脅迫された妻 2.
正隆 8/22(金) 08:06:58 No.20080822080658 削除
由理はある人物を思い浮かべていた。しかし、その人は結婚し、いまはある商社のロンドン支社にいるはずだ。あの時にはっきりと別れたはずだと思った。
では誰か他にいるの?なぜ知り得ないことを知っているのか?由理の頭の中は混乱し、その瞳は覇気を無くし考える気力を失っているようにみえる。
由理はまた憂鬱な1日を過ごさなければならなくなった。何をしていてもメールのことが頭から離れなかった。目的は何だろう? 夫に話そうかとも一瞬考えたが、秘密を夫に知られることがもっと怖かった。夫にも相談できない……。
親友の真希、加奈の顔が浮かんだが、相談したら秘密のすべてを話さなければならないだろう。そんなことはできないと由理は頭を左右に振った。夫にも親友にも郷里の親にも話せない。私はどうしたらいいの………?由理は心の中で悲壮な悲鳴を上げた。
あれから1週間が過ぎた。メールは土日を除き毎日届いている。言葉はその都度少し違うが私の秘密の核心を突くキーワードであった。しかし、目的は何なのか?、不思議なことに脅迫する訳でも無し、何ら牙を剥いて来ないのである。
由理は鍵を握る人物と思われる黒田俊介32歳の行方を調べることにした。黒田俊介は由理と同じ村の出身者で、由理の過去を知っている唯一の人物と思われるからだ。今は商社の〇〇商事に勤務しているはずである。
まず〇〇商事の電話番号を調べ、所在を突き止めることにした。家にある電話番号簿は市部だけのものであった。この地にも小さな図書館がある。午後から図書館に行って調べてみることにした。最近は梅雨も明けてかなり暑い日が続いている。
午後1時頃、由理は昼食を終え、車で図書館に向かった。図書館に着いてから入館記録を書き、電話番号簿の所在を係員に聞いた。東京23区の電話番号簿はすぐに見つかり、調べ始めた。〇〇商事の電話番号をメモして、間もなく図書館を後にした。自宅に戻り、早速〇〇商事に電話してみた。
ところが、人事課の職員は黒田俊介なる人物について、〇〇商事の社員であるのか否か、今どこの部署に勤務しているのかなどは、個人情報であり一切お答えできないという返事が返ってきた。人事課員にとっては規則どおりの対応せざるを得ないのだろう。
今は個人情報の管理が厳しく問われており、多くの会社は個人情報の取り扱いについて規則を設けている。由理も個人情報の管理が厳しくなっていることを実感して、礼を言って電話を切る以外になかった。
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