愚か者 7/31(月) 00:21:31 No.20060731002131
今まで何度となく見た夢、私にとっては悪夢である。
つい数ヶ月前に不意な事から妻に持ってしまった疑いのこころ。
それから繰り返されたこの悪夢は、妻の顔は解っても、相手の顔は
何時も暗闇の中であった。
しかし、今日は男の顔が遂に夢の中に出て来たのである。
それは鮮明に私の夢の中に現れました。
その相手の男は妻の高校時代の同級生で、桜井浩という男である。
男は31歳の妻子持ちである。
桜井は28歳の妻と、3歳になる長女、生後6ヶ月になる長男と
4人で暮らしている男である。
夢から覚めた私の傍らには、妻の奈美が私の顔を沈黙のまま覗き込んでいた。
「・・・大丈夫ですか」
「何が・・・」
「・・・魘されていたから」
おそらく、私が夢で魘される声に起こされたのであろう妻の手には
洗いざらしのタオルが握られていた。
妻のその手が、私の額の汗を拭おうとした瞬間、私の左手は妻のタオルを
持つ手を払いのけていた。
「大丈夫だ」
「だも・・・ひどい汗・・・」
そう言うと妻はまた黙り込んでしまった。
私が大量の汗をかき、夢に魘されていたことが自分に原因がある事を
妻は察したのでしょう。
「・・奈美・」
「気持ちは、落ち着いたか。」
妻からの返事はない。
俯いて、ただ一点を見つめているばかりで、まるで抜け殻のような妻の姿。
「サインは済んだ。」
「奈美。」
「・・・まだ書いてません」
「書いてくれないか。」
「・・・もう一度・・・」
「もう一度だけ・・・お願いします。」
私は、数時間前までこの部屋で行われていた、出来事を思い出していた。
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