[2361] 背信5 投稿者:流石川 投稿日:2005/11/03(Thu) 20:08
(ああ。わたしったら、どうしちゃったんだろう)
川村の読みは正しかった。懸命に仕事に集中しようとするのだが、由紀の心はすぐに昨晩の記憶へと飛んで行ってしまうのだった。秘肉の奥深く、まだ川村の巨大な肉塊に貫かれている感覚が生々しく残っているせいかも知れない。女の最奥だけではない。限界まで押し広げられた脚の付け根。荒々しく翻弄された両の乳房。激しく打ちつけられてギシギシと悲鳴をあげた腰。全身の至る所に、官能の余韻がぶすぶすとくすぶっていた。
今朝、シャワールームで鏡に映した裸身のあちこちに、キスマークと歯形がまざまざと残っていたことを思い出す。
(あの人とのときは、こんなことなかったのに……)
夫の亮輔も性的に弱いほうではない。結婚前、男と女として付き合い出してからというもの、会えば決まってセックスをしていたのだが、あの頃は翌日に淫らな想いを引きずったり、まして仕事に差し障るようなことなどなかった。
彼の自尊心を満たそうと、
「わたし、あなたとするようになってから、エッチが好きになっちゃった」
と告げてはみても、由紀は自分がいわゆる好き者だとは思っていなかった。ときどきの体調や気分によって抱いてほしいという気持ちになることはあったが、しなければしないで、つらいとは感じない。亮輔が喜ぶだろうとそういう女を演じていただけだった。
(それなのに今日は……)
昨日まで「その他大勢」に過ぎなかった川村を見るだけで、胸の奥にジュンとした甘美な思いが湧いてくる。そして由紀の視線は、いつしか川村の股間のあたりをねっとりと這っているのだった。
(ジーンズの下にある川村さんのあれが、わたしの中いっぱいに入ってきた。あんなに大きくて、太くて……ズンてされただけでわたし、壊れちゃいそうだった……)
「ちょっと、お手洗いへ行ってきます」
襲ってきた目まいに似た感覚に、由紀はあわててトイレに駆け込んだ。個室に入り、パンティを膝まで下げると、やはり媚肉はしたたるほどに潤んでいた。
(……ああ……こんなことって……)
七年前、二十二歳の由紀が三十一歳だった亮輔と出会ったとき、彼には妻がいた。いけないと自制しつつも惹かれていく自分をどうしようもできなかった。
「他人を不幸にしたくはないけど、ひとりであなたを待ち続けるのはつらいの」
ある晩、こらえきれずにこぼした由紀の涙が、亮輔の心を決めた。以来、前妻を交えた一年余の修羅場の末に離婚し、由紀は彼との結婚を果たしたのだ。
堂々と彼の妻を名乗れることの晴れがましさ。年末年始もお盆も一緒にいられる幸せ。このまま亮輔と歳を重ねていける自分を心から誇らしく思っていた。
だがやがて、由紀の心の中には、
(いつか彼は、わたしから去っていってしまうのではないか)
という不安が巣くうようになった。亮輔は一度、糟糠の妻を捨てた男だ。もちろん、原因は自分にあり、自分を選んでくれたからこそ今日があることはわかっている。
それでも、やがて再び亮輔が若い別な女と恋に落ち、同じ選択をしないとは限らない。その漠としたおそれが、由紀を川村との不倫に走らせた一因だったのかもしれない。
川村に抱かれたのは、いわば“保険”のつもりだった。三十歳を過ぎて若さが失われつつある自覚。亮輔の心の行方を案じるだけでなく、絶えず身近で自分を“女”として崇め、賛美してくれる存在が欲しかった。だから、肉体関係は一度きり。そうすれば川村は自分を忘れられなくなるはず。そんな計算もあった。面倒くさくなれば、あっさりと捨ててしまえばいいと割り切っていたつもりだった。それが……。
「ああ……ほしい……」
気がつくと由紀は、みずからの指で花芯を愛撫していた。川村の指の動きを思い出し、再現しているつもりで、ゆっくりと膣に挿入する。
(ああ、ちがう。こんなんじゃなかったわ。川村さん……ああ……もっと……)
誰もいないトイレの一室で、由紀はぐっしょりと濡れた股間に指を差し入れ、身悶えた。
コメント
コメントの投稿
トラックバック
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)