BJ 7/26(水) 20:55:46 No.20060726205546 削除
「起きてください、もう朝ですよ」
私は瞳を開けました。目の前に妻の顔がありました。
「皆さん、もう起きてらっしゃいますよ。あなたも早く」
「ああ・・・」
私はぼんやりと布団から起き上がりました。昨夜は寝た時刻も遅く、また様々なことがありすぎてよく眠れなかったので、身体にだるい感じが残っています。
てきぱきと布団をたたむ妻の姿を見つめながら、私はその姿に普段と違う様子がないかどうか観察しました。しかし、どうもよく分かりません。
朝食が運ばれてきて、私たちはまた四人で卓を囲みました。私は食事をしながら赤嶺の顔
をちらちらと見ます。
(お前は昨夜、妻を抱いたのか?)
私としては一刻も早くそのことを確認したい気持ちでした。しかし、赤嶺もまたいつもと変わらない様子で箸を使っています。
その赤嶺が思いがけない提案をしたのは、食事が終わって皆が寛いでいたときでした。
「きょうはお互いのパートナーを交換して遊びに行かないか?」
「・・・どういうことだ?」
「俺は瑞希さんと、お前は明子と一緒に行動するってことだよ。せっかく普段とは違う場所に来てるんだから、普段とは違う相手と旅を楽しむのもわるくないと思ってさ」
こんなプランは私たちが事前にたてた計画にはありませんでした。私は赤嶺の真意を掴みかねて、その顔をまじまじと見つめましたが、赤嶺は平然たるもので、今度は明子に向かい、
「どうだ?」
と尋ねます。
「面白そう。私は賛成よ」
明子は即座に賛成しました。
赤嶺は妻を見ました。
「奥さんはどうですか?」
「私も・・かまいません」
妻がほとんど躊躇することなくそう答えたことに、私は驚愕しました。
「ということで女性陣は皆賛成しているけど、お前はどうだ?」
赤嶺が屈託のない口調で聞いてきます。私は皆がグルになっているような疑心暗鬼に囚われながら、
「いいよ、それで」
とぶっきらぼうに答えました。
「じゃ、決まりだ」
赤嶺はにこりと笑います。私はその笑顔になぜとなく不吉なものを感じて、目を逸らします。
(これは何かある・・・)
一番の疑惑のもとはこの問答の間中、妻が一度も私を見なかったことです。
「ねえ、せっかくだからどこかへ行きましょうよ」
部屋にぼんやりと寝転んだままの私に、明子がさすがに焦れた声をあげます。すでに赤嶺と妻の姿はありません。
「分かってるわ。奥さんのことが気になっているんでしょう」
「・・・君は赤嶺から昨夜のことを聞いたのか?」
『昨夜のこと』とはもちろん、私と明子が部屋を出て行った後、赤嶺と妻に起こったことを指しています。
「さあねえ」
明子は世にも曖昧な返答をしました。その顔は駄々っ子を見つめる大人のような小憎らしい微笑を浮かべています。
「――まったく、あなたも赤嶺も瑞希さんのことばっかり気にして。私のこと、なんだと思っているのかしら」
「・・・すまない」
「すまないと思っているのなら、さ、早く出かけましょ。行き先はどこでもいいわ。私を楽しませてくれるならね」
明子に促されて私はようやく重い腰をあげました。しかし相変わらず、心の中は重く濁ったままでした。
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
BJ 7/26(水) 20:55:46 No.20060726205546 削除「起きてください、もう朝ですよ」私は瞳を開けました。目の前に妻の顔がありました。「皆さん、もう起きてらっしゃいますよ。あなたも早く」「ああ・・・」私はぼんやりと布団から起き上がりました。昨夜は寝た時刻も遅く、?...
2012/05/26 20:46 | まとめwoネタ速neo