[2479] 隣の芝生 36 投稿者:石井 投稿日:2005/12/17(Sat) 07:09
片山はガウンを羽織ると、笑いながら部屋を出て行ったので、妻が縛られているロープを解こう
と近付きました。
「イヤー・来ないで・・・・近くに来ないでー・・・・イヤー・・・・お願い・出て行ってー」
足を大きく開いたまま動けない惨めな姿を、私に側で見られる事を嫌がっていると思いましたが、
近付くにつれ、それだけではない事が分かりました。
妻は失禁したのかと思えるほど、ベッドの上に敷かれたマットに、大きな染みを作ってしまって
いたのです。
その染みの大きさを見ただけでも、妻がどれほど感じてしまっていたのかが分かり、その事を私
に知られるのが嫌だったのです。
私は妻を自由にし、先に家に戻るように言ってから片山を探しに行くと、応接室で煙草を吸って
いました。
「必ず強姦で訴えてやる」
「どうぞ、気の済むようになさって下さい。私は強姦などしていないと立証出来ます。ご主人も
見られたでしょ。真美さんは毎回凄く喜んでくれました。訴えるのは自由ですが、法廷で真美さ
んは何と証言されるでしょうね。第一本人しか訴える事は出来ませんから、果たして真美さんが
訴えますかね?先日はあの部屋で、昼間だというのに15回も達したのですよ。15回もイカせ
てもらった事もありますが、この写真の時は強姦されていましたと訴えるのでしょうか?」
私には、言い返す言葉が見付かりません。
「不倫は認めますから、慰謝料300万でどうです?」
「そんな物で済まそうなんて、そうはいかない」
「そうですか。困りましたね・・・・・・それはそうと、空き巣の件ですが・・・・」
「ああ、警察を頼めばいい。ただ、さっき散々あの机を触ってしまったから、俺の指紋は出るだ
ろうが・・・・・それよりも狂言で捕まるなよ」
「えっ・・・・・・」
妻が下りて来ないので片山の部屋に戻ると、妻は着替えを済ませて泣いています。
「帰るぞ」
「帰れない。私はもう、あなたと沙絵の家には帰れない」
「何を言っている?俺と沙絵と・・・・真美の家だ。さあ、帰るぞ」
妻に対する怒りを抑えて優しくそう言ったのですが、妻は泣きながら首を横に振るだけで、動こ
うとはしません。
「俺も真美に秘密がある。ここにいた由美子さんを知っているか?俺は真美を裏切って、由美子
さんを2度も抱いた」
私は由美子さんと、関係をもつ事になった経緯を正直に話しました。
「ごめんなさい・・それも・・・私が・・・・・・・・・・」
「真美を裏切った事に変わりはない。さあ、帰ろう」
妻の手を握るとようやく歩き出し、階段を下りた時に奥の部屋から、ガラスの割れるような音が
何度も聞こえてきました。
片山は思い通りに事が進まず、悔しくてグラスでも投げ付けているのでしょう。
家に戻ると寝室に行ったのですが、泣いている妻に声をかける事が出来ません。
妻のあの姿が脳裏から離れず、妻のあの声が耳から消えないのです。
しばらく沈黙の時が流れましたが、妻が泣きながらポツリと言いました。
「引っ越してなんか・・・来なければ良かった・・・・仕事なんか・・・・・・・・・」
「真美、他所に引っ越そう。ここから出て行こう」
妻は泣きながらも、少し明るい表情になって大きく頷きました。
由美子さん夫婦の教訓があるにも拘らず、私は逃げようと思ったのです。
全てきちんと形もつけずに、逃げ出そうとしたのです。
しかし早くも翌日には、その事が間違いであったと知る事になりました。
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