KYO 5/14(日) 00:13:55 No.20060514001355 削除
ふと上半身の方を見ると、犬山は妻の乳房に手を回し、揉み上げる
ような動作をしていました。私がさすがに驚いた表情を見せると、
犬山は大きな目を見開いて言い訳を始めます。
「いや……奥様が苦しそうにされたので胸元のボタンを外して上げ
ようかと……」
「結構です。あとで私がやりますから」
これでは介抱に来ているのか痴漢をしに来ているのかわかりません。
犬山はホテルや飲食店を経営していると聞いていますが、PTA会
長を務めるような品格は感じられませんでした。
しかしその時は、基本的には親切心でやってくれていることだろう
と思って、あえて注意することはありませんでした。慣れない役員
業務に就いている妻のことをおもんばかったからでもあります。
ようやく妻を玄関まで運び込むます。犬山はスカートの裾から伸び
た妻の肢にちらちらと視線を向けていましたが、やがて私に挨拶し
て待たせていたタクシーに乗り込みました。
門の前で犬山を見送ると、私は家の中に入ります。玄関ホールで横
たわっている妻が苦しげに何かつぶやいています。
「どうした、絵梨子」
「……やめて……もう許して……」
「何だって?」
「お願い……もう帰らせて……」
「……」
私は妻の様子に異様なものを感じ、抱き上げて起こそうとしました。
しかし妻はよほど疲労しているのか、軽く揺すっても目を覚ましま
せん。酒に酔って気持ちが悪くなっているのをこれ以上揺すぶって
も良いことはないと考え、私はあきらめて妻を寝室へ運びます。
意識のない人間をベッドに乗せるのは一苦労です。私はなんとか妻
を寝かせるとブラウスのボタンを外します。
(……)
妻の胸元には赤い染みのようなものがいくつかありました。
(キスマーク?)
私は思わず妻のスカートをまくり上げました。足を開かせて内腿を
チェックします。そこにはやはり同じような染みがいくつか見つか
りました。
私は焦燥感にとらわれ、妻のブラウスとスカートを完全に脱がせま
す。他にも染みを発見しようとしましたが、酔いのため全身が赤く
なっているせいか、見つかりませんでした。
今夜一体何があったのか妻に確認したかったのですが、すっかり眠
りこけている妻を起こすのは可哀想に思えましたし、これだけ酔っ
ている状況では何か聞き出すのも至難の業のように思えました。
私は諦めて眠ることにしました。しかし目をつむると色々と悪い想
像がはたらき、かえって目が冴えて来ます。結局朝までほとんど眠
ることができませんでした。
翌日は月曜日です。明け方にようやく少し眠った私が
目を開けると、隣の妻のベッドは空でした。
ダイニングに行くと妻が食事の支度をしており、私を見て「おはよ
うございます」とにっこり笑います。
「おはよう」
私は妻の様子を観察しますが、特に変わったところはありません。
いえ、むしろいつもの朝よりも陽気に見えるところが変わっている
とは言えます。
「昨日はすみません。またみっともないところをお見せしてしまっ
て、あなたがベッドまで運んで寝かせてくれたですね。ありがとう
ございました」
そう言うと妻はペコリとお辞儀をします。
「ああ……それは別に構わないが」
私は一瞬キスマークのことを聞こうと思いましたが、なぜかためら
いました。
「ところで……誰が送って来てくれたんですか」
「会長の犬山さんだ」
「まあ……」
妻の表情が心持ちこわばったような気がします。
「あとでお礼を言っておかないといけないわ」
「絵梨子、それよりも……」
「わかっています。お酒は控えるようにします」
妻は再び頭を下げます。
「役員の人は男の人ばかりで、どうしてもペースに乗せられて……
それにみんなすすめ上手なので……」
「男の人ばかり?」
私は妻の言葉を聞きとがめます。
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