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北原夏美 四十路 初裏無修正

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第二章①彼女への贈り物

その女性は、私より7つ年上の28歳のソープ(当時トルコ風呂と呼称)に働く人でした。
私が割のいい夜の時間帯のアルバイトを好んでしていたせいで、その人とは生活のパターンがよく似ていました。
私のアルバイトが休みの時はその人を店まで送り、鍵を借りて部屋で帰りを待っていることが多くなりました。

その人は売れっ子だったようです。
毎日何人もの男の欲望を受け留めては「あー疲れたぁ」と言って帰ってきました。
私はそんな彼女を、大変な仕事なんだなと思いこそすれ、嫌だなと思った事は一度もありませんでした。

「私が誰かに抱かれているのが気にならないの?」
「別に。 それが仕事だと思っているから…」
「ふーん、変わってるね」
「いつも疲れているみたいで…それが可哀想…。 見ていて辛くなる」
「そっかぁ…。 ありがと(チュッ♪) あ、待たせてゴメンね? 今すぐ作るから待っててね?(笑)」

彼女はどんなに疲れていても私には必ず手料理を食べさせてくれました。
休みが合えば遊園地や映画、時には飲みにも連れて行ってくれたりと、年下の私を何かにつけ可愛がってくれたのです。

支払いはすべてその女性が済ませてくれました。
ですが、お小遣いなどの現金を貰ったことなどは一度もありません。

「子供じゃないんだから、男ならお金は自分で稼ぐのよ? いい?」

彼女はいつも、そう言っていました。

キャンパスに顔も出さずアルバイト三昧だった私には多少のお金はありました。
女に奢って貰うのは格好悪いと、せめて自分の分は自分で払うからと言っても聞いてくれる人ではありませんでした。

「何言ってるの子供のくせに。 私が誘ったんだから遠慮しなくてもいいの」

彼女はいつも、そう言っていました。

確かに自分でも子供なのか子供じゃ無いのか、よく分からない年頃ではありました。

彼女は同棲しようとも言いませんでした。
それどころか私が連泊することを絶対に許さない人でした。

「貴方はヒモじゃ無いんだから学校には必ず通いなさい」

彼女はいつも、そう言っていました。


私の就職が決まった年の冬。 彼女の誕生日の日。
私達は彼女の誕生日のお祝いと私の就職内定祝いを兼ね、中華街の高級飯店で食事をしようと待ち合わせをしました。
その頃、中華料理と言えばラーメン、チャーハンしか知らない私に、何種類もの料理を好きなだけ食べさせてあげるからと彼女が予約を入れてくれたのです。

その日、私はアルバイトで貯めた貯金の全額をはたいて指輪と花束を買いました。
彼女はその日、レストランに先に来て待っていました。
私は背中に隠し持っていた花束を差し出しました。

「はい、これ。 誕生日おめでと(笑)」
「わぁ綺麗。 ありがと〜♪」
「へへ。 今日はね、特別な日だからそれだけじゃ無いんだ」
「何?」
「これ…」

私はリボンで結んだ真っ赤な小箱をポケットから取り出しました。

「卒業したら結婚して欲しいと思って…(笑)」

私は彼女に喜んで貰えるとばかり思っていました。

彼女は…みるみるうちに目に一杯涙を浮かべると、私に向かって怒り出しました。

「バカッ! そんなこと… できるわけがないじゃない!」
「ど…どうして?」
「どうしてもっ! もぅ帰るっ!」

彼女は突然立ち上がると、コートを受け取り、そのまま外へと飛び出して行ってしまいました。

私は慌てて小箱を手に掴むと、食べてもいない料理の精算を済ませ、彼女の跡を追いました。
外にはチラホラと白いものが舞い始めていました。


遠くに見慣れた彼女の毛皮のコートを見付けました。
私は港のそばの公園辺りで、やっと彼女に追いつくことができました。
そして彼女の腕を掴んで引き止めました。

「待ってってば! どうしたんだよ。 俺、何か悪い事をした?」
「何も悪い事なんてしてないっ!」

彼女は振り返ると私に抱き付き、そして唇を重ねてきました。

「バカね…。 何も悪い事してないから怒ってるんじゃない…(泣)」

私の胸に彼女の嗚咽が響きました。

「意味が解かんないよ、そんなの…」
「駄目といったら駄目なのっ! 年上だし、第一、私…」
「そんなの関係ないっ! 本当に好きなんだっ! 卒業したら結婚したいんだっ!」
「だから、そんな事できないってば!」

「この指輪…受け取って貰いたくて一所懸命働いたんだ…」
「もうっ! そんな話、聞きたくないっ! 何よっ子供のくせにっ!」

『あっ!』

二人は同時に声を上げていました。

彼女が私の腕を振り払った拍子に、私の手から真っ赤な小箱が転がり落ちていったのです。
そしてそれはコロコロと転がり…港へと流れ込む川の水面に落ちていきました。

「ごめんなさいっ! 私… 私…」

彼女は目にいっぱい涙を浮かべたまま、私の手を振り払うと公園を走り抜けて行きました。

「あ、待って!」

私は彼女の後姿と、ゆっくりと流れていく小箱を交互に見ながら、まず指輪を何とか拾い上げなければと思い、辺りに道具になるような物は無いかと探しました。

でも、そんな物はどこにもありませんでした…。

私は小箱が港からの波に弄ばれ、やがて沈んでいくのを… ただ呆然と見ていました。

彼女が立ち去った小道を振り返れば、ただ粉雪だけが音も無く白い絨毯を紡ぎ続けています。

(本当なら二人で歩けた道なのに…)

そんな小道を、私は一人、歩き出しました。

終電までの間、彼女のマンションに何度か電話をしてみましたが、呼び出し音が空しく返って来るだけでした。
下宿先に帰る電車の中で、冷たい窓ガラスに額を当てると、哀しいのか、悔しいのか、わけのわからない涙が後から後から溢れ出してきました。


その後も彼女のマンションに何度か電話をしてみました。
彼女はお店も辞めてしまったようでした。

気が付けば彼女が住んでいたマンションの前に佇み、彼女の部屋を見上げていたこともあります。
部屋の灯りはいつも消えていて、インターホンにもドアのノックにも応えてくれる大事な人は居ませんでした。


私は指輪と共に彼女まで失くしてしまったのです。

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