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北原夏美 四十路 初裏無修正

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俺は男だ! 4/13(日) 17:01:19 No.20080413170119 削除

目覚まし時計が鳴ってます。
時計をセットしたのは覚えていますが、その後の記憶がありません。
あんな事があったものですから、歯も磨かずに寝てしまったので口の中が気持ち悪い。
洗面台に行くには居間を通らなければなりません。
きっとそこに妻が居るでしょうが、顔を会わしたくないのです。
何時もと変わらぬ状況なのに、不倫の証拠を突き付けただけでこんな気分が変わってしまうものなのか?
私はそこ迄、妻との生活に息苦しさを感じていたのか?如何もこの建売住宅は使い勝手が悪い。
居間に入るとやはり妻が昨日のままの格好で、テーブルに伏せて眠っています。
私の気配に目を覚まし、腫れた目で声を掛けて来ました。

「朝食の用意をします。・・・・・今日仕事を休んでいいかしら?」

「好きにしたら。俺はお前が行こうが行くまいが如何でもいいよ。だけどさ、今日行かないと明日も行けなくなっちゃうんじゃないか?
行っても結果は同じかもしれないけど、社会人として責任は回避しない方がいい。遅刻してでも行く方がいいと思うよ。
それと朝飯はいらない。これからも飯は作らなくていいよ。
勝手気ままにやっていく。あんたも今迄通りに好きにすればいいさ」

人生の多くを共に歩んだ情が絡むと面倒です。そんな事で自分を言い含めるのは真っ平です。
私とて俗物的な人間ですから、今迄の思い出が山ほどあり妻への感情が何もないとは言えません。
それは仕方がない事でしょう。人間なのですから。
それでも私は新たな一歩を踏み出したい。
仕事での緊張をほぐしてくれる心休まる家庭が欲しい。
そんなものが有るのか無いのか私は知りません。
だって、そんな経験がないのですから。
思い起こせば親父も家では無口でした。
あいつも私と同じ人生を歩んでいたのかな?

「女に理屈は通じない。言うだけ疲れる」

親父がよく私に言った言葉です。その結果、母は我侭な女でした。
もちろん妻のように不倫に走った訳ではありませんが。
言いたい事を言い合える関係でありたい。父と母のような夫婦にはなりたくない。
そう思っていたのに今は親父と変わらぬ人生です。
それでも何処かで変えたいと思っていました。
『俺は親父とは違う』
親子でも価値観は違うのです。離婚が罪悪な時代ではありません。
子供達の事ばかり中心で、自分を犠牲にするなんて時代錯誤もはなはだしい。
今がそのチャンスだ。子供達にはあの子らの人生がこれから一杯ある。俺の人生はその半分もない。
間違っている考えかも知れないですが、勝手ながらそう思いたい私です。
それにしても、妻のあんなに腫れた目は何なのか?
私をこれ程ないがしろにして来て、不倫がばれたからと言って泣く必要があるのか?
こんなに長い男との付き合いで、愛情は私によりもあの男に強く感じているのではないでしょうか?
証拠が出た時点で、何時ものように開き直れば済む事だと思います。
男に帰る家庭があって、自分になくなるのが辛いのか?それは彼女の勝手です。
好きな男と私の目を気にせずに会えるのは都合がいいと思うのですが。
きっと子供達に自分の不貞を知られてしまったのがショックだったからなのかも知れませんね。

手際よく身支度を整えて、何時もよりも早い時間に家を出ました。
妻に口をきかせる隙を与えたくなかったのです。それと敵陣に如何攻め込むかもう一度考える時間も欲しい。
さあ、今日は決戦です。
時間を潰してから朝一で妻の会社に行こうかと思いましたが、踏ん切りが付かず少し早く出勤してしまいました。
ディスクに座りボーッと考えていると同期の男が声を掛けて来ます。

「おい今日は早いな。何かあったのか?朝から深刻な顔をして如何した?」

この男は大学は違いましたが入社当日から妙に気が合い、その仲は今も変わりがありません。

「嫁さんとちょっと揉めてな。頭に来て早く出て来たんだ。お前も経験あるだろう?本当に腹が立つよなぁ」

「雅ちゃんも気が強いからな。何があったか分からんが、お前さんが頭を下げた方が無難だぞ。
へそを曲げられて、飯の用意もしてくれなくなったら目も当てられん。早い内に機嫌取りをしておけ」

同期の境は相談するに与いのある男です。同期ですから妻の雅子の事もよく知っていますし、お互いに子供が出来る前は家を行き来していたものです。
しかし今、唐突にそんな相談も出来ませんし、夫婦円満を演出していた私には、とても口には出せません。
相談相手を思い浮かべていた時に、1番に頭に浮かんだ男ではありますが、見得が邪魔してしまいました。
『えーーい、なるようにしかならない!俺一人でやってみるさ!』
相談するチャンスを逸した私は決めました。
今の今迄、心の中で誰かを頼りにしていたのですが、自分の事位は一人で受けて立ちましょう。
昼食を終えて会社に戻った私は、部下に外回りに行くと嘘を言い妻の会社に足を向けました。
敵陣の前に立ち、一旦は躊躇しましたが止らずにドアを開けます。

「岸部さんを呼んで貰えますか」

この規模の会社に受付等はありません。直接女性事務員に声を掛けました。
昨日玄関で小さくなっていた男が、慌ててこちらに向かって来ます。
この男、この場を何とか取り繕おうとしてか、私を外に連れ出そうとするのです。

「おいおい、俺は会社で話し合おうと言ったはずだぞ。そんな真似をするならこの場で話してもいいんだ。」

わざとに大きめの声で言います。当然男は慌てました。

「そっそうでしたね。こちらの応接室にどうぞ」

部長自ら私を応接室に通すのですから、余程重要な客だと思ったのでしょう。
私が声を掛けた女性事務員が怪訝そうな表情をしながらも、直ぐに立ち上がり最敬礼しているのでした。
オフィスに薄いドア1枚で隔たれた狭い応接室で、私は男に横柄な物言いをしました。

「雅子は出て来てるか?居るなら直ぐに呼べ。それと社長もな」

「奥様はお得意様のところに行ってもらっています。直ぐに連絡して呼び戻しましょうか?それから社長には何の関係もありません。
あくまでも個人的な話ですからね」

昨日とうって変わって横柄な態度に出てきます。
男は社長をこの席に着かせるつもりはないのでしょう。反対の立場なら誰だって避けたいものです。
そりゃぁ嫌でしょう。そんな事は私も重々承知です。

「あいつ居ないのか。逃がしたんじゃないだろうな?まあ呼び戻すって言うんだからそんな事はないか。
社長は居るんだろう?まさか社長迄居ないと言うんじゃないだろうな?それなら俺が電話で呼び戻してやろうか?」

「だから社長には関係のない話しでしょう」

「そんな事はないさ。会社での不祥事は長の責任でもあるだろう」

「・・・・関係はないさ・・・・」

「その判断はトップにしてもらおう」

ソファーから立ち上がる私を見て、男は立ち塞がりました。

「まぁ、落ち着いて話し合いましょう。それで納得してもらえなければ私から社長を呼びますよ」

妙に不敵なこの態度は何処から来るのか?此処は相手のフィールドで、私にはアウェイなのですから、相手は気が大きくなっているのかも
しれません。でも今はひるむ訳には行かない!だって、この男に対して私は何の落ち度もないのです。

「何か勘違いしてないか?俺はあんたと刺し違ってもいい覚悟やよ。
昨日言っただろう。明日はないって。
社会的に見たって俺の立場は強い。その位はあんただって分かるだろう?出る所に出てみようか」

「・・・・・・・・・」

こいつは圧力に弱い男だと一寸した気配で分かってしまうのは、私だって伊達に年を取った訳じゃないからです。

「・・・男と女の不祥事は何処にでも転がっている話しだ・・・内々の話にして貰えないだろうか・・・」

「冗談じゃない」

男を押し退けて応接室を出ようとする私の腕を掴むその顔は、昨日と同じ情けないものでした。

「済まないが座ってくれ。落ち着いて話し合おう」

形勢逆転!
此処からは私のペースで話を進められると判断し再度ソファーに腰を下ろしました。

「申し訳ない」

男も座り、テーブルに付きそうな位に頭を下げています。
臭い芝居をしやがって!きっとこの場を何とか乗り切る事しか考えていないでしょう。
何時もはそれなりの顔をして居るであろうこの男の惨めな姿を、この薄いドアを開けて社員に見せてやりたいものです。
こんな男を上司と仰ぐここの社員達は、この姿を見ても会社の為に必死で頭を下げている尊敬すべき上司に映るのかも知れません。
そんな事があるはずはないと思ってはいるのですが、孤立無援な敵陣に殴りこんだ私には、全てが相手の援軍と感じてじまいます。

「社長を呼ぶ気になったのかな」

私も結構やるじゃないですか。人間追い詰められると自分でも分からなかった性格が顔を出すのでしょう。
窮鼠猫を噛むと言うところかな。この感じは完全に私のペースに乗ったと思っていいでしょう。
男は深々と下げた頭を上げようとしません。

「部長さん。何でそんな事をする。あんたが言ったように私が誤解しているだけなら、もっと堂々として居ればいいじゃないですか。
流石にそれでは通じないと理解されましたか?おい!この落し前、如何付ける!
俺はヤクザじゃないが、鬼にはなれる。あんた、悪い男の女に手を付けたな。俺は執念深いよ。
金なんか要らないが、お前の人生を食ってやる。倍返しが心情だ。命以外は全てなくす覚悟をしておけ!」

『食ってやる』か、何か凄い言葉を言ってしまった。
『駄目にしてやる』より迫力があると思うのですが?
乗って来ました。『命以外に全てをなくす』そこ迄は幾らなんでも無理だと思っています。
不倫なんて、この男の言う様に何処にも転がっている話です。普通はうやむやになってしまうのでしょう。
あくまでも嫌がらせの台詞ですが、それでも男は無言で頭を下げています。

「とにかく社長を呼んでもらおう」

此処は一気に、こいつが嫌がる事でこの場は攻めましょう。ただやり過ぎると免疫が出来てしまいます。
開き直れる男なのか、そうではないのか、今は分かりませんがセオリー通りにこの線で行きましょうか。
私がW不倫をしてこんな立場に立たされたら如何するのでしょう?パニックでしょう。
私とて、そんなチャンスがなかった訳ではありません。あ~~しなくてよかった。

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まとめtyaiました【逆転 7】
俺は男だ! 4/13(日) 17:01:19 No.20080413170119 削除目覚まし時計が鳴ってます。時計をセットしたのは覚えていますが、その後の記憶がありません。あんな事があったものですから、歯も磨かずに寝てしまったので口の中が気持ち悪い。洗面台に行くには居間を通らなければ?...
2012/05/11 21:53 | まとめwoネタ速neo

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