KYO 6/23(金) 23:47:51 No.20060623234751 削除
その日も、次の日も妻を捜しましたが見つかりません。携帯にかけ
ても電源がきられているようで繋がりません。妻が行きそうなとこ
ろ、友人の家や実家に連絡してみたのですが、すべて空振りでした。
長尾のマンションに転がり込んでいるのではないかと、妻のPCか
らPTA役員の名簿を引っ張り出し、長尾の住所を調べ、金曜の午
後には会社を早く抜けて周囲を張り込んでみたりしたのですが、妻
がいる気配はありませんでした。
里美も「出来る限りのことはしてみる」と言ってくれ、なにやら自
分のネットワークを使って調査をしているようですが、これといっ
て成果はありませんでした。私は里美に携帯のメールアドレスを教
え、何かわかったら連絡してくれるように頼みました。
金曜の夜遅く、焦燥しきった私が家に着くと、浩樹がまだ起きてい
ました。
「お父さん、お母さんは一体どこへ行ったの?」
「少しお父さんと喧嘩したから、実家に帰ったんじゃないかな……」
私は浩樹に、自分の母親がどんな状況に陥ったのかを知られまいと、
誤魔化します。
「おばあちゃんの家に電話したんだけど、お母さんはいなかったよ」
「そうか……」
「おばあちゃんも心配していた。どこにいるんだろう、って」
「実家の近くの友達のところに行っているんじゃないのかな。まあ、
いずれ帰ってくるさ」
「警察に届けたりしないでいいの?」
浩樹の顔は不安に翳っています。
「夫婦喧嘩くらいでいちいち警察に届けていたら、警察も忙しくて
しょうがない。週末には帰ってくるだろう。心配しなくていい」
私はそう言いましたが、浩樹は納得しなかったようです。不安な表
情のまま自分の部屋へ戻っていきます。
(絵梨子……どこだ)
私は妻を追い詰めてしまったことが後悔してなりません。まさか自
殺でもしているのではと思うと、胸が締め付けられそうな気持ちに
なります。
次の日は土曜日、その次の日はいよいよ妻が「肉体改造」をされる
役員会の日です。水曜日以来オンライン役員会は開かれていません。
姿をくらました妻も明日には犬山達の命令通り、道丘のクリニック
に現れるのでしょうか。
浩樹を学校に送り出してから、私は手詰まりから、いっそ長尾と対
決しようかとまで考えていました。その時、携帯に着信音がありま
した。里美からのメールです。
「すぐにオンライン役員会にアクセスして」
私は急いで妻のPCを立ち上げると、言われたとおり役員会にアク
セスします。そこには毛塚、橋本、道岡といった3人の副会長がす
でにアクセスしていました。
「夕べ犬山さんに急に連絡がありましたが、何ごとですかね」
「どうせ明日には集まるんですがね」
「私はわざわざこのために休日出勤ですよ」
3人は犬山に呼ばれたようですが、本人がまだアクセスしていませ
ん。画面に里美のメッセージが現れました。
「○○さん」
「里美」
「何か手がかりがつかめるかと思って、ログインしっぱなしにして
いたの。そうしたら連中が急にアクセスしてきて」
「何が始まるんだ?」
「彼らもまだよく知らないみたい……あっ」
その時、犬山がログインしてきました。犬山はいつものようにオフ
ィスからとは違い、ホテルの一室からアクセスしているようです。
「皆さん、おはようございます。急にお呼び立てして申し訳ない」
「どうしたんですか、会長」
「明日の役員会に何か不都合でも生じたんですか」
「いや、不都合というほどでもないんですが、ちょっとしたアクシ
デントがありましてな。○○さんの奥さんの不倫が旦那にばれてし
まったのです」
「なんですって」
男たちは驚きの声を上げます。
「いや、ご心配なく。明日の役員会も、来月の旅行も予定通り行い
ます。奥さんは事前に約束したとおり、私のホテルに駆け込んでき
ました。ほら……」
犬山はCCDカメラを下向きにします。ソファに深々と腰掛けた犬
山は下半身裸でした。犬山の前にお尻を突き出してひざまづき、剥
き出しにされた肉棒をしゃぶらされている素っ裸の女……それは紛
れもなく妻の絵梨子でした。
「万が一旦那に不倫がばれたら『ごめんなさい』と一言書置きをし
て私のホテルに駆け込む──この奥さんは一応我々と事前に交わし
た約束を守ったようですが、家を出てからホテルにくるまでうろう
ろと道草を食ったようです。結局水曜の夜に旦那にばれ、木曜の朝
に家を出たのは良かったのですが、私のホテルに来たのは昨日の夜
更けになってからでした」
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