管理人から

管理人

Author:管理人
管理人がおすすめするカテゴリに★印をつけました。



アダルトグッズのNLS








最新記事


カテゴリ

北原夏美 四十路 初裏無修正

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
BJ 8/1(火) 23:17:16 No.20060801231716 削除
目が覚めたらもう昼近くでした。
「あなた、起きないと。もうすぐチェックアウトの時間ですよ」
瞳を開けると、妻がいました。いつものように端整に服を着こなし、顔にもやつれや疲れのようなものは見えません。
私はその顔をじっと見つめていましたが、口から出てきたのは次のような間抜けな言葉でした。
「・・・朝飯はどうした?」
「キャンセルしました。赤嶺さんたちは仕事の用事があるらしく、朝も早いうちにお立ちになりましたし、あなたはお疲れのようだったから」
どことなく強張った口調でしたが、妻は私がじっとその顔を見つめていても、いつものように瞳を逸らすことはありませんでした。
それにしても赤嶺たちはどうして去ったのでしょうか。仕事の用事があるなんて聞いていません。普通の男女なら朝になって私たち夫婦と顔を合わすのが気恥ずかしかったという説明も成り立ちそうですが、あいにく赤嶺と明子は普通の男女ではありません。
とりあえず私は起き上がりました。
昨夜は衣服やら何やらで、あれほど散らかっていた部屋が今はもうきちんと片付いています。てきぱきと布団を畳み、帰り支度を整えている妻を見つめながら、私はぼんやりとした面持ちで歯を磨きました。

宿を出ると外は晴れ渡っていました。夏の休暇も明日で終わりです。
私たちは小さな駅前の喫茶店で朝食をとると、高山行きの電車に乗り込みました。電車はとても空いていて、客は私たちのほかにニ、三人しかいません。
目の覚めるような飛騨の緑深い山々を窓越しに眺めながら、私は頬杖をついていました。こうして陽光の下で広がる山々を見ていると、昨夜までの宿屋での出来事がまるで夢のように感じられますが、それが夢でないことは私と妻の間に流れているぎこちない空気が証明していました。
「あの、、、、、」
小さな声で妻が言いました。
「ごめんなさい、、、その、、、昨日は」
「・・・謝る必要があるのは俺だよ」
私は言いました。
「瑞希が謝ることは何もない。今度のことは全部、俺のせいなんだ。俺が・・・最初から仕組んだことなんだ」
私は何もかも告白してしまいたい気持ちでいっぱいでした。それがたとえどのような結果になっても。いや、結果などすでに出てしまっているのかもしれない。そのときの私はそう思っていたのですが―――、
「・・・知っています」
妻の返答は驚くべきものでした。
「・・・どうして?」
「二日目の夜に・・・あなたと明子さんが浴場へ行った後、赤嶺さんにすべて聞きました。
あなたが・・・私を赤嶺さんに抱かせるために、お二人をこの旅行へ引っ張り込んだことも、すべて」
「・・・赤嶺はどうしてそれを?」
「分かりません。あのひとは・・・最初からそのおつもりで来たのですから当然でしょうけど、あなたたちがお風呂場へ行った後、私を誘ってきました。けれど、私がどうしてもそれに応じないのを見て、その話をなさったんです」
「・・・・・・」
「私はその話を聞いて腹が立ちました。私が今度の旅行をどれだけ楽しみにしていたか、あなたには分かりますか? それなのに・・・」
妻の淡々とした口調にかえって凄みを感じ、私は何も言えませんでした。
「私はあなたを憎みました。一言の相談もなしにそんなことを赤嶺さんに約束したあなたのエゴを憎みました。あれだけ私のことを愛していると仰ったのに、まるで物みたいに私を赤嶺さんに抱かせようとしたあなたを」
「・・・・・・」
「私のそんな想いを見て取ったのでしょうか、赤嶺さんは『彼が憎いですか。怨みに思いますか』と尋ねてきました。私がうなずくと、あのひとは『それなら彼を裏切ってみたらどうです。彼の思惑を知りつつ、それにのせられかと思うと、あなたはしゃくかもしれませんが、なに、私の見るところ、彼はそう強い男ではありません。彼はあなたのことをすべて自分の思い通りになる女だと思っています。あなたを私に抱かせてみたいと思いつつ、心の底ではあなたが裏切ることなどないと思っているんです。あなたが私に抱かれるなら、彼はきっと深く傷つくことになるでしょう』・・・そう言ったんです」
「・・・・・・」
「あなたが私のことを『すべて自分の思い通りになる女だと思っている』という赤嶺さんの言葉を聞いて、そのときの私は本当に腹が立ちましたし、今度の一件を見ていると、たしかにそうとしか思えませんでした。復讐のために私は本当に赤嶺さんにこのまま身を任せようかと思いましたが、そのときは決心がつきませんでした。赤嶺さんは『結論は今でなくてもいいです。私の言ったことを考えておいてください』と言って、去っていきました。私はそのまま気が抜けたように横たわっていました。
やがてあなたが戻ってきました。私は目を瞑っていましたが、あなたがお風呂場で明子さんを抱いたこと、そして私が赤嶺さんに抱かれたのではないかと勘繰っていることは、なんとなく分かりました。私はその夜、眠っているあなたをずっと見つめながら、一睡も出来ませんでした」
あのとき、私が感じた暗闇の視線は妻のものだったのです。

コメント

コメントの投稿



管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)


 | ホーム | 


  1. 無料アクセス解析