⑯邂逅
静寂が続きました。
レストルームの中はあちらこちらから寝息が聞こえるだけです。
妻の体を味わいつくした痴漢達も戻って来る様子も、新たに来る様子もありません。
妻はまた誰かが来る事を待ち続けているようでした。
さらに30分くらい? 経った頃でしょうか。
妻は諦めたのか、タオルケットの下でモゾモゾし始めたのが見えました。
やがて顔を出すと私の方を見ています。
起き上がりました。
ちゃんとムームーを着ています。
妻がレストルームを出て行きました。
数分が経ち、私は妻のことが心配になり始めました。
そして、妻を捜しに行こうかと起き上がりかけた時です。
妻が戻って来ました。
そして真っ直ぐに私の方に近づいて来ました。
私は寝ているふりをしました。
(待ってたのに…)
今にして思えば、妻は確かにそう呟いたんだと思います。
大浴場に備え付けられていたボディソープの良い香りがしました。
(そっか… シャワーを浴びてきたのか…)
妻が突然私の唇にキスをしてきました。
私はビックリして目を開けました。
「ど、どうした?」
「ううん、何にも!」
「こっちに移ってくるといい」
私は隣のリクライニングシートをアゴで指し示しながら言いました。
「嫌っ! こっちがいい!」
妻は私のタオルケットの中に潜り込んできました。
そして私の体の上に乗り上がって来ると、妻はタオルケットで二人の全身を覆ってしまいました。
タオルケットの中は、はからずも二人だけの世界になりました。
「二人して、ここでこんな格好はマズイだろ」と、声を潜めて言う私。
「全っ然っマズク無いっ!」と、頬を膨らませて怒った顔をする妻。
「んーーー、ま、いっか」と、もはや無理やり納得する私。
私は壁際の柱とリクライニングシートとの間の床にタオルケットを敷き直し、妻と二人で横になることにしました。
そして二人の体にもう一枚のタオルケットを掛け、妻の体を抱き寄せました。
妻は私の胸に耳を当てると目を閉じ、私の胸の鼓動を聞き始めました。
「動いてるね」
「当たり前だよ。生きてんだから」
「私も生きてるかなぁ…」
「何だよ突然」
「ねぇ…」
「ん?」
「私の事、愛してる?」
「愛してるよ」
「嘘っ!」
「コラコラ。 誠心誠意、愛してますって」
「誓える?」
「誓うって、誰に。 キリストに? 神に? 仏に?」
「そんな、死んじゃった人になんかじゃなくって、真由美にっ!」
「わかった! わかったから…そんなに大きな声、出すなよ(困)」
私は宣誓のポーズのつもりで小さく右手の掌を妻に向けました。
「宣誓…」
妻はその手を取り左乳房に当てさせると自分の手を重ねました。
妻の重量感のある乳房の重みと乳首の硬さが私の掌に伝わってきます。
「あ…貴方の手…感じる…。 続けて…」
「私は真由美を愛しています…」
「世界中の誰よりも、が足りない」
「私は真由美を世界中の誰よりも愛しています。 真由美様に右、誓います、マル。 これでいいか?」と言いました。
「ん、宜しい。 じゃ何でも真由美の言うこと聞く?」
「聞くよ。 と言うか、いつも聞いてると思…うっ…ぷ」妻は私の唇を指で摘んでそれ以上言わせないようにしました。
「それじゃあーねー…んーとねー」何を照れているのか、妻の顔が赤く染まり始めました。
「何だよ。 早く言えよ」
「海とかぁ…山とかぁ…車の中とかぁ…プールとかぁ…サウナとかぁ…遊園地とかぁ…人のいっぱい居るトコとかぁ…」
「おー、いっぱいあるなぁ(笑) わかったよ、連れて行けばいいんだろ、連れて行けば(笑)」
「ちっーがーうっ! 最後まで聞きなさい!」
「はいはい」
「例えばこーゆートコでもぉー…」妻の顔はよほど恥ずかしいのか真っ赤です。
「うん。」
「真由美が…抱いてって言ったら…抱いてくれる?」
心臓を掴まれた気がしました。
それは、私が妻から一番聞きたかった言葉だったからです。
「真由美が抱いてって言わなくても抱いてくれる?」
妻は今まで私に言えなかった言葉を、やっとの想いで言い終えると瞳を輝かせて私の顔を覗き込みました。
私の返事を待っているのです。
私は妻の言葉が内心嬉しくてドキドキしていましたが、今さら何だ、と半分意地もあり、そっけない返事をしていました。
「あ、ああ。 いいよ?」
「やったあ!」
妻は嬉しそうにムームーを捲り上げ脱ぎ捨てると、アップに纏めていた髪を解きました。
「じゃ、抱いてっ!」
「って、おい。 今? ここで?」
「うんっ! しよっ?(笑)」
私は慌ててタオルケットから顔を出し周囲を見渡しました。
リクライニングシートの陰…。
良かった。
誰にも私達の事を気付かれていないようです。
いえ、それより何より、折角の妻からの申し出なのに、何回か放出した後の私は、正直なところ起つかなと妙な心配をしてました。
「周りのことなんて気にしないで! 真由美だけ見てて!」
そんな私の心配などお構い無しに妻は私のシャツのボタンを全て外し、ズボンを下げ私の股間を露わにすると私の体に跨りました。
私自身、もう誰に見られても構わないと思っていました。
私の理性のヒューズも飛んでいたのです。
妻は乳房を私の唇に含ませました。
「吸って…」
私は左右の硬く硬く尖った突起を、交互に唇で捉えると舌で転がしながら吸い上げました。
「あ、いい…貴方の唇…感じ…る…。 お願い…その唇も…ちょうだい…」
妻は唇を私の唇に重ね、舌を交換するような長いキスをすると私の体の上にピッタリと自分の体を密着させました。
そして、乳房と局部を私の体に擦り付ける様にしながら、その舌と唇を私の首筋から下半身へと滑らせていったのです。
途中、その舌と唇は私の左右の乳首に寄り道をしながら更に下腹部へと向かって行きました。
私はタオルケットを持ち上げるようにして妻の顔を眺めました。
妻は妖艶な瞳で見つめ返してきます。
そして私の視線を逸らさぬよう見上げながら私のペニスの根元から先端へ、丹念に舌を這わせ始めました。
(そんな娼婦のようなこと…)
「食べて…いい?」
私が頷くと、妻は先端部分にねっとりと唇を被せていきました。
妻の唇は先端から根元に向かってゆっくりと飲み込んでいき…そしてゆっくりと吸い上げました。
やがてそれが充分な硬さになったのを確かめると、再び私の胸元へ這い上がり、自らの手を添えると体の中心部に当てました。
妻はペニスの先端に、熱い蜜壷からの蜜を絡め取るように塗りつけると、それを使って、今度は自分のクリトリス、大陰唇、小陰唇の周りに塗り付け始めました。
「あぁ…いい…。 これが欲しかったの…。 貴方のが欲しかったの…」
妻は私のペニスの先端部分だけを自らの膣穴に埋没させました。
「あっ…あっ…あっ… もう…」
「どした?」
「これだけで… 逝っちゃいそうに… ああ…」
「もっと奥まで入れさせてくれなきゃ…」
「う…ん…」
妻は、唇を噛み締めながら、ゆっくりと、ゆっくりと、私のペニスを埋没させて行きました。
「あっ…あっ…貴方のが…入って来る…貴方のが入って来るっ…うっ…うっ…うっ…」
「何処に? 何処に入って来るのか、言えるかい?」
「真由美の…真由美のやらしい…オ…マ…ンコに…あっ駄目っ! 逝っちゃう… いっ…いっ…逝っ…くっ…」
妻は私の分身を完全に埋め込まれる前に…私の前で初めて口にする羞恥にまみれた言葉を発しただけで…。
妻は激しく逝ってしまいました。
ギュッギュッギュッ…。
妻の膣の締め込みを感じながら、私は妻の腰を持ち私の股間に押し付けるようにして妻の深奥に届けとばかりに打ち込みました。
「あっ駄目っ! まだ動いちゃ駄目なのにっ! また逝っちゃう。 あなたのだと○○○○が勝手に何度も逝っちゃう… うっ…うっ…うっ…」
ぎゅ…ぅぅぅぅぅぅぅぅ…。
妻の激しい痙攣とともに膣は収縮し、さらに強く、痛いほど強く、私のペニスは締め込まれました。
「あっ!」
突然、妻の局部から激しい勢いで噴出したもので二人の腰の辺りはびしょ濡れになってしまいました。
妻の静かで、そしてこんな激しい絶頂の迎え方を見るのは、私にとって(妻にとっても?)初めての経験でした。
女に対する男の征服欲が満たされた、一瞬でした。
私の股間にも自信がみなぎってくるのを感じました。
「凄い…あっ駄目…じっとしてて! これ以上貴方に動かれたら…私…死んじゃう…うっ…うっ…うっ…」
私のペニスを膣奥深く飲み込んだまま、妻は肩で息をしながら痙攣が治まり体が落ち着くのを待っていました。
やがて、目的を失った私のペニスも萎えた頃、妻はそれをゆっくりと引き抜くと、突っ伏していた顔を上げました。
そして、私を見ると恥ずかしそうに舌をペロッと出して言いました。
「ごめんね? 私だけいっぱい、いっぱい逝っちゃった…(照)」
そして私の萎えたペニスを、その手の中に優しく包み込むように持って言葉を続けました。
「ねぇ…。 お口で…して上げよっか? その…ほら…私のオマ…ン…だと久しぶりの貴方のアレ、感じ過ぎて私の方が駄目みたいだから…」
「いいさ。 その代わり明日、プールかサウナで君を抱く。 人が見ててもお構い無しに、だ(笑)」
「ホントに!?(喜)」
「ああ。 真由美様に誓っちゃったからな(笑) っと言うよりは、だ」
「なに? なに?(笑)」
「これからは君の、このココが…」
「うん」
私はまだ熱く濡れそぼった妻の蜜壷に掌を当てるとワザと乱暴に言いました。
「欲しくなった時は遠慮なくぶちこんでやる! 真由美様を犯してやる!」
「やったぁ! って犯されちゃうのに喜んでちゃ変だね私(照) ちょっと待ってて、貴方の着替え、取って来る」
妻はムームーを着るとタオルケットを抜け出しました。
私は妻の手首を掴み、その体を引き寄せました。
「え? 何?」
「真由美を…今、ここで食べたいんだ」
私は妻を顔の上に跨らせるとムームーの中に頭を入れ…そして舐め始めました。
「あっ…そんな…」
私は妻のクリトリスを唇で挟むようにして吸い立てました。
そして尿道、膣口も舌で掻き回すようにして舐め回しました。
「あっ…激しくしないで! また逝っちゃうから! また溢れちゃうから!」
「あーーー! 逝くっ、逝っちゃう! あ、また逝っちゃう! 真由美の○○○○何度でも…あっ…あっ…あっ…」
妻の尿道深く尖らせた舌先を押し付けた時、それは始まりました。
「あっそれ駄目っ! 出ちゃう! 出ちゃうからっ! ごめんなさい…もう…もう…逝っ…くっ…」
ビュッビュッビュッ。
私の顔に、その飛沫は飛び散りました。
妻の全身が硬直しているのが判ります。
妻はやがて落ち着きを取り戻すと、思い出したように慌ててムームーの下の私の顔を覗き込みました。
「ごめんなさい! だってあんなに激しくするんだもん…」
「君の○○○○、おいしかった」
「もぅ…(微笑) それじゃタオルも取って来るね?(嬉)」
しばらくして、いそいそと新しいタオルケット2枚と私の為の着替えの館内着、濡らしたタオルを持って戻ってきました。
新しいタオルケットを敷き、そこに私を寝かせると再び私に体を預けてきました。
そして先ほどと同じように、もう一枚のタオルケットを二人の体に被せました。
そして、軽く私の唇にキスをすると私の顔を濡れたタオルで拭き始めました。
「もー、あんまり苛めないで…(照)」
「久しぶりに君が抱けて嬉しかったんだ。 だからつい…苛めたくなった(笑)」
「私も…貴方に抱いて貰えて…嬉しかった…」
妻は再び私の唇に軽いキスをすると、また私の胸に耳を当て心臓の鼓動を聞き始めました。
「動いてる…」
「生きてるからな」
「私も…生き返った気がする…」
妻はさっきと似たような会話を繰り返しました。
私は満たされた気持ちで目を閉じ、妻の髪を撫でていました。
長い静寂があったかと思います。
しばらくして、突然、妻がポロポロ、ポロポロと涙を零し始めました。
「どうした?」
「ん…うん」
「何?」
「ごめんね?」
「何が?」
「私…子供産めない体で…」
「バカ…」
心臓を殴られた気がしました。
それは、私が妻から一番聞きたくなかった言葉だったからです。
「そんなこと…気にしなくていいんだ。 そんなこと、二度と口にしちゃいけない」
「だって…だって…」
堰を切ったように肩を震わせ泣きじゃくる妻の体を、私はただ抱き締める事しかできませんでした。
妻が一人で背負ってきた深い大きな哀しみが、そのぬくもりを通して私の心に流れ込んできました。
「本当だ。 君さえ居ればいいんだ。 他には何も要らない」
どうすればそれを信じて貰えるのか。 どうすればそれを忘れさせる事ができるのか。
今まで私は、妻がこんな風に泣いた所を一度も見た事が無かった…。
あんなにたくさんの時間を共に過ごしていながら…。
妻は私の胸で泣きたいと思った時が、今までどれほどたくさんあっただろう。
そんな事にも気付かない馬鹿な私を、妻は許し続けてくれていたのか…。
なのに…
「ごめんね…ごめんね…私…私…」 妻は私の胸で泣きじゃくりながら謝り続ける…。
「もう言うな。 謝らなきゃいけないのは俺の方だ、ごめん。 辛い思いを…さ…せた…」
妻の体を一際強く抱き締めながら、私にはそれだけを言うのが精一杯でした。
妻の哀しみを一度も受け留めようとしなかった自分が悔しくて、ただ、ただ、涙が溢れてきました。
すべてが理解できたのです。
妻は…、
私が妻を求めなくなったのは「女としての魅力が無いせいだ」と考え、
私が妻を抱こうとしないのは「抱いても面白みの無い女なんだ」と考えたのだと。
他の男を実験台にして、女としての魅力を再確認しながら乾いた体を満たしつつ、私が求め、喜ぶような女になりたいと。
私が覗いていることなど、とっくに気付いていたことだろう。
妻には私の企てを見抜くことなど造作も無い事だっただろう。
妻は私の企みが解るとそれに合わせ、時には強がって娼婦の様な真似までしてみせた…。
それもただ、私に抱かれ、喜ばれたい一心で…。
今まで妻から私に何も言わなかったのは、「貴方の好きにしていい」という強い意思の表れだったのだ…。
妻の嗚咽が治まるまでのしばらくの間、私は妻を抱き締めながら涙を拭うこともできず、顔を背けたままでいました。
(心の底から君を愛している… それは本当なんだ…)
言葉にならない想いを込めて妻の髪に口付けをすると、妻は顔を上げ、私の唇を受け留めました。
今まで二人が交わした中で一番しょっぱい口付けでした。
でも、二人の絆をより強くした口付けでした。
何よりも代えがたい存在…。
今は狂おしいほど妻が愛しい…。
なのに…
私のこの場を何とか取り繕おうとして口をついて出した言葉は、あまりに、この場にそぐわない間の抜けた台詞でした。
「いつまでも泣いてばかりいると犯しちゃうぞ。」と、顔を背けたまま。
妻は、ぷっと吹き出しながら、
「また、犯されちゃうの? 私(笑)」
妻が涙を拭いながら笑顔を輝かせました。
そして私の顔を覗き込むと悪戯っぽく言いました。
「それじゃ、いっぱい、いっぱい犯してね?(嬉) 今までいっぱい、いっぱい…泣いて来たんだからっ!」
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