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俺は男だ! 5/3(土) 16:30:08 No.20080503163008 削除

久し振りに気分よく遊び歩く私に、子供達が釘を刺してきました。

「たまには、お母さんの所へも顔を出して来てね」

この言葉は結構重いんです。すっかり独身になったつもりの私を現実に戻します。
子供が居なければ、このままスンナリと行くかもしれないのに、そうは問屋が卸しません。
しょうがなく妻のアパートに出向きますが、彼女の車がないのをいい事に直ぐに立ち去る私でした。
如何して居ないのかなんて気にも止めないのです。
実はこの頃、例の彼女と交際を出来るのではと予感めいたものを感じていたのが私にそうさせたのです。
あくまでも私の希望的予感でしかありませんがね。
居ないのだからしょうがないと自分に言い訳をしても、子供達には納得が行かないようです。
男との繋がりを連想させてしまうからなのでしょうが、それは妻とのやり直しを望んでいるからなのかと思うと重い気持ちになってしまいます。
口には出さないまでも、離婚届を少しでも早く提出してくれればと望んでいるのですから。
そんな中途半端な日々を送っていた時分に、携帯に見慣れない番号の着信がありました。

「・・・岸部の家内でございます・・・突然お電話して申し訳ありません・・・今よろしいでしょうか・・・」

言いにくそうに話す相手に、私も頓珍漢な受け答えをしてしまいます。

「あぁ、どうも。ご無沙汰しております」

もう少し気の利いた事を言えなかったものか。

「・・・こんな事を、お願いする立場じゃないのは、重々承知しておりますが・・・」

「何かありましたか?」

岸部が会社での立場が危うくなり、今度の事を何とか穏便にすませて助けてくれないか。
そんな内容の事を申し訳なさそうに、おどおどしながら懇願するのでした。
助けてくれと言われて私が納得したところで、はいそうですかと岸部の立場が好転するとは思えないのですが・・・・
世の中には示談が成立し刑が軽くなったなんて話をニュース等で耳にしますが、今回の件はそうは行かないのではないかと思います。
しかし岸部の奥さんにしてみれば、何かしないといられない気持ちなのだろうと予想出来るのです。
これまでは、ある程度の収入があり不自由のない生活を送っていたものが全てなくなってしまう。
幼い子供を抱えて、これからの人生に不安を感じるのは当然です。
まして岸部の年齢を考えれば、今以上の収入を得るのは不可能でしょう。
それでも一生懸命働けば何とか食べて行けると思うのですが、人は今の立場に見合った生活を送っているのです。
その生活が一変してしまうのは誰だって不安なものだと思うのですが・・・・・

「申し訳ないが、今はそんな気持ちになれないのです。それに私が水に流すと言ったところで御主人の立場が変わるとは思えない。
普通の会社は、そんなに甘いものではないと思います。本当に申し訳ない」

私の言葉にたいそう恐縮しながら電話は切れました。
前回同様に後味の悪い思いをしながらも、岸部に何があったのか気になります。妻も知っているのか?
おそらく同僚の画策なのではないかと、内線を繋ぎました。

「俺だ。岸部のかあちゃんから電話があった。あいつ、危ないんそうだな。何かしたのか?」

「そうか。そんな話になっていたか。今そっちに行くよ」

程なくしてやって来た奴と休憩室に入り情報を交換します。
私は奥さんとの電話での内容を話し、それを聞いてから、これまでの経過を伝えてくれました。

「岸部はうちに飛び込みでやって来たんじゃないんだ。俺は部長から引き継いだので事情にうとかった。
その辺はお茶を濁されてたんだが、ある業者の紹介なんだよ。そこが部長とじっ魂なんでな。詮索はしたくないが何かあるんだろう。
それでな、お前の名前は当然出さないが、こんな話があると言ったんだよ。部長は以外といい男だぜ。あんまり好きな奴じゃなかったけど親分肌だな。
うちの社員を馬鹿にするのは許せんって電話してたぜ。そんな事なら紹介者だって立場がないさ。俺はそこまでは知ってるんだが、その後は耳に入っていないんだよ」

「ふ~~ん。そんな話になっていたのか。お前よぅ、もっと密に連絡してくれよ」

「済まんかった。ちゃんと決着を付けてからと思ってたんでな」

「感謝してるよ」

何処まで真剣に私の事を思って行動してくれたかは分かりませんが、約束を守ってくれたのは事実です。
それから何日もしないうちに話が急発展したのでした。
外回りをしていると携帯に着信があり、直ぐに戻って来いと言われ、部署に帰ると同僚が私の席に座っています。

「ちょっと来い」

言われるままに会議室について行き話を聞きました。

「あいつの会社の会長が来る。お前にも会いたいそうだ。賽は投げられたな」

第一線を退いた会長のお出ましが何を意味するものなのかは、その時の私には分かりませんでしたが、大きな変化を感じたものです。
だけど妻を寝取られた男がどんな間抜け面をして出て行けばいいんでしょうか?

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