[2458] 背信 <第二部 5> 投稿者:流石川 投稿日:2005/12/10(Sat) 21:46
麻美に教えられるセックスは、あまりに甘美だった。由紀を失った空隙を埋めようとする防衛本能も手伝い、怒涛のごとく押し寄せる官能に亮輔はどっぷりと浸かり、溺れた。
「由紀さんのことは、もう忘れなさい。わたしがずっと傍にいてあげる。いつだって最高に気持ちよくさせてあげるから」
恍惚とした余韻の中で、熱い吐息と共に囁かれると、
(それもいいかもしれない。由紀はもう行ってしまったのだから……)
錯乱の中に、運命を受け入れようとする動きが生まれてくるのだった。
そんな心を見透かしたように、彼女は突然こなくなった。茫然自失の亮輔。しかしながら、麻美という名の他、住所も電話番号も知らされてはいない。探し出す術がなかった。
(麻美、頼む! 何もかも忘れられるあの世界へ、もう一度俺を連れてってくれ!)
味を覚えてしまった禁断の果実を不意に奪われた凄まじい飢餓感に、亮輔はのたうちまわった。
匿名の荷物が届いたのは、そんなときである。開封した亮輔は思わず息を呑んだ。
「……由紀!……」
懐かしい妻の姿がそこにあった。写真の中の由紀はカメラに向かって脚を大きく広げ、全裸のまま後ろ手に縛られている。顔が見えない男の手で、背後から豊満な乳房を揉みしだかれ、乳首を尖らせているのだ。
ぱっくりと開いた媚肉は、黒々とした巨大な肉塊に下から貫かれていた。それだけではない。その下に見える可憐な肛門には、グロテスクな浣腸器が突き刺さっている。見るも無残な凌辱の図であった。
だが、由紀がそれを嫌がっていないことは明らかだ。油を塗ったようにぬらぬらと妖しく光る肌。太股までぐっしょりと濡らしてなお溢れ出ている秘蜜。うっすらと白眼を剥き、半開きになった肉感的な唇は悦びにうち震え、よだれすら垂らしている。あえやかな歓喜の声が今にも聞こえてきそうである。
たとえようもなく淫乱な姿でありながら、写真の中の由紀はかつてないほど美しかった。
「……なんて……きれいなんだ……」
その他にも、数多くの写真が同封されていた。忘我の表情でフェラチオに勤しむ由紀。さまざまな体位で、深々と貫かれている由紀。つい半年前まで自分だけのものだった乳房が、唇が、性器が徹底的に歪められ、蹂躙されていた。
「あ……麻美じゃないか!」
もうひとつの束は、麻美のものだった。全裸にハイヒール姿でガラスに手を突き、背後から荒々しく犯されている麻美。切り裂かれたレースクィーンの衣装で股間から白濁をしたたらせている麻美。整った眉根を寄せて汗にまみれ、煩悶の表情を浮かべている麻美。彼女もまた、汚されれば穢されるほど、神々しいまでに輝いていた。
その日、亮輔は自分から去っていった二人の女の痴態を見つめ、いつまでも放心したように佇んでいた。
やがて仕事にも出かけなくなった亮輔は、電話やメールにも応じず、家に引きこもって自慰に耽るようになった。伸び放題の無精ひげ。張りを失い、土気色となった顔相。床に敷き詰められた写真に囲まれ、落ち窪んだ眼窩に異様な光が宿っている。
「へへ……由紀……またしたくなったのかい?……ああ、麻美……そんなところにいたのか……こっちへおいでよ……いっぱい愛し合おうじゃないか……また気持ちよくさせてくれよお……ひひひ」
乱雑をきわめ異臭を放ち始めた部屋からは、時おり奇声が聞こえてきた。
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