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北原夏美 四十路 初裏無修正

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最終章①北へ

列車が走り出し、彼女が広げてくれた弁当を食べ終わった頃、車掌が検札にやってきました。
私は慌てて財布を取り出しました。
彼女はそれを制して私の分の切符を買い求めようとしました。

「勝手に付いて来たんだ! 自分の分くらい自分で払うよっ!」
「駄目。 私を無事に送り届けてくれるんでしょ? 守ってくれるんでしょ? これはその為のバイト代」
「また、そんなこと…」

彼女は私の言うことなど無視して車掌に目的地までの料金を支払ってしまいました。

「いい? 私の為にお金を使う気持ちがあるなら自分の為に使って。
 私、その方が嬉しい。 それに第一貴方…

 お金持ってるの?(笑)」

「うっ…そ、それは…(汗) ちょっと…足りない…だけ…だよ…」

私は彼女が支払った予想以上に高額な料金に正直驚いていました。
それを見て、覚悟は決めていたのです。
帰りは鈍行に乗って帰ればいい。 それでも足りなきゃヒッチハイクで、と。

「やっぱり…(笑)」


しばらくして車掌が再び現われると二人のベッドの準備を始めました。
私達はその間に洗面所に行き顔を洗うことにしました。

化粧をすっかり落とした彼女の笑顔はショートカットの髪と相まって、あどけない子供のように思えました。
彼女が歯ブラシを貸してくれました。
そして私が顔を洗い終えるのを待ち、今度は私の顔をタオルで拭き始めました。

(もー、そうやって、すぐ子ども扱いするっ!)
(いいから、ちゃんとこっちを向いて(笑))

(ね。 私達にはベッドなんて一人分でいいよね?(笑))
(うーん…。 それじゃあ寝台の分のお金、返して貰って来よっか(笑))
(うん。 頑張ってね(笑))

まだしばらくは、こうして二人だけの時間を過ごすことが出来る。
それが二人の気持ちを高ぶらせていたのかも知れません。
私達は些細な冗談にも顔を見合わせてはクスクスと笑い転げました。

車掌が立ち去るのを見計らい、私達は上段のベッドに二人並んで毛布に潜り込むとカーテンを引きました。

(やっぱり…ちょっと狭くない?)
(こうすればいいでしょ?)

彼女が私の体の上に乗りました。 そしてセーターをたくし上げました。

(ね、外して…)

私は彼女のブラを外しました。
彼女はポンポンと脱いだものを下のベッドに放り投げました。

(私だけ裸? まことは脱がないのかな?
 さ・せ・て・あ・げ・な・い・ぞ・?(笑))

彼女はそう囁くと、私の耳たぶを噛みました。
私は慌てて彼女と体を入れ替えるとすべてを脱ぎ去りました。

(これでいい?)
(うん。 それじゃ、バッグからティッシュ持って来て)
(何だよ! そんなの裸になる前に言ってよ!)
(文句言わないの(笑) さ、早くぅ…もぅ我慢できないんだけどなぁ…)

私はスッポンポンでベッドから降りると彼女のバッグからティッシュを探しました。
彼女はカーテンから顔だけ出すと、あっちだこっちだと笑いながら指図しました。

(あなたったら、丸見えざますわよ?(笑))
(覚えてろ!)

私はやっとのことでポケットティッシュとタオルを掴むとベッドに上がり彼女の毛布を捲り上げました。

(キャッ!) 彼女が体を隠しました。
(駄目。 見せて。 全部) 彼女の膝を開かせました。
(あ、いや…)
(見ちゃった(笑) これでおあいこだ) 彼女の素肌の上に乗り毛布を被りました。
(もーっ! させてあげないっ!)
(じゃ、抱いてあげないっ!)
(ふーん、私の体、要らないの? 我慢できるの? こんなにおいしそうなのになぁ…)

彼女は乳房に両手を添えると乳首を私の胸にこすり付けました。

(あ、もう、起ってるし) 彼女が笑いました。
(ひとみだって…ほら…もう濡れてる…)
(あん…入れて…。 まことの…)

私達は一つになりました。
声を出すことも動くこともままなりませんでしたが、それで充分でした。
一度二人揃って逝くと今度は彼女が上になりました。
そして、また二人揃って逝くと彼女は股間に私を挟み込んだまま、私の胸に頬を当てました。

(ね…)
(うん?)
(このまま…寝てもいい?)
(うん)

ギュッと一際強く抱き締められました。

やがて彼女の寝息だけが私の耳に届きました。

私は彼女の髪を撫でながら、どうしようもなく好きで好きで堪らない自分の気持ちが整理できずに、彼女の体をただ抱き締めていました。

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翌朝早い時間に彼女が降車する駅に着きました。
私達は駅前のビジネスホテルに入り、そしてまた愛し合いました。
ただお互いの体を貪るようにして爛れた時間を過ごしたのです。


(ね、私のウチに来ない? 今日は貴方を帰したくない…)
(ここに一緒に泊まろうよ)
(今日帰ると伝えてあるの。 心配すると思うから…)
(でも…いいの?)
(う…ん…。 明日また貴方を送るわ、この駅まで…)

彼女は私の胸に顔を乗せるとつぶやきました。

(それで本当に…貴方のこと…忘れるわ…)

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