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北原夏美 四十路 初裏無修正

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種無し 1/26(金) 06:40:17 No.20070126064017 削除
娘はすくすくと成長し、14歳という多感な時期を迎え、妻はと言えば48歳になっても保育師の仕事を続けながら、娘の学校の役員まで引き受けて多忙な生活を送っていました。
「明日は金曜だから、香を連れて会社の近くまで出て来い。3人で夕飯でも食おう」
「明日ですか?明日は接待で遅くなるから、ホテルに泊まると・・・・」
「ああ。急に向こうの都合でキャンセルになった」
「ごめんなさい。明日は役員の親睦会が・・・・・・」
「そんなものは欠席しろ!」
「駄目なの。親睦会の前に大事な会議もあるから休めないの」
妻は私を裏切った事への償いのつもりか、娘の将来を思ってかは分かりませんが、あれ以来ずっと私には逆らった事は無く、未だに私の顔色を伺いながら生活していました。
私もそのような生活に慣れてしまったために、妻の都合で断られた事に無性に腹をたててしまいます。
「もういい。今後絶対に誘ってやらん」
「ごめんなさい。そう言わずに許して下さい」
私はその後も妻を汚い言葉で責め立てたものの、弁当を買って帰って娘と二人で食べていると、これも良いものだと思っていました。
しかしその後、何気ない娘の話から一気に食欲がなくなります。
「お母さんも大変ね。先週は職場でトラブルがあったとかで夜遅かったし、その前の週は役員会の後カラオケに連れて行かれたと言って、凄く遅く帰って来たらしいわ。私は眠ってしまっていたけれど」
先週は私が出張の時で、その前の週は私が残業で遅くなったために、会社の近くのビジネスホテルに泊まった時でした。
そしてその日、11時を過ぎても帰って来ないので携帯に電話すると、呼んでいても妻は出ずに、帰って来たのはそれから一時間も経ってからの事です。
「起きて待っていてくれたの?遅くなってしまってすみません」
妻はそのままお風呂に向かおうとします。
「ここに座れ!どうして携帯に出ない!」
「ごめんなさい。二次会のカラオケがうるさくて気付きませんでした」
「先週も先々週も、俺が留守の時に限って遅くまで遊び歩いていて、香織を一人で留守番させていたらしいな。いったいどう言うつもりだ!」
「ごめんなさい。たまたま重なっただけで、あなたが留守だから遊んでいた訳では」
「今日もそうだが、子供を放っておいて何のための役員会だ!会長に文句を言ってやるから名簿を出せ!」
妻の顔色が変わりました。
「今日は遅いから。今度この事について話しますから」
しかし私は自分の言葉で気持ちが昂り、更に怒りが増していきます。
「こんな時間まで母親を引っ張っておいて、遅いも糞もあるか!いいから早く出せ」
「名簿は無かったと・・・・・」
「役員名簿も無い役員会なんてあるか!」
更に私のテンションは上がっていきます。
「確か会長は、駅前のスーパーの親父だと言っていたよな。今から行って来る」
妻は立ち上がった私の足にしがみ付きます。
「会長は欠席だったの。だから会長は何も知らないから」
妻は自分の言っている矛盾に気付きません。
今日は大事な会合もあるからと言って私の誘いを断っておきながら、会長は来なかったと言うのです。
私は妻が隠し事をしていると確信しました。
「じゃあ誰と誰がいたのか、名簿を持って来て説明してみろ」
妻が動かないので「今日は欠席していても、会の事は全て会長の責任だから行って来る」と言って立ち上がると、妻は慌てて一枚のプリントをもって来ましたが、上部に手を置いて説明する妻を不自然だと感じました。
「この林さんも来たし、次の佐野さんもいたし」
私が不意に手を払うと、妻の手に隠れていた二人いる副会長の一人に、忘れたくても忘れられない名前を見付けます。
小学校の時は校区が違うので忘れていましたが、中学校では同じ校区になり、しかも一つ上にあの時生まれた息子がいるのです。
「篠沢と会っていたな?違うと言うなら、さっき一緒にいたと言っていた奥さん達に、今から電話して聞いてみるが」
「ごめんなさい」
私は目の前が真っ暗になりました。
全身の力が抜けてしまい、悲しすぎて涙も出ません。
「でも話していただけ。彼とは何も無いの」
「こんな遅くまでこそこそと会っていて、俺にそれを信じろと言うのか!他に何か言いたい事があれば聞いてやる。無ければすぐに出て行ってくれ」
俯いていた妻は顔を上げ、私の顔を見ました。
「香と二人だけで会ってみたいと言うから、それを断わっていただけです」
篠沢は妻に「一度香を見掛けたが、俺の娘だと思ったら可愛くて仕方が無い」と言ったそうです。
「脅されたんだな!香に真実を話すと言って脅されたのだな!」
妻は私を裏切ったのではなく、脅迫されて仕方なく二人で会ったのだと思いたくて必死でした。
しかし妻は俯いてしまいます。
「脅迫までは・・・・・・・・私がそう思っただけで・・・・・・」
翌日私は篠沢を呼び出しましたが、篠沢は悪びれた様子も無く、淡々と話をします。
「脅迫?一度娘と食事でもしてみたいと言っただけなのに?」
「俺の娘だ!」
「戸籍上は」
私は助手席の篠沢を掴みました。
「暴力ですか?殴りたければ殴って下さい。ただ警察沙汰にならない程度にお願いします。父親が暴行で逮捕。その相手は母親の元恋人で、本当の父親だった。これでは娘があまりに可哀想だ」
私は篠沢を殴れませんでした。
「今後妻には近付くな!勿論娘にもだ!」
「そうします。ただ向こうから近付いて来た時までは約束出来ません。血の繋がりとは不思議なもので、どうしても吸い寄せられていってしまう。香代もそうです。本当の父親と母親という深い繋がりがあるから、引き寄せられてしまう事もある」
私は恐怖に脅えながら帰って来ました。
それは妻が私から離れていってしまうかも知れないと言う恐怖だけで無く、それに伴い、娘までもが私の手から離れていってしまう恐怖でした。
「二度と会うな!」
「はい・・・・・・すみませんでした」
しかしそれから一ヶ月ほど経った金曜の夜、突然篠沢の奥さんから電話が掛かります。
「奥様はご在宅でしょうか?」
「妻は保母の研修会に行って、明日にならないと帰りませんが」
「主人も出張だと言って出て行きましたが、すぐに処理しなければならないトラブルが起こったので、宿泊先を教えて欲しいと部下の方から電話がありました。会社には
明日遠方で親戚の結婚式があるから休むと言ったらしくて」
私は奥さんの言いたい事が分かり、すぐに妻の携帯に電話しましたが、篠沢と同じで妻の携帯も電源が切られていて繋がりません。

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