[3766] 我妻物語(出張ホスト編⑪) 投稿者:チキン 投稿日:2005/11/19(Sat) 23:00
「あなた、いつまでそうしてるつもり?」
長い沈黙が続いた後、妻が諭すような口調で話し掛けてきました。
私がふさぎこんでしまい、部屋の中には重苦しい空気が漂っていました。
妻はせっかくの旅行がこのまま台無しになるのが嫌だったのでしょう。
私も早く仲直りしたい気持ちでしたが、妻にマッサージを拒否されたショックは大きく、
返事はおろか妻の顔を見ることもできずにぐったりとソファに座り込んだままでした。
「ちょっと! 聞いてるの? 返事ぐらいしなさいよ」
「うん…」
妻が少し声を荒げて返事を迫りましたが、私は小声で答えるのが精いっぱいでした。
「もぉー、元気出してよ。せっかく今まで楽しかったのに」
「ごめん…俺が悪かった」
「そうよ。あなたがマッサージなんて言い出すからいけないのよ。もう分かったわよね?」
「うん…」
「じゃあ、もう忘れて元気出しなさいよ。2人だけで楽しく過ごそうよ」
妻は厳しい口調ならがも、懸命に私をなだめて元気づけようとしてくれました。
私は妻に申し訳ない気持ちでしたが、やはりすぐに気持ちを切り替えることはできませんでした。
「全然、元気出してないじゃない。私と2人きりじゃダメなの!?」
私の煮え切らない態度に妻が業を煮やして問い詰め始めましたが、私は口ごもったままでした。
妻は苛立った様子で、ますます口調が厳しくなりました。
「はっきり答えなさいよ! あなたの考えてること、さっぱり分からないわ」
激しく落胆してしまった私の心中をどうしても理解できなかったのでしょう。
よく考えれば、私は自分の性癖について妻にきちんと説明したことがありませんでした。
私はこの際、妻に思い切って本音を打ち明けようと思い立ちました。
「分かった。じゃあ、よく聞いてほしい」
私は姿勢をただし、しっかり妻の目を見ながら重々しい口調で話し始めました。
妻は私の態度の急変にただならぬ決意を感じたようで、神妙な表情で耳を傾けてくれました。
「俺がお前にミニスカートをはかせたり、マッサージを受けさせたりするのは、確かに異常なことだと思う。
それは俺も分かってるけど、どうしても気持ちを抑えきれない。どうしてか分かるか?」
「分からないわよ。そんなこと」
「そもそも俺とお前の関係が普通じゃないからだよ。異常とは言わないけど、普通の夫婦とは少し違うから」
「確かに普通とは少し違うかもしれないけど、ミニスカートをはかせたりすることと、どんな関係があるのよ」
「大いに関係ある。長くなるけど、今から説明するよ」
私は深呼吸して気持ちを落ち着け、ゆっくりと言葉をかみしめながら話を続けました。
話は私たちが出会った当時までさかのぼりました。
妻と私は同じ会社に同期で入社し、一緒に仕事をするうちに互いを意識するようになりました。
2人とも付き合っている相手がいましたが、入社3年目に男女の関係が始まりました。
付き合っている相手にはもちろん、2人の関係は誰にも内緒でした。
最終的には互いに相手とけじめをつけ、正式に恋人同士として付き合うようになりましたが、
2人の関係はその後も内緒のままで、まるで不倫のように人目を忍んでデートを重ねました。
別れた相手への後ろめたさや社内に関係を知られることへのためらいがあったからです。
結婚が決まる直前まで、親しい友人や同僚にさえ秘密にしていました。
妻が職場のマドンナ的存在だったこともあり、結婚を報告した時はかなりの反響でした。
私は自慢したい気持ちでいっぱいでしたが、人前での態度を変えることはできませんでした。
照れくさかったし、妻と社内で親密にふるまうことは仕事に悪影響を与える気がしました。
妻も社内はもちろん、家族や友人の前でも私と恋人同士のような態度を見せることはありません。
私たちは結婚後も人前での態度を変えることができず、周囲が心配するほどドライな関係と思われています。
自分でも不思議に思いますが、地元では周囲の目を気にして妻と手をつないで歩くことさえできないのです。
「でも俺、本当は思いっきりお前を自慢したいんだよ!」
私は話しながら次第に気分が高揚し、声に力がこもってきました。
「だから、せめて旅行の時だけでも、恋人同士のようにお前と街を歩きたいんだ」
「その気持ちは私も同じだけど、どうしてミニスカートをはいたりしなくちゃいけないの?」
「女っぽくてきれいなお前を自慢したいんだよ。そんなこと、普段はできないだろ?」
「私もたまには女っぽい格好したいと思うけど、人に見られるのはやっぱり恥ずかしいわ」
妻が他人の視線を浴びて恥ずかしがるのを見るのが私の快感ですが、ストレートには言えません。
私は別の言い方で妻に本音を分かってもらおうと思いました。
「いや、俺にとってはお前を見られることこそ大事なんだ。お前を自慢することが目的だから。
これが俺の女だ!うらやましいだろ!ってみんなに見せつけたい。それが俺の快感なんだよ!」
妻は私の力説ぶりに圧倒されたのか、反論の言葉は出てきませんでした。
私の気持ちを何となく理解してもらえたような気がしました。
「マッサージだって同じさ」
私はすっかり冗舌になり、一方的に話を続けました。
「マッサージ師にお前を見せつけたいからさ。この後、このいい女を俺が抱くんだぞって自慢したいんだ。
確かに異常かもしれないけど、旅行の時は自分でもどうしようもないくらいに頭がいっぱいになる。
いつも爆発しそうな気持ちを必死に抑えているからだよ。お前、そんなに迷惑か?」
先ほどまでとは打って変わり、私が問いかける側になりました。
妻は真剣な表情で私の話を聞いてくれ、この雰囲気なら妻の本音も聞き出せそうな気がしました。
「そこまで思ってもらえるのはうれしいわ。でも、他の人に体を触られるなんて、やっぱり…」
「嫌か? 無理もないよな。俺も初めはそう思ってた。お前を触られるなんて、考えられなかった。
でもな、よく考えたら、お前を自慢するのにマッサージほどいい手段はないって気づいたんだ。
だって、俺の目の前でマッサージさせるんだぞ。俺が頼んだってことは相手も想像できるだろ?
だから、お前がそこまで俺の言うことを聞いてくれるってことを、見せつけることになるんだ」
「そんな、見せつけるなんて…。何だか怖いわ」
「怖くなんかないさ。相手はプロのマッサージ師で金も払ってる。口は堅いし、信用できるさ。
それに相手はこっちがどこの誰だか知らないし、密室で他の誰かに見られることもない。
1時間かそこらで終わって、相手とは2度と会うこともない。むしろ安心だよ。
俺にとってマッサージはお前を自慢する最高の手段なんだよ!」
大半は本音で言ったつもりですが、方便が交じっていたことも確かです。
スケベ心を満たしたいだけと指摘されれば、認めざるを得ません。
私は恐る恐る妻の反応を待ちました。
妻はじっと考え込み、しばらく沈黙が続きました。
そして深いため息をついた後、私の目をしっかり見ながら言いました。
「あなたの気持ちは分かったわ。でも私、やっぱり抵抗があるの。お願い、少し考えさせて」
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