[3496] 我妻物語(温泉編④) 投稿者:チキン 投稿日:2005/08/18(Thu) 23:25
目的地の旅館に着くまでの車中、私はひたすら妻に謝り続けました。
妻は一言もしゃべらず、旅館に着いても車から降りようとしませんでしたが、しばらくしてようやく口を開きました。
「もう変なことしないって約束する? 最近、旅行のたびに変なことばかりするんだから。私、そんな女じゃないからね!」
仕事の話題で議論する時のような厳しい口調でした。私が神妙な顔でうなずくと、あきれたような顔をしました。
「私だって、せっかくの旅行を台無しにしたくないから。もういいから行こう。時間がもったいないわよ」
どうにか妻の怒りが収まって、私はほっとする一方、妻に釘を刺されたようで、複雑な気分でした。
旅館は2階建ての古い木造でした。あまり大きな旅館ではありませんが、土曜日だというのに空室が多いようです。
フロントには主人らしきかなり年配の男性がいて、いかにも寂れた温泉地の旅館といった雰囲気でした。
私たちの部屋は温泉街が見渡せる2階の6畳2間。建物の外観に比べると、割ときれいな部屋でした。
部屋まで案内してくれた仲居さんが、内風呂は男女で分かれているが、露天風呂は混浴だと説明してくれました。
妻にはしばらく内緒にしておきたかったのですが、仕方ありません。
妻は仲居さんが出て行くと、「混浴なのか。露天には入れないわね」と不満そうに漏らしました。
私は何も言えず、黙って聞いていました。
昼食がそばだけだったので、夕食を早めに食べることにして、その前に風呂に入ることにしました。
私は妻を混浴に誘うことで頭がいっぱいです。
「お前も露天に来なよ。俺が先に入って待ってるから。せっかくだから一緒に入ろう」
内湯の入り口の前で妻に声をかけましたが、妻は「誰もいなかったらね」と気のない返事です。
「誰も来ないって。それに、もし誰かいたとしても混浴なんだから当たり前だよ。恥ずかしがることないって」
そう力説する私に返事もせず、妻は女湯に入っていきました。
私が男湯に入ると、入り口にスリッパが2足ありました。先客がいたようです。
私は浴衣を脱いで内風呂で汗だけ流し、奥にある露天風呂に向かいました。年配の男性客が2人。女性はいませんでした。
この男性2人に妻の裸をさらすことができるかもしれない。そう考えるだけで、また興奮してきました。
ところが、妻はいっこうに露天風呂に入ってきません。男性2人もやがて内湯に戻って行きました。
私は1人で30分ほど妻を待ちましたが、結局、妻は露天風呂には入ってきませんでした。
夕食は広間で他の客に混じって食べたかったのですが、妻の希望で部屋で食べることになりました。
どこにでもありそうな会席料理で、とりたててうまくもまずくもありません。
ビールで乾杯した後、2人で日本酒の熱燗を数本飲みました。
食べ終わった後は何もすることがありません。まだ宵の口なのに何だか寂しい気分になってきました。
妻も「やっぱり、別の温泉を探せばよかったね」などとつまらなそうです。
私は混浴を目当てにこの旅館を選んだのですが、妻は混浴に入るつもりはなさそうです。
トイレを覗いて妻を激怒させていたこともあり、私も強気に出ることはできませんでした。
急に決まった旅行で、十分な「作戦」を練ってこなかったことを私は後悔しました。
今回は失敗。あきらめ気分でぼんやりと窓の外の温泉街を眺めていました。
スナックのネオンが連なって、一見にぎやかそうですが、人通りはまばらでした。
たまに浴衣を着た男性客が歩いていくのが見えます。男性の団体客なら少しは楽しい温泉街なのかもしれません。
そんなことを考えながら温泉街を眺めていると、その一角に大き目の派手な看板があるのが目にとまりました。
ストリップ劇場の看板でした。
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