[2453] 背信 <第二部 4> 投稿者:流石川 投稿日:2005/12/09(Fri) 19:47
あれ以来、由紀は亮輔のもとへ帰ってはいない。
「すごかったらしいぜ、亭主殿は」
麻美の報告によると、戒めを解かれた亮輔は狂ったように彼女を求めてきたのだという。
「由紀を……忘れさせてくれよ……なあ……頼むよ」
泣きながら麻美にしがみつき、乳房にむしゃぶりつき、胎内深く挿入した。
「ああ……麻美……由紀……麻美い!」
三回目の射精の後、涙の跡を残したまま憔悴しきって眠りについたそうだ。
(……可哀相な亮輔……)
あらためて込み上げる罪悪感。夫を悲嘆の深淵に突き落としたのは、妻である由紀なのだ。
「それからってもの、すっかり麻美にご執心でよ。ご自宅を訪問さしあげるたんびに、やりまくるんだと。お盛んだよなあ。ふふふ。まあ、麻美にもいろいろ仕込んだからな、夢中になるのもわかるけどよ」
「…………!」
菊交、SM、浣腸、屋外プレイ……。由紀が体験してきた妖しい世界に、亮輔も麻美に導かれて足を踏み入れたのだろうか。セックスの回数こそ人並み以上だったものの、きわめてオーソドックスだった自分たち夫婦の性生活。突然放り込まれためくるめく官能の魔力に、亮輔はたちまち魅了されたのではなかったか。
由紀がそうであったように……。
(……もう……戻れないのね)
いつか川村に捨てられたとしても、亮輔のところへ帰れるのではないか、夫は自分を待ってくれているのではないかという淡い期待が心の片隅にあった。その望みも完璧に絶たれた。
(……この男にすがって生きていくしかないんだわ、わたし……)
そして、美しく磨き抜かれた全身のあらゆる箇所を駆使し、心を込めて川村への奉仕に努めるのだった。
(……だって……今ごろは亮輔も、麻美さんと……)
しかし、由紀にそう思い込ませることも川村の巧みな姦計の一部だった。現実には、亮輔を倒錯した快楽へ没入させたあげく、麻美は彼の前から忽然と姿を消していたのである。
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