過ぎたとこだった。
玄関ドアが閉まると同時に、階段を駆け上がる。寝室に入って、タンスに向かった。
“一番下の段だったな・・・”
私はしゃがみこんで、ゆっくりと引き出した。
今日子の下着類が三分の一くらいを占めている。イエローの物が多かった。今日子はその色が好きなのだ。下着コーナーを掘り返してみる。
“あった・・・”
コーナー隅にひっそりと、それはあった。やはり、ビデオテープだった。手にとってみる。ラベル類が一切貼られていない。普通、アダルトビデオでもそれは付いている。
“裏ビデオ?・・・”
とにかく、見たら分かるのだ。早いとこ確認して楽になりたい。そしてその後、駅前まで出て、今日子の好きなお菓子を買って来るのだ。今日子が帰ってきたら一緒に食べる。
これまた駆け足で、リビングに飛び込み、テレビ前のソファーに腰を下ろす。テレビをつけ、デッキにテープを差し込んだ。一旦、立ち上がり冷蔵庫から麦茶を取り出しにいく。コップに移し、戸棚からクッキーを取り出した。
“まだ時間もあるし、アダルトだったら、ちょっと、楽しむか・・・”
変な期待が私を興奮させた。クッキーとお茶をローテーブルに置き、もう一度ソファーに座りながら再生ボタンを押した。
そして、それは始まった。

「あっ、どうです?映ってますか~?」
リビングのテーブル椅子に座り、子供を抱いたまま、空いた右手でピースサインをつくる今日子の姿が映し出された。対面の席にカメラを持った高橋が座っている。
「あっ!映ってます、映ってます!よかったぁ・・・これで一安心ですよ!健ちゃ~ん」
「ほら!健ちゃん、高橋のおじちゃんがビデオに撮ってくれてるよ~。ワ~イ、うれしいね~!」
今日子が健司の手を取り、ビデオカメラに向かって手を振らせる。
「あぁ、これでばっちりですよ!」
カメラが部屋のあちこちを捕らえる。高橋が立ち上がり、窓際に移動した。窓を開け、庭に出る。そして、外の景色をあちこちと撮り始めた。
「結構、綺麗に撮れるものですねぇ!あっ、これで・・・ズームかぁ!」
しきりに感心しながら、声を張り上げている。
しばらくそうした後、高橋がリビングに戻ってきた。そして再び、今日子の対面に腰を下ろす。カメラがまた、真正面に今日子を捕らえた。
「イヤ~、実際やってみると簡単なものですねぇ?しかし、こうやって構えてみると、何かカメラマンになったようですよ!」
「ですよねぇ!私もこの子が生まれた時から何かにつけてビデオに撮ってますけど、あっち向いて~とか、こっち向いて~とかって気分はカメラマンですもん!」
「じゃぁ、ちょっと慣らしついでに奥さんのインタビューでも撮りたいな!」
「エェッ!?、高橋さん、もう~、なに言ってるんですかぁ?」
「いいじゃないですか、ビデオカメラが使えるようになってうれしくてしょうがないんですよ!忘れないように完璧に覚えておかなくちゃ!奥さん協力してくださいよう」
「そうですかぁ?」
「お願いします!」
「はぁ・・・」
「じゃあ、まず、お名前をどうぞ!」
一瞬、今日子が恥ずかしそうにうつむき、意を決したようにカメラに向き直った。
「おっ、大山今日子ですっ!」
そう言ってカメラに向かって手を振って見せた。
「お歳は?」
「えっ!ちょっと・・・それは、恥ずかしい・・・」
「そんな、いいじゃないですか~、まだ言えない年じゃないでしょう?さっ、どうぞ!」
「えっ、とっ、年は・・・30才です、やだ、恥ずかしい・・・」
笑いながら、顔を赤らめ、うつむく。
「ダメダメッ!カメラ見て、奥さん~」
「あっ、はいっ・・・」
高橋の声に従うように、カメラに向き直る。
「イヤ~、とてもそんな風に見えませんよ、顔が幼いから小学生みたいですよ!」
「ちょっと!それは言いすぎですよ~」
「そんな事無いですよ、こうやって見てると子供が子供を抱いているように見えますよ、ヘヘッ、じゃぁ、ご主人の名前と、お子さんの名前をどうぞ!ちゃんとカメラ見てね~」
「・・・主人の名前は、大山、忠31才です・・・子供は一人で、大山健司、健ちゃんです!1才で~す!」
また、健司の手をとり、カメラに向かって手を振らせる。
「おっと!」
そういう高橋の声がして、カメラがブレた。
「部品を落とした!」
そう言った時には、ビデオカメラの映像がテーブルの下を映し出していた。すぐさま、対面に向けられる。そして、ピンクのスカートに無理やり押し込められた、ブリッブリの腰回りとムチムチに発育した太もも、ふくらはぎが飛び込んできた。
「だっ、大丈夫ですか?壊れたんですか?」
今日子の声が飛んでくる。
「えぇ、大丈夫ですよ、ヘヘッ、コレだよ、コレ!凄い!すごいですよ、奥さん!」
カメラが今日子の下半身を捕らえて離さない。その中心にはピンクのスカートに影となったVゾーンが、ムチムチの太ももに挟まれて、申し訳なさそうに顔を出している。
「ありました?探しましょうか?」
カメラの前で今日子の尻が浮いた。その瞬間、カメラが持ち上がり、再び今日子の上半身を捕らえた。
「はい!奥さん、カメラ見て~、大山今日子さ~ん!ほら・・・こっち見て!!」
高橋が声を張り上げた。
「あっ、はっ、ハイッ・・・」
びっくりしたように、ビデオカメラに向き直る。というより、高橋の顔を覗き込んだという方が正解かもしれない。
「じゃあ、インタビューの続き、いきましょうか!」
「えっ、えぇ・・・」
カメラを見たままの今日子の表情が曇った。
「その前に、奥さん、健ちゃんベビーベッドに移しましょ?おねむのようですよ」
「・・・あっ、じゃあ今日は、この辺で、私、これから・・・」
「ま~だいいじゃありませんか!もうちょっとで終わりますから!早く、早く!」
「はっ、はぁ・・・」
そう言って今日子が席を立ち、リビングの隅にあるベビーベッドに向かう。その後姿をビデオカメラが捉えた。
「ヘヘッ、ヘヘヘッ、ブラ線丸見え!ケッ、ケツが歩くだけでブルンブルン!・・・この、スケベ!!」
今日子にはギリギリ聞こえないくらいの声で高橋が罵声を吐いた。
「はいっ、早く戻って!座って!」
「・・・えぇ」
また今日子が席に付いた。それと同時に目線をカメラに合わせる。さっきからしつこく高橋に言われているせいか、知らぬ間に、癖になってしまった。
「はいっ、小学生アイドル、大山今日子ちゃんの独占インタビュー再開!」
「そっ、そんな、高橋さん・・・」
「ジョ~ダンですよお、奥さん、ただの遊びじゃないですか?どうしたんですかぁ?じゃぁ、小学生アイドル、大山今日子ちゃん!スリーサイズをカメラに向かってどうぞ!」
「ちょっ!ちょっと!それは・・・高橋さんっ」
「どうしてですか~?アイドルのビデオじゃ当然でしょうが!僕はねぇ、将来プロカメラマンをめざしているんですよ!その為の予行演習に協力してくださいよぅ?只の遊びなんですから!でしょ?はい!スリーサイズ!」
「でも・・・」
「バストは!!」
「・・・・・」
「何センチ!!」
「・・・・・」
「言って!!」
「・・・きゅ、90センチです・・・」
消えるような声でそうつぶやき、今日子はまた、目を伏せた。
「ほらぁ!目を伏せない!声聞こえないよ、今日子ちゃん!もう一回!ビデオカメラ見て、いつものような元気な声で!奥さん!言って!!!」
「・・・バストはっ!きゅっ、90センチですっ!!」
「はい~!いいよ~、次!ウエスト言ってみよ!」
「あぁ・・・ふっ、太いんですぅ・・・」
眉間にしわを寄せ、カメラの向こうの高橋に懇願するように今日子が言った。
「そんなのご近所のみんな知ってるよぉ!どうせみんなにバレてんだから!もう一緒!はいっ、言って!いつものように元気よく!言って!ウエストは!!」
「あぁ・・・ろっ、65センチですぅ!本当ですっ!!」
「はい~!よく言った!そんな恥ずかしいことよく言った!次はお待ちかねのヒップいってみよーーー!小学生アイドル、大山今日子ちゃん!言って!!」
「ダッ、ダメですぅ・・・こればっかりは、だめですぅ!一番、気にしてるんですぅ・・・」
「な~に言ってんの、奥さん!奥さん最大のチャームポイントじゃぁないか!こっちはこれから、そのヒップでプロモーターに売り込んでいかなきゃならないんだよ!アイドルの世界は厳しいんだよ!奥さん!町内ナンバーワンの巨尻奥さん!はいっ!自慢して!!みんなの前で!言って!!!」
「あぁ・・・ヒッ、ヒップは・・・きゅっ、95センチですぅーーー!!みっ、みなさん!ごめんなさいぃ!!」
そのまま今日子はワッと両手で顔を覆い、テーブルにうつ伏せた。
「・・・この、スケベッ!!小学生アイドルのくせして!なっ、なんて事言うんだ!おっ、おいっ!!ドスケベッ!!!」
ビデオカメラが今日子を捕らえたまま、すぐ傍まで高橋が歩んでいく。そのまま空いている左手でショートカットの綺麗な髪を鷲?みにした。
「はい!その顔カメラに見せて!!ママッ!!!」
今日子の顔がテーブルから引っこ抜かれ、上を向かされ、アップになる。大きな両目からは涙がツッーと流れ出ていた。
「やっ!止めて下さい!こっ、怖いっ、もう、帰ってくださいっ!」
「そうはいくかっ!このスケベママがっ!今からボコボコにしてやる!大人しくしろっ!!」
「イヤー!!いっ、痛いっ!助けてっ!!」
今日子が必死になって、両手で高橋の胸を押すが、今日子の髪の毛を鷲?みにした左手だけの力で、引き寄せて、離さない。それを右手のカメラが伸長差30センチはあろう上空から見下ろして、捕らえていた。
「しょ~がねぇなぁ!ちょっと、・・・大人しくさせるか!!」
高橋がそういった瞬間、画面がぷつりと消え、真っ黒になった。
そして、その暗闇から、見覚えのある文字が次々に浮かび上がってくる。

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