[1366] 贖罪18 投稿者:逆瀬川健一 投稿日:2002/02/28(Thu) 22:19
【#18 転換】
妻が他の男に刺し貫かれるシーンを二人で観るというのは、私たち夫婦にとって初めての体験になるだろう。
これまで私は、蹂躙を受ける妻を別室のモニターで、あるいはメールに添付された画像ファイルでばかり見せられてきた。唯一、夫婦のベッドルームでSMマニアたちから激しい責めを受けたときに同室が許されだけだ。あれほどの興奮を味わってしまうと、もどかしさだけがつきまとう。リアルタイムであればあるほど、映像ではなく現場を見たくてたまらなくなる。
だが、今日は違う。ビデオは観るが、それだけではない。隣には妻がいるのだから。
妻の反応を窺いながら、疑問点を質し、感想を訊く。
考えるだけで、下腹部に疼きが走る。
「やめて!」
妻はテレビに駆け寄ると、スイッチを切った。
「観るんやったら、一人で観て」
「なんでや? 今までと同じことやないか。おまえの姿を別室でモニターすることと、ちっとも変わらへん。それに、うちの寝室で一緒やったことがあるやろ。SMのおっさんたちが来たときに」
私は、わざと無神経な言い方をして妻を見た。
口紅をさしていない唇が引き絞られる。妻は、片腕で両の乳房を覆い、もう一方の掌で恥丘を隠した。私に対する不信感がそうさせたのだろう。
初対面の男に対して、妻はいつもこのような態度を取っているにちがいない。
(面白い。自分の妻を犯すなんて、どんな気持なんやろう)
邪悪な思いつきに加速度がついた。
「ほら、テレビをつけてくれへんか。ヤクザとのお楽しみの続きを見たいんや」
「本気で言うてるの?」
妻の眼が、私の本意を見逃すまいと凝視する。私は口元を皮肉っぽくゆがめて見せた。これで、私の本意が伝わっただろう。夫婦だけにわかる微妙な表情の揺れ。ゲームの始まりを告げる合図だ。
ひと呼吸ほどの間の後、妻は乳房と陰部を隠したまま膝を折り、テレビのスイッチを押した。
オーラルセックスから始めた。
ビデオと同じように妻の口に勃起を押し込み、時間をかけてしゃぶらせた。妻の口技はプロさながらだった。性感のツボを巧みに刺激してくる。ただ、プロと異なるのは、フィニッシュまでもっていかないことだ。
片手でやわやわと私の陰嚢を揉みながら、射精の兆しを常にチェックする。睾丸が緊張する気配を感じると、陰茎を横咥えして私のほとぼりを冷ますことを繰り返した。
そのたびに、私の尿道を先触れの粘液がどくりと走るのを感じ、腰が痺れた。
テレビのスクリーンでは、龍の入れ墨を背負った男の野太いペニスを含まされようとしていた。
その映像に、一年前、このソファの上でFのものに口で奉仕する妻の姿がだぶった。テレビ、記憶、そして現実。空間と時間を超越して口腔性交に耽る妻に、私は激しく欲情した。その瞬間、私の忍耐に限界が訪れた。
慌てて妻が亀頭に唇をかぶせようとしたが、遅かった。
私はおびただしい量の精液を放った。
大部分は妻の口元を直撃したが、脈動のたびに排出される粘液の一部は、私の腹ばかりでなく、ソファや床にも飛び散った。
ティッシュペーパーの箱に伸ばしかけた私の手を妻が押さえた。そのままの格好で、精液にまみれた顎を私の腹にこすりつけ、きれいに舐め取ってしまうと、次にソファと床の粘液を舌で掬った。
その自然な動きは、妻がそんな行為を常に強いられていることを示していた。もはや、不潔などという感覚はないのかもしれない。背中に刻まれた無数の笞痕が、妻の行為を無惨に彩っている。
妻にその行為を仕込んだ男たちの力量に、私は嫉妬した。そのせいか、大量に射精したばかりだというのに、勃起の勢いに衰えはまったくない
口をすすぎたいとの乞いを無視して、妻をソファに仰向けにし、これ以上硬くなりようがないほどの充血しているペニスを秘裂に押し当てた。
すでに、自らの分泌物で潤っている肉洞は、私のものをスムーズに受け入れてくれるものとばかり思っていた。だが、大陰唇や小陰唇は完全に充血してほころんでいるものの、膣口は固く閉じ、私の亀頭を押し返す。
「………?」
私の驚きようを、妻はいたずらっぽい眼で見た。
「これも教わったの。男の人っていいんでしょ、こういうの? さあ、入ってきて」
腰を入れると、ようやく妻の肉洞に進入することができた。襞が私の肉柱を圧迫する。根本まで押し込むと、亀頭の先端が子宮口に触れた。少しでも動かすと精を洩らしそうだ。私は気をそらすために妻に語りかけた。
「男を悦ばすため言うてるけど、おまえかて、ええんやろ?」
「うん」妻は両腕を私の背中に回してきた。「でも、いつもより大きいような気がするんやけど、気のせい?」
「ここにヤクザのものが入ってたんかと思うと、妙に興奮するんや」
「好きで抱かれてるんと違うんよ」
「ほんまかどうかわからへんな」
私はテレビのリモコンを取り、音量の調節をした。
『はっ……う。くうううっ。す、すごい。いっぱいになってる。くううっ』
妻が龍の凶器を受け入れていた。Sと一緒に観たシーンだった。
ビデオは粗編集がなされており、映像は、二人のヤクザに膣と肛門を犯されるシーンに変わった。この間、妻は数え切れないほど頂を極めさせられていたことを、私は知っている。
『……お願いします。もう……もう、堪忍してください。これ以上、だめ……』
言葉とは裏腹に、画面の妻は、仰向けなった龍の厚い胸板に両手をつき、背中を弓なりにして、二本の剛棒をさらに体の奥深くに受け入れるために尻を蠢かせていた。
「ほら、自分から尻を振ってるやないか」
顔をテレビに向けてやると、妻は食い入るように見つめはじめた。ヤクザたちのストロークに合わせて、肉襞がリズミカルに締まる。
「どっちがええんや? おれとヤクザと」
妻はテレビに目を向けたまま、針の痕がかすかに残る乳房を揉みはじめた。麓を掴み、乳首まで絞っていく。乳首は、興奮のためばかりでなく、針の貫通による腫れも加わって、色も大きさもアメリカンチェリーさながらだった。
「正直に言うてええんやで。どっちがよかった?」
「ヤクザのほうがええに決まってるやないの」
つまむというよりも潰すといったほうがふさわしい荒々しい愛撫に、乳首にルビーのような血玉がわいた。
私は妻の手首を掴んだ。「だいじょうぶか? 痛いんとちゃうか」
だが、その手は邪険に払われてしまった。
「あなたのじゃ物足りないから、こんなことせなあかんのよ」
妻は、左手で乳首を責め、右手を無毛の下腹部におろして、むき出しのクリトリスを指の腹でこすった。
夫婦のゲームは、あうんの境地に達している。
私は妻の中からペニスをあっさりと抜き去った。あっ、と小さな声を上げる妻を腹這いにさせ、双臀を割った。さまざまな男の肉棒や器具に蹂躙されてきた割には、アヌスに崩れはなかった。
すでに愛液にまみれているすぼまりに屹立を突き立て、一気に押し込んだ。
目立った変形こそないものの、妻の括約筋は柔軟性を増していた。私の亀頭は抵抗なく前進し、直腸に収まった。
ソファに顔を埋めた妻の口からくぐもった呻きが洩れた。
妻の両肩を掴んで引き起こし、つながったままで床に足を下ろて立ち上がった。
「な……なにするん?」
嫉妬と怒りに狂った私に激しく突かれることを、妻は予想していたらしい妻は、意外な成り行きにとまどっていた。
私は返事をせず、ペニスを根本まで埋めたまま冷蔵庫に向かって歩を進めた。
「野菜室」
私が命じると、妻は腰を折り、冷蔵庫の最下段を開いた。妻の不在の間、自炊せざるをえなかったせいで、野菜室の内容は把握していた。
「おれのものじゃ物足りないんやろ。好きな物を食べさせたる」
野菜室の中にはレタス、トマト、レモン、そしてキュウリがある。妻は私の意図を悟り、直径が三センチはありそうなキュウリを選んだ。
両脚を揃えてソファに腰を下ろす私の上で、妻は正面を向いて大きく脚を開いていた。
私は妻の肛門を犯しながら、背後から両手を回して乳房をなぶった。妻は、キュウリを自ら秘裂に埋め込み抽挿している。膣の薄膜越しに、キュウリのワイルドな感触が私の陰茎に伝わってくる。
音量を絞ったテレビには、妻が笞打たれ、蝋涙を垂らされる姿が映っていた。
「あなた、もっとぶって、もっと熱いのをちょうだい……なんでもしますから。お願いですから……」
うわごとを洩らす妻は、すでにビデオの世界に入ってしまっている。演技などではない。痛みと快楽が不可分になった次元に達してしまっているのだ。
妻は何を見、何を感じているのだろうか。
直腸の蠢動を味わいながらも、私の理性は働きつづけていた。やがて、男と女を隔てる大きな障壁の存在に思い至っていた。それは、文字通り壁だった。ジェンダーという大きな一枚岩。
しょせん、男には女の肉体の内奥までわからない。オルガスムスのイメージすら描くことができないではないか。ノーマルなセックスを行っていてもその有り様なのに、アブノーマルな世界で女が得ることのできる快楽がいかようなものかわかるわけがない。
性差、という簡単な言葉で、男はそれを受け入れるほかはない。
性のぬかるみに夫婦が手を携えて踏み込んだところで、二人が同じ快楽を味わうことは不可能だろう。かといって、性の冒険が男をみじめにするだけだと決めつけたりするつもりはない。
男には男の、女には女の、性愛を極めるプロセスがある。女の悦楽を同じように感じようとすること自体が間違いだったのだ。
Sの言葉の断片が脳裏によみがえった。
「――人間の快楽中枢は脳なんだよ。決して粘膜の神経細胞などではない。
――ご婦人が性感に耽るのを観ることが、なによりも楽しい。
――射精などとは別の次元の快楽」
“人間”を“男”に置き換えてみてはどうだろう。Sが調教メールを律儀に送ってくれたのは、私にそれを悟らせるためだったのではないだろうか。ディスプレイで発光する文字の連なりに、私は激しく興奮させられたことを思い出した。
Fが妻をこの部屋で犯しているさまを盗み見したとき、私は図らずも精を洩らしてしまった。肉体的な刺激をまったく受けていなかったにもかかわらずだ。
原点に立ち返ろう。
妻を観察しつづけよう。ストップをかける権利を、夫の私が行使する瞬間まで。
だが、今夜はたっぷりと妻の肉体を貪る。今現在の感触を五官に叩き込み、妻が、どのように変わりゆくかを眺めてゆけるように。
私は、ペニスに力を込め、激しく突き上げた。
喜悦の声を洩らすために、妻が大きく息を吸い込むのがわかった。
またまた長文になってしまいました。スペースを圧迫してしまい、申し訳ありません。ちびちびと短い間隔で書き込むのが理想なのですが、書きはじめるとあれもこれもと盛り込みたくなってしまいます。もうしばらくお付き合いくださいましたら幸いです。では、また後日。
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