俺は男だ! 4/30(水) 20:49:40 No.20080430204940 削除
生きていると色々な雑念が湧き起こるものるものですが、悲しいかな仕事をしている時だけは忘れていられるのです。
その日も友との待ち合わせの時間まで、ほんの一瞬だったように
記憶しています。
残業も程々に同僚との待ち合わせ場所に向かいました。
その店は何時も通りの賑わいで、奴を目で探すとカウンターでもう日本酒を一杯やっています。
「待ったか?」
私の声にニタリと笑い、
「待った、待った」
その受け答えが私を楽にさせるもので、ほっとしてしまうのです。
お互いに馬鹿話をしながらも、本題を切り出すタイミングを計っていました。
こいつは何気なく話を本題に乗せてきました。
「・・・大変なようだな。武勇伝は千秋から聞いた。お前、やんちゃな所は昔と変わっていないんだな」
「やんちゃって何よ。俺もおとなしいものだぜ。もう年だからな」
どんな行動を言われているのか分からない私は、曖昧な返事を返しました。
「う~~ん。雅ちゃんの職場に乗り込んだって。たいした度胸だ。俺なら出来ないな」
ごく自然に話し掛けてきます。
「そんな事まで知っているのか・・・・俺も少し頭に血が上っちゃてな。思い出すと心臓がバクバクするよ。
挙句の果てに相手の奥さんに電話も掛けたよ。何か女みたいで嫌になっちまう」
友はやはり私達夫婦の出来事を知っているようです。もう格好付ける何ものもありません。
「雅ちゃんの相手は岸部だって?それが以外だったよ。まさか、お前がそんな目に会うなんてな。
・・・・あの会社は、それなりの信用がある。それでも二代目の評判は良くないな。
先代は人望も厚かったそうだから、ここまでの会社になったのに、ぼんぼんは甘いからな」
「岸部を知ってるのか?」
意外な言葉でした。
「何度かうちの会社に来てるぜ。俺は仕入れが専門だから来るたびに会ってるよ。うちと取引をしたっがているのに、お前の女房に
手を付けたら元も子もないな。もう少し、まともな男だと思ったのに」
話によると、二代目社長の人柄と、その方針からも得意先の反感を買い、業績は芳しくなくなって来ているとの事。
それでも、先代の顔で何とか表面上の体裁は保たれていますが、それだって、何時までもは続くはずがありません。
そこで当社に納入し世間的な信用を付けると言う手段に打って出たようですが、流石に同僚は調べ上げていました。
「少し苛めてやるか」
そう言ってニヤリと笑った彼が、どんな方法を考えているのかは分かりません。
「なあ、女の悩みは女で解決するさ。
今夜は昔を思い出して遊ぼうや」
良い酔い方をしていたのも手伝い、その後あまり高くないクラブ等、何軒か梯子をし店の女の子に声を掛けましたが全て失敗。
まあ、おいそれと持ち帰りの出来る年でもないし、身分でもないのでしょう。
それでも久し振りに楽しい夜を送れた事に、友に感謝です。
かなり遅い時間の帰宅だったと思いますが、妻は起きて帰りを待っていました。
酔った頭の中には、女の子と何も出来なかった悶々とした感情があったのでしょう。
『女の悩みは女で解決』同僚のその言葉が『妻の悩みは妻で解決するさ』そんなふうに頭の中を駆け巡り、会話を求めているのも
構わずに強引に寝室に連れ込みます。
荒々しく服を剥ぎ取られ少し抵抗をしましたが、諦めたようです。
しかし、その夜の彼女は私の行為が終わるまで何の反応も示さないよう、じっと耐えているように感じました。
そんな態度に程よい酔いも急に覚め、虚しさが襲うのを抑えられません。
「悪かった。如何にかしてたな」
身体から離れ背を向けると、その気持ちを察したのでしょう。
「私こそごめんなさい」
私の背中を何度かさすり、静かに寝室から出て行きました。
妻の後姿を見る事もなく、私は背を向けたままです。
彼女と歩んだ人生で、後姿をまともに見た事があったのかな。
責任は一人だけに押し付けるものでも、背負うものでもないのでしょうね。
もしも時間を巻き戻せるなら、二人が信頼しあえる家庭を築く努力が出来るのかな?そう、自分に問い掛けてみます。
・・・・答えは出てるよな・・・・妻の不倫を盾に取り、それを責めて離婚に持ち込もうなんて姑息な真似はやめましょう。
それは妻のためでも家族のためでもなく、私自身のためにです。
惰性で生きて行くのはやめ、これからは自分の意志を第一に生きて行こう。人生が終わる時に、後悔がないように。
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