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北原夏美 四十路 初裏無修正

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悔しさでほとんど眠れなかった私は、朝食もとる事が出来ませんでした。
それにしても、妻の行動は余りにも不用意で、もう少し用意周到さがあっても良いのではと思う気持ちも有りました。
何故なら、私は先日妻の同僚の佐藤さんと二人きりで飲んでおり、それは彼女と妻の関係から、妻に伝わっている筈。
その時の内容を聞けば、自分の秘密の一部が私に解ったしまったということで、他の秘密を守るために何らかの動きがあって然るべき。
私はその日、妻の会社の前で佐藤さんを待ちました。
夕方5時半過ぎ、妻が会社を出ました、それから待つこと1時間、佐藤さんが出で来ました。
何気ない振りをして、私は彼女に近づき声を掛けました。

「佐藤さん。」
「びっくりした!、如何したんですか?」
「これから帰るの?」
「そう、○○さんは?」
「実は佐藤さんを待ってたんだ。」
「私?」
「ちょっと聞きたいことが有って、都合悪いかな?」
「別にかまわないけど、何か怖いな。」

歩きながら、彼女は何の話か有るのか必要に聞いてきましたが、私は話をはぐらかして先日の蔵に向かいました。
店の入り口に近いいて中を見たとき、有ろうことか店の奥まった席に、妻が一人で座っているではありませんか。
私は振り向きざま、佐藤さんの肩に両手を添えて、そのまま後ろ向きにさせると、店の中を見れないようにもと来た道に彼女を追い立てました。

「如何(どう)したんですかしたんですか?」
「満席。」
「へー、そうなんだ!」

予期せぬ遭遇とは言え、自分の不用意さを反省しながら別の店へと足を運びました。
そこの店は私が何度か足を運んだことのある店で、私よりも若い人たち(20~25才位)が集まる店でした。
サーファーが多くトロピカルな雰囲気の店。
蔵とは違い、目抜き通りに近い店にもかかわらず、彼女は抵抗無く付いてきました。

「ここで良かったかな?」
「私も来たこと有るから!、妹もよく来るし。」
「妹さんいたっけ?」
「ん、それより、話って何ですか、気になるんですけど?」

私は、先日二人で飲んだことを、妻に話したか如何(どう)かを単刀直入に質問した。
彼女から帰ってきた答えは、NOだった。

「だって、あの時私もちょっと喋り過ぎたし、それに麻美さん焼餅焼きだし、麻美さんにばれちゃいました?」
「そうじゃないんだけど、まだ隠れて吸ってるみたいだから。」
「そうなんだ、今日のことも内緒が良いかな?」
「特に問題は無いけど、言う必要も無いかな。」

佐藤さんとの二人の飲み会が、妻に伝わっていなければ、妻の行動に変化が起こるわけも無い筈である。
妻が焼餅焼きという言葉には、いささか驚きました。
何時の時点までなのか、いまだにそうなのかは解りませんでしたが、
少なくとも他の男と関係を持つまでの妻は、同僚から見れば私に対して嫉妬深い女だったのでしょう。

カウンターを含め15席程度の店内は、既に2、3席を残し満員状態、入店してから30分位取り留めの無い話をしていると、店のドアが開き二十歳ぐらい女性が一人入ってきました。

「由香!」
「お姉ちゃん!」
「由香里さんじゃないですか。」
「知り合いですか?(佐藤さん)」
「仕事の関係で、ちょっと。」

その女性は、佐藤さんの妹でした。
驚いたことに、その女性は私も面識のある女性だったのです。
小さな町ですが、偶然というものは恐ろしい、と言うよりは個々の人の情報を知らな過ぎたのかもしれません。
彼女は同じ系列の販売店に勤める、いわば私の同業者でした。
その後もう一人女性が入って来ましたが、妹さんの連れでした。
二人は、ちょうど開いていた席に私たちを両脇から挟むように座ろうとしたため、私が席を移動しようとしたとき、彼女達に肩を抑えられ、上げた腰を同じ席に沈めました。

「そのままで良いですよ。」
「特に積もる話も無いですから、
○○さんさえ良ければ、
ここに座って良いですか。」
「私は良いですけど。」

連れの女性は、佐藤さんとはかなり親しいようで、座った瞬間から何の抵抗も無く会話をしていて、私は必然的に妹の由香里さんと話をするしかなかった。
元々、今日の目的は済んでおり、由香里さんとの会話は新鮮味を感じることが出来たのも事実である。

彼女とは、店舗も近いと言うことからメーカーのイベントなどでも度々話す機会があったため、飲みながら話をしていると、杓子定規な話からプライベートの話に移行するには、時間を必要とはしなかった。
この女性「由香里さん」が妻と私の関係に微妙な役割を持ってくるのは、それから間もなくの事でした。

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