[2466] 背信 <第二部 終> 投稿者:流石川 投稿日:2005/12/12(Mon) 09:03
誰の子かなど、わかるはずもなかった。
この数ヶ月、延べにして一体何人の男たちに抱かれ、どれほどの量の精を子宮に浴びせられてきたことか。確率からすれば川村が最も高いが、夫・亮輔の子である可能性も否定できない。彼の友人たちの誰かかもしれない。
(父親のわからない子を身ごもるなんて……)
いつか亮輔の子を宿し、周囲の祝福を受けて産むはずだった。それが……。
(……なぜ……こんなことになってしまったの……)
沈痛な心を引きずるようにして産院を出た由紀は、行き場をなくした自分に気づいて慄然とした。加奈子という新しい女を見つけた川村のもとへはもう行けない。一方、亮輔が麻美と暮らしていると思い込んでいる由紀には、かつての自宅も遠い世界に思えた。
(……どうしたらいいの……わたし……)
収入が途絶えたとはいえ、新しい住まいを借りてしばらく暮らせる程度の蓄えはあった。颯爽と仕事をこなし、常に溌剌としていた以前の由紀であれば、何ほどのこともなかったろう。
(……こわい……)
だが、身も心も男に隷属し、依存する生活にすっかり飼い慣らされてしまった由紀は、たとえようのない不安に心の底からおののいた。
数時間後、由紀の姿は田崎のマンションにあった。帰宅した田崎に向けた媚びるような笑顔。もうプライドなど一片も残ってはいなかった。
「……お願いですから……わたしを……由紀をおそばに置いてください……」
異常な凌辱を通じて、いよいよ由紀の肉体に魅了され始めていた田崎に否応のあるはずがない。これまで、どれほど自分たちに弄ばれようと、決して泊まることのなかった由紀。もはや、その背後に男の影があるのは明白だ。
(その男のおかげで、俺たちはこの美しい女を抱けるのだからな。贅沢はいうまい)
と割り切るように努めてきた。
(だけど本音をいえば、いつも傍に置き、好きなときに好きなだけ嬲りたい)
増長の一途を辿る欲望。その矢先、獲物が向こうから転がり込んできたのである。
(その男とどうなったかは知らないが、これから由紀は俺だけの女だ)
風呂で身を清め、完璧な化粧をした由紀を全裸で跪かせた。
「今から由紀は、田崎様の奴隷です。この身体で心を込めてご奉仕させていただきますので、どうかいつまでも逞しいもので由紀を可愛がってくださいませ」
命じられたとおりではあったが、三つ指をついて誓いの言葉を口にするうち、由紀の眼には妖しい輝きが灯るのだった。
それから先のセックスは格別だった。
情を通じてからもあくまで受身だった由紀が奔放に身体を開き、田崎を求めてのたうつ。自身の悦楽を追うだけでなく、絶えず男の心を配慮した動き。半年前まで貞淑な人妻だったとは思えぬ卓越した性技の数々。
(凄い! 凄すぎるぜ! よほど前の男の仕込みがよかったらしいな)
一方、仕えるべき新しい主人を得た由紀は、自身でも気づかないうちに田崎の歓心を得そうな言葉を口走っていた。
「ああ……素敵!……こんなに気持いいの……初めて!」
「最初にお会いしたときから……ずっと好きでした……由紀、うれしい……」
「もっと由紀のおま×こを愉しんでください……もっと!」
明日のことは明日になってから考えればいい。尽くす相手がそこにいて、すべてを忘れさせてくれる官能の嵐に身を委ねてさえいられれば生きていける。
東の空が白々と明ける頃。満足げに仰向けとなった田崎の全身を舌と唇で念入りに後始末すると、由紀はすらりと伸びた脚を控えめに絡め、慈しむように男の逸物に指を添えて、安堵の眠りに落ちるのだった。
追従し、迎合することが骨の髄まで染みついた、牝奴隷の哀しい性だった。
<背信 完>
コメント
夫と絡まないなら単なるエロ話になってしまう。
もっとNTR要素が欲しかった。
あっけなさ過ぎましたね
亮輔の川村や主人の友人たちへの復讐は・・・?
由紀と亮輔との復縁は・・? 等々
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